エステル記

ユダヤ人モルデカイの養女エステルは、ペルシャ王クセルクセスの后に選ばれる。そのころ、権力者ハマンはモルデカイに対する個人的な恨みからユダヤ人を皆殺しにすべく陰謀をめぐらせていた。エステルの機転によってユダヤ人は救われ、逆にハマンが死刑となる。これが物語のあらすじである。

この事件は、『エズラ記』での6章と7章の問に当る時代に相当すると考えられているが、実話ではない可能性が指摘されている。

名称


内容

  • エステルは王妃となる
    • 王妃ワシテの拒絶(1章) [BC484年]
    • 王妃に選ばれたエステル(2章) [BC480年]
  • ユダヤ人絶滅の策略
    • ハマンに従わぬモルデカイ(3章1-6節)
    • ハマンのユダヤ人殺害(3章7-15節) [BC475年1月]
    • ユダヤ人の死に叫ぶモルデカイ(4章)
  • ハマンの処刑
    • 招かれるハマン(5章)
    • 栄誉を与えられるモルデカイ(6章)
    • ハマンの処刑(7章)
    • ユダヤ人殺害の取消し(8章) [BC475年3月]
  • プリム祭の制定
    • ユダヤ人の敵たちの死(9章) [BC475年12月]
    • アハシュエロス王の功績(10章)

史実性

歴史的信憑性について、単純に分けると次の3つの立場がある;
  1. 歴史性を全く否定したフィクション説
  2. 様々な想像によって脚色された歴史小説であるとする説
  3. すべて史実であるとする説
3の立場からすると、確かに『エステル記』は歴史的枠付けをもって記されており(クセルクセス時代の出来事と規定され、クセルクセスの登場、最後の文書名の登場、正確な日時)、またこの書の記述している古代ペルシャの状況は、考古学的にも歴史学的にもその正しさが証明されている、という。この書は、特定の目的(ユダヤ人の解放、プーリーム祭の起源譚)と視点を持った書であることは明らかであるが、その歴史的な信憑性を疑う理由はどこにもない、という立場を取る。
2の「歴史小説」説からすれば、実際、『エステル記』の著者のペルシアに対する知識は、正解さを欠いているといわれる。しかし、このフィクション小説も、何らかの歴史的事件、少なくとも「情況」を反映していることはあり得るといわれる。
モルデカイによってユダヤ人の敵の殺害を許す命令が出されるが、この記述は『エステル記』の記述の信憑性に問題を投げかけているとされる。多くの学者は、この部分は史実ではあるまいと考えている。
最終更新:2017年03月16日 21:34