シラ書

『シラ書』は、ユダヤ教とプロテスタント諸派では外典として扱われ、カトリック教会と正教会では旧約聖書に含めている書物のうちひとつ。『集会の書』もしくは『ベン・シラの知恵』とも呼ばれる。タイトルは著者のベン・シラ(シラの息子の意)に由来。序言には、著者の名前はイエスス(ヨシュア)で、もともとヘブライ語で書かれていたものを著者の孫が(ギリシャ語に)翻訳したことが記されている。

このオリジナルのヘブライ語版は長きにわたって失われたものと思われていたが、19世紀にカイロでユダヤ教ラビ・ソロモン・シェクターによって発見され、20世紀に入ってマサダ城砦の遺跡でも発見されている。死海文書でも一部がヘブライ語で書かれているものが見つかっている。

ヘブライ語版との比較

『シラ書』は、キリスト教会において「正典」の一部として、すなわち「第二正典」として認められてきたが、伝承上「正典」とされたテキストは「七十人訳聖書」(セプトゥアギンタ;LXX)に含まれるギリシア語本文であった。したがって19世紀以降、この『シラ書』のヘブライ語原典が発見された際にも、その原典テキストが正典とされるには至らなかった。

その発見の経緯とは、1896年にカイロのゲニザ(廃本貯蔵室)において、11~12世紀に筆写された5つの断片部分が見つかり、その後クムランで1946年に、またマサダでは1964年にそれぞれヘブライ語テキストの一部が発見されるというものであった。だがこれらのヘブライ語テキストを合わせても、ギリシア語テキストの3分の2ほどの長さにしかならない。

一方、ラテン教父ヒエロニュムス(340- 420)によるラテン語ウルガータ訳聖書では、すでに2世紀に完成していたとされる古ラテン語訳がそのまま採用された。この古ラテン語訳聖書は、ギリシア語訳から重訳されたものと推定されるが、現行の七十人訳聖書には見られないテキストを多数本文に含んでいるため、おそらく初期キリスト教会における注記が本文に紛れ込んでいると考えられる。それと同時に、初期キリスト教会において、この書物が倫理的勧告の書として好まれた痕跡を知ることができ、またこの書物が『集会の書』という別名を有する経緯も推察される。

なお、シラ書には〔〕書きで省かれた箇所がかなり多岐にわたって見られるが、これはLXXb(ヴァチカン写本)にのみ見られる記述であるため、省かれたものである。

構成

  • 序言(0章)
  • 知恵の賛歌(1章)
  • 神をおそれること(2章)
  • 教訓1(3-23章)
  • 知恵の賛歌(24章)
  • 教訓2(25:1-42:14)
  • 神の賛美(42:15-43:33)
  • 先祖への賛歌(44:1-50:21)
  • シラの言葉、祈り(50:22-51:30)

最終更新:2017年08月01日 18:51