ウルトラストリートファイターII

【うるとらすとりーとふぁいたーつー】

ジャンル 対戦格闘アクション
対応機種 Nintendo Switch
販売・開発元 カプコン
発売日 2017年5月26日
定価 【パッケージ版】4,990円+税
【DL版】4,620円+税 ⇒ 2,990円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
廉価版 Best Price:2018年11月22日/2,990円
判定 なし
ポイント 手軽にオンライン対戦で遊べる『ストII』
追加キャラが悉く壊れ性能
ストリートファイターシリーズ


概要

『ストリートファイター』30周年という節目で発売された、『ストII』シリーズのSwitch向け新作。
サブタイトルも含めたフルタイトルは『ウルトラストリートファイターII -The Final Challengers-』となっている。
スーパーストリートファイターIIX』をベースに調整や新要素を加えた、実質的なリメイクと言える作品。


新要素・変更点

演出面

  • グラフィック・サウンドの新規追加やHD化
    • 原作同様の「クラシックジェネレーション」と、新規に追加された「ニュージェネレーション」の2種類が収録されている。グラフィックとサウンドとで個別に選択可能。
      • グラフィックをニュージェネレーションにすると、海外でのみリリースされた『Super Street Fighter II Turbo HD』で用いられたHDグラフィックでプレイできる。クラシックの場合は画面比率が4:3になる。
      • サウンドに関してはBGMは完全新規、ボイスは『ストリートファイターIV』のものを使用している。
  • カラーエディット対応
    • キャラクターカラーは『スパII』の2色 +『スパIIX』の8色に加え、自分でエディットしたカラーを追加することも可能。

ゲームシステム

  • 原作にあった「投げ受け身」が「投げ弾き(グラップディフェンス)」に変更された。
    • タイミングがかなりシビアにされた代わりに、成功すれば投げがすぐ外れて一切のダメージを受けずに済む。
    • さらにつかみ技に対しても有効となり、発生した場合は間合いが少し離れるだけになった。
  • コマンドの変更・簡略化
    • 灼熱波動拳、ケンの蹴り技、ヨガフレイム、裂空脚、フーリガンコンビネーション、タイガーニークラッシュなど、基本的にコマンドの重複や暴発を避ける方向で変更がなされている。
    • また、一部コマンドに関しては斜め入力を省略するなどして入力が容易にされた。
  • 『X』で最強キャラと言われていたバルログが一部弱体化
    • 過去作にあった「爪が拾えなくなった」「バルログステージでフライングバルセロナアタックを出すと背景の金網を掴んでから攻撃*1」という仕様が復活となり、妙な形で実質弱体化がされている。

その他

  • 「豪鬼」がデフォルトで登場し、新キャラクターとして「殺意の波動に目覚めたリュウ」と「洗脳されたケン」の二名が追加。
    • 豪鬼と殺意リュウはスーパーコンボ「瞬獄殺」が使用可能になっている。
    • 洗脳ケンは『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』での性能をモチーフにしている。
    • また、隠しキャラクターとして従来のCPU豪鬼の性能に準じた強化版の「真豪鬼」も存在している。
  • インターネット対戦に対応。また、Joy-Conは6ボタンあるため、Switch1台のみでローカル対戦することが可能。
  • Joy-Conを使ったミニゲームとして「放て!波Do拳」が収録。
    • 一人称視点でJoy-Conを動かして波動拳を放ってシャドルー兵を倒すというもの。グラフィックは『ストV』のものに近い。
  • LITE操作の追加
    • 予め登録した必殺技をボタンやタッチパネルのワンタッチで出せる機能。
    • かつて3DS『スーパーストリートファイターIV 3D EDITION』でも導入されていた機能だが、あちらと違ってタメ技はきちんとタメ行動を取ってから発動するようになるという、バランスが崩れないような配慮がされている。

評価点

新旧のグラフィック・サウンド切り替えの導入

  • 30周年に無くてはならない特徴の為、既存ユーザーの配慮として取り入れた。

『ストII』オンライン対戦環境が出た事

  • 近年家庭用でのリリースが乏しく、特にオンライン対戦の環境が殆どない状況であった中、新ハードで対戦が容易に行えるようになったのは大きい。
    • なんと1人プレイ中*2の乱入機能も導入された。かつてのゲームセンターでの雰囲気を再現する事に成功している。
    • オンラインだけでなく、Joy-Conですぐに2人プレイを楽しめるのも利点。
  • 下記の新キャラクターたちを除いて、従来のキャラクター間の対戦バランスは非常に良好。純粋な良質格闘ゲームとしても楽しめるだろう。

ある意味では『スパIIXHD』が日本で気軽に楽しめるようになった事

  • 前述の通り『スパIIXHD』は海外限定かつダウンロード専用作品であったため、日本では入手がかなり面倒な存在であった。
    • 本作にてグラフィックのみとはいえ同作の要素が収録された事で、一応日本でもあちらの雰囲気が楽しめるようになり、またリメイクに辺ってそれらしい要素を取り入れる事ができた。
      • 本作発売にあたっての改善も見られる。『スパIIXHD』クラシック版では原作のドット絵をそのまま引き延ばしていたためかなり見栄えが悪い、背景だけはHD版のままと中途半端なものだったが、本作では画面比率を4:3にしてきちんと解像度の調整を行い、背景も原作と同じものを使用するなどしている。

CPU仕様の豪鬼が使用可能

  • 隠しコマンドの入力により「真豪鬼」として出現。CPU専用だった斬空波動拳の2発同時発射などがプレイヤーも使えるようになった。
    • 過去にはDC版やGBA版でも使用可能となっていた。
    • ただし、さすがに性能が高過ぎるためかオンライン対戦では使用不可能となっている。

賛否両論点

今更『スパIIX』の焼き直しでフルプライス

  • 確かに新要素もあるとはいえ、十数年前の作品がベースなのにフルプライスという価格設定に疑問を抱いたユーザーも少なくなかった。
    • とりわけ既に『スパIIXHD』が出ていた海外では、殊更にこの点での批判が多かった。

簡略化コマンドの存在

  • コマンドの変更は好意的に受け入れられたものの、簡略化については「技がとかく暴発する」という点から不評であった。
    • ただし、一部の技がしゃがみながら出せるようになったという利点もあり、キャラクターが強化されたという見方もある。

ゲームスピードの固定

  • シリーズ経験者から見れば遅く感じ、初心者には少しとっつきにくい速さとなっている。

『スパIIXHD』の流用

  • 流用したのが対戦時のグラフィックだけのため、キャラクター選択や勝敗時に表示されるグラフィックとでデザインが異なりちぐはぐで統一感がない。
  • 各キャラクターのエンディングも『HD』準拠で大きく変更されたイラスト形式のものを採用。
    • 特にザンギエフなどは原作から大幅に内容が改変されたエンディングとなっている*3
    • エンディングメッセージも『HD』のものをベースに日本語に翻訳されているため、日本語の文法として少々不自然な点がある。

問題点

追加キャラクター2人と豪鬼が揃ってバランスブレイカー

  • 以前から問題だった豪鬼もそうだが、新キャラクター2人も性能が明らかにぶっ壊れており、発売初期から対戦で嫌われた。
    • 元のキャラクターと豪鬼を足して割ったような代物。3人とも攻撃に特化した反面打たれ弱いという特徴付けであったが、実際には攻撃性能が高過ぎて弱点を無視している状態。
  • 豪鬼が通常解禁されているため、知らずに使える事も災いしてしまった。更にオンライン対戦では相手のカーソルなどが一切見えないため、事前に判断する手段がないのも問題に拍車をかけている。これらを使用するプレイヤーはブロック機能で対処するのが当たり前という有様だった。
  • ビジュアル的な面で見ても、この全員が道着を着たキャラクターである上、殺意リュウと洗脳ケンはリュウとケンのコンパチであるため目新しさに欠ける。
    • 殺意リュウと洗脳ケンは『ストII』本編では初登場であるが、どちらも既に過去作で登場しており、そこからの出典である*4
    • カラーエディットで彼らに近いカラーリングの再現ができる事もそれを助長させてしまっている。
  • 一方で、キャラコンセプトそのものは悪くない。新キャラクターに対して「アップデートで弱体化してほしい」、「ランクマッチでは使えなくしてほしい」という意見も存在する。しかし本作が発売してから現在まで公式からのバランス調整アップデートは一切なく、どちらもかなっていない状態が続いている。

背景演出の手抜きも『スパIIXHD』譲り

  • 背景のギミックが全撤廃されているのはそのままであり、全体のアニメーションも2~3のアニメーションパターンの繰り返しになっている。コレに関してはどれ程ひどいかといえばSFC版スト2よりもアニメーションパターンが大幅に削られてると言えばわかるだろうか。例を挙げるとダルシムステージではゾウが終始鼻を振り回し続けるほか、ベガステージでは仏像を破壊すると怒りだす僧のオジサンが仏像破壊前からキレて「座った状態から始まり立ち上がりキレてまた座る」という不自然な行動をループしている等、ステージギミックをただのアニメーション化したものは不自然なものになってしまっている。全体的にみて背景演出に関してはHDよりも通常の方が凝っている。

「放て!波Do拳」モードが蛇足でしかない

  • モーションコントロールを強要される上、きちんと構えて必殺技を出す事でしかゲームを進められないため、技が出せない事にひたすら苦労する羽目になる。所によっては「Wii時代の悪夢の再来」とすら評された。
    • こんなもの採用するくらいならボーナスステージ(後述)を復活して欲しかった、と不平不満を漏らすファンも少なからずいるほど。

オンライン対戦でのラグもやや目立つ

  • 特にタメ入力がその影響を大きく受けている。ラグで入力時間が足りず通常技が暴発するなんてザラ。
  • ケンの弱昇龍拳が妙に返しにくい。もとから隙の少ない技だが、微妙にラグがあるせいで画面を見てから反撃するのが難しくなっている。
    • 今までの性能とかけ離れた強さに感じてしまうため、この技自体が「ラグ昇龍拳」などと揶揄されることも。
    • 特に洗脳ケンはもとからハイスペックな性能に加えてこの技も使えるため、もはや手が付けられない強さになっている。

過去バージョンのキャラ性能が選択不能

  • 本作では『X』ベースの性能固定であり、『ハパII』のような過去バージョンでのプレイは収録されていない。
    • また原作『X』にあった『スパII』仕様のキャラクターも使用できない。基幹システムの変更も影響しているのであろうか。

演出面での問題も多い

  • グラフィックやサウンドをクラシックバージョンにしても、ナレーションボイスが原作と異なる、UIはHD画質のままなど、いまいち原作を再現できていない部分が多い。
    • ボイスに関しては新キャラクター追加の影響が大きいと思われる。
  • バディファイトも対戦相手やステージが一切選べず、クリアしても真っ黒な背景に「GAME OVER」と白い文字が表示されるだけと、とてもやる気の起きないモードとなっている。
    • 殺意リュウと洗脳ケンのBGMはニュージェネレーションだと専用BGMがあるのに、クラシックバージョンだと専用BGMが無くベガのBGMが使用されている。PS2の「ハパ2」でCPSIに無かった「スーパー」以降のキャラBGMみたいに、クラシックバージョンも用意して欲しかった。

ボーナスステージの不採用

  • 『ハイパー』と同じくあくまで『スパIIX』がベースであるためか、やはりボーナスステージは復活していない。GBA版リバイバルのようにボーナスステージの復活を望んだファンも少なからずいたようである。
    • ただそうなるとボーナスステージのグラフィックも新規に書き下ろさねばならないので、本作のボーナスステージの復活は見送られたのかも知れない。

ギャラリーの扱いづらさ

  • ページを指定することができず、1枚ずつめくっていかないと見たいものを見れない(タッチパネル操作でページを飛ばすことは可能)。目次もなくて初見だとどのイラストがどこにあるのか全く分からない。

その他不可解な仕様など

  • 気絶したキャラクターを投げられないことがある。
    • 以前から「投げで気絶したキャラは投げられない」という仕様は存在したが、それとはまた条件が違っていてややこしい。
  • 飛び道具優遇のバランス
    • どのキャラクターも飛び道具で与えられるダメージがかなり大きい。ただでさえ飛び道具持ちは有利なのにそれをさらに助長するかたちになり、やや対戦バランスが悪くなっている。
  • 昇龍拳の着地隙が『スパIIX』よりも1フレーム短くなっている。
    • ケンの昇龍拳が強く感じるのはこれも原因のひとつだろう。なおリュウの昇龍拳も同様だがこちらはケンよりも隙が大きいため反撃は容易。

総評

ベースがシリーズ内で完成された作品というだけあり、『ストII』の面白さや醍醐味は健在と言えるだろう。

しかし、十数年前に『ハイパー』という作品が出ていたとなれば話が違ってくる。細かな面での粗が目立ち、仮にも『ハイパー』の上という称号となれば厳しい評価は免れ得ない。あくまで完全新作であるという意見もあるが、それを考慮しても新要素が微妙とあっては評価できるとは言い難い代物である。

無論、一作品としては問題なく遊べる。格ゲーの元祖にして決定版である『ストII』を遊ぶにはうってつけのタイトルであり、一本携えておいて損はないだろう。ローカル対戦であればオンラインのようなラグは発生せずに快適に遊べるうえ、ハウスルールであれば強すぎる新キャラクターも一種のハンデとして機能する。また多少の不満点こそあれど、手っ取り早くオンライン対戦が楽しめる環境として楽しんでいるプレイヤーも存在する。

結論としては、悪い意味でも無難な線に落ち着いてしまった作品なのであろう。


余談

  • カプコン側は「この作品でSwitchの様子を見、今後の展開を考える」という趣旨の発言をしている。
    • 本作の今一つ感や手抜きぶりが様子見という言葉にぴったりとハマり、多くのユーザーが不信感を募らせていた。
    • 本作自体は45万本売上というスマッシュヒットとなり、結果的にはその後のSwitchへの展開に前向きな姿勢を見せている。
  • その後ストリートファイター30周年を記念して、初代『ストリートファイター』から『ストリートファイターIII』までのアーケード版を移植した『ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』が10月25日に発売された。
    • 対戦ツールとして評価が良い『スパIIX』が遊べる(ただしオンライン対戦は海外版のみで仕様が大きく異なる)ので、『ウルII』に満足がいかないというユーザーはこちらの作品で完全オリジナルの『スパIIX』を楽しんでみてはいかがであろうか。
  • 2020年の『EVO Japan』で、サイドトーナメントとして本作の大会が開催された。
    • 対戦ルールは「真豪鬼以外のキャラクターは全て使用可能」というある意味で思い切ったもの。当然、試合会場は「黒く染まる」かと思われたが、蓋を開けてみれば昔からのスト2ベテラン勢が従来のキャラクターを使って勝ち抜き、3強プレイヤーを次々に撃破していくという意外かつ熱い展開となった。
    • ベスト8に残ったのは3強のうちでは洗脳ケンが1人だけ。それでも圧倒的な強さで決勝戦まで勝ち上がっていったものの、最後はスト2ベテランプレイヤーである中野サガット氏が使う春麗が洗脳ケンを倒して優勝を決めている。
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最終更新:2024年01月07日 02:36

*1 発生が非常に遅くなるため迎撃が余裕で間に合う様になり、実質死に技となりヒョーバルが無効化される。このためバルログと対戦するときはバルログステージを選ぶのが対策となる。

*2 CPU戦だけでなく、トレーニングモードでも乱入機能をオンにできる。

*3 まあザンギエフの場合は諸事情により雇用主である政治家「ゴロバチョフ」が登場できない故だが。

*4 ただし洗脳ケンはSNKとのコラボ作品である『SVC CHAOS』からであるため、カプコン作品では初。