実況パワフルプロ野球8
【じっきょうぱわふるぷろやきゅうえいと】
| ジャンル | スポーツゲーム |  |  | 
| 対応機種 | プレイステーション2 | 
| 発売・開発元 | コナミコンピュータエンタテインメント大阪 | 
| 販売元 | コナミ | 
| 発売日 | 2001年8月30日 決定版:2001年12月20日
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| 定価 | 7,329円 決定版:7,140円
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| 判定 | なし | 
| ポイント | パワポケ風の異色なサクセス「ドラフ島」 ややボリューム不足だがやり込み要素は多め
 シリーズ初の明確な悪役キャラが登場
 真ルートではコピーロボットと対決
 システムは更に洗練され、グラフィックも向上
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| 実況パワフルプロ野球シリーズリンク | 
 
概要
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PS2のパワプロとしては2作目。
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画面構成が大幅に変わり、後のPS2/GCシリーズの基礎となる画面を作った。
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野球部分のグラフィックの大幅な向上、ペナントの仕様変更(後述)、独自色の強いサクセスなどが特徴。
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また、1作目の『'94』より、ほぼ全ての作品で実況を担当していた安部憲幸氏が実況を務める最後のメインシリーズの作品でもある。
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安部氏はラジオ放映のような熱い実況が支持されており、今なお惜しむ声は多い。
 
 
本作のサクセス「ドラフ島」
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これまでとは異なり高校編でも大学編でもプロ野球編でもないという、他のシリーズでも類を見ない異色のサクセス。今までのサクセスはリアルさを重視した部分もあったが、本作では架空の島を舞台としておりフィクション性が強い。時系列は次回作の「パワプロ9」と同時期だが、正史とされる作品と矛盾するため恐らくパラレル。
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架空の島「ドラフ島」を舞台に、点在する球団ドームで認められドラフト入りを果たすのが大まかな流れとなる。プレイヤーは最初の選択によって異なるが、球八高校・球八大学・球八物産と必ず球八出身となる設定。なおこの中の球八高校は、9にて敵チームや試合オンリーのサクセスシナリオとして登場した。
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球八高校時代の先輩・白鳥管太がドラフ島へ行ったっきり行方不明になっており、彼を探す事も主人公の目的の一つである。
 
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すごろくのようなマップを歩き回るのが最大の特徴。(ただし移動先は任意で決められる)期限までにジムに入って練習してコーチの評価を上げ、特定球団のスタンプを3つ集めて入団テストに合格すればクリア。それまでに合格しないとゲームオーバー。ジムを回って早ければ20分~40分で選手が完成するのが特徴。
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上記の通常ルートでのクリアもあるが、本作はもう一つのクリア条件が存在する。それが後述する「セントラルタワーでの二連戦の勝利」である。
 
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交通事故や爆弾等のマイナスイベントが本作では撤廃されている。
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病院・重要施設「セントラルタワー」以外の街やジムや仲間の登場などはランダム。
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阿畑やあおい、猪狩兄弟などの強キャラが仲間になる事もあれば、服部兄弟など数合わせのような存在もいる。
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その一方で、ダイジョーブ博士のような本来野球選手ではないキャラまで選手として仲間になることもある。さらにカレンのように、オールGで無理やり選手入りしてマイナスイベントで足を引っ張るものも…。
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彼女キャラやデートコマンドなどは存在しない。ただし、あおいや神社にいる巫女との連続イベントなど、彼女イベントに近い要素は存在する。
 
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仲間キャラの1人、「早川あおい」は前作『7』にて千葉ロッテマリーンズ所属のキャラとして登場したボクっ子の女性ピッチャー。本来は『7』のみのゲストキャラのつもりだったが好評だったため本作でも登場。以後メインキャラとして登場し活躍する事になる。
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この頃のあおいは短気なおてんば娘の印象が強く、現在の彼女を知っていると驚くかもしれない。なお前作の『7』では父親との確執を抱えていたが、この設定は本作以降はあまり触れられることはなくなった。
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赤特として「短気」を所持しており、当時は短気発動後のストレートの球速がすさまじい数字になるという仕様があった。女性がアンダースローで放つようなものではないが、ネタを含めた個性付けとしてある種の魅力にもなっている。
 
セントラルタワー
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本サクセスの肝と言える要素にして、本作の代名詞といってもいい。条件を満たして立ち入ると、二連戦の試合をこなすことになるのだが…。
    
    
        | + | 以下セントラルタワーのネタバレ | 
本作の悪役「神高燐」が管理する塔。
一定人数仲間を集めて突入すると謎の仮面男「パピヨン」が神高の悪事を糾弾。彼を仲間に加えて神高のけしかける強豪チームと二連戦を行う。この試合は9回全てをプレイヤーが操作する。
パピヨンのステータスは高く、仲間が安定しない本作におけるセントラルタワー用の助っ人キャラという側面もある。スタミナだけが低いので抑え投手として適任である。
対戦相手は主人公たちのコピーKAMITAKAチームと過去の日本野球界を支えたOB選手がアンドロイドで登場する伝説最強チーム。敗北及び引き分けは許されない。
KAMITAKAチームはパピヨンは少しステータスが落ちるが他のメンバーは完全コピー。主人公を鍛えすぎたりしていると強大な敵として立ちはだかる。
伝説最強チームは王貞治氏や長嶋茂雄氏を初めとした伝説選手の全盛期を再現している。ステータスが非常に高い上に全員絶好調。一応、CPUの強さは「つよい」だがステータスが高いので簡単に勝利はできない。
勝てば大量の経験点入手と、感動の真エンディングが待っている。当時のサクセスでは珍しかったスタッフロールが挿入されるのも特筆すべき点。
主人公は幼かった頃の自分が憧れていた伝説の選手達をアンドロイドとして利用された事に怒りを示しており、集めた仲間達と共に立ち向かう展開は非常に熱い。
だが、引き分けまたは負けると強制ゲームオーバーとなり、神高に主人公チームが連れて行かれ「二度とその姿を見た者はいない」と死を感じさせる非常に悲惨な展開が訪れる。パワプロで主人公や仲間達の死亡を匂わせるイベントは数少なく、他には『2011』戦国編の未帰還エンドや、『2013』ラグナロク分校編のバッドエンドぐらい。
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ハイリスクかつ高難度のシナリオだが、極めて高性能の選手を作成するには避けて通れない施設である。
評価点
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映像面での進化が顕著。PS2でのパワプロのグラフィックは今作でほぼ完成しているといってもいい。
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特に分かりやすいのがキャッチャーウィンドウであり、これまでの「つぶれた」印象のものから鮮明で見やすいものになっている。これによってパワプロの長所である配球の魅力と遊びやすさが大幅に向上している。
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球場のグラフィックもリニューアルされ、前作までの架空広告ではなく実際の球場の広告が再現されるようになった。
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しかし広島市民球場だけは再現対象に入っていない上、架空広告も入っていないため非常に寂しい印象になってしまった。これは『12決定版』までの長い間解消されなかったため、球場側との契約に関わる問題だったとみられている。
 
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初めてOPに主題歌(本作は「Little Soldier」(米倉千尋))がつき、当時下請け中心だった「京都アニメーション」によってアニメーション映像も製作された。以降は『11』まで京アニがOPアニメを担当することになる。
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本作のOPは矢部・あおい・阿畑・猪狩兄弟が「仲間」である事を全面に推しだされ、ドラフ島およびセントラルタワーでのストーリーにも良く合っている。
 
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サクセス1回あたりのプレイ時間が短いのでオリジナル選手をハイペースで量産できる。
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「育成に時間がかかりすぎて1チーム作るころには飽きてしまう」といった従来のサクセスの問題点は解消されていると言える。
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当時は珍しさ故に受け入れがたい層も多かったと思われるが。後のシリーズで「サクサクセス」というお手軽育成モードが搭載され生き残っていることを考えると一定の需要はあると言えるだろう。
 
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仲間がいる時に練習すると、練習の効果が格段に上がる「友情タッグ」システムが初登場。
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現在のサクセスでも基本になっているシステムである。
 
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選手の固有フォームが大幅に増加した。
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投球時に顔を伏せる岡島、打席で大きく仰け反るカブレラ、ホームランでバットを投げる中村紀などが再現され、より選手らしさの表現が増した。
 
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BGMの評判も良く、特にセントラルタワーでの最終戦の曲「最後の試合(通称「伝説最強戦」)」は、野球と言うよりRPGのラスボス戦とも評されるほどの緊迫感と盛り上がりを見せ、シリーズでも特に評価が高い。
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ただし、その直前の試合の難易度も高いため、本作でまともに聞くには相応に高い腕前が求められる部分もあるが。
 
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シナリオモードが1つのシナリオをクリアするごとにごほうびOBをもらえる仕様となり、モチベーションを維持しやすくなった。
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ペナントが3年間でセ・パで複数年プレイ可能に。ドラフトやトレードでの選手獲得、契約更改での解雇、キャンプ、能力変化など細かい仕様が進化した。
問題点
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サクセスが非常に運任せ。上記のセントラルルート以外にはプレイヤーの運で振り回されることが多い。
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特に投手ではあおい・阿畑、野手では猪狩兄弟が仲間にならないとまず優秀な選手が出来ない。
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ジムでの練習が終わった後、「間違って他の球団ジムのスタンプの上に押してしまい上書きする」というふざけたランダムイベントもある。育成終了寸前に発生して、クリア不可能になる場面も少なくない。
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本作の投手育成での操作は、紅白戦時は同点またはビハインドで塁にランナーがいるときのみ操作できるのだが、本作は自動操作で炎上することが多く、投手育成での試合難易度が上がっている。
 これにより、試合経験点を稼ぐことや、試合勝利が条件となっているキャラを仲間にすることが難しくなっている。
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前述のとおり交通事故や爆弾がない、仲間にしてさえいれば任意で練習相手を選べるなど他のシリーズ作品と比較すると一長一短ではある。
 
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サクセスが短いのは選手育成の速さとしては悪い点ではないが、ゲーム全体のボリュームとしては物足りない所がある。
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上記の通り通常ルートでは長くても40分ほどで終わってしまう。一応特殊ルートに挑むともっと長くなるが、それでも全体的にボリュームダウンした感じは否めない。前作『7』と比べるとそこまででもないかもしれないが、『6』の豊富なサクセスの数やイベント量を考えるともっと頑張って欲しかった所ではある。
 
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イベントの面においても、サクセスでは恒例となっている彼女キャラが存在しないのでやや物足りない印象がある。
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前述のように、巫女やあおいとの恋愛っぽいイベントは用意されている。
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またこれ以降、結果的にあおいのような「女性選手は彼女にならない」というジンクスが成立しており、本家パワプロシリーズにおいてはパワプロ2016の独立リーグ編まで、女性選手が彼女候補になる例はなかった。
 
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通常ルートは極めて簡単だが、特殊ルートのセントラルタワー戦は難易度が高い。
    
    
        | + | ネタバレ | 
神高が操るアンドロイドと計2回戦をする事になるが、前述の通り最初のコピーKAMITAKA戦は主人公たちのチームが丸ごとコピーされほぼ同じ能力のチームと戦う仕様になっている。
この仕様が極めて厄介で、猪狩守など強い投手を仲間にしているほど敵選手に能力がコピーされて試合の難易度が高くなってしまうという癖のある作りになっている。このせいで仲間を活躍させにくい。
これをクリアすると伝説のOBをコピーしたチームと戦うことになるが、こちらも能力が高くやはり強い。難易度はパワプロシリーズでも最高レベルで、エンディングにたどり着けないユーザーが多かった。
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賛否両論点
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開幕版のみだが、天才型(サクセスの初期能力が高い状態で開始できる型)になる確率が1/10という、シリーズにおいてとても高い確率になっている。
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容易に強い選手を作ることができるが、裏を返せばサクセスを天才型で始めることが必須条件に近いので、9/10の確率でリセットしなければならないという面倒な有様でもあった。
 
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セントラルタワー制覇のEDはスキップが一切できず、複数の選手を作ると慣れたプレイヤーでは流石にダレてしまいがち。
総評
グラフィック面では大きな進化を果たし、後のシリーズの基礎を確立した1作。
キャラクターとしては早川あおいが登場2作目にしてシリーズを代表する女性投手として定着し、以降も活躍することとなる。
一方のサクセスはシリーズでも唯一無二の設定であり、賛否が分かれやすい作品になっている。
とっつきにくいという意見があれば、逆にコレじゃないと燃えられないというコアなユーザーもいるほど。
また内容に関係なく、本作のボリューム不足に関して難色を示すファンも多い。
このためか、次回作『9』では高校野球編となり、王道シナリオへの回帰とサクセスのボリュームアップが図られている。
余談
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高評価を受けたBGM「最後の試合」であるが、本作のBGMを収録した公式サントラ「パワプロ音楽館3」では、どういうわけか曲が一周する前に終わってしまう。他のBGMはしっかり1ループ分収録されているため、この曲だけがこのような扱いになった理由は不明である。
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幸い、後に発売された「パワプロ音楽館5」にて、ボーナストラックという形でフルバージョンが収録されている。また、これと同時に作曲者が佐藤直之氏であることも判明している。
 
最終更新:2024年06月25日 21:33