個性と背景 > 信仰

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信仰 宗教は、D&Dの多元宇宙に含まれる諸世界での暮らしの重要な一部分だ。神々がこの世界を歩み、クレリックたちが神の力を呼び招き、邪教のカルト員どもが地下のねぐらで昏き生け贄を捧げ、輝かしきパラディンたちが闇を照らす灯火となる世界において、神々を疑ったりその存在を否定することなどできようはずがない。
 D&Dの諸世界の住人たちの多くは、時と場合に応じてさまざまな神を崇める。たとえばフォーゴトンレルムの人々は同じ一日のうちに、恋愛の成就を願って愛と美の女神スーニーに祈り、市場にゆく前に交易の女神ワキーンに捧げ物をし、大嵐が吹く時は嵐の神ターロスの機嫌をとろうとするだろう。多くの人々は、それらの神々の中で特にお気に入りの一柱(守護神格)を選び、その理想や教えを自分のものとして受け入れている。また、もっぱら一柱の神格に身を捧げる者も少しはいて、その多くは神格の理想を奉じる勇者や司祭となる。
 あるキャンペーンにおいて神々への信仰が存在するのか、存在するならばいかなる神々が信仰されているのかは、そのキャンペーンのDMが決めることだ1。君は参加するキャンペーン世界で信仰対象となっている神々の中から、自分のキャラクターが仕えるか、崇めるか、口先だけの祈りを捧げる対象として、特定の一柱の神格を選んでもよい。君のキャラクターが頻繁に祈る相手として数柱の神格を選んでもよい。君のDMのキャンペーンで信仰対象となっている神々のことを脳内にメモしておき、適切なタイミングで神々の名を唱えるだけでもよい。

1……たとえばダーク・サンの世界では、神々は世界とかけ離れている。そもそも存在しないのかもしれない。そしてクレリックは神々ではなく元素の力を借りて魔法を使う。

パンテオン

 D&Dの多元宇宙に存在する各世界には、それぞれ固有の神格からなる“パンテオン”(神格集団)がある。その中にはフォーゴトン・レルムグレイホークのように多数の神々を含むパンテオンもあれば、エベロンドラゴンランスのように絞られたものもある。ヒューマン以外の多くの種族は多くの世界で同一の神々を崇拝している――たとえばモラディンはフォーゴトン・レルムグレイホーク、“暁の戦”その他多くの世界のドワーフたちに崇められている。

ゆるやかなパンテオン

 ほとんどのD&D世界には、複数の神々を含むゆるやかなパンテオンがある。たくさんの神格が、世界のさまざまな側面を司り、互いに力を合せたり競いあったりして、宇宙の諸事を動かしている。人は公共の社(やしろ)に集まって生命や知恵の神を拝み、あるいは秘密の場所に集って欺きや破壊の神を崇める。“暁の戦”の諸神格は“ゆるやかなパンテオン”の一例である。
 このようなパンテオン内の個々の神格にはそれぞれの権能があり、その権能を推し進める務めがある。たとえばグレイホーク世界のハイローニアスは武勇の神であり、クレリックパラディンを傘下に呼び集めて、名誉ある戦いと騎士道と正義の考えを世に広めさせる。ハイローニアスは自分の兄弟にあたる戦と圧政の神ヘクストアとの終りなき戦いの中にあって、なおも己の権能を推し進めようとする。その権能とは、大義のための正々堂々の戦である。
 ほとんどのD&D世界の住人は多神教徒であり、自分たちの神格を尊ぶ一方、他の文化のパンテオンの存在を認識している。従って、人々は属性に関わらずさまざまな神に敬意を払うのが普通である。たとえばフォーゴトン・レルム世界では、人は海に出る前には“混沌にして悪”の海の女神アンバーリーをなだめ、収穫期には共同体の祭りに出て“中立にして善”の農業の女神チョーンティーアを祀り、狩に先だっては“混沌にして悪”の狩の神マラーに祈る。
 一部の者は特定の神格が我に仕えよと呼び招く声を聞き、その神を守護神格とする。中でも打ち込んで仕える者は僧侶となり、社を建て、あるいは聖所に赴いて勤めにつく。さらに少数の者は召命を受けてクレリックパラディンとなり、まことの信仰の力と、力に伴う責任を身に帯びる。
 社や寺院は宗教儀式や祭りのさいに共同体の集合場所として機能する。こうした場所に勤める神官は、神の物語を語り守護神格の教えを説き、皆の相談に乗り祝福を授け、宗教儀式を執り行ない、神格の好み給う活動のための訓練をほどこす。都市や大きな町には、共同体の重んじる一柱の神を祀る寺院が複数存在することもある。いっぽう小さな集落になると、そこに住む人々の崇めるすべての神を一つの社に祀っていることもある。

“暁の戦”の諸神格DW

神格 属性 領域 聖印
アイウーン、知識の女神 真なる中立 知識 曲がった先端が目を象っている杖
アヴァンドラ、変化と幸運の女神 混沌にして善 欺き 波線が3つ重なったもの
アスモデウス、圧政の神 秩序にして悪 欺き支配 3つの三角形を三角に並べたもの
ヴェクナ、悪しき秘密の神 中立にして悪 知識 一部が砕けた片目の髑髏
エラティス、文明と発明の女神 秩序にして中立 支配知識 上半分だけの歯車
グルームシュ、破壊の神 混沌にして悪 3つの骨状突起の生えた三角形の目
コアロン、魔法と芸術の神 混沌にして善 コアロン太陽秘術 八芒星
コード、力と嵐の神 混沌にして中立 稲妻の鍔がついた嵐の剣
ゼヒーア、闇と毒の神 混沌にして悪 欺き 短剣を象った蛇
セイハニーン、月の女神 混沌にして善 欺き 三日月
タリズダン、狂気の神 混沌にして悪 欺き ぎざぎざのついた左回りの螺旋
ティアマト、富と欲望と復讐の女神   秩序にして悪 欺き 先端が湾曲した五芒星
トログ、アンダーダークの神 中立にして悪 枷を表す丸の上にTの字がついたもの
バハムート、正義と高潔の神 秩序にして善 生命 左向きのドラゴンの横顔
ペイロア、太陽と農業の神 中立にして善 生命太陽 六本の光条が外へ伸びて行く光の輪
ベイン、戦と征服の神 秩序にして悪 支配 下を向いた3つ又の鉤爪
メローラ、荒野と海の女神 真なる中立 自然 波に似た渦巻き
モラディン、創造の神 秩序にして善 知識 炎を上げる金床
レイヴン・クィーン、死の女神 秩序にして中立 墓所 左向きのワタリガラスの横顔
ロルス、蜘蛛と嘘の女神 混沌にして悪 欺き 蜘蛛の巣をモチーフにした八芒星

緊密なパンテオン

 “ゆるやかなパンテオン”とちがって、“緊密なパンテオン”は特定の神格たちの小集団を崇める教義教説を持つ単一の宗教のためのものである。緊密なパンテオンの信徒はパンテオン内の特定の神格を他の神格よりも好むことはあるかもしれないが、しかしこのパンテオンのすべての神格を尊び、すべての神格にしかるべき供物と祈りをささげて敬意を示す。
 緊密なパンテオンの大きな特徴は、信徒がパンテオンのすべての神格に共通する単一の原理、教義を受け入れていることである。緊密なパンテオンの神々は一体になって信徒を守り導く。緊密なパンテオンというのは家族のようなものと考えてもよい。パンテオンを導く一、二柱の神格は親のようなもの。それ以外の神は、このパンテオンを尊ぶ文化におけるさまざまな重要な要素の守り神となる。一つの寺院にはパンテオンのすべての神が祀られる。
 緊密なパンテオンの多くは、一柱以上の“仲間はずれの神”を含んでいる。パンテオン全体に仕える僧侶は、その神格への信仰を認めない。通常、これは悪の神格であり、パンテオンの敵である。好例がギリシア神話の巨神族ティタンである。これらの神格にはこれを崇める独自のカルトが存在し、社会からの追放者や悪党の信仰を集めている。こうしたカルト教団は秘教カルトにも似ており、その構成員は一柱の神をもっぱら崇める。とはいえ、“仲間はずれの神”のカルトの一員も、口先では緊密なパンテオンの寺院に敬意を払うことが多い。
 北欧神話の諸神格は緊密なパンテオンの一例である。オーディンはパンテオンの主神であり、父にあたる。トール、チュール、フレイヤといった神格は北欧文化の重要な諸要素を体現する。一方ロキとこれに仕える者は影に潜み、ある時は他の神格を助け、ある時はパンテオンの敵方について神々の不利益を図る。

人型生物と神々

 神々についていうと、ヒューマンは他の種族よりも多様な信仰と宗教団体を有している。『D&D4e』の多数の背景世界において、エルフオークゴブリンその他の人型生物は“緊密なパンテオン”を持っている。たとえばオークはグルームシュか、これに従う神々の一柱を崇める。一方、ヒューマンは実にさまざまな神々を崇める。ヒューマンの個々の文化には独自の神々がいる可能性がある。

仕えている神格を選ぶ

 君がクレリックなどの信仰系クラスまたは侍祭背景を持つキャラクターをプレイしているなら、君は参加するキャンペーン世界で信仰対象となっている神々の中から、君が仕えている(またはかつて仕えていた)神格を一柱選ぶことをお勧めする。
最終更新:2022年08月21日 05:58