別名『モーセの昇天』。モーセが後継者のヨシュアに残す遺訓という形式をとる。約束の土地に定着した後のイスラエル民族の堕落の歴史が、
バビロン捕囚を経て後1世紀に至るまで予言され、最後にレビ族からの救世主が出現することが約束される。遺訓というより黙示文学である。
新約聖書への引用
ユダの手紙9節のモーセの死体についての記述は、オリゲネスが指摘したように、外典の『モーセの遺訓(モーセの昇天)』からと考えられている。これは、モーセが若い頃に殺人をしているので、サタンが自分のものであると主張したという話である。
モーセが成人したころのこと、彼は同胞のところへ出て行き、彼らが重労働に服しているのを見た。そして一人のエジプト人が、同胞であるヘブライ人の一人を打っているのを見た。モーセは辺りを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺して死体を砂に埋めた。
翌日、また出て行くと、今度はヘブライ人どうしが二人でけんかをしていた。モーセが、「どうして自分の仲間を殴るのか」と悪い方をたしなめると、「誰がお前を我々の監督や裁判官にしたのか。お前はあのエジプト人を殺したように、このわたしを殺すつもりか」と言い返したので、モーセは恐れ、さてはあの事が知れたのかと思った。
ユダの手紙9
大天使ミカエルは、モーセの遺体のことで悪魔と言い争ったとき、あえてののしって相手を裁こうとはせず、「主がお前を懲らしめてくださるように」と言いました。
最終更新:2017年10月08日 12:08