Travis Strikes Again: No More Heroes

【とらう゛ぃすすとらいくすあげいん のーもあひーろーず】

ジャンル アクション
PS4版
対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4(完全版)
Windows(Steam)(完全版)
発売元 グラスホッパー・マニファクチュア
【PS4/Win】マーベラス
開発元 グラスホッパー・マニファクチュア
発売日 【Switch】2019年1月18日
【PS4】2019年10月17日
【Win】2019年10月18日
定価(税抜) 【Switch】2,800円
【PS4/Win】3,980円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:C(15才以上対象)
備考 日本Switch版はダウンロード専売
PS4/Win版はSwitch版の全DLCを収録
判定 なし
ポイント テキスト・演出は抜群
アクションゲームとしてはかなり単調
10年後に評価される超実験作(公式談)
ノーモア★ヒーローズシリーズ
初代 / 2 / Travis Strikes Again / 3



唸れ、ビームカタナ!闘え、トラヴィス!!



概要

前衛的なゲームを製作することで国内外にコアなファンを持つ須田剛一の代表作である『ノーモア★ヒーローズ』シリーズの一作。
元々『ノーモア★ヒーローズ』シリーズは3部作構想で『2』と『3』の間にDSiウェアとしてスピンオフとなる小規模な作品を発売したいとインタビューで語られていた。
だが、諸事情で実現しないまま時は過ぎ『2』発売からゲームハード2世代の時を越えようやく実現できた短編となっている。
近年は監修業務やシナリオ・世界観構築を部分的に担当するなど須田氏当人にとっても現場から一歩引いた位置から開発に関わる状況が続いていた。
そのため、本作は久々に現場でディレクションを行うある種本格復帰作とも言える立ち位置になっている*1
ストーリー的には『2』の後日談であり『3』へと繋がる正史となっている。


あらすじ

全米殺し屋ランキングで二度も1位となった男、トラヴィス・タッチダウンはサンタデストロイでの終わりのない命の取り合いから離れテキサスの山奥で隠遁生活を送っていた。

そんな中、かつてトラヴィスが仕留めた相手であるバッドガールの父バッドマンがトラヴィスの隠れ家を強襲する。

殺し合いとなるトラヴィスとバッドマンだったが、突如伝説のゲーム機「デス・ドライブMk-II」に2人とも吸い込まれてしまうのであった。


特徴

  • 基本なゲームの流れ
    • 前2作では殺し屋ランキング1位を目指し各ボスが待ち構えるマップを順番に攻略する…という流れだったが、今回も概ね似たような流れとなっており、作中世界で未発売に終わったゲーム機「デス・ドライブMk-II*2(以下デスドラ2)」の各ソフトを攻略し、最深部にいるボスを殺して次のゲームへ進む…という形になっている。
    • 前2作からの変更点としてクリア済みのマップでも後から再侵入できるようになった。
      • 取り逃したアイテムを回収したり稼ぎプレイを行える他、ある程度ストーリーが進むとトラヴィスの愛猫であるジーン探しのサブイベントが追加される。
    • ゲームプレイ中及びクリア後は拠点であるトレーラーハウスに戻り、クリア済み・進行中のステージに再挑戦したり着替えや衣装の購入、資料の閲覧などを行ることができる。
      • トレーラーの横に停車してあるバイクに触れることでトラヴィスがいかに各デスボール*3を入手したかという経緯が語られるADVパートである「Travis Strikes Back」を読むことができる。
    • デスドラ2のゲームをクリアすると、バイクに乗って次のデスボールを探しに行く。その様子はADVとしてプレイし、戻ったら入手したデスボールをデスドラ2にセットし、次はアクションゲームへ…という流れを繰り返して進む。
    • 隠し要素として、各ゲームの特定の場所でコマンド入力をすると隠しキャラ*4やボーナス敵が登場し、HPが回復したりいい稼ぎをさせてくれる。
      • さらに、それによってストーリーをより掘り下げる(或いはプレイヤーを混乱させる)謎の人物「K」からのFAXが届く。
      • コマンドと入力場所の情報はアーカイブ(後述)から参照できる。
    • 必須ではないが、バッドマン視点のADV「Badman Strikes Back」も収録されている(Switch版はDLC導入が必要)。
    • バッドマンがトラヴィスへの復讐を決意する経緯や、バッドマン親子が如何にして殺し屋になったのかと言った過去が語られる。
  • 前作までのTPS視点から見下ろし視点になったが、基本的なアクションは弱・強攻撃、回避、ジャンプとアクションゲームとしてオーソドックスな物になっている。
    • 弱攻撃は威力は低いが走りながら行える。強攻撃は威力が高いが大振りなので隙も多い。さらに今作ではジャンプ攻撃も可能で、弱なら飛び込み斬りが、強なら範囲攻撃が繰り出せる。
    • 本シリーズの特徴であるビームカタナの充電と電力ケージは残されており、Lスティックを押し込んでコントローラーを振る(右スティックのレバガチャでも代用可)とゲームの中のトラヴィスも自家発電を始める。
    • 今作では新たにトラヴィスが左手に装着するデスグローブにスキルを4つまでセットできるようになった。スキルはボスの撃破や探索で入手できるスキルチップを入手することでカスタマイズできる。
      • スキルは敵を短時間スタンさせたり大ダメージを与える爆弾を設置するなどの能力があるが、一度使うと一定時間クールタイムが存在する。
      • スキルの入れ替えはデスドラ2内にいる状況でも行えるが、一度入れ替えるとクールタイムの最初からとなるため即座に使うことはできない。
    • 過去作では能力強化はミニゲームで行っていたが、本作ではRPGのような経験値&レベル制となった。
    • 残機制であり、ライフが無くなると残機を消費して即座に復活できる。残機が無い状態でやられるとゲームオーバーとなり、そのデスドラ2ソフトのタイトル画面に戻る。再開は各トイレ(セーブポイント)から可能。
      • 残機はトレーラーハウスに戻れば一定数まで回復する他、ボーナスキャラを倒すことで1UPすることが可能。
  • シリーズとしては初めてローカルマルチプレイ要素が搭載されており、トラヴィスとバッドマンの2人同時プレイが行える。
    • ソロプレイ時はいつでもキャラの交代ができる。
    • また、DLCを購入した状態で条件を満たすとシノブ及びバッドガールもプレイアブルキャラとして使用可能となる。
    • 各キャラは攻撃モーションや性能・専用スキルが異なる他、ボス戦前後の会話もそれぞれ個別に作られている。
      • ゲーム内でのイベントも、ラーメン屋での対応も、セリフの出る所は全て個別となっている。本編のトラヴィスとバッドマンだけではなく、シノブとバッドガールも例外ではない。
      • 残念ながら、シノブとバッドガールの女子達はステージ開始時は服を着ており、トイレも一切映像がカットされる。『2』のシノブのようにシャワーシーンも誠に残念ながら無い。
  • イベントシーンは過去作では全編ムービー形式だったが、本作ではほとんどのイベントがボタン送りのテキスト形式になっている。
    • テキストイベントのメッセージはフルボイス…ではなく、『花と太陽と雨と』のような謎の言語で表現されている。プレイ時やムービーはいつも通りの英語音声なのでご安心を。
  • インディーゲームとのコラボ
    • 本作の製作経緯として、過去の須田ゲーから影響を受けたインディーゲーム開発者と須田氏本人が会ったことで強いインスピレーションを受けたということがある。
    • そういうこともあって、Tシャツの絵柄に様々なインディーゲームが採用されている他、作中でもインディーゲームのパロディネタがいくつも盛り込まれている。
      • Tシャツはトレーラーハウス内のパソコンから購入し着替えることが可能。
    • 作中でもインディーゲームを持ち上げていたり勧めてきたりと、宣伝も忘れていない。ラストシーンの台詞も「(『3』を)インディーゲームをやりながら待っててくれ!」とである。
  • 機種ごとの違いについて
    • 本作は最初にSwitch用ソフトとして製作・販売され、後にPS4/Winに移植された。
    • PS4/Win版はDLCが同梱された完全版に相当し、Switch版単品+シーズンパスを買うよりごくわずかに安いのだが、Switch版とは異なり本編のみの単体購入が不可能となっている。
      • そのため、「本編を遊んでからDLCを買うか考える」というタイプの人はSwitch版が。逆に最初からDLCも買う気満々の人はPS4/Win版がおすすめ。
      • ただし、DLCのステージをクリアしないと本当の結末は迎えられず、続編の『3』にもスムーズに続かないため、Switchで本編だけプレイするつもりの人はその点を注意されたし。

評価点

  • 独特のアーティスティックなビジュアルと世界観
    • 特にデスドラ2の各ゲームの起動時にはいかにも1990年代のゲームっぽいチープな実写ムービーやカクカクしたローポリを用いたムービーが流れるようになっており、雰囲気抜群。
    • 前作までのランカーに該当する各ゲームのボスキャラも非常に個性的。ボスデザイナーはボーンフェイスというイギリス人アーティストで、いかにも海外ゲーム「っぽい」見た目となっている。
      • 『2』ではランカー(ボスキャラ)との掛け合いが短くなってしまっていたが、本作は戦闘前後の会話パートが『1』程度の尺に戻った。
    • 主人公であるトラヴィスのキャラクター性も前作までは戦いや殺しに逡巡や感傷的な感情を見せることがあったが、今回はセクシーなヒロインキャラや萌えアニメが出ないのもあって三枚目的な場面は控えめになっており、クールで粋な所を魅せてくれる場面が多い。
      • 討伐対象であるゲームキャラとの戦いも、旧作のような殺し合いよりも正々堂々の勝負に近く、後腐れないすっきりした決着となる場合がほとんど。その際のやり取りもまた魅せる。
      • もっともしみったれた四畳半を見て「松本先生の『男おいどん』の世界だ!」と感激したり、ラーメンを食う際に毎回しっかり日本語で「イタダキマスッ!」「ゴチソウサマ」と言ったりと引き続きコミカルな場面も存在する。
    • 会話はキャラ毎に作られており、もう1人の主人公であるバッドマンはもちろん、DLCキャラであるシノブとバッドガールにもそれぞれ個別の会話が用意されている。女子に対しても「小僧」と言われたりはするが…。
  • 前2作に比べるとコンパクトにはなったがメタ・パロネタや変なギャグは今回も詰め込められるだけ詰め込めている。
    • 例としてデスドラ2の各ゲーム開始時には全裸のトラヴィスorバッドマンが電流と供に現れ立ち上がる*5、重要アイテムゲット時には頭の上でアイテムを高く掲げる、スキルチップの名前が「F91」「Wing」「∀」などなんとなく聞いたことがある名前、作中で本作のメタスコアを不安視し「点数が低いとノーモア3が出せなくなるぞ」という旨のメタすぎる発言があるなど。
      • 上述の通り、機種によってDLCの収録の有無が異なっているが、それすらネタにしている。
    • 今回は各地に存在する収集アイテムのようなものとして「ラーメン屋の屋台」が存在する。
      • 前2作の収集要素は自室に小さく物が追加されるだけで何を入手したのか分かりにくかった*6が、本作では食べたラーメンごとにトラヴィスのいちいちグルメな食レポコメントと共にブログに掲載されるようになった*7。また、食べると体力を回復できるため訪ねることに攻略上の意味が生まれた。
    • 収集要素ではないが、ステージ各所に現れる「バグストラ」の語る「お爺さまの遺言」は、ためになるんだかならないんだかよく分からない格言・迷言・本質・持論の数々であり、聞いているとモノの見方が変わる…かもしれない。
      • 海外Wikiによると、熱心な須田ファンはこの「遺言」を忠実に守るものらしい…。
    • アーカイブにて、入手したデスボールのソフトのゲーム雑誌風の解説を見られるのだが、これがすっかり色褪せた古いゲーム雑誌を引っ張り出してきてスキャナーで読み取ったようなデザインになっている。
      • 内容も無駄に本格的で、本当にそのゲームが存在するかと錯覚させるほどの凝りようである。しかも隠しキャラの出現条件はいかにもな裏技扱いで書かれている。ページの最後には大嘘*8も書かれているが…。
    • 「Travis Strikes Back」も、『シルバー事件』をどことなく想起させるクールなテキストADVなのだが、ハードボイルドな雰囲気の中に暴走ギャグを捩じ込んだ抱腹絶倒ものの内容となっており、アクション要素が無くとも退屈せずに楽しめる。
    • そもそもデスボール入手の経緯をテキストADVで、しかも90年代すらを通り越した8bitPCゲーム風の画面で表現する時点で常軌を逸している*9
      • テキストで軽く済まされているが、デスボール入手のためにルーマニアまで飛んだり秋葉原で豪遊したりと、正に世界を飛び回っている。ゲームの世界という限られた舞台かと思いきや、実はシリーズでもかなりスケールの大きい作品なのである。
      • ここでは愛猫のジーンは何故かいかにもアニメチックな姿で描かれ、なんと人語を話す。口調も相当生意気なので、普段のリアルで可愛い姿とのギャップが凄い。
  • 『1』『2』同様ボス戦は普通に挑むと手ごわいがしっかりパターンは存在し、パターンを見て学び攻略する…という王道的なアクションゲーム的な面白さは健在。
  • ファンサービス要素
    • 過去作においてもそれ以前に製作された須田作品を連想させる要素を部分的にちりばめるようなことはあったのだが、本作では名前や見た目がそのままのキャラクターが登場したり元作品での事件が語られたりと過去作以上にはっきりとした形のファンサービス要素が存在する。
    • まず、オープニングからして『killer7』のダン・スミスが顔出しで登場するというサプライズを初っ端から仕込んでいる。しかもグラフィックも同作を踏襲しており、『ノーモア』ではなく『killer7』の新作かと一瞬疑ってしまうほど。
      • このシーンは実は発売直後は無く、発売1週間後のアップデートで追加された。本作には『killer7』でダン役を務めていた声優も元々参加していた事もあってか、その人物が約15年ぶりにダンを演じている。
      • 主人公の1人であるバッドマンも元々は『電撃PS2』で連載されていた未完の『killer7』スピンオフ小説の登場人物である*10
    • 特に「Travis Strikes Back」は宛らスーパー須田大戦須田ワイワイワールドとでも言えるほど、須田作品キャラのオンパレードとなっている。
    • 代表作である『シルバー事件』や『killer7』『ロリポップチェーンソー』など名の知れた作品のみならず、『KILLER IS DEAD』『Diabolical Pitch』などのやや知名度の劣る作品のネタも存在し、分かる人には分かる面白さがある。あろう事か須田氏のデビュー作でもある『ファイプロ』はそのものが登場する。
      • シルバー事件25区』も元は携帯アプリだが、移植版やリマスター版が出ていた事もあってかしっかりネタが盛り込まれている。
    • ステージの1つ「Serious Moonlight」は『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』を丸々モチーフにしており、詳細は作中で語られるが「同作の続編が出たら」というイメージの内容という破格の扱いとなっている。
      • なんとオープニングムービーは原作同様のクオリティで新規に作られている。他が1990年代調ムービーの中でいきなりPS3/360世代並のHDムービーが飛び出すという異彩ぶりである。
      • 『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』自体、作中では「トラヴィスも3回クリアした名作」として語られつつも自虐ネタが随所に見られる。最後には同作のIF展開を示して「続編も見えてくるかも」という形で結んでおり、ただ自虐ネタに持ってきているだけではない。
    • ゲームばかりではなく、須田氏が原作を務めた漫画『暗闇ダンス』のネタもあり、同作をモチーフとしたキャラも登場する。そもそも、「Travis Strikes Back」の旅を通じて不可思議な人々と出会い不可思議な体験をするロードムービー的内容は『暗闇ダンス』に近く、「ノーモア版暗闇ダンス」と言ってもいいかもしれない*11
    • 発売前インタビューにおいてはカメオ出演程度に留まると思われていたために、長年のクリエイターのファンにとっては最大の評価点ともいえるポイントと言える。

賛否両論点

  • ゲームジャンル・操作感の変更。
    • 『1』『2』の大技だったスープレックス(投げ技)がトラヴィス操作時のボスへのトドメ演出限定となってしまった。
    • トラヴィスのキャラクター性に合った印象的なアクションであると同時に雑魚戦がボタンを押すだけの単調な作業にならないようにアクセレントとして機能していただけに、残念がるファンも。
      • もっとも、今回はプレイアブルキャラが増えているのでトラヴィス以外も急にプロレス技を使い出すのもおかしいという事情もあるとは思われるが。
  • 本作は CERO:C (15才以上対象)で作られており、国内版と海外版に目立った表現の違いは無い。
    • 前作までの無規制版のような敵の頭や胴体がおびただしい血をまき散らしながらすっ飛んでくようなゴア描写は最初から存在せず、残虐表現が苦手な人でも問題無くプレイでき、それでいて表現の規制を感じる事も無い。
    • しかしその分、敵を倒した演出が「三原色の塵になって消えてく」という地味なものになってしまった。音は派手だが視覚的にはイマイチ。
    • ゲームの中の世界という設定上仕方なくもあるのだが、かと言って旧作の国内Wii版『1』のような塵を派手にぶちまける演出でもないため、爽快感が薄い。やや地味化した国内Wii版『2』よりも更に地味。
  • 中ボスが若干色や攻撃パターンが変わるだけで基本は使いまわし。
    • ただし、前2作はそもそも中ボス自体が存在しなかったため、本シリーズ内の比較に限れば進歩してると言えなくもない。
  • 最終ステージにて
    + ネタバレ
  • インディーゲームのパロネタが多いのは前述した通りだが、最終ステージには『Hotline Miami』との本格的なコラボイベントが用意されている。
    • ファンにとっては意表を突く嬉しいサプライズなのだが、そちらをプレイ済み前提のような流れなので、知らない人は山場の最終ステージで急に別のゲームが挟まったような(実際、別のゲームだが)感覚に確実に置いてきぼりを喰らう。
      • しかも、最終ステージのイベントは導入部とラスボス戦を除くとこれだけである。

問題点

  • アクションパートの道中はそこまで面白くない。
    • 基本的に本作のプレイ時間の大半は雑魚をY押しっぱなしで蹴散らし、ちょっと硬いやつに強攻撃とスキルを使う…という行為を延々と繰り返すことになる。
      • 敵出現ポイントに入ると大抵は周囲が塞がれ、敵を全滅させるまで出られなくなる。しかしそのポイントがかなり多い上、一旦全滅させても第二波、第三波と新手が来る場所も少なくなく、スムーズに進められない。
    • 前二作のトドメスラッシュやダークサイドモードと言った一方的に雑魚をまとめて倒せる要素がなくなってしまい、大雑把ながらも一定の爽快感があった『1』『2』と違い相手が弱くとも気の抜けない場面が続く。
      • 厳密には一応チャージ攻撃や特定のスキルの組み合わせで一時的に数を減らすこと自体はできるが、数が多く湧くスピードが早いためこれらの代替え要素として成立してはいない。
      • また、スキルは発動まで若干タイムラグがあり、途中で攻撃を喰らうと簡単にキャンセルされてしまう。隙が大きく使い所が見えにくいスキルも少なくない。
      • そもそも今回の敵は基本仰け反らないため、ヒットアンドアウェイ戦法が主になり、旧作のようなコンボを叩き込むような戦い方は出来ない。
    • 道中には過去作のような回復アイテムが存在しない。確実な回復ポイントのトイレかラーメン屋以外では、自動回復フィールドを展開したり敵の体力を奪うスキルを使ったり、ボーナスキャラを倒す、隠しキャラを出現させるなどしなければならない。
      • 下手にダメージを受けられないため、前述した「気の抜けない」という点を際立たせることに。特に回復系スキルはアクションが得意ではない人は必須と言って良い。
      • 敵も強い者になるとガード、コンボ、回避を使いこなす敵が増え、それが複数出たり何種類も連戦させられることも少なくないので飽きやすさと裏腹に本当に気が抜けない。
      • 幸い、ゲーム難易度はいつでも変えられるので、どうしてもきつくなったら難易度を下げるのも手。
      • DLCにして真の最終ステージ「キラーマラソン」はそれに加えて制限時間も付くので一層難易度が高い。作中でも「最近のゲーマー好みのドM仕様」と公言している。
      • 一方、「SWEET(イージー)は超簡単だから安心してちょんまげ」と言われるがそこまで簡単でもない。寧ろこれですらレベルがかなり必要なので鵜呑みにしてはいけない。
    • ステージ数は過去作に比べると少ない。その代わりなのか個々のステージが長めに作られており、単調なゲーム性と併せてダレやすい。
    • クリア済みステージでも敵を全滅させないと進めない点は変わらず、敵の物量も多いため、取り忘れた要素の回収が面倒。しかも基本的に後戻り不可なので、通り過ぎてしまったらトレイラーに戻り最寄りのセーブポイントから再開しなければならない。
      • 隠しキャラはアーカイブの写真しか判断材料が無く、似た地形の多いステージでは探すのが大変であるため、予め予習して初見で回収しておきたい所。
      • ジーンの捜索も、かなり大雑把な手掛かりしかないので同じく。近付くと鳴き声が聞こえるがそれも近くまで来れればの話である。
      • 特に「ゴールデンドラゴンGP」ステージは構造にランダム性があり、居場所を知っていても必ず辿り着けるとは限らない。自力で見つけるとなると正に根気と運が要される。
  • 大して変わり映えしないゲーム内容
    • 設定上は各ゲームはそれぞれ異なる内容になっているのだが、実際のところは細かい仕掛けがわずかに異なるだけの見下ろし視点アクションゲームとなっている。
      • 公式サイトのステージ紹介ではゲーム毎に「パズル」「アドベンチャー」などのジャンルが書いてあるが、 全てに「アクション」が併記されている点でお察しである。しかも半数以上に「バトルアクション」とある。
      • 仕掛けは最初こそ新鮮で面白く感じるが、前述した通りステージが長いため遅かれ早かれ飽きる。
    • 登場する雑魚敵も全ステージ共通で、ステージ毎の個別の敵はボスしかいない。どこへ行っても戦う敵が同じなので変わり映えのしなささに拍車が掛かる。
      • 後半になると、「一番の雑魚から一番の強敵までが一通り出現する戦闘」をエリア毎に何度もさせられるハメに。
    • ステージ3の「コーヒー&ドーナツ」は殺人事件を解決するという形で館の探索を行うのだが、被害者にコーヒーとドーナツを供えて証言を得るためにそれらを探しに行く…という事で結局アクションステージに行かされる。
      • このステージは横スクロール風の画面でジャンプアクションの要素もあるのだが、その回数が無駄に多い*12ため最初の方はともかく後半はダレる。
    • 一応レースゲームという設定の「ゴールデンドラゴンGP」は別物…なのだが、レースに勝てないから強化パーツを取りに行くということで結局いつも通り見下ろしマップで戦うことになる。
    • 他、STG面もあるにはあるが雑魚らしい雑魚もおらず、ほとんど攻撃してこないボスに数回攻撃をぶち込んだら終わりとミニゲームとすらも言い難いものである。
    • 「シリアスムーンライト」は前述の通り『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』をモチーフとしたステージだが、背景がモチーフになっているだけで出てくる敵はいつも通りである。
  • ただし擁護…になるかはわからないが、作中でもマップの単調さや敵の色替えについて揶揄するセリフが出てきたりと分かっててやってる感はあり、ある程度こうした問題点は意図的に作られていると言える。
    • こうした部分を「ギャグに昇華していて面白い」ととるか「単なる開き直り」ととるかは人によるだろうが、アクションゲームとしての単調さは揺るぎないため、前者だからと言って「それならば仕方ない」と納得するのは厳しい。
  • このシリーズでは最早いつものことだが、過去作の内容や今作に至るまでの経緯の説明はほとんど無い。
    • トラヴィスが殺し屋ランキング1位だった、過去にバッドガールを殺したくらいは分かるが、『2』の後のトラヴィスの動向などははっきりせず、「Travis Strikes Back」で断片的な情報が提示されるだけである。
      • 「Travis Strikes Back」でも、シリーズキャラであるシルヴィアやヘンリーはほとんど説明も無く登場し、しかも旧作とまるっきり境遇が変わっているので、未プレイヤーはもちろん、既プレイヤーすら置き去りになる。
      • 特にシルヴィアについては驚愕ものであり、『1』『2』のラストシーンの謎めいた演出に解を示すほど重要な事実が明らかになるのだが、それをこういう所であっさり明かすのはどうなのだろうか。
  • 単純に描写が簡素で分かりにくい部分も。
    • 幕間のストーリーは主にトラヴィスの証言映像のような形でざっくり説明される形であり、従来のようなムービーはオープニングぐらいにしか無い。
    • バッドガールの復讐のためにトラヴィスを襲撃したバッドマンだが、娘を蘇らせられるかもしれない「デス・ドライブMk-II」をトラヴィスが持っていたことと、トラヴィス自身も「デス・ドライブMk-II」のソフトを全て攻略するという目的から利害が一致し、共闘することになる。という流れなのだがその辺りもさらりと流される。
      • 決闘以外にはトラヴィスとバッドマンの会話シーンすら無いまま始まるのだが、トレイラーハウスに戻るとバッドマンはスイングの練習をしていたり寝ていたりとまるで自分の家のように寛いでいるため、初見プレイヤーはなぜ共闘しているのかと混乱しがち。
    • 「デス・ドライブMk-II」に秘められた秘密や取り巻く事件、ラスボスの目的などは「KからのFAX」を読まないと殆ど分からない。「条件を満たして隠された裏の真実を解き明かす」と言えば聞こえはいいが、本作の場合は本編のストーリーすら分からない。
    • エンディングも須田ゲーの中では比較的理解し易い作りの『ノーモア★ヒーローズ』シリーズとしては難解で、初見ではよく分からないまま終わってしまうだろう。逆に言えば須田ゲーらしいとも言えるが…。
      + さらにDLCでは…(ネタバレ)
    • 最後のゲームをクリアすると遂にバッドガールが復活するが、ここもバッドマンの証言映像で経緯が語られるだけで、以後はバッドガールも父と同じくトレイラーハウスで当たり前のように寛ぎ始める。トラヴィスや父との絡みも特に無し。
    • 復活イベントでもバッドガール自身は二言喋るだけで、しっかりしたセリフを見たければ彼女をプレイヤーに選択してゲームに入るしか無い。ゲーム内にちゃんとセリフが用意されているのは評価点なのだが…。

総評

例えるならば馴染みのラーメン屋の店主が修行から帰ってきて自信満々に出してきたラーメンがいつもの味をやや塩辛くしただけ…と言った感じのゲーム。
逆に言うと『シルバー事件』や『1』『2』等が刺さった人には褒められない部分もあれど「これはこれで」と思えるかもしれない。
アクションゲームとしてはあまりオススメできないが、テキストと演出は本当に秀逸なので、クリエイターのファンにとっては一定の価値がある作品と言える。
『3』への布石、前フリ的な側面もあるため、最初からそう割り切ってプレイするのも1つの手である。


余談

  • 作中でも気にされているメタスコアの得点だが、67点という少々残念な結果になってしまった。
    • ちなみに『1』は83点、『2』は84点。世間的にも前作までほどの評価も得られていないと言える*13
    • しかし、転んでもただでは起きないのが須田氏と言うべきか、『3』の発売前シリーズ振り返り動画では動画内でこの点数のスクショをそっくりそのまま掲載した。
      • その動画内で須田氏は本作を「10年後に評価される超実験作」と紹介している。物は言い様である
    • 余談の余談だが、この動画内で本作を「詳しくはWikipediaで調べてね」と紹介しているが、そもそも本作の日本語版記事は2024年まで存在していなかったので、当時は調べようが無かった。
  • 本作でセルフパロディ化された『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』だが、2024年にリマスター版『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』が発売予定。
    • 本作内で「2周目が欲しい」と言われていたが、このリマスター版では本当にそれが実装、いわゆる「強くてニューゲーム」が可能に。
    • また、本作に登場したエイトハートの衣装もコスチュームとして追加されるなど、本作も逆に原典に影響を与える結果となった。
最終更新:2024年08月09日 15:40

*1 他にもシナリオ原案・執筆には映像制作会社ドットフレームの代表である高柳景多氏が参加している。

*2 名称の由来はセガのゲーム機「メガドライブ」及び「セガ・マークIII」だと思われる。

*3 デスドラ2はカートリッジがボール型になっていることから、デスドラ2のソフトをこのように呼ぶ。

*4 8bit風のドット且つ、過去作で見覚えのないカウガール風キャラなので分かりにくいが、ADVパートの最終話を見る限りシリーズヒロインのシルヴィアである模様。

*5 ご丁寧にBGMもターミネーターっぽい。

*6 とりわけ『1』はただの色違いマスクで視覚的にも微妙だった。

*7 その内容も、ラーメン自体はべた褒めしておきながらビールが無いという理由でマイナス点を付けるなどというツッコミ所満載のもの。

*8 「デスドラ本体を○○しろ」など、プレイヤーにはどうにもできない条件なので実現不可。

*9 ただ、作中の弁によると「DOS/V風ADV」だそうな。

*10 設定はかなり変わっている。特にあちらでは「バッ"ト"マン」とどこぞのヒーローのような名前で呼ばれていた。

*11 『暗闇ダンス』も須田作品ネタが豊富であり、須田キャラが何人か登場している。案の定、トラヴィスも出ている。

*12 死体を発見する度にコーヒーとドーナツの2回分のステージを攻略する。証言を得ると次の死体を発見して、という感じにこれを繰り返す。

*13 ちなみに、次回作『3』は74点で、やはり本作はシリーズでは最低点ということに。