使徒信条(Symbolum Apostolicum)は、
キリスト教のうち、西方教会(カトリック教会、聖公会、
プロテスタント)における
基本信条のひとつ。ラテン語原文の冒頭の語をとって
クレド(Credo) とも呼ばれる。
東方教会(正教会、東方諸教会)は、使徒信条に告白されている内容は否定しないものの、使用はしてはいない。
使徒信条(または使徒信経)は、「古ローマ信条」(紀元200年頃に成立)に由来するもので、全世界にある多くのキリスト教会における共通したキリスト教信仰の基本的な告白となっており、それらの教会の礼拝においても唱えられている信条である。
現在の形のものは紀元7世紀にカール1世の時代の典礼統一に伴い、南ガリアで成立したが、一時期、
十二使徒に由来するとも言われ(現在、その説は完全に否定されている)、この名称が付いた。
古代教会の代表的な信条としては他に「
ニカイア・コンスタンティノポリス信条」等があり、(古代教会の諸信条をまとめて『公同信条』とも言う。『公同』は「普遍的な、共通の」という意味で、「全世界どこの教会においても信じられている同じ信仰であること」を意味する)、「ニカイア・コンスタンティノポリス信条」の内容は教義的であるのに対して、「使徒信条」はより古い素朴な初期の教会の信仰を反映している。
使徒信条という名は、この信条が使徒たちの忠実な信仰のまとめとみなされていることによる。全部を12節に分け、十二使徒がそれぞれの節を書いたという伝説すらあるが、説明したように、実際には使徒には由来しておらず、伝説上の域を出る確証はない。
使徒信条の本文
ラテン語原文
Symbolum Apostolicum
Credo in Deum Patrem omnipoténtem, Creatórem cæli et terræ,
et in Iesum Christum, Fílium Eius unicum, Dóminum nostrum,
qui concéptus est de Spíritu Sancto, natus ex Maria Virgine,
passus sub Póntio Piláto, crucifixus,
mórtuus, et sepúltus,descéndit ad ínferos,
tértia die resurréxit a mórtuis, ascéndit ad cælos,
sedet ad déxteram Dei Patris omnipoténtis,
inde ventúrus est iudicáre vivos et mórtuos.
Et in Spíritum Sanctum,sanctam Ecclésiam cathólicam,
sanctórum communiónem,remissiónem peccatórum,
carnis resurrectiónem,vitam ætérnam.Amen.
訳1
我は天地の造り主、全能の父なる神を信ず。
我はその独り子、我らの主、イエス・キリストを信ず。
主は聖霊によりて宿り、処女マリヤより生まれ、
ポンテオ・ピラトのもとに苦しみを受け、十字架につけられ、
死にて葬られ、陰府(よみ)に降り、
三日目に死人の内よりよみがえり、天に昇り、
全能の父なる神の右に坐したまえり。
かしこより来りて、生ける者と死ぬる者とを審きたまわん。
我は聖霊を信ず。聖なる公同の教会、
聖徒の交わり、罪の赦し、
身体のよみがえり、永遠の生命を信ず。アーメン。
訳2
天地の創造主、全能の父である神を信じます。
父のひとり子、わたしたちの主
イエス・キリストを信じます。
主は聖霊によってやどり、おとめマリアから生まれ、
ポンティオ・ピラトのもとで苦しみを受け、十字架につけられて
死に、葬られ、陰府(よみ)に下り、
三日目に死者のうちから復活し、天に昇って、全能の父である神の右の座に着き、
生者(せいしゃ)と死者を裁くために来られます。
聖霊を信じ、聖なる普遍の教会、聖徒の交わり、罪のゆるし、
からだの復活、永遠のいのちを信じます。
アーメン。
洗礼式の信仰告白・信仰宣言
天地の創造主、全能の神である父を信じます。
父のひとり子、おとめマリアから生まれ、苦しみを受けて葬られ、
死者のうちから復活して、父の右におられる主イエス・キリストを信じます。
聖霊を信じ、聖なる普遍の教会、聖徒の交わり、罪のゆるし、
からだの復活、永遠のいのちを信じます。
古ローマ信条の本文
アンキュラの主教マルケロスによって340年頃にギリシャ語で書かれた手紙にある。
我は父なる全能の神を信ず。
またその独り子、我らの主キリスト・イエスを信ず。
主は聖霊と処女マリヤより生れ、
ポンテオ・ピラトのもとで十字架につけられ、葬られ、
3日目に死人の中より甦えり、天に昇り、父なる神の右に座したまえり。
かしこより来りて、生ける者と死にたる者とを審きたまわん。
また聖霊、聖なる教会、罪の赦し、
身体の甦りを信ず
一般に,この定式は2世紀後半からバプテスマ告白文として用いたと考えられている。4世紀後半には西方諸教会に普及し、礼典に用いられていった。
参考
最終更新:2020年10月06日 14:41