謎の村雨城
【なぞのむらさめじょう】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 エス・アール・ディー
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発売日
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1986年4月14日
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定価
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2,600円(データ書き換え:500円)
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セーブデータ
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3個
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2008年8月19日/500Wiiポイント 【3DS】2013年7月3日/500円 【Wii U】 2014年7月30日/514円
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備考
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GBA『ファミコンミニシリーズ』第三弾(2004年8月10日発売)
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判定
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なし
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ポイント
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ゼルダに似ているようで似ていない 良くも悪くもない出来 BGMは名曲
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概要
ファミコンのROM容量の頭打ちと価格高騰に頭を悩ませていた任天堂が打った起死回生の一手が、安価かつデータ書き換え可能なメディアを持つ拡張システム「ファミリーコンピュータ ディスクシステム」(以下ディスクシステム)であった。
本作『謎の村雨城』はこの新ハードの発表と同時に発表され『ゼルダの伝説』とともにゲーム誌の紙面を飾り、しかも前人気はゼルダよりこちらの方が上だったが、結局ディスクシステムのロンチタイトルにはならなかった。一説には「任天堂が商品として売り出せるレベルに達していないと判断し、発売を見送ったため」とされている。
しかし前人気が高かったことから商品化要望が任天堂に殺到、その結果遅れて販売されることとなったという経緯を持つ。
『ゼルダの伝説』がアクションRPG的な要素を持つファンタジー作品であるのに対し、本作は時代劇をモチーフとした純然たるアクションゲームである。
ストーリー
江戸四代将軍、徳川家綱の時代。多くの謎に包まれた「村雨城」には巨大な石像「ムラサメ」が祀られていた。
ある嵐の夜、天上を引き裂くような雷鳴と共に、流星のような物体が村雨城に落ちた。
それ以来、村雨城から異様な叫び声がするようになり、その噂は瞬く間に広まった。
「ムラサメ」に棲み着いた正体不明の生命体は村雨城以外の4つの城の城主を謎の力で支配し、
城主たちは忍軍を操って暴れ始めた。
城主反乱と「ムラサメ」の噂に事の重大さを感じた幕府は、城下の平定と噂の真偽を確かめるべく、剣法指南役の青年剣士、鷹丸を密かにその城下に送り込むのであった。
(取扱説明書より要約)
特徴
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主人公「鷹丸」を操り、全9ステージを戦い抜くアクションゲームである。
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見下ろし視点型である点や画面の端に達するとスクロールするという点では同時期の『ゼルダの伝説』に近いが、『ゼルダ』が謎解きとアイテムの使いこなしを重視してるのに対し、こちらはアクション重視の作りである。
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ステージは順に青雨城、赤雨城、緑雨城、桃雨城、村雨城の5つの城で構成されており、村雨城以外の4つの城は道中ステージと城内ステージとに分かれている。これら4つの城の道中ステージではゴールに到達すればステージクリアとなり、城内ステージではボスを倒して出現する玉を取得すればステージクリアとなる。
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最終ステージである村雨城の最奥に潜むラスボスを倒せばゲームクリア。エンディングの後、2周目、3周目…とゲームオーバーになるまで続いていくループゲームである。
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ゲーム開始時にセーブデータを作成すると、ゲームオーバーになったときに進行状況やハイスコアをセーブすることができる。再開時は各ステージの最初からとなる。
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セーブデータを作成せずにゲームを始めることもできるが、その場合だと進行状況やハイスコアは記録されない。
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残機+ライフ制。ライフ(力と表示されている)は最大3つで、ライフが無くなるか、時間切れになるかでミス。ライフが無くなった場合はその場から、時間切れになった場合はそのステージの最初から再開となる。残機が0のときにミスしたらゲームオーバーだが、コンティニューは何回でもできる。
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道中や城内には飛び道具や必殺技が入っている狸の置物や強化アイテムが入っている玉手箱があり、これらを入手するとパワーアップできる。
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玉手箱と必殺技が入っている狸の置物は画面内に出ておらず、特定の場所を通過するか刀で斬るかで出現する。このため、アイテムの位置を覚えておくことが攻略上重要なポイントである。
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Aボタンで攻撃。武器は刀と飛び道具で、敵や敵弾との距離に応じてこの2つを使い分ける。敵を倒したときの得点は刀の方が高い。
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刀はリーチは短いが使用回数制限はなく、敵の飛び道具の一部を弾き返すことができる。ザコ敵はほぼ一撃で倒せるが、ボスには通用しない。
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飛び道具は小柄、風車剣、火炎の3種類で、風車剣と火炎には使用回数制限がある。敵を倒したときに出てくることがある白い巻物を取ると使用回数が増える(上限255)。
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初期装備の小柄はリーチが長いが、威力が最も低い。風車剣か火炎を手に入れたら自動的にそちらに切り替わる。
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風車剣は威力は低いがリーチは長いので、ザコ相手に便利。
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火炎はリーチが短い代わりに威力が高いので、ボス戦で活躍する。
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Bボタンを押すと必殺技を発動させる。必殺技は2種類あり、短い時間だが姿をくらませる「透明の術」と画面全体攻撃の「イナズマの術」がある。それぞれ3回まで使用可能。
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透明の術で見えない間はダメージを受けないが、飛び道具が使えなくなるというデメリットもある。
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イナズマの術は画面内に隠されたアイテムを出現させることもできる。
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玉手箱に入っている強化アイテムは次の通り。
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強化アイテム一覧
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赤青の羽矢(忍法四連射の術)
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将棋の飛車(忍法飛車筋連射の術)
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将棋の角(忍法角筋連射の術
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将棋の王(忍法三連の術)
以上の4つは同時に使うことができず、最後に取得したものだけが反映される。
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赤いわらじ(忍法早足の術)
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青いわらじ(忍法水ぐもの術)
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水の中に入っても移動速度が落ちなくなる。また、入ると数秒間動けなくなる赤い沼の効果を無効にする。
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白い羽矢(忍法羽矢の術)
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青いかぶと(忍法無敵の術)
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白い印籠(忍法復活の術)
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赤い印籠(忍法分身の術)
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1UP。道中面クリア後のボーナスステージで4つある狸の置物のうち、2つに入っている。
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城内ステージの中には後ろを向いている姫がいる部屋があり、近づくと正体を現す。本物の姫であれば8000点ボーナスとともに1UPするが、般若だったら敵として鷹丸をどこまでも追いかけてくる。
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般若の耐久力は非常に高いものの動きは遅いので、敵が出現しない部屋に誘い込んでヒットアンドアウェイの要領で飛び道具をひたすら連射すれば倒すことができる。また、城内の階段を越えて追いかけてくることはないため、逃げるのも手である。
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難易度は高め。
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大量に襲来する敵忍者、鷹丸に向かって飛んでくる手裏剣などの飛び道具、ギリギリまで近づき刀を振りかぶった隙に攻撃しないと倒せない侍、独特で強力な攻撃を行うボスなど歯ごたえは十分。
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青雨~桃雨城で出現する敵の一覧
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道中・城内に出現する敵
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青(白・黒・赤・ピカピカ・緑・桃)忍者:最も多く出現する雑魚敵で、一部透明のものもいる。主に手裏剣や炎で攻撃する。ピカピカは時限爆弾をあちこちに設置する他、倒すと自爆してダメージを与えてくる。
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ピカピカを倒すと画面に最初から設置されている爆弾も一緒に爆発する。
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道中に出現する敵
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山賊:岩山に出現し、横方向に斧を投げてくる。
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天狗:つむじ風に乗って移動し、竜巻を飛ばして攻撃する。止まっているときでないと攻撃が効かない。
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土蜘蛛:地面から出現し、手裏剣を3発投げてまた地面に潜っていく。
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ムササビ:高速で移動しながら手裏剣を投げてくる。
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中忍(1):爆発する雷玉を投げてくる。画面が切り替わるポイント付近で突然出現することが多い。
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中忍(2):炎を吐いてくる。中忍(1)同様、画面が切り替わるポイント付近で出現するものがいる。
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爆弾:鷹丸が近づくと光り出し、やがて爆発する。爆発に巻き込まれるとダメージを受ける。
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城内に出現する敵
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侍:鷹丸と横軸を合わせるように動く。刀を横に向けているときは飛び道具が効かないので、近づいて縦に振りかぶった隙に攻撃すると倒せる。こいつを倒すと閉まっている扉が開くことが多い。
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門番(1):階段の部屋を3~5人一組で守っており、投げ縄を投げて攻撃してくる。全滅させないと階段が出現しない。
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中忍(5):炎で飛び道具に対するバリアを張った上で炎を飛ばして攻撃する。
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中忍(6):中忍(1)のくノ一版。桃雨城内に出現する。
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中忍(7):薙刀を振り回して攻撃する。薙刀で飛び道具が防がれやすい。
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ボス
いずれも刀での攻撃は無効。
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青雨城主:4発連続で爆発する雷玉を投げてくる。
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赤雨城主:爆発したところから白忍者が出現する雷玉を投げつける。透明になっている間は攻撃が効かない。
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緑雨城主:4体に分身して炎を吐いてくる。本物は他の3体と比べて上げている手が反対なので、ポーズをかければすぐ判別可能。
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桃雨城主:8方向に分裂する弾、幻花の術で攻撃する。鷹丸が近づくとワープする。
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村雨城の敵一覧
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邪鬼:忍者と同様の動きをしながら斧や炎を投げつける。
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中忍(3):中忍(1)と同様、画面が切り替わるポイント付近で突然出現し、雷玉を投げてくる。
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中忍(4):中忍(2)と同様、画面が切り替わるポイント付近で突然出現し、炎を吐いてくる。
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門番(2):2体1組で川の橋を守っており、3方向に弾を発射する。両方倒さないと先へ進めない。
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ムラサメ:ボス。2種類の弾で攻撃してくる。顔が弱点。
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ナゾの生命体:ラスボス。ある弱点以外一切攻撃を受け付けない。
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問題点
全体としては手堅くまとまったゲームであり、操作性や難易度などについてさほど大きな問題は見られないが、強いて言及すると…
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ゲームバランスが若干悪い
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鷹丸は4方向にしか動けず、飛び道具も強化アイテムを取得していないと一方向にしか飛ばすことができない。それに対し、敵はどの方向にも自在に動き回れる上、四方八方から飛び道具を放ってくる。敵の動きも速く、攻撃の密度も高いので、その動きに翻弄されやすい。
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先述のように本作は「残機+ライフ制」だが、ライフ回復アイテムはあっても最大ライフ上昇アイテムが無く、ダメージを受けた後の無敵時間も非常に短い。さらに、ライフが尽きてミスした後もその場復活で、必殺技以外のアイテムが初期化される。そのため、初期状態で敵の激しい攻撃にさらされたり、来た道を戻ることを強いられたりなど、ミスした後のリカバリーが相当きついものとなりがちである。
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敵の動きや出現位置、アイテムの場所を覚えれば十分に対策は立てられる。切り札となる透明の術、イナズマの術も上手く利用したい。
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Bボタンで発動する必殺技の残り使用回数表示がない。
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そのため、あと何回使えるかは自分で数えておく必要がある。
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ディスクシステムであることの利点に乏しい
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『ゼルダの伝説』や後発の『メトロイド』などが成長要素を持った探索型アクションゲームであるのに対し、この作品はほぼ純然な面クリア型アクション。この2つの作品と同様に3つまでデータを保存できる仕様になっているが、死んでしまえば入手したアイテム等は全てリセットされるし、慣れてしまえばゲームクリアまでに必要な時間も1周30分前後とそれほど長いわけではない。クリア後の周回もできるが3周以降は難易度は据え置き、純然たるループとなるのでそれ以上進める意味も薄い。結局のところデータ保存の必要性も利用価値もあまり高いものではなかった。大容量のゲームを安価に提供でき、音源も強化されているという利点はあったものの、ディスクシステム自体の価格なども踏まえると利点よりも難点の方が多かったと言うべきかもしれない。
評価点
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グラフィックはそれなりに良く、FCのソフトにしては十分多彩かつ、綺麗である。
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BGMも好評。曲数こそ少ないが名曲ぞろい。
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中でも「道中BGM」は評価が高く、時代劇の渋い世界観を彩っている。
総評
ゲーム自体の出来は普通なのだが、この作品ならではの独自要素があまりないため、『ゼルダの伝説』や『スーパーマリオブラザーズ2』『メトロイド』といったヒットタイトルに隠れてしまい、その後の続編展開がなかったことも相まって、当時の任天堂の作品群の中でもマイナーな地位にとどまっている。
しかし、シンプルながらも歯ごたえのある難易度でそれなりに遊べる作品であり、時代劇を舞台とした世界観や軽快な音楽も個性的で味わい深い。
若干のバランスの悪さはあるものの、歯ごたえあるアクションゲームを好む人にはおススメできる作品である。
余談
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無敵技が存在するが、その条件は「
鷹丸の残機を100機以上にする
」こと。正直そんな芸当が可能なプレイヤーには無敵技など必要ないだろう。
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説明書の中にラスボスの弱点を示すモールス信号を元にした暗号が載っているが、実は初期版には誤植があり正確には解読できない。ただしこの内容が分からなくても普通に攻略できるので問題はない。
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評価、知名度は今ひとつなのだが、なぜか1986年にドラマ化されている。
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週刊少年ジャンプで「謎の村雨くん」という漫画が連載されていたが、本作とは関係ない。
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双葉文庫から「謎の村雨城 不思議時代の旅」という名のゲームブックが発売された。ただし、主人公は鷹丸ではなく、江戸時代に迷い込んだ現代の高校生である。
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本作そのものは表舞台に出る機会が少なかったゲームだが、近年では日の目を見る場所が増えてきている。
最終更新:2023年11月01日 18:01