異邦人 ソード・コーストや“北方”の地に住む大方の一般人その他の人々には、一つの共通点がある。彼らは生まれた土地から数マイル以上離れることなく生涯を終えるのだ。
だが、君は違う。
君はずっと遠くから来た。そこはあまりにも遠いので、“北方”の地の大方の人は、そんな土地があることすら知らない。たまさか君の故郷の名を聞いたことがある者も、知っているのはその名前と、あとはその土地にまつわる馬鹿げたホラ話をいくつか、といったところ。君はわけあって故郷を離れ、フェイルーンのこの地にやってきた。君はそのわけを人に明かすかもしれず、秘めておくかもしれない。
君はこの地の風習の一部を風変わりで馴染めないと思うことだろう。それは間違いない。けれどその一方で、ここの人たちにとっては何でもない物事が、君にとっては見たこともない新しく面白いものだということもある。逆に君自身も、どこへ行っても周りの人から良くも悪くも興味深い人物と見られる。
(注:この背景はフォーゴトン・レルムでキャンペーンを遊ぶPC用にできてはいるが、地名その他の要素を修正するといった若干のアレンジを加えることでどのキャンペーンにも移し替え可能である)
異邦人の利益
異邦人の背景を選択した場合、君は以下の利益を得る。
君はなぜここに来たか
異邦人である君は何かしらの理由があって旅に出た。進んで、あるいはやむなく、故郷を離れた。どうして故郷をこんな遠く離れたのかを決めるには、以下の表でロールするか選択すること。後述する出身地選択の項にも、その地から来た者にふさわしい理由の例が記してある。
1d6 |
理由 |
1d6 |
理由 |
1 |
使節 |
4 |
巡礼 |
2 |
追放 |
5 |
観光 |
3 |
逃亡 |
6 |
放浪 |
君はどこから来たか
異邦人のPCを作成する際、一番大事なのは君の故郷が一体どこかを決めることだ。ここに上げる土地土地は、みな“北方”の地やソード・コーストから十分に離れており、この背景を採用するにふさわしい。
カラ・トゥア
フェイルーンのずっと東にあるカラ・トゥア大陸には、ソード・コーストの住人にとっては見慣れぬ珍しい風習を持つ民が住む。フェイルーンの民は、カラ・トゥア人をみんなひっくるめてショウ人と呼ぶ(注:ショウはカラ・トゥア最大の国家)。君がカラ・トゥアから来たのなら、本当はショウ人でなくてもショウ人と呼ばれる公算が高い。
カラ・トゥア人は時おり、外交のため、あるいは豊かな商人連合と取引の約束を取り付けるために、フェイルーンの地へやってくる。君はこうした使節団の一員としてこの地を訪れ、そして任務が終わった後もここに残ることにしたのかもしれない。
1……ショウ(またはショウ・ロン(招龍)やトゥ・ロン(土龍)といった中華風の国家で使用される言語。モチーフは中国語。
2……ワ(倭)やコザクラ(小桜)といった戦国時代~江戸時代の日本風の国家で使用される言語。モチーフは日本語。
ムルホランド
ムルホランドの事物のほとんどは何から何まで、地形からこの地を治める神王(ファラオ)を讃えて築かれた建造物に至るまで、ソード・コースト人にとっては異質なものばかりである。逆にムルホランド人の君も、故郷の砂漠を離れ、フェイルーン北部の不慣れな気候の中を旅してきて、同じようなカルチャー・ショックを受けたことだろう。
ムルホランドの熱炎の砂漠と古代のピラミッドのもとを離れ、別の人生を垣間見る者はいる。なぜそうするのか、理由はさまざまである。君は“北方”の地に、たんにこの湿潤な土地の風変わりなさまを見るためにやってきたのかもしれない。あるいは故郷の砂漠であんまりにも多くの敵を作ってしまったので逃げてきたのかもしれない。
(注:ムルホランドは
エジプトの神々からなる、独自のパンテオンの諸神格を崇拝している土地であり、その統治者もそれらの神格を名乗るデミゴッド/半神である。“呪文荒廃”によって大打撃を受け、さらにムルホランド・パンテオンの神々がフェイルーンを去ったことで、アイマスカー人による征服に抗えずその文明は完全に消滅したと思われていたが、“大分割”のさなか、ムルホランドの神々がその末裔たちの姿を借りて完全に顕現を果たし、地上アイマスカーの統治者たちを打倒したことで、この国は復活を果たした)
アンダーダーク
君の故郷とソード・コーストとの間の距離はここに挙げる他の土地土地とソード・コーストとの距離よりもずっと近い――物理的には。君はアンダーダークのとある居住地からやってきた。アンダーダークの居住地といえば、ひとつひとつに独自の変わった習わしや掟があるのが当たり前だ。君は、もし地下世界の大都市や居住地の生まれだというなら、たぶんその地に住む種族の一員なのだろう。けれど、地下世界の生まれではなく、子供のころに捕まって地下へ連れ込まれ、そこで育ったという可能性もある。
君がアンダーダークの種族の一員なら、地上には種族の“使節”としてやって来たのかもしれない。罪あって、あるいは無実の罪を着せられて、刑を逃れてきたのかもしれない。君がアンダーダークの種族の一員でないとしても、仮にも長く暮らした土地を離れたのは、何らかの不利な状況から逃れるためかもしれない。
特徴:注目の的
君の言葉の抑揚、立ち居振る舞い、話の中に出てくるたとえ、顔形。どれをとっても君が異邦の客であることは明白だ。君のゆくところ、常に奇異の目がつきまとう。それがわずらわしいこともある。反面、学者や遼遠の地に心惹かれる者たちが君に好意的な関心を寄せることもある。もちろん世間一般の人々が君の故郷の話を聞きたがることもよくある。
君はこうした興味関心を利用して、普通なら会えない人物に会い、普通なら出入りできない場所に出入りすることができる。貴人や学者や豪商などが、君の出てきたはるかな国や、その人々のことを聞きたがるのだ。
おすすめの人物像
1d6 |
人格的特徴 |
1 |
“人とどれくらい距離を置くのが望ましいか”の概念が周りと違う。何気なく接近しすぎるのかもしれない。逆に他人に近づかれるだけでびくりとするのかもしれない。 |
2 |
何が食べ物であり、何が食べ物でないかの概念が周りと違う。周りの食習慣を見て“素敵だ”、“なんでこんなことをするんだ”、“とんでもない!”等と思うことがある。 |
3 |
身につけた行動規範がなかなか人に理解されない。 |
4 |
周りの人には馴染みのないやり方で好意をあらわしたり、さげすみをあらわしたりする。 |
5 |
故郷の習わしに従って神を崇めるのだが、その習わしがこの地の人々には奇異に映る。 |
6 |
一日の始まり、あるいは終わりに、周りの者には馴染みのない、ちょっとした伝統的な儀式を行う。 |
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尊ぶもの |
1 |
開放的。旅で出会った親切な人々からは学ぶべきことが多い。(善) |
2 |
慎み。私はこの異郷に慣れてない以上、用心深く、周囲を尊重して身を処さねばならぬ。(秩序) |
3 |
冒険。私は故郷を遠く離れてここまで来た。すべてが風変わりで面白い!(混沌) |
4 |
狡猾。たしかに私は奴らのやり方は知らないかもしれない。だが奴らも私のやり方を知らない。そこがつけめだ。(悪) |
5 |
知識欲。何もかもが新しい。私はもっと知りたい。もっと学びたい。(中立) |
6 |
疑念。用心が肝要だ。ここでは誰が友で誰が敵かわからないのだから。(属性問わず) |
1d6 |
関わり深いもの |
1 |
故郷から持ってきた記念の品があるこれある限り、この異郷でどんな強敵に会っても怖くない。 |
2 |
故郷を遠く離れた今も、同胞の崇める神が、私の心をなぐさめてくれる。 |
3 |
同胞のために働く以上に立派なことはない。 |
4 |
自由は何よりの宝だ。誰にも二度と私の自由を奪わせはしない。 |
5 |
この見知らぬ土地の美と不思議に心を奪われてしまった。 |
6 |
やむを得ぬことであったが、愛する者(たち)と別れて来たのが悔やまれてならない。いつの日か再び会いたいものだ。 |
1d6 |
弱み |
1 |
「わが文化はこの地の文化にまさること数倍だ」と、内心ひそかに思っている(ことによると、ひそかに思っているだけではないかもしれない)。 |
2 |
要らざるもめごとを避けるため、現地語がわからぬふりをしている。 |
3 |
この地の新しい嗜好品その他の楽しみごとに目がない。 |
4 |
この地の民の行いや考えの一部を、単に自分と違うというだけの理由で、不快に思っている。 |
5 |
他の神の信徒のことを、良くて“だまされている罪なき人々”、悪ければ“無知なバカ者ども”と思っている。 |
6 |
この地の人々のエキゾチックな美しさに弱い。 |
最終更新:2022年09月06日 15:30