以下の預言のことである。
こうして訴え祈っていると、先の幻で見た者、すなわちガブリエルが飛んで来て近づき、わたしに触れた。それは夕べの献げ物のころのことであった。
彼は、わたしに理解させようとしてこう言った。「ダニエルよ、お前を目覚めさせるために来た。お前が嘆き祈り始めた時、御言葉が出されたので、それを告げに来た。お前は愛されている者なのだ。この御言葉を悟り、この幻を理解せよ。
お前の民と聖なる都に対して
七十週が定められている。
それが過ぎると逆らいは終わり
罪は封じられ、不義は償われる。
とこしえの正義が到来し
幻と預言は封じられ
最も聖なる者に油が注がれる。
これを知り、目覚めよ。
エルサレム復興と再建についての
御言葉が出されてから
油注がれた君の到来まで
七週あり、また、六十二週あって
危機のうちに広場と堀は再建される。
その六十二週のあと油注がれた者は
不当に断たれ
都と聖所は
次に来る指導者の民によって荒らされる。
その終わりには洪水があり
終わりまで戦いが続き
荒廃は避けられない。
彼は一週の間、多くの者と同盟を固め
半週でいけにえと献げ物を廃止する。
憎むべきものの翼の上に荒廃をもたらすものが座す。
そしてついに、定められた破滅が荒廃の上に注がれる。」
この預言は、文章中に解釈が書かれていないため、解釈に揺れがある。以下に一例を紹介する。
エピファネス王預言説
ここでは、1日が1年として記述されている。
70週=490日、つまり490年がイスラエル人のエルサレムのために与えられている。
キュロス王の捕囚解放と神殿建設許可は、紀元前538年である。
ダビデ家の末裔ゼルバベル(油注がれた君)の到来は、7週後=49日後、つまり49年後の紀元前489年である。
大祭司オニアス(油注がれた者)が殺されるのが、「62週後」である。
その後、シリア(次に来る指導者の民)によってエルサレムは荒らされた。
シリア王エピファネス(彼)は半週=3.5日、つまり3.5年の支配の間、神殿礼拝の禁止した。
ゼウス像(憎むべきものの翼の上に荒廃をもたらすもの)が神殿に安置された。
そして「70週後」、エピファネス王は死んだ。
この説の利点は、執筆年代の下限である前2世紀半ばに記述できることである。
この説の欠点は、「62週」という年代が史実に一致しないことである。
キリスト預言説
ここでは、1日が1年として記述されている。
70週=490日、つまり490年がイスラエル人のエルサレムのために与えられている。
エルサレムの再建が始まったのは、ネへミヤ2:1により紀元前455年である。
エルサレム第二神殿の再建が終わるのは、7週後=49日後、つまり49年後の紀元前406年である。
キリスト(油注がれた君)が到来するのはそこから62週後=434日後、つまり434年後の紀元後29年である。
キリスト(油注がれた者)が殺された後に、ローマ帝国(次に来る指導者の民)によりエルサレムは陥落した。
キリスト(彼)は半週=3.5日、つまり3.5年間の活動で、いけにえと献げ物の規定を廃止した。
ここでイスラエルの民衆はキリストを殺してしまったため、神の計画は中断された。
最期の1週=7日、すなわち7年間は第三神殿が再建された後に起こる。
この説の利点は、執筆年代の年代がおおよそ史実に一致することである。
この説の欠点は、預言の中断に関する説明が強引であることである。
終末預言説(2017年説)
ここでは、1週が1年として記述されている。
70週、つまり70年がイスラエル人のエルサレムのために与えられている。
イスラエル国の再建は、紀元後1948年である。
キリスト(油注がれた君)が到来するのはそこから7週と62週後、つまり69年後の紀元後2017年である。
その後、イスラム過激派(次に来る指導者の民)によってエルサレムは荒らされる。
そして世界の最終戦争が始まる。
この説の欠点は、「7週と62週後」と分けて記述されている意味が全くなくなる上に、エルサレム第二神殿が無視されている点である。全く信用に値しない俗説と言ってよい。
最終更新:2017年03月03日 09:14