フィリピの信徒への手紙

パウロ書簡の一書。真筆性は極めて高いとされる。

パウロがこの手紙を書いたのは紀元61年の終わりから62年のはじめにかけてローマで獄中にあった時期であったとされてきた。彼がこの手紙を書いた時,パウロはローマ皇帝護衛隊のもとに拘禁された囚人だったが,彼の周囲ではかなり大々的なクリスチャン活動がなされていた。彼は,カエサルの家の信徒たちからのあいさつのことばでこの手紙を結んでいる。こうした点を総合して,この手紙はローマで書かれたと判断できる。

『使徒行伝』によればフィリピの教会はヨーロッパで最初に創設されたキリスト者の共同体であり、しかもパウロの宣教に由来するものであった(『使徒言行録』16:11-40)。そういう意味でパウロはフィリピの共同体に非常に強い愛着を抱いていたことがうかがえる。フィリピの信徒たちは(パウロを非難するものもみられた)他の共同体と異なり、全員が物心両面でパウロをバックアップしていた(『使徒言行録』20:33-35、『コリントの信徒への手紙二』(以下ニコリ)11:7-12:2、『テサロニケの信徒への手紙二』3:8参照)。

著者

冒頭にパウロであると明記されている。

フィリピ1:1
キリスト・イエスの僕であるパウロとテモテから、フィリピにいて、キリスト・イエスに結ばれているすべての聖なる者たち、ならびに監督たちと奉仕者たちへ。
高等批評でもパウロの真筆性が高いとされる。

監禁の身で書かれたことが記されている。

フィリピ1:12-14
兄弟たち、わたしの身に起こったことが、かえって福音の前進に役立ったと知ってほしい。つまり、わたしが監禁されているのはキリストのためであると、兵営全体、その他のすべての人々に知れ渡り、主に結ばれた兄弟たちの中で多くの者が、わたしの捕らわれているのを見て確信を得、恐れることなくますます勇敢に、御言葉を語るようになったのです。
最終更新:2017年10月25日 21:53