140年頃、ローマにおいてヘルマスという一信徒が書いたもの。原典(ギリシア語)の題名は単に『牧者』となっている。本文は5個の「まぼろし」、1個2の「いましめ」、10個の「たとえ」の三つの部分からなる。最初の四つの幻は絶えず若返る老女の姿をした教会によって,第五の幻と残る戒めおよび比喩は牧者の姿をした天使によって示される。悔い改めの必要を説き、全体の基調は実践的、禁欲的。本書の主要問題は,受洗後罪を犯した者の赦しであった。著者の立場は,それらの者に一度限り悔い改めの機会が与えられる,とする。一時は「聖書」同様にも取り扱われたが、2世紀の教会の一面をよく反映している。
構成
- 5個の「まぼろし」
- 12個の「いましめ」
- 10個の「たとえ」
ジエ(S.Giet)は、とりわけ本書に見出される思想的矛盾を理由として、まず原本(まぼろし一-四)が二世紀初期に著わされ、それに、二世紀中期と後期の二度にわたって、それぞれ思想を異にする二人の著者により、まぼろし五及びたとえ九と、いましめ全体、たとえ一-八及び十とが加筆されて、現在の『牧者』が成立したと主張する。この考えに基づくと、次のように分類できる。
- 2世紀前半の原本(まぼろし1~4)
- 2世紀中期の加筆(まぼろし5、たとえ9)
- 2世紀後期の加筆(いましめ全体、たとえ1~8と10)
最終更新:2016年09月26日 12:48