The Good Life

【ざ ぐっど らいふ】

ジャンル 借金返済生活シミュレーター
対応機種 Windows(Steam)
プレイステーション4
Xbox One
Nintendo Switch
発売元 PLAYISM
開発元 White Owls
グランディング
発売日 2021年10月15日
定価 【Win】3,980円
【PS4/One/Switch】2,980円
プレイ人数 1人
レーティング PS4 CERO:C(15才以上対象)
One/Switch IARC:12+
判定 なし
ポイント クセだらけの田舎町での借金返済生活
超自然的現象とSNS社会を融合させた秀逸な脚本
一方でUI等の小さな欠点が積み重なりストレスに


概要

ゲームクリエイター・SWERY(末弘秀孝)氏が率いるWhite Owlsの『The MISSING - J.J.マクフィールドと追憶島 -』『Deadly Premonition 2』に続く家庭用ゲーム第3作。
ワールズエンドクラブ』などに携わったグランディング*1も共同開発として参加している。

3千万ポンド(約45億円)もの借金を抱えるフリージャーナリストのナオミ・ヘイワードは、モーニングベル通信社より奇妙な依頼を受ける。
それは「世界一幸せな町・レイニーウッズ」へと滞在し、なぜそこが世界一幸せな町と呼ばれるのかを調査するというもの。
ヒッチハイクの末にたどり着いたその「クソ田舎」に悪態をつくナオミだったが、到着早々「夜になると住人が動物に姿を変える」という大きな秘密に触れることとなる。

ナオミは予想外の特ダネに色めき立つが、その興奮も束の間、森の湖で殺人事件が発生する。


主なシステム

  • 本作は同クリエイターによる『Red Seeds Profile』に倣ったような、田舎町を舞台とするオープンワールドゲームである。
    • 『ツイン・ピークス』を始めとする海外ドラマにインスパイアされていた同作に対し、デフォルメキャラによるゆるいバカゲーの雰囲気が漂う本作は作風こそ大きく異なるも、随所に同じ原作者であることを想起させる要素が見受けられる。『Red Seeds Profile』も大分バカゲーだったが。
  • マップ移動
    • レイニーウッズ周辺一帯を舞台とした3Dのオープンワールドであり、ほぼ目立ったロードもなく全域を連続的に探索できる。
    • ナオミは徒歩移動の他、スタミナを消費してのダッシュ、蹴り攻撃、スキップ*2が可能。
    • ゲーム内では現実の1秒で1分が経過し、住人たちもそのゲーム内時刻に合わせて、出勤したり、教会に行ったり、酒場で飲んだくれたりといったルーチン行動をとる。
      • レイニーウッズ以外の住民は名無しのモブキャラクターであり、話しかけることはできるが生活リズムは存在しない。
  • パラメーター管理
    • ナオミには数々のパラメーターが設定してあり、画面上で一目で確認できるようになっている。
    • 体力は蜂に刺されたり野生動物の攻撃を受けたり電気フェンスに触れるなどで減少し、無くなると病院に担ぎ込まれて高額の治療費(所持金の半分)を取られてしまう。
    • 空腹度、覚醒度など『Red Seeds Profile』とほぼ同様のステータスが存在し、いずれも時間と共に減少する。
      • 空腹度は無くなると飢餓状態になり、体力が減少するようになる。食料アイテムを使用したり自炊や飲食店で食事をすると回復し、食べるものによって腹持ち具合(減少速度)が異なる。
      • 覚醒度は眠気の度合い。無くなると意識を失って自宅に担ぎ込まれる。そしてやはり所持金が半分持っていかれる。自宅やテントで寝たり、眠気醒ましのアイテムを使うと回復できる。
      • 魅力度は『Red Seeds Profile』における清潔度で、シャワーを浴びる他、化粧台で身だしなみを整える事で回復する。下がり過ぎるとハエがたかるようになり、住民にも嫌がられる。しかも何故か買い物や飲食が割高にされる。逆に高まるとキラキラが舞うようになる。『Red Seeds Profile』のような服の汚れは無い。
    • 他にも本作の新パラメーターとして「ストレス」「健康度」「DCゲージ」が存在する。
      • ストレスが溜まってくると画面左上のナオミの表情が険しくなってくる。紅茶や酒で簡単に回復でき、溜まる事もさほど多くはないが、遠出をした後でマップから「自宅へ帰る」を選択すると疲労から大きく上昇してしまう。ストレスが溜まると頭痛に見舞われる。
      • 健康度は先述したパラメーターの状況で変わる。減ると病気になりやすい。健康的な生活で病気に罹りにくくなるのは現実と同じで、ゲーム進行に支障が無い程度の生活を送っているとどんどん下がってしまう。ただ、回復できる料理もあるのでさほど心配は無い。
      • DCゲージはナオミが犬派か猫派かを示す。それに応じて住民の反応や受注できるクエストが変わる。
    • 健康度が下がると病気(ステータス異常)に罹りやすくなる。病気の種類も「風邪」「頭痛」「腰痛」「歯痛」「アルコール依存症」と様々。いずれもパラメーターの最大値が下がる程度なので放置して死亡したり倒れることは無いが、風邪だとスタミナが減って行動に支障が出るし、アルコール依存症に至ってはまともなプレイが困難になる。
      • 病気は動物病院で治療可能だが、治療費は安くはない。
  • クエスト
    • 多くのオープンワールドゲーム同様、クエストを受注・達成することで物語を進行する。本編となるメインクエストの他、任意のサブクエストが多数用意されている。
    • 本編中にはクリアするまで抜けられない緊急クエストが発生することがある。この場合、失敗しても「…なんてことにならないように慎重に行こう」という感じでリトライさせられる。
      • この際は場合によってはパラメーターやステータス異常の概念が一時的に無くなることもあり、クリアに集中できるようになる。この点も『Red Seeds Profile』を想起させる。
  • 街での生活
    • 今作では外食以外にも、食材を集めて自宅で料理を作ることができる。外食を繰り返すと味を覚え、レシピが増える。
      • 飲酒をすると酔い状態になり、食欲旺盛ということなのか満腹度の最大値が上がる一方、眠気に襲われるため覚醒度の最大値が下がる。
      • 飲みすぎると酔い潰れて自宅に運び込まれる。もちろん所持金が半分持っていかれる。
    • 着替えが可能であり、上下の服・帽子・靴・帽子・バッグ・アクセサリー・腕時計・サングラスと、かなり細かく着こなすことができる。
      • 装備品によってパラメーターに補正が掛かり、ストーリーを進めれば新しい衣装が作成可能になる。
      • ナオミの性格なのか職業柄なのか、あまり御洒落な衣装やいかにもコスプレじみたコスチュームはほぼ無く、記者活動に支障が無い範囲に留められている*3
    • 種を持っていれば、自宅の畑で農作物を育てることも可能。
    • ジャンル名は「借金返済生活シミュレーター」だが、借金はストーリーに応じて返済されていくため、実際にプレイヤーが下記の手段で稼いで完済を目指す訳ではない。そもそも返せる金額ではない。
    • 時間はリアルタイムで進行するが、睡眠以外には読書で時間を進められる。
      • 読書は本アイテムを使用して行い、本の種類に応じて進む時間が異なる。また、読書の度にナオミが本の感想を言うおまけ付き。
  • 撮影
    • プロカメラマンでもあるナオミは常にカメラを携帯しており、いつでもあらゆる被写体を対象に撮影できる。
    • 町のカメラ屋で望遠レンズや広角レンズを購入することにより、撮影中に付け替えを行える。ただし、カメラやパーツは高額なのでしっかり稼ぐ必要がある。それまではモノクロ写真しか撮れない初期カメラか壊れやすい中古カメラを使う。
      • 壊れた場合もカメラ屋で修理可能。
  • ゲーム内SNSへの写真投稿
    • 劇中では「フラミンゴ」という写真共有専門のSNSがあり、そこで稼いだ「エモいね」(いいね)に応じて報酬を受け取れる仕組みがある。
    • フラミンゴでは週2回「ホットワード」が更新され、それに対応する写真をアップすると多量の「エモいね」を稼げる。
      • ちなみに前述の「殺人事件」の現場写真をアップすると文字通り桁違いの「エモいね」が得られる。倫理的にどうなのかとか突っ込んではいけない。
  • 動物への変身
    • 町に来てすぐに「住人が犬や猫に変化する」という秘密に気づいてしまうナオミだが、町での生活の中で自身も変化の力を身に着けることとなる。
    • 犬猫への変身にはいっさいの制限がなく、移動中であればいつでもどこでも可能。
    • はジャンプや小動物への攻撃を行えるほか、住宅壁面の特定箇所を駆けのぼって屋根へと上がる能力を持つ。
    • はゴミ箱などマップ中の特定ポイントを漁ってアイテムを入手できるほか、事前に住人の匂いを覚えておくことでマップ内の痕跡を嗅ぎ分ける力を持つ。また、スタミナが減りにくいので移動も楽になる。
    • また、後述する「羊」を威嚇し手なずけることができる。
    • 探索中は凶暴な野生動物と戦闘になることもあるのだが、ただのカメラマンであるナオミは当然戦闘能力は低い。武器も無く蹴りしか出来ないので、まともにやり合うのは危険である。
      • そこで動物に変身することで回避がしやすくなったり攻撃力が上がったりなどの恩恵が得られる。戦闘面でも変身は重要である。
  • 羊での移動
    • ストーリー中でナオミは羊の取り扱いを学ぶ機会があり、そのイベントをクリアして以降は羊を呼び出して乗り回すことが可能。
      • ターボ使用時以外ではスタミナ消費もないため大変効率の良い移動手段となるが、ジャンプすることはできず、また道に落ちているアイテムを拾うこともできない。
    • 羊は犬状態で吠えることで屈服させ、その後で手懐けることができる。手懐けた羊は牧場に預けることでパラメーターを成長させたり毛を刈ることができる。
    • マップ上の各地に祠があり、最初は何の機能も持たないが1ポンドの支払いで起動できる。
    • 各祠や自宅間のファストトラベル(10ポンド必要)の他、祠が持つクエストの受注、また自身が犬派か猫派かの派閥操作を行える。

評価点

  • ナオミ・ヘイワード(CV:園崎未恵*4)の怪演
    • 本作はSWERY作品では珍しく日本語音声が収録されている。中でも主人公のナオミは「天文学的借金を背負って一攫千金を目指すジャーナリスト(29)」というかなりクセの強い性格の持ち主だが、ベテラン声優が演じているだけあってフルボイスパートにおいてそのキャラクター性がしっかり表現されている。
    • 元々言葉遣いが非常に悪く、口癖の「くされ地獄だぜ」に始まり「クソ○○」と言った汚い言葉や怒鳴り声や絶叫も多いが、ほぼわざとらしさを感じさせない演技となっている。
      • 特に「光速を超えて過去へタイムスリップする」というイベントでは、悲鳴に近い逆読みでの「ぜだ獄地れさく!」と叫ぶ場面が好演といえる。
    • そのナオミにツッコミを入れるナレーション(CV:鶴岡聡)もいちいち面白い。時には手厳しかったり、プレイヤーの気持ちを代弁してくれたりと、単なる語り部を通り越した個性を発揮している。
    • ちなみに、本作は1人の声優が複数人を兼任している場合が多く、登場人物数に比べて出演者数は少な目。
  • 探索しがいのある広いマップ
    • ゲーム開始直後は一見小さな田舎町という狭い範囲だけの物語に思えるが、北には大きな雪山、西には鉱石の取れる洞窟、南には巨大湖、東には謎の古城…と冒険心をくすぐるロケーションが各所に配されている。
    • 小さな隣町やポツンと点在するティーショップといったものもあり、やや道のりは遠いものの何となく出かけて行ってみたくなる要素となっている。
      • 特に先述の祠や、宿屋、調理所といったものはゲーム内1日の中で目標地点にしやすく、「あっちの方に祠があるみたいだけど夜までには着きそうだし行ってみるか」といった具合で探検のモチベーションに直結しやすい。少しずつ、しかし確実に探索範囲を広げていくというオープンワールドの醍醐味も味わえる。
    • また、レイニーウッズ内の店で各観光ポイントのパンフレットを読める。紹介文はいかにもそれっぽく作ってあり、探索意欲が刺激されるのはもちろん、読むだけでも楽しめる。
    • 『Deadly Premonition 2』では広大なマップを用意しながら拠点の街以外はほぼ無駄だったので、この点に関しては欠点を改善している。
  • 親切な撮影システム
    • カメラを構えると、フレームに収まった被写体の名前で表示されるので、何の写真を撮ったのかが分かりやすい。また、撮った写真にも被写体の名前が表示される。この手の撮影システムによくある「画面上は映ってるのにゲーム的には認識されておらず、撮ったと見做されない」と言った心配は無い。
  • ゲーム中での長いロードがほぼ無い
    • 目に付くローディングはイベントカットシーン前と一部建物の出入り時くらいであり、長距離の移動を含め、日常生活を送るうえでほとんどロードを気にすることがない。
    • かといってゲーム起動時に長いロードで一括読み込みしているということもなく、プレイ全体を通してこのテの待ち時間によるストレスは少ないといえる。
      • ただ、セーブデータのロード時にはそこそこの待ち時間があるため、ゲーム開始までは多少待つ必要がある。

賛否両論点

  • 予測不可能なトンデモSFストーリー
    • 奇抜で奇妙で奇想天外、癖も強く人を選ぶ面がありつついずれも高い評価を受けてきたSWERY作品のシナリオだが、本作も例外ではない。
    • 最初から「動物に変化する住人」と「田舎町で起こる殺人事件」という、ファンタジーとオカルトの合いの子のような展開を迎えるが、ストーリー中盤はSF要素を加えた超展開の連続で構成されている。
      • 殺人事件の手がかりを探すための3つの長編シナリオを攻略する事になるのだが、「タイムスリップもの」「異星人侵略もの」に加え、実在の伝説や物語を踏まえた「伝奇オカルトもの」となっており、いずれも突拍子もないうえ、少なくとも殺人事件の手がかりを求める過程で出てきてはいけないものばかりである。
    • もちろん、そういうのが「アリ」な世界観だと納得すればなんということはない。
      • 『Red Seeds Profile』や『Deadly Premonition 2』からして、殺人事件の調査の過程なのに異世界で異形と戦いながら証拠を集める犯人が人外に変身して襲いかかってくるというトンデモ展開であり、『D4: Dark Dreams Don't Die』も殺人事件の真相を突き止めるべく過去に飛ぶ内容だった。SWERY作品としては寧ろ「いつものこと」である。
      • また、どのクエストもその主目的以外に「本作の世界観を間接的に説明する」シーンやテキストを擁しているため、考察好きにはいい塩梅で謎の提示がなされており悪くないポイントである。
      • もちろんトンデモなだけではなく、SWERY作品ならではの深いテーマや台詞回し、現実世界への風刺も健在。全体的にギャグ、バカゲーテイストが強めだが、シリアスなシーンの台詞はやはり心に響いたり考えさせられるものも多い。特に今作は洋画や海外ドラマ風に作られていた旧作に比べて国産ゲーム的な雰囲気が強めなため、日本語ボイスも相俟って馴染みやすい。
      • 各ルート攻略後は後日談的なクエストがあり、関係者を回って話をする事ができる。この際のやり取りもなかなかに感動的。
    • ただ、キーになるNPCが出てきて多くの説明を一方的に行いそのまま解決へとなだれこんでいく、という展開が多く、一貫してナオミが巻き込まれ役に見えやすい。
      • こうした面から、「予測不可能」であることがプレイヤーの好みによってそのまま良い点にも悪い点にも成り得る。
  • 終盤~エンディングまでもまたクセが強い
    • 上記のような半オカルトから一転、ナオミがレイニーウッズで体験したこととその決着は「フェイクニュース」や「炎上商法」といった要素を伴い、SNS社会を反映した展開へと繋がっていく。
      • SNS時代の世相や風潮、現代人の心理を利用し、世論を思うが儘に誘導しようとする悪役。目論見通り踊らされる大衆。その敵に対して手口を逆手に取った方法で対抗するナオミ達。ネット社会らしい事後の経過と。これらによる現代社会の姿、世情を痛烈に風刺するクライマックスを以って大団円へと至る。
      • つまり、序盤=ファンタジー&オカルト、中盤=SF込みの超展開、終盤=現代社会の風刺と、ストーリーのテイストがどんどん変わっていく忙しない構成になっている。
    • しかし、そこまでやっておいてエンディングでは多くの謎が未消化のまま終了する。
      • 上記の決着については終盤からの事件やナオミ自身に関する事に対してであり、当初ナオミが調べるはずだった秘密や物語を取り巻いていた数々の謎に関しては結局明確な答えが出る事なく、ラストシーンですらどんでん返しが待っている。
      • 過去のSWERY作品も一部の謎は残したまま終わっていたが、ストーリーの根幹についてはしっかり解明していた。本作のようにメインの謎に触れないまま終わってしまうのは稀。
      • 謎というハンマーで殴られたような心地よい衝撃と取るか、謎の解明を期待したのに煙に巻かれたと取るか、単なる投げっぱなしと取るかによって、またこのゲームの印象が再度変わることであろう*5。プレイヤーが考察好きか否かでもだいぶ左右されることに。
      • この点に関しては後にDLCで補間される事になるが、それも発売から1年半近く経過してからだった。
    • 一応、エピローグ直前の大筋は「無力であるいちジャーナリストが住民の協力を得て大きなことを成し遂げる」という気持ちの良いものである。
      • その立場故に汚れ仕事に手を染めてしまい、雇い主の悪辣さと罪悪感から償いを決意するも住民に敵意を持たれ孤立するナオミ。いがみ合っていたライバルや協力者の助力を得ての反撃。住民たちとの和解に大団円と、SWERY作品らしく盛り上がる怒涛の展開となっている。この爽快感に関して言えば順当に評価できる点であろう。
  • 2種類のマルチエンディングだが大した違いは無い
    • 最後の選択肢で「レイニーウッズルート」か「ニューヨークルート」に分岐するのが、どちらを選んでも最終的な結末は同じでクリア特典が変わる程度である。
      + ネタバレ
    • 事件が終わり、借金を完済してかなりの大金も残ったがそれまでの立場も失ったナオミ。今後の身の振り方として、手元の大金を用いて「レイニーウッズに寄付する」か「ニューヨークに帰って豪遊する」かを選ぶ。
      • 前者ではナオミはレイニーウッズの名誉市民に認定されて住民達に感謝と尊敬を受ける。フラミンゴのフォロワーも激増するが、やっぱりある程度の金は残すべきだったとちょっぴり後悔しながらレイニーウッズでの生活は続く。
      • 後者でも案の定散財してしまい、手元には衝動買いした最先端ファッションの服が一式残っただけで結局はレイニーウッズに戻る羽目に。その最先端ファッションがこのルートのクリア特典になるが、ただの悪趣味な服なので嬉しくない。
    • 「○○ルート」と大袈裟に表示されるが実際はこの位の差異しか無い。逆に言えば、わざわざ両方を辿ったりどちらにしようか悩む必要が無いということでもあるが。
  • クセの強い登場人物
    • SWERY作品お馴染みのひとクセもふたクセもある住人たちは健在。
    • 瞬時に病気を治す凄腕だが何故か「人間も診察する動物病院」を営む医師。バイオリンの音色でしか会話できない老人。三つ子の姉妹…ではなく三重人格の少女。片腕だけ筋骨隆々の牧場の姐さん。常時フルプレートアーマー装備の大工。一見男前だが機械を「可愛い子ちゃん」呼びするほどの筋金入りの機械オタクで作業に没頭し過ぎると寝食を忘れ、挙句は母親が食事を作らない限り餓死寸前に至る事すらあるカメラ屋など、色んな意味で個性的な住民達が揃っており、人を選ぶ面は強いものの、良くも悪くも印象に残る。
    • そして主人公のナオミも高額借金主なのは勿論、口調は粗暴な男性口調で大酒飲みで金にがめつく眠る時は大イビキの三十路前という、ヒロインと呼ぶにはあまりに開けっ広げなキャラクターになっている。そのためか、作中でも美容やファッション関連で手厳しい指摘を受ける*6
      • もっとも、作中の人物の中では常識人で良識はあるし、何だかんだで人の頼みは断れず奔走する姿やノリの良さも描かれており、基本的に不快感を与えるタイプの主人公ではない点は安心して欲しい。また、中盤のルート攻略後の関係者とのやり取りも素晴らしい。
      • ただ、それでも中盤の各ルートのラストでは戦利品を毎度のように横領しようとしたり、ネットオークションに流すなど、借金女王故の問題行動は取る*7
    • これらのクセの強い登場人物は過去のSWERY作品を知ってるか否かでだいぶ印象が変わる。しかも過去作に比べてバカゲー的な雰囲気が強い関係か非常識とも取れる面が強く出ているため、知らない人からすれば「奇抜で欠点ばかりの求心力に乏しい変人の集まり」と思えても仕方ない。
      • 一方、「判っている」人からすれば、いかにもSWERY作品らしい奇妙奇天烈で愉快な連中に一種の安心感がある。
      • ただ、今作は欠点が目立つのもまた確かである(後述)。
  • 「マーキング」という悪趣味ギリギリなシステム
    • 犬状態におけるもうひとつの特殊操作として、特定箇所へのマーキング、つまり放尿がある。
    • 開けっ広げな性格のナオミとはいえ倫理的にもギリギリアウトな行為であるが、一方で「物語の主人公が犬の姿になってマーキング」というのは下ネタのお笑いとして成立しており、単純におバカ要素であるともいえる。
      • しかも変身中とは言え、曲がりなりにも女性主人公にこう言ったことをやらせるのはなかなか挑戦的である。これもコンプライアンスにうるさい時勢への風刺かもしれない。*8
    • ただ、この操作はストーリー上避けては通れないメインイベントにおいて必ず実行することになり、当のナオミも拒否感を見せつつ「野ション」という単語を連発するため、さすがに趣味の悪い要素とも感じられる。
      • しかも一度ではないうえに、メインストーリーの最終盤でもこの能力を発揮するハメとなる。尿オチと呼んでも差し支えないくらいの重要要素のため、良い意味でも悪い意味でも「なんだそりゃ」という展開となっている。本作「らしい」解決方法という意味では確かにその通りである。
      • これが任意だったらまだ良かっただろう。もっとも、人によっては興奮する要素かもしれないが。

問題点

  • 壁が多すぎて自由な移動がしにくい
    • オープンワールドではあるのだが、なぜかほとんどの道沿いに塀が建設されており、野山を横切ってのショートカットがしにくい。
    • というのも十分なジャンプができるのは猫変身時だけであるため、人・犬・羊搭乗時の場合は道なりに通って遠回りをしないといけなくなる。
    • 周囲に何もない田舎道はもちろん、ストーリーで重要な意味を持つ(不用意に出入りできては困る)山などはその周り一帯がぐるっと石塀で囲まれており、ちょっとした万里の長城のような様相を呈している。
      • 公共事業としてあまりに非現実的であり、そんな人里離れたところに何kmにも亘る壁を建てる割に道路は舗装されていないので、何の世界観形成にも関与しないただの「ゲーム的いじわる」でしかなくなっている。
      • 一応、上記の通りストーリー進行に伴って解禁されるエリアへの進入を防ぐ、という意義はあるものの、普段の移動まで制限されてしまっては本末転倒である。もっといいやり方はありそうなものだが。
      • 国内のオープンワールド作品では徒歩は自由だが車では道沿いにしか走れないゲーム道から逸れられる場所が少ないゲームなども存在するが、本作はそれらのような最低限の説得力も無く寧ろそれ以外は自由に歩き回れるため、余計に「いじわる」としか思えなくなっている。
    • と言うか、道沿いでの移動を強いられるのは『Red Seeds Profile』の仕様ほぼそのままである。続編『Deadly Premonition 2』では解放的な舞台になったことで(起伏と面積を犠牲にしながらも)その制約も取り払われていたのだが…。
    • もちろん、猫への変身は自由にできるのだが、これに次の問題が重なる。
  • 基本動作にいちいち暗転やホワイトアウトを挟むことが多く、テンポが悪い
    • 犬や猫への変身や羊への搭乗は先述の通りいつでもできるが、いちいち画面全体にホワイトアウトからのフェイドイン演出(羊の場合は暗転からのテキスト送り)が入り、2〜3秒ほど操作不能の待ち時間が生じる。
    • 上記項目の通り「塀を超えたい」時が代表例となるが、そもそも通常の探索からして「ダッシュ性能が人<犬猫<羊」「犬猫状態では羊に乗れない」「NPCに話しかけられるのは人の時だけ」「羊状態のみマップ中に落ちているアイテムを拾えない」といった制限や順位付けが絡むので、ただ生きていくだけで3秒間のホワイトアウトが何度も発生することになる。
    • また、犬猫状態には冒頭システム項の通り特殊な能力があり、メインイベントでも頻繁に行使するのだが、犬猫間の変身には必ず人状態を経由する必要がある。
      • 小動物狩りで素材集めをしている最中、犬用探索ポイントを見つけた際など、ただアイテムを手に入れたいだけなのに6秒消費するハメになる。
    • ちなみに動物絡み以外でも、自宅前の畑に種をまくだけでも同様にブラックアウトが入る。種まきは得てして複数個まとめてになりやすいため、これも不要な待ち時間を生む。
    • ほんの数秒程度でカリカリし過ぎと思うかもしれないが、実際にやってみるとこれがかなり苦痛であることが分かる。最初のうちは全然気にならなくともゲームプレイを通して変身を行いたいシチュエーションが多く、個々は大したことない待ち時間が積みに積み重なり、結果としてストレスになりやすい。
    • その一方で羊への乗降は一瞬で済む。呼び出しにブラックアウトが入るが、乗り降りにはフェードどころかモーションすら無いという快速ぶり。なら他ももう少し早くできなかったのだろうか。
  • マップの使い勝手が悪い
    • 移動中にいつでも参照できるマップについて、拡大・縮小・マーカー機能がない。
    • ゲーム内で探索できる範囲は意外に広くそれ自体は評価点なのだが、そのためか地図の拡大率はやや小さめで、拠点となるレイニーウッズも施設アイコンが密集した状態となっている。
      • 特に中央広場からは複数の道が外側へ延びているのだが、施設アイコンでほぼ道が潰れてしまっているため慣れないうちはどの道を進めばどの施設に行けるのかがかなり分かりにくい。
      • そしてレイニーウッズ以外は逆に道が長く、ひとたび遠目の場所を目指すと今度はレイニーウッズを見失うため、帰路の段取りをしにくい。
    • 拡大率を変えることは出来るのだが、固定された2種類の拡大率を切り替えるだけ。広範囲を見渡すなら良いのだが、肝心のズームインが出来ないので細かい道を確認出来ないのは痛い。
    • 何よりマーカー機能が無いため、目的地を定めたらいちいち方角を確認して地図と見比べるという現実のようなことをしなければならない。
    • このUIの悪さも『Red Seeds Profile』を彷彿させる。流石にあちらほど酷くはないが、上記の不足機能は『Deadly Premonition 2』ではしっかり搭載されていたので今作は実質退化である。
  • チュートリアルが不親切
    • 本作はパラメーター管理が複雑で独自性の強いシステムなのだが、チュートリアルは然るべき時にしか出てくれない。自宅で再読は可能だが、それは一度見たチュートリアルのみ。そのため、初見の序盤ではパラメーターの意味や画面の表示もわからないまま進めることになる。
      • その「然るべき時」が今更と言いたくなるほど遅いこともある。例えば着替えは最初から可能なのに、チュートリアルが出るのは結構進んでからである。
    • 近年の作品は説明書は付属しないことが大半だが、それはゲーム内の説明がしっかりしていて事前に説明書を読まなくてもプレイに支障が無いからこそであり、本作の仕様は不親切と言う他無い。
  • クエストの仕様
    • 本作は豊富なクエストが用意されているのだが、アクティブになっているクエスト以外は進行させられないため、クエスト管理が煩雑になっている。
    • 例えば「○○を持ってきて」と依頼を受けていたとしても、そのクエストをアクティブしていない場合、○○を持ってきて話しかけても何も起こらない。
    • 関連キャラの居場所が変わる事もあるため、あるキャラを見かけて「そういえばクエストで話す用事があったな」と思い出してそのクエストをアクティブにした途端、そのキャラが目の前から消える場合も。
      • 当該キャラの居場所がマーカーで表示されない(=自力で探し出さなければならない)場合もあり、そんな時にこの状態になるとクエスト達成すら困難なことも有り得る。
  • 場合によっては快適なプレイが出来ないまま進む構成
    • 上述した中盤戦はA、B、Cの3つのルートを好きな順番で攻略していく。ゲーム中は「どれからでも」とは言われるが、実はその中のAルートで羊での移動が解禁される。
      • つまり先にBやCから手を付けると羊が利用できないまま進める事になってしまう。長距離移動では羊は必需品なので、これは初見プレイヤーへの罠としか言いようがない。各ルートは相応にボリュームがあり、移動もかなり必要なのでAを最後にやってしまうと目も当てられない。
      • しかもAルートをクリアすると金策に便利なレースが解禁される。よって、最初にAをやるとやらないとでは以降の快適さは雲泥の差である。
  • やはり強い登場人物の悪い個性
    • 『Deadly Premonition 2』の住人達も悪い個性が目立ったが、今回は上述の傾向もあってその方面をより突き詰めてしまっているのも否めない。
    • 例えば神父のベネディクトは毎日昼から晩まで酒場で酔っ払い続けている生臭坊主であり、果てには名酒を求めて古城の宝物庫にまで侵入する大迷惑人間。
      • 単なるギャグキャラとして受け取ろうにも、後述する飲み比べ対決の関連キャラなので嫌悪感ばかり募らせることに。SWERY作品にはろくな神父がいないのか。
    • 医師のジョージは「たまには人間を診察しないと腕が鈍る」といってナオミに病気に罹ることを強要する。しかもステータス異常一通りに*9
    • ライバルジャーナリストのダニエルは望遠レンズを掲げて「ロブスター!」と叫ぶという扱いに困る持ちネタの主であり、登場の度にいちいちナオミをボロクソに貶し挑発するのでプレイヤー側のストレスも溜めてくれる。登場前後に必ずバイク走行のカットシーン*10が入るのも煩わしく、余計に苛立たせる。
    • 小説家のウィリアムは自分の世界に入り込んで電波を巻き散らす上、他人にもそれを押し付ける変人で、とにかく面倒くさい。ストーリー序盤で大きな悲劇に見舞われるのだが、同情する気もいまいち起き辛い。
    • リタ、ヴァージニアと言った美人枠の女性キャラも必要以上に皮肉屋に作られており、嫌味な口調でいちいち人の神経を逆撫でするので好感が持ち辛い。
      • ヴァージニアは態度は悪いがやる事はちゃんとやってくれる。一方、リタの方はただ口が悪いだけ。
    • シャーロック・ホームズかぶれのノーロック・ホームレスはインテリぶった態度が鼻につく上にいちいち人を小馬鹿にする。それでいて周囲を置いてきぼりのまま推理してどんどん話を進めていくので、プレイヤーはそんな相手にこき使われるナオミの立場でストーリーを追う羽目になる。
      • 捜査が始まって間も無く「誰が犯人と思う?」と聞いて来るが、その時点では推理できるだけの情報など無く、選択肢に挙がるのもまだ容疑者とも言い難い人物ばかり。どれを選んでもナオミはそれなりの理由は付けるのだが、当然の如くホームレスにはあっさり論破される。
      • その頭の上に乗っているワトソン(鳥)も「フィッシュアンドチップス」といちいち声付きで言う演出があり、何とも反応に困る。なお、この声は(CV:SWERY)というトンデモぶり。
    • 三重人格のエマはクレイ、シャーロットという別人格を有し、曜日によって表層化する人格が変わるのだが、やはりと言うかこの人格を一人一人当たらなければならない=日を跨がないと進めないクエストがある。それも複数で、メインにもサブにもある。同じようなキャラ&仕様があった『Deadly Premonition 2』から何も変わってない…*11
    • 「欠陥あってこその人間臭さ」というならまだわかるが、多くのキャラにおいてその欠陥が大きく前面に出ており、そこに滑っているのかそもそもギャグなのかもわからない言語センス*12が加わっているため、魅力を感じられれない人には尚更感じられない。
      • もちろん、ただ欠点だけが描かれる訳ではなくストーリーやクエストを進めれば別の面も見えては来る。特に上述したベネディクト、ダニエル、リタ、ウィリアムは終盤~エンディングで一気に株を上げてくる。しかし悪印象の強さ故にイメージをひっくり返せるとは言い難い場合も。
    • 一方、序盤からメールで連絡係を務めるルーシーは逆に有能過ぎて、終盤は半ばデウス・エクス・マキナじみている。
    • ナオミに依頼するクエストも意味不明なものや理不尽なものも幾つかあり、無論『Deadly Premonition 2』のように理由も告げず訳の分からないお遣いイベントを強要するキャラも健在。
      • 同作主人公と違ってナオミは非常識な住民にはしっかり意見はし、文句も言うのだが報酬が絡む所為で結局は従ってしまう*13
  • フォントサイズがころころ変わるうえ、小さく読みにくい
    • 本作の台詞では、キャラクターの声量を表現する目的でフォントサイズが変化することが多い。それ自体は演出として面白いものなのだが…。
    • そもそもノーマルサイズが小さめであり、「声のデカい」キャラのサイズでやっとテキストウインドウ縦幅に対して3行相当と妥当なサイズになる。
      • そのため小声でしゃべるシーンや、声が小さい設定のキャラの場合、プレイ環境によっては視認不可能となる。
      • 声の小さいキャラが更に小声になるシーンまで来ると、もはや背景のゴミレベルの小ささ。
    • 他にもテキスト自体が震える、波打つといった特殊効果のついた場面もある。凝った演出ではあるが、単純に視認性で考えるとあまり歓迎できるものではない。
  • 写真の保存容量もアップロード容量も少ない
    • 写真撮影は各種クエストで求められるうえ資金源にもなる重要要素なのだが、撮影可能枚数も「フラミンゴ」へのアップロード枚数も多くなく、序盤のうちに上限を迎えやすい。そのため、「エモいね」が増えなくなった写真はさっさと消すという、カネと注目目当ての打算的なSNS活動になりがち。
      • フォロワーが増えればアップロード枚数も増強できるのだが、これが有料である。嫌な所もリアルに作ってある。
    • 本作では日常生活において気軽に写真を撮ることを誘導しているような仕掛けが多い。例えば料理は自在に持ち運べるうえ好きなアングルで撮影できるし、ここまでに触れた「人里離れたティーショップ」などいかにもSNS映えしそうである。
      • しかし枚数制限からどうしても撮り控えが起きてしまいやすく、撮影のモチベーション低下を招きやすい。
    • 一応「フラミンゴ」では上限に至った後、新規アップロード時に古い写真を削除してくれはするのだが、いちいち削除確認ウインドウが出るため結局これも面倒さを感じさせる要因となっている。
      • また、ナオミが使うPCがかなりの旧式*14で回線も遅いという設定のため、アップロードもやや時間が掛かる。しかも複数枚をアップすると通信速度も遅くなるという再現度の高さ。こんな所に凝らなくても…。
      • 家を改築するとPCも新型に変わっていくのだが、変わるのは見た目だけ。性能は同じ。
  • 口癖の声色が明るすぎる
    • 既に記した通りナオミの口癖は「くされ地獄だぜ!」なのだが、通常探索時の汎用ボイスでもしばしば用いられている。
    • しかしこれがなぜか妙に明るい声色であり、リズムこそ違えど、ニュアンスでいえば「ポケモンゲットだぜ!」に匹敵する前向きな物言いになっている。当然、場面に合っているとは言い難い。
      • フルボイスパートで口にする時はしっかり状況に合った、いかにも不貞腐れた感じで言っているのだが、何故かパートボイスの方はこうなっている。
      • それを最初に感じられるのは死体発見時。他殺体を初めて見た事によるパニックと、被害者が顔見知りだったショックからかなり精神的に参っていたナオミは最後に絞り出すようにこの口癖を言うのだが、そこでこの明るい声色である。違和感は凄まじい。
  • ミニゲームが難しく、退屈になりやすい
    • ストーリー上のイベントやサブイベントで発生するミニゲームについては、あまり面白いものではなくゲームのテンポ感を阻害している。
    • 特に酒の飲み比べ対決は、「ランダムで左右に傾くシーソー上のボールを、スティック操作で落とさないようにする」というミニゲームによって表されるが、かなり慣性の働きが強く、運が悪ければ3秒ともたず失敗することが多い。
      • メインストーリーにおいてはクリアするまで何度でも挑戦することとなるうえ、負ける度に同じ会話イベントが発生するのもストレス。
      • 一応、何度も負けていると酔い止めアイテムを入手できるのだが、救済措置があることで一層「面白くないミニゲームをクリアできるまでやらされている感」が強くなってしまっている。
      • しかもこのゲームの発生する場面が2度ある。2回目はシナリオも最終盤であり、できるだけスムーズに話を進めたい心理状況で望むことになる上、ストーリー上の必然性も今一つなため、ただただプレイのモチベーションを奪う邪魔なだけの要素となってしまっている。
      • そして実はサイドクエストで更に3回あり、合計では5回に渡る。うち1回はイベントの都合上楽勝になっているが数が多いことに変わりはなく、必須ではないとは言えストーリーのものよりも難易度が高いのでクエストコンプリートの壁になる。作っている当人はよっぽど面白いと思ったのだろうか。
        サイドクエストの方は酔い止めアイテムを持ち込めば使用可能だが、関係ない店で売っているものなのですぐには気付きにくい。
      • 不満が多かったのか、後のアップデートにてストーリー中の飲み比べ対決の難易度が調整された。しかしサイドクエストの方には特に処置は無し。
    • 羊でのレースゲームは飲み比べと違って難易度は低いのだが、多量の障害物で足止めされるため爽快感がない。羊は引っ掛かり易いのに加えて走り始めが異様に遅いので、一旦引っかかると凄まじいタイムロス&ストレスに。
      • しかも4コースのクリアが必須であり、2コース目からは突然湧き出る障害物が登場する所為で余計に面倒になりやすい。
      • 3コース目で終わりのように見せかけて、クエストのラストで4コース目が来る。ここでナオミは「こういうのは長くてつまらない焼き直しが最後にあるもんだ」という旨のメタな愚痴を吐くが、実情がその通りである以上ギャグとして成立していない。
      • クリアだけなら簡単だが、その後の任意のチャレンジではやたら厳しい目標タイムが設定される。未達成でも走れば報酬が貰えるとは言え、相手の失望の台詞と悔しがるナオミの台詞を聞かされるので心情的には良いものではないし、額も落ちてしまう。
    • ミニゲームとは少し違うが、制限時刻までにノーム人形(ガーデン・ノーム)を3つ集めて配置しろというミッションがある。しかし肝心のノーム人形の場所は教えてくれない。
      • ガーデン・ノーム自体が日本人には馴染みの薄いものなので、日本のプレイヤーはまずそこで躓きやすい。一応「どこの家にもある」というセリフはあるものの実際は本当に一部の家にしか無く、しかもマーカーも表示されないので、あてもなくあちこちの家を探し回るしかない。結果、何度も時間切れを経験しやすい。
    • 最後に人目を盗んでマーキングするという文にすると最悪なミニゲームについては、妙に障害物が密集しており思ったように動きにくく、しかも一定箇所でカメラアングルが強制的に変わることから、マーキング以前に思ったように移動できず失敗しやすい。しかも失敗時~リトライまでのイベントも少し長め。
    • 今作は『Red Seeds Profile』や『Deadly Premonition 2』と違って戦闘は限定的でボス戦も基本的に無い*15関係からこういったイベントを持ってきたのだろうが、残念ながらいずれのミニゲームも本作のプレイ体験に良い効果をもたらしているとは言い難い。
  • ゲームバランスの悪さ
    • ゲーム中における金額設定がアンバランス。まずサイドクエストの報酬は60~90ポンドがいい所で、ホットワードの写真をアップしても3~4枚では同じぐらいしか稼げない。食事代程度なら問題は無いのだが、調合・合成でアイテムを作ったりカメラを新調するには全然足りない。
      • クリア手順の多いクエストや、後の方のクエストなら報酬も多い…なんてことは無い。面倒でも簡単でも報酬はほぼ同じ。酷い例では、クリアに大金を払わせておいて報酬がその10分の1にも満たないというクエストも。
    • 病気の治療費もステータス異常一つ100ポンドも掛かり、上記程度のポンドなど軽く吹き飛ぶ。そしてやられれば所持金は半減。ゲーム開始時にはそこそこの貯金があるものの、金策無しになあなあとプレイしているとすぐに無くなってしまう。
      • そのため、所持金は必要最低限に留めて貯金しておく。体力を回復したければ全額貯金してわざとやられる*16、などのテクニックが要る。
      • というかそもそも病気は同病院で治療アイテムを買って使用しても治せるのだが、診察を受けた場合との差額は歴然。診察は健康度も全回復するがそれぐらいしかメリットが無く、わざわざ診察を受けるのは散財でしかないと言っても良い。
      • 幸いと言うべきか、病気も殆どは放置しても大きな害のないものばかりなので、節約のために歯痛、腰痛、頭痛、風邪に見舞われたナオミを走らせるのもアリである。J.J.と言い、SWERY作品の女性主人公は不憫な目に遭うのが宿命なのか。
    • 戦闘のバランスも大雑把で、料理でバフを掛けたり適切な変身をしないと速攻で殺されたり、運が悪いと凶暴なアナグマの群れに襲われるなんて事も。そして治療費貧乏に。
    • 中盤のAルートをクリアすると羊レースに挑戦可能になるのだが、これをプレイすると難易度や成績に応じて1日に一回だけ報酬が貰える。その額は一番簡単なコースですら200ポンド近く、難しいコースで良い成績を出せば700ポンド以上も稼げてしまうというアンバランスぶり。これが解禁されるとわざわざHOTな写真を探してアップする意義が限りなく薄れ、本作の醍醐味が失われてしまう。
    • 天候のバランスも悪く、運が悪いと連日雨でろくに青空を拝めない事も。「レイニー」ってこういう事か。クエスト進行の妨げになるし、雨に打たれて風邪を引いては治療費(ry
  • 異様なほどの素材集めの面倒さ
    • オープンワールドゲームらしく、素材を集めてアイテムを合成したりクエストクリアに利用する要素があるのだが、この素材集めがとにかく面倒で一部は製作者の意地悪とすら思えてしまうほど。
    • まず多くの場合、アイテムを作るための素材を作るために素材の素材を集める必要がある。必要素材数も少なくないので、この時点で気が遠くなる。
    • フィールドが広い&アイテムも多いため、素材を探してあちこち駆け回る事になるが、どこに何があるのかは一部クエストを除いてもちろんノーヒント。
    • 衣料品作りに多く使う動物の毛皮だが、何故か入手率が低い。動物を倒しても高確率で肉が手に入ってしまうので、ちょっと毛皮が欲しいだけでも何匹も探して倒して回る羽目に。普通に考えて、毛皮も肉も両方手に入るはずだが…。
    • もっと酷いのがアルミの塊。塊を作るためにアルミの欠片が5個必要なのだが、その欠片を作るためにアルミ缶が10必要。つまり塊を1個作るだけで50缶もアルミ缶を集めなければならない。もしも合成やクエストを全て達成するとなると最低800缶ものアルミ缶が必要になってしまう。これが悪意でないなら設定数を間違えたとしか思えない。
      • 後半から作成可能になる衣装はお約束のようにアルミの塊が素材に含まれるため、一着作る度にアルミ缶50缶を要求され、コンプリートを目指すとなれば正に廃人プレイを強いられる。
      • なお、アルミ缶の入手方法はゴミ箱でランダムに手に入るか、デッドブル*17を行商人と交換すること。自分で飲むのはダメなのか…。 しかしデッドブルは通常では一度に3個しか買えず、その都度入荷を待たなければならない。ゴミ箱を漁るにしてもデッドブルを買い漁るにしても、プレイヤー自身もとてつもない「くされ地獄」を味わうことになる。
      • 救済措置なのか、終盤にはある人物からデッドブルを大量購入*18できるのだが、その人物はエンディング後にはいなくなってしまう。あまり救済になっていない。
      • あるサイドクエストで「4つのオブジェクトを揃えて写真を撮る」というものがあるのだが、うち3つはフィールドの何処にも存在せず、庭飾りとして作るしかない。それだけでも結構意地悪だが、その3つのオブジェクトを全て揃えるにはアルミの塊が4個。即ち、アルミ缶200缶を要する。エンディング後にそれに気付いたらもう救いが無い。
    • 料理の中には特定の種類のアイテムの入手数を上げるものもあるが、よりによって毛皮とアルミ缶の入手数を上げる料理は存在しない。
    • このような仕様のため素材は漏れ無く回収したい所だが、初期のバッグは80種類までしか収納できない。80という数字だけ見るとさほど少なくもなさそうだが、アイテムの種類は桁が違う。目に付くアイテムを集めていたらすぐに溢れてしまう。
      • 新しいバッグを作れば拡張されるのだが、そのバッグ作りもまた多くの素材を要求する。もちろん簡単には揃わない素材ばかりで、しかも下のランクほど簡単に作れるなんて事は無く、どれも難しい。結局、初期バッグで最後までやりくりするケースが多々。
      • アイテムボックスもあるのだが、容量は初期バッグの半分以下というあり得ない少なさ。実はこれ、各地の野外調理場を解禁すると連動して拡張されていくのだが、その説明は無い。
  • その他
    • 設定通り、満月の夜には住民達が犬や猫になってしまうのだが、これがゲーム的にあまり意味を成していない。
      • 確かに序盤のインパクトは担っているし、ナオミが変身する事への意味付けにもなっているが、それを過ぎると殆ど意義を失ってしまう。やる事と言えば動物化した住人を可愛がってDCゲージを操作することぐらい。
      • 一応、終盤にはこの仕組みが意味を持って来るし、更にこの時に「ある事」をする必要も生じるのだが、それを除くとストーリー的な意味もあまり感じられなくなってしまう。
        また、満月の夜は2週間置きにしか来ないので、タイミングが悪いとこの終盤の時期に丸々2週間も待つ羽目になる。
    • 読書で時間を潰せるのは良いのだが、『Red Seeds Profile』『Deadly Premonition 2』の喫煙と違って好きなタイミングで中断は出来ず、進む時間はアイテム毎に固定。しかもどれくらい進むのか具体的な数字は書いていないので使ってみないと分からないなど、利便性は大きく低下している。
    • ナオミの服装は通常ならカットシーンにもしっかり反映されるのだが、クライマックスの一番盛り上がる場面で何故かデフォルトの衣装になってしまう。その直前の操作パートまではちゃんと反映されているのに、カットシーンが始まった途端に変わる。
      • 以降はデフォルト衣装で固定…という訳でもなく、そのシーンが終わった後のエンディングではしっかりプレイヤーのカスマイズは反映されている。クライマックスなどはプレイヤーが特に自分のカスタマイズで観たいシーンのはずだが…*19
    • オートセーブとマニュアルセーブだが、セーブブロックを自分で選ぶのではなく5つまで自動的に記録される形式となっている。古いデータはどんどん消されていくので、特定場面のデータを残しておきたくても不可能である。どうしてもやりたければ手動でセーブデータを外部ストレージにコピーするしかない。
      • また、タイトル画面から「つづきから」を選ぶと自動的に最新データが読み込まれる。他のデータをロードしたければメニュー画面から再度読み込むしかない。
      • しかもデータに記載されているのは「進行中のクエスト」「所持金」「セーブ時間(リアルタイム)」「現在の服装」だけ。現在地や時間帯などは表示されないのでどの場面でセーブしたのか分かり難い。
      • 挙げ句の果てに、「はじめから」を選ぶと全てのセーブデータが消去される。クリア後のデータを残してまた最初からプレイはおろか、ちょっと序盤の再確認だけをしたい、などという事すらも許されない。どうしてもやりたければ手動で(ry
    • エンディング後には製作者たる「Mr.SWERY」が登場するのだが、これはKickstarterのバッカー専用キャラであり、バッカー以外が話しかけても「君とは会話できないんだホー」「詳しくはググるんだホー」などと腹の立つ返しをされるだけで大半のプレイヤーには無意味。なぜ登場した。
    • 過去のSWERY作品と違ってエンディング後もエンドレスでプレイ可能だが、逆に引き継ぎ周回プレイは不可能になった。
      • 確かにやりこみ要素の多い作品ではあるが、上述した通り素材集めの面倒さや期間限定の救済措置、ゲームバランスの悪さなど、周回で挽回したくなる要素も多い。また、コスチュームもストーリーが進まないと作れないものばかりである。欲を言えば『ファイナルファンタジーXV』や『ノーモア★ヒーローズ3』のように周回とクリア後が選択可能であって欲しいところ。
      • しかもごく一部のクエストはクリア後に達成不可になる。尚のこと、周回プレイが欲しかった。
    • 歩行距離やアイテム収集数などのプレイ実績に応じて報酬が貰える「祠クエスト」が存在するのだが、最初のうちは簡単に達成できても完遂を目指すとなると案の定、完全な作業と化す。一部は廃人級のプレイを求められるほど。
      • 他のサイドクエストに必須という訳でもないので、簡単なうちだけクリアして面倒になったら無視してしまった方が良い。

総評

SNSと撮影という要素はオープンワールド系アドベンチャーとして大正解。
SWERY作品らしいやや尖った面はあるものの秀逸な脚本は健在であり、それに乗っかる超個性的なキャラクターは問題があるとはいえ一応は物語を牽引している。

しかしギネス認定されるほど賛否が割れ過ぎたあの『Red Seeds Profile』の生みの親が手掛けた同系統の作品という事もあってか、それらにまとわりつく「人を選ぶ面」が隠し切れないほど顕在化しており、
またUI面の欠点やプレイ快適性を削ぐ点、不親切な仕様や劣悪なバランスなど、過去作からの問題点も未だ改善できておらず一部は悪化すらしている。
全ての問題は致命的ではないが、総合的に見て何とも微妙な一品となっており、良くも悪くもSWERY作品「らしさ」に溢れている。

Web上では「田舎町での生活」「面白スポットの撮影」「自宅前でプチ農業ができる」といったところからどうぶつの森シリーズのようなスローライフゲーを想起させる紹介が見受けられるが、
実際の所はそれがメインなのではなく「そうした要素を持つだけのSFアドベンチャー」であることは留意してほしい。
勿論既に記したように、「わかりやすい物語でない」一風変わった世界観を味わいたい人や過去のSWERY作品のファンならば、手に取っても良い作品だろう。


余談

  • 本作の舞台「レイニーウッズ」の名は元々は『Red Seeds Profile』の初期タイトル案だった。タイトルとしては没になったが、本作で舞台名として再利用された模様。
    • また、殺人現場発見時のクエスト名が「死の兆候」(=Deadly Premonition)だったりと、SWERY作品ファンをニヤリとさせる要素も見受けられる。
    • 一方、『スパイフィクション』『Red Seeds Profile』『D4: Dark Dreams Don't Die』と毎度のようにSWERY作品に登場していた「フォレスト・ケイスン」の名を持つ人物は登場しない。
  • 日本よりも海外で評価されるのが恒例のSWERY作品だが本作もやはり海外での評価は高く、いくつものアワードを受賞している。
  • 株式会社山岸産業のブランド「信州油屋清右衛門」とのコラボで、ナオミのイラストがパッケージに描かれた米「The Good Rice」が発売された(参照)。
  • 2023年3月9日、まさかのDLC「The Good Life - もっと知りたいレイニーウッズの秘密パック」が配信された。
    • 本編では謎だらけで終わったレイニーウッズの秘密に迫る12のサイドクエストが追加される。
      • 当然ながらその多くが本編クリア後限定であり、そうでなくとも関連キャラのメインエピソードクリアという条件付きなので、謂わば本編の後日談シナリオになる。
      • 加えて、いずれも受注キャラのサイドクエストを全てクリアした状態でなければ解禁されないので、体験するにはまず先に本編をしっかりやり込む必要がある。そういう意味でも「後日談」と言える。
最終更新:2024年01月01日 12:00

*1 過去に『パンツァードラグーン』や『ファントムダスト』を手掛けた二木幸夫氏が代表を務めるデベロッパー。

*2 攻略上特に使用せず、歩行に比べて早いと言う事もない。

*3 上はブラウスやジャケット中心で、下もほぼ全てズボン。一番の薄着でもシャツだし、脚が出るボトムスと言えばホットパンツが一着ある程度。何故か帽子はやたら御洒落なものが揃っており、靴はサンダルやパンプスもあるが…。

*4 ナオミだけではなく、清楚な不思議ちゃんのエリザベスと怪しい魔女のポーレンという全く異なる役も兼任している。

*5 あるエピソードについては残った謎についてナオミがまくし立てるのだが、相手はいけしゃあしゃあと「気が済みましたか?」と言って立ち去ってしまう。

*6 容姿が悪いわけではなく、寧ろレイニーウッズ外では子供に「きれいなおねーさん」と言われることすらある。

*7 いずれも雇い主の監視役に阻止され、ナオミの懐に入るはずだった大金は全て借金返済に正しく充てられる、というオチになっている。

*8 作中でもナオミが「それってポリコレ的にどうなんだ」「ジェンダーバイアスじゃないか?」と指摘するやり取りはあるが、配慮を描いているというより敢えて取り上げてネタにした感じに仕上がっている。

*9 このため、クエスト攻略のためには不摂生で健康度を下げる → 病気に罹る → 治療 → 次の病気のために不摂生を(ry…という血も涙も無い生活を送る羽目になる。

*10 フェードイン前からテーマ曲が流れ出し、顔をしかめるナオミ → バイクの演出 → 耳をふさいで目を閉じるナオミ →「ロブスター!」の流れが毎回入る。去る時も「ロブスター!」と共に排煙を撒き散らす → ナオミが咳き込む →「くされ地獄だぜ!」がデフォルト。

*11 そもそも『Deadly Premonition 2』のキャラと違い、この少女が多重人格者だという説明はメインストーリー上にはほぼ無く、話しかけた際の雰囲気で察するしかない。そこに気付けなければ、どこにもいない別の人格を探して歩き回る事にもなりかねない。

*12 過去作でも笑いを誘う台詞は見られたが、ウィットに富んだ台詞回しと情景とのギャップなどと言ったシュールさから来る笑いが多く、一般的なギャグ作品のようにストレートに笑いを取りに行くようなものではなかった。

*13 ナオミ自身「世界一金に縛られた女」を自称するほどで、上手いこと乗せられている自覚はある。もっとも、彼女は桁違いの借金を抱えている為、そうなってしまうのも仕方ない部分があるのだが…。

*14 ブラウン管モニターで、レイアウトも懐かしのWindows2000や98以前っぽく作ってある。

*15 中盤のルートの一つの最後に本作唯一と言っていいボス戦イベントがある。

*16 治療費は所持金半分なので無一文なら無料で済む。

*17 エナジードリンクの「レッドブル」のパロディ。

*18 本作ではアイテム毎に在庫数以上の買い物ができず、売り切れになったら日を置いて入荷まで待たなければならない。基本の在庫は3個程度だが、ここでは99個置いている。入荷ももちろんアリ。

*19 しかもここはナオミがフィジカル面で活躍する唯一と言っても良いカットシーンである。