人々を癒すことで広く知られたイエスが、だれにも知られないようにとティルス(現在のレバノンの町)にやってきたが、そこでもまた人々に気付かれてしまった。そこで、シリア生まれのギリシャ人であり、ユダヤ人からみて異邦人の女が、幼い娘を癒すようにとイエスの元にやってきた。
そこでイエスと異邦人の女は比喩を用いて対話した。つまり、イエスは「まず、主なる神を信仰する民に癒しを与えなければならない。その民のための癒しを、異邦人に与えてはならないだろう」と諭すものの、異邦人の女は「しかし、異邦人であっても、民がこぼした癒しを受けることはよいはずだ」ということを、子供とパンと子犬に例えて話したのである。
これを聞いて、イエスはそれを尤もなことだと評価し、癒しを与えたのである。
マルコ7:24-30
イエスはそこを立ち去って、ティルスの地方に行かれた。ある家に入り、だれにも知られたくないと思っておられたが、人々に気づかれてしまった。汚れた霊に取りつかれた幼い娘を持つ女が、すぐにイエスのことを聞きつけ、来てその足もとにひれ伏した。女はギリシア人でシリア・フェニキアの生まれであったが、娘から悪霊を追い出してくださいと頼んだ。
イエスは言われた。「まず、子供たちに十分食べさせなければならない。子供たちのパンを取って、小犬にやってはいけない。」ところが、女は答えて言った。「主よ、しかし、食卓の下の小犬も、子供のパン屑はいただきます。」
そこで、イエスは言われた。「それほど言うなら、よろしい。家に帰りなさい。悪霊はあなたの娘からもう出てしまった。」女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。
マタイ
福音書では、ティルスに向かった目的が異なるのと、女がカナン人になっている。
マタイ15:21-28
イエスはそこをたち、ティルスとシドンの地方に行かれた。すると、この地に生まれたカナンの女が出て来て、「主よ、ダビデの子よ、わたしを憐れんでください。娘が悪霊にひどく苦しめられています」と叫んだ。しかし、イエスは何もお答えにならなかった。
そこで、弟子たちが近寄って来て願った。「この女を追い払ってください。叫びながらついて来ますので。」イエスは、「わたしは、イスラエルの家の
失われた羊のところにしか遣わされていない」とお答えになった。しかし、女は来て、イエスの前にひれ伏し、「主よ、どうかお助けください」と言った。
イエスが、「子供たちのパンを取って小犬にやってはいけない」とお答えになると、女は言った。「主よ、ごもっともです。しかし、小犬も主人の食卓から落ちるパン屑はいただくのです。」
そこで、イエスはお答えになった。「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように。」そのとき、娘の病気はいやされた。
最終更新:2017年03月20日 09:45