イスカリオテのユダ

イエスによって選ばれた十二使徒の一人である。詳細は十二使徒の選定を参照。

マルコ3:13-19
イエスが山に登って、これと思う人々を呼び寄せられると、彼らはそばに集まって来た。そこで、十二人を任命し、使徒と名付けられた。彼らを自分のそばに置くため、また、派遣して宣教させ、悪霊を追い出す権能を持たせるためであった。
こうして十二人を任命された。シモンにはペトロという名を付けられた。
ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ、この二人にはボアネルゲス、すなわち、「雷の子ら」という名を付けられた。
アンデレ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、それに、イスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。

会計のごまかし

ヨハネによる福音書では、エルサレム入城前にベタニアで過ごしていた時、高価な香油をイエスの足にぬったマリアを非難する。そこに続けて彼が使徒たちの会計を任されながら、不正を行っていたと記されている。

ヨハネ12:4-6
弟子の一人で、後にイエスを裏切るイスカリオテのユダが言った。「なぜ、この香油を三百デナリオンで売って、貧しい人々に施さなかったのか。」
彼がこう言ったのは、貧しい人々のことを心にかけていたからではない。彼は盗人であって、金入れを預かっていながら、その中身をごまかしていたからである。

金目当てでのイエスへの裏切り

ユダは金目当てで祭司長たちにイエスの引き渡しを持ちかけた。

マタイ福音書では、銀貨三十枚を得る約束をとりつけている。

マタイ14:10-11
十二人の一人イスカリオテのユダは、イエスを引き渡そうとして、祭司長たちのところへ出かけて行った。
彼らはそれを聞いて喜び、金を与える約束をした。
そこでユダは、どうすれば折よくイエスを引き渡せるかと狙っていた。

マタイ26:14-16
そのとき、十二人の一人で、イスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行き、
「あの男をあなたたちに引き渡せば、幾らくれますか」
と言った。そこで、彼らは銀貨三十枚を支払うことにした。
そのときから、ユダはイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。

ルカ福音書では、イスカリオテのユダの中にサタンが入り込み、イエスを裏切ったとされている。

ルカ22:3-6
しかし、十二人の中の一人で、イスカリオテと呼ばれるユダの中に、サタンが入った。
ユダは祭司長たちや神殿守衛長たちのもとに行き、どのようにしてイエスを引き渡そうかと相談をもちかけた。
彼らは喜び、ユダに金を与えることに決めた。
ユダは承諾して、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。

最後の晩餐での裏切りの預言


最後の晩餐の場面ではイエスに裏切りを予告され、マルコ福音書では「生まれなかった方が、その者のためによかった。」とまでイエスに言われている。

マルコ14:18-21
一同が席に着いて食事をしているとき、イエスは言われた。「はっきり言っておくが、あなたがたのうちの一人で、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている。」
弟子たちは心を痛めて、「まさかわたしのことでは」と代わる代わる言い始めた。
イエスは言われた。「十二人のうちの一人で、わたしと一緒に鉢に食べ物を浸している者がそれだ。人の子は、聖書に書いてあるとおりに、去って行く。だが、人の子を裏切るその者は不幸だ。生まれなかった方が、その者のためによかった。」

ヨハネ福音書では、最後の晩餐の席でイスカリオテのユダの中にサタンが入ったとされる。

ヨハネ13:26-27
イエスは、「わたしがパン切れを浸して与えるのがその人だ」と答えられた。それから、パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。
ユダがパン切れを受け取ると、サタンが彼の中に入った。そこでイエスは、「しようとしていることを、今すぐ、しなさい」と彼に言われた。

イエスの逮捕

ユダは祭司長たちと群衆をイエスのもとに案内し、接吻することでイエスを示して引き渡し、イエスは逮捕された。

マルコ14:43-52
さて、イエスがまだ話しておられると、十二人の一人であるユダが進み寄って来た。祭司長、律法学者、長老たちの遣わした群衆も、剣や棒を持って一緒に来た。イエスを裏切ろうとしていたユダは、「わたしが接吻するのが、その人だ。捕まえて、逃がさないように連れて行け」と、前もって合図を決めていた。ユダはやって来るとすぐに、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。人々は、イエスに手をかけて捕らえた。
居合わせた人々のうちのある者が、剣を抜いて大祭司の手下に打ってかかり、片方の耳を切り落とした。そこで、イエスは彼らに言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持って捕らえに来たのか。わたしは毎日、神殿の境内で一緒にいて教えていたのに、あなたたちはわたしを捕らえなかった。しかし、これは聖書の言葉が実現するためである。」
弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げてしまった。一人の若者が、素肌に亜麻布をまとってイエスについて来ていた。人々が捕らえようとすると、亜麻布を捨てて裸で逃げてしまった。

イスカリオテのユダのその後

その後、『マタイ福音書』では、ユダは自らの行いを悔いて、祭司長たちから受け取った銀貨を神殿に投げ込み、首を吊って自殺したことになっている。

使徒言行録』では、ユダは裏切りで得た金で買った土地に真っ逆様に落ちて、内臓がすべて飛び出して死んだことになっている。
最終更新:2020年09月29日 16:42