ノアの方舟

ノアの方舟は、旧約聖書の『創世記』(6章-9章)に登場する、大洪水にまつわる、ノアの方舟物語の事。または、その物語中の主人公ノアとその家族、多種の動物を乗せた方舟自体を指す。「はこぶね」は「方舟」のほか、「箱舟」「箱船」などとも記される。
クルアーン』にも類似の記述があり、「ヌーフの方舟」と呼ばれる(11章 フード)

神の子とネフィリム

天使については天使論にも書いたように、大きく分けて解釈がある。
①アダムの子セトの子孫
②堕天使
なお、「神の子」と人の娘の子供がネフィリムであるとされる。

方舟の大きさ

方舟は「長さ300キュビト、幅50キュビト、高さ30キュビト」で3つのデッキを持っている。これは、タバナクル(テント式神殿)の3倍の高さであり、タバナクルの前庭の3倍の広さとなっている。この大きさによって、神の考えにおける人類の魂の救済という意味が同時にこめられていることを聖書の著者が念頭においていたことが示唆される。
さらに長さ300キュビトは60の5倍、高さ30キュビトは60の半分であり、このサイズには、60という数字が根底にあると言われている。(1キュビトを伝統に従って、メートル法で約44.5cmとして換算すると、およそ「長133.5m、幅22.2m、高13.3m」となる。)
またこの「長:幅:高=30:5:3」の比率は、現在のタンカーなどの大型船を造船する際に、最も安定しているといわれる比率とほぼ同じとなる。船の黄金比などとも言われる。

キアスマス構造

ノアの逸話に関しては、次のような同心円構造が見られる。
話題転換的紹介(6:9-10)
 A ノアと洪水前の状況(6:9-12)
  B 神による、地を滅ぼす宣告(6:13-22)
   C 乗船(7:1-5)
    D 洪水のはじめ(7:6-16)
     E 水が満ちる(7:17-24)
      X ノアを心にとめる神(8:1a)
     E’水が引く(8:1b-5)
    D’洪水のおわり(8:6-14)
   C’降船(8:15-19)
  B’神による、地を滅ぼさない宣言(8:20-22)
 A’ノアと洪水後の世界の状況(9:1-17)
話題転換的紹介(9:18-19)

また、同じ個所について、日数の関係を記した同心円構造が以下である。
A 7日間洪水を待つ(7:4)
 B 7日間洪水を待つ(7:10)   
  C 40日間の洪水(7:17a)    
   D 150日間水が増えつづける(7:24)     
    X 神はノアを心に留められる(8:1)
   D' 150日間水がとどまる(8:3)   
  C' 40日の終わり(8:6a)  
 B' 7日間水が引くのを待つ(8:10)
A' 7日間水が引くのを待つ(8:12)

さらに短い構造においても同心円構造が見られる。(創世記7章)
17-20 「水かさが増した」
   21 「鳥・家畜・獣・地に群生するもの・人」死に絶えた
     22 「みな死んだ」
   23 「人・動物・はうもの・鳥」消し去られた
24   「水かさが増した」

メソポタミア神話との類似性

メソポタミア神話との共通点が指摘されている。

J資料とP資料の融合

ノアの洪水の逸話は、J資料とP資料が組み合わされていると考えられている。以下はフォン・ラートによる説である。
J資料:6章1-8節/7章1-5節/7章7節/7章8-10節/7章12節/7章16節後半/7章17節後半/7章22-23節/8章6節/8章2節後半/8章3節前半/8章6節後半/8章8-12節/8章13節後半/8章20節/9章18-29節
P資料:6章9-22説/7章6節/7章11節/7章13-16節前半/7章17節前半/7章18-21節/7章24節/8章1-2節前半/8章3節後半-5節/8章7節/8章13節前半/8章15-16節/9章1-17節

最終更新:2018年01月04日 14:18