フィリポによる福音書

1945年にエジプトで見つかったナグ・ハマディ写本に含まれていた初期キリスト教のグノーシス主義的な文書で、正典に取り入れられなかった外典の一つ。

ナグ・ハマディ写本はコプト語で書かれている。もとは2世紀後半に東シリアで成立したと考えられている。 『フィリポによる福音書』と呼ばれているが、本文中に使徒の名前はフィリポしか登場しないので、そう呼ばれているだけである。 福音書とは言いながら、イエスの言行の記録は他のものに比べて少なく、話の一貫性もあまり備えない。初期キリスト教のグノーシス主義的な思想にもとづき箴言や戒め、論考などを記した抜粋集のような形式である。

マグダラのマリアに関して、イエスの伴侶と紹介され、イエスが彼女をすべての弟子たちよりも愛していたとの記述が話題を呼んでいる。 マグダラのマリアは2カ所で触れられている。

フィリポ32
三人の者がいつも主と共に歩んでいた。それは彼の母マリアと彼女の姉妹と彼の伴侶と呼ばれていたマグダレネーであった。なぜなら彼の姉妹と彼の母と彼の同伴者はそれぞれマリア(という名前)だからである。

フィリポ55a
不妊の女と呼ばれるソフィアは[天]使たちの母である。そして[キリスト]の同伴者はマ[グ]ダラの[マリ]アである。

フィリポ55b
[主は]マ[リア]を[すべての]弟[子]たちよりも[愛して]いた。[そして彼(主)は]彼女の[口にしばしば]接吻した。他の[弟子たちは]彼が[マリ]ア[を愛しているのを見た。]彼らは彼に言った、「あなたはなぜ、私たちすべてよりも[彼女を愛]されるのですか」。救い主は答えた。彼は彼らに言った、「なぜ、私は君たちを彼女のように愛さないのだろうか」。
最終更新:2017年05月13日 18:49