題名が示すとおり、この文書はユダヤの王マナセに帰せられる。
旧約聖書において、マナセはヤハウェ崇拝を堅持しなかった悪王として知られており、『列王記』下24:3-4では「ユダが主の御前から退けられることは…マナセの罪のため、彼の行ったすべての事のためであり…主はそれを赦そうとはされなかった」とあるように
バビロン捕囚の原因とまでいわれている。しかし『
歴代誌』下によれば、捕らえられたマナセはへりくだって神に祈り、帰国を許されたとされる(『歴代誌』下33:11-13)。
この文書は、マナセの回心に関連づけられる。しかし、『歴代誌』の該当箇所には直接の言及がない、孤立した文書である。
七十人訳聖書に収録されるが、著作場所や元来の言語などの書誌的情報について、現在の文献学研究では不明であるとしている。
捕囚されたユダ王マナセの祈り
マナセの祈り1-15
全能の主よ、
我らの先祖
アブラハム、イサク、ヤコブの神、
彼らに連なり正しく歩んだ者たちの神よ、
あなたは天と地と
そのすべての装いを造られました。
あなたは命じて海に境を設け、
栄光ある恐るべき御名によって
淵を閉ざし、封印を押されました。
万物はあなたの力に震えおののいています。
人はあなたの栄光の威厳に耐えられず、
罪人への仮借なき御怒りは、
人には忍びきれないのです。
しかし、あなたの約束された慈しみは、
計り知れず、究めることができません。
あなたは、いと高き主、
情けあつく、寛大で、慈愛にあふれ、
人に下した災いを悔やまれる方。
主よ、あなたは正しい者の神。
しかしあなたは、正しい人々、
罪を犯さなかったアブラハム、イサク、
ヤコブにではなく、
罪人のこのわたしに、回心の恵みを
与えてくださいました。
わたしの犯した罪は海辺の砂より多く、
とがは増しました。
主よ、増し加わりました。
わたしは天の高みを仰ぎ見るには
ふさわしくありません。
多くの悪事を行ったからです。
わたしは多くの鉄の枷で引き据えられ、
罪のゆえに、頭を上げることができません。
わたしには、安らぎがありません。
あなたを怒らせ、
御前に悪しきことを行い、
忌まわしき像を立て、とがを重ねたからです。
今、わたしは心のひざをかがめて
あなたの憐れみを求めます。
罪を犯しました。
主よ、罪を犯しました。
犯したとがを、わたしは認めます。
あなたに乞い求めます。
お赦しください。
主よ、お赦しください。
とがもろともにわたしを滅ぼさないでください。
いつまでも怒り続けて
わたしに災いを下すことなく、
罪に定めて、地の奥底に捨てないでください。
主よ、あなたは悔い改める者の神だからです。
あなたは善き御心を示してくださいます。
ふさわしくないわたしを、深い慈しみをもって
救ってくださるからです。
わたしは生涯、絶えずあなたをたたえます。
天のすべての軍勢は、あなたを賛美し、
栄光はとこしえにあなたのものだからです。
アーメン。
最終更新:2017年07月05日 21:57