シビュラの託宣は
新約聖書外典の1つである。「シビュラ」というのは古代のギリシアやローマで尊敬されていた伝説的な巫女の名で、恍惚状態で未来のことを語ったりする女性予言者である。ギリシアのデルポイにいたというシビュラやイタリアのキュメにいたというシビュラがとくに有名である。ギリシアやローマの人々の間ではシビュラの名はとりわけ知名度が高く、影響力の強い存在だったので、古い時代にはシビュラの名を使った予言集がしばしば編さんされたという。
シビュラの託宣もそのような予言書の1つで、ユダヤ教・
キリスト教とはまったく関係のないシビュラの名を借りて、ユダヤ・キリスト教的な終末予言を行ったものである。このため、シビュラの託宣の文学形式は、古くからあったシビュラの予言集の形式を踏襲しているといわれる。この形式は、恍惚状態になったシビュラが語った事柄をそのまま写すというものなので、全編がかなり激しい語り口になっている。時代としては、マカバイ戦争からトラヤヌス帝(後2世紀)までが語られる。
最終更新:2017年09月10日 10:05