『ユダの福音書』は、初期キリスト教父であるエイレナイオスの『異端反駁』(180年頃)にて
グノーシス主義異端の書として言及されていたもので、既にその当時から存在を示唆されていた。その記述によれば、イエスを裏切った
イスカリオテのユダが実は
イエス・キリストの弟子の中の誰よりも真理を授かっており、「裏切り」自体もイエス・キリスト自身がユダへ指示したものであるとしている。
『ユダの福音書』は『異端反駁』に名を挙げられていることから2世紀には成立していたと考えられる。また、復元・解読された現存する唯一の写本(
チャコス写本)はギリシア語原本からコプト語に翻訳されたものであり、220-340年頃に筆写されたものと推定されている。
『ユダの福音書』は、長らく上記反対者の文書からしかその存在を知り得なかった。 しかし、2006年4月のナショナルジオグラフィックの発表によると、1970年代にエジプトで発見されたパピルス冊子の解析が進み、それが『ユダの福音書』のコプト語写本断片であると分かったという。 現代語訳(英語版)、日本語版と相次いで刊行された。
『ユダの福音書』は書かれた年代からイスカリオテのユダ本人が記したものとは考えられない。しかし、
ナグ・ハマディ写本などとともにグノーシス主義を含むキリスト教初期の潮流を知る資料として注目されている。
最終更新:2016年09月27日 11:08