ヴァイスシュヴァルツ ポータブル ブーストヴァイス/ブーストシュヴァルツ
【ゔぁぃすしゅゔぁるつ ぽーたぶる ぶーすとゔぁいす/ぶーすとしゅゔぁるつ】
ジャンル
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カードシミュレーター×恋愛ADV
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 ブーストヴァイス
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 ブーストヴァルツ
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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バンダイナムコゲームス
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開発元
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B.B.スタジオ テンキー
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発売日
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2011年11月23日
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定価(税別)
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通常版: 6,800円 初回限定生産版: 10,480円
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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カードバトル&恋愛ADVといった内容 カードキャラのシーン再現演出は良好 長いロードとお馬鹿なCPUのルーチン 収録タイトルの少なさ 入門ソフトとしては悪く無い
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概要
ブシロードより発売中のTCG『ヴァイスシュヴァルツ(Weiβ Schwarz)』をPSPで遊べるソフト。
『ブーストヴァイス』と『ブーストシュヴァルツ』の2バージョンが同時発売された。
ゲーム全体の流れはADV仕立て。白黒学園に転校してきた男子生徒として1年間の学園生活を過ごす中で、意中のヒロインとの仲を深めつつカードゲームの対戦を行なっていく。
打倒済みのNPCと自由に対戦することもアドホック通信で対人戦を行うこともできる。
リアル版TCGより抜粋された、全8タイトルの人気アニメ・ゲームのカードに加えて、PSP版オリジナルシリーズが1つ収録されている。
あくまでゲーム用カードという扱いであり、これらのアニメのクロスオーバーストーリーが展開されるわけではない。
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ヴァイスシュヴァルツとは?
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「新世代のエンタメカードゲーム」と名打たれた通り、様々なアニメやゲームのキャラが描かれたカードで対戦するTCG。
イラストはシーンの切り抜きや雑誌ピンナップから拝借なども多いが、一部書き下ろしイラストもあり、純粋にキャラクターグッズとしても機能する。
カードデザインも、そのキャラの原作での特徴や印象に残るシーンを再現しつつ、ゲーム上差し支えないデザインに落とし込んでいるものが多い。
イベントカードやクライマックスカードではズバリ「名シーン」を再現。クライマックスとの連動で原作の感動シーンを擬似的に再現しつつ強力な効果を発揮するキャラカード多く存在する。
他のTCGと一線を引く「比較的運の比率が強めに出る」ルールのため、デッキのメタ読みや露骨な対策をする必要が薄く、本当に好きなキャラクターを重視してデッキを構築することが可能。どちらかといえば、競技よりカジュアルプレイに向いているゲームに仕上がっている。
参加作品はそれぞれ「ヴァイスサイド」「シュヴァルツサイド」に分かれている。
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シュヴァルツサイドは「カッコイイ!」。『ペルソナ4』『戦国BASARA』等の一般向けゲーム、『FAIRY TAIL』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』等のアニメが参戦している。
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商品形態
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『ブーストヴァイス』と『ブーストシュヴァルツ』の2バージョンが同時発売された。
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1周目開始時に選択できる初期デッキと、入手しやすいカードが異なっている(逆サイドのカードを購入するためには、約2倍のお金やCVPが必要となる)。しかしどちらか一方でなければ入手できないカードはない。
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逆サイドの初期デッキは2周目以降のプレイで選択可能。聖櫃の間(後述)も最終的にはちゃんと全解放される。お金やCVPも余りがちになるので、2周目からは両バージョンの違いはほとんど無くなる。
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両バージョンともに限定版「クライマックスボックス」が存在する。限定リアルカードやリアルTCGで使用できるグッズ類、そして非売品PSPソフト『ヴァイスシュヴァルツ ポータブル 2ターン目』が付属。
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「2ターン目」は、本編では不可能な「収録作品のキャラとの対戦」が楽しめる対戦特化ソフト。プレイデータは本編と共用される。
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この「2ターン目」で高効率な資金稼ぎが可能。しかし稼がなくてもクリアに支障はないバランスである。
評価点
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複雑なルールのリアル版TCGを、おおむね問題なく再現できており、その楽しさを味わえる。
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ソウルの増減や各種リソースの管理など、リアル版TCGでは煩雑な部分もCPUが全部やってくれる。
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特に、各種の効果によって増減したキャラのパワー値を常に表示している点は非常に快適(リアル版では、これを把握するのはけっこう面倒であった)。
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チュートリアルがとても丁寧。リアル版に付属しているルールブックを読むよりも、本作のチュートリアルのほうがずっとわかりやすい。これからヴァイスシュヴァルツを遊んでみたいがルールがわからない・プレイ相手が見つからないという人にもオススメできる。
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特に身近にデュエルスペースがない事が多い地方在住のプレイヤーにとっては、大会のような雰囲気を体験できたり実際にカードを動かしながらルールを覚えられる本作はありがたい。
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対戦相手のデッキが多彩
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デッキ名がパロディネタであったり、デッキのギミックが凝っていたり(名前に「涼」がつくキャラを集めたデッキ等)と中々面白い。
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アドホック通信による二人対戦が可能。また非正式対応ではあるがアドホッグパーティ等によるネット対戦も可能。
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ユーザー間でカード交換もできるので、1人大量にゲーム内のカードを持っている人からカードを貰ってデッキを組み、攻略を楽にするという手もある。
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計8タイトル(本作オリジナルで+1)の人気アニメから、リアルTCGと同内容のカードが収録されている。カード種類は総計1,000種類以上。
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本作オリジナルの「バンダイナムコ」は、赤が『ミスタードリラー』&『ワンダーモモ』、青が『ドルアーガの塔』、緑が『GOD EATER』、黄が『テイルズ オブ ジ アビス』と、バンナムの人気ゲームがカードとなっている。
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ADVパートで任意のヒロインとグッドエンドに到達した場合、そのヒロインのカードを手に入れることもできる。
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このヒロインカードは分類上「バンダイナムコ」タイトルの一種で、カード名や絵柄などにちょっとしたお遊びが盛り込まれている。そしてこれを含めた上でバランスが取れるように調整されている(例えば青ならレベル2の「柴 美波」のカードがあるため、その分レベル2以上の青カードの数が不足気味である)。
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ほとんどのキャラカードは、登場時やアタック時にアニメと同じ声優によるボイスで喋る。さらに、数は少ないが原作アニメの名シーンが新作アニメカットインで流れるカードもある。
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『アイマス』は、カードのモチーフとなった曲を実際に(一部分だけだが)歌ってくれる。
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フェイズ進行をアナウンスするナビゲートボイスも、色々なアニメキャラの物が用意されている。カードの収集率に応じて徐々に開放されていき自在に変更できるようになる。
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各作品のメインキャラはほとんど網羅。女性キャラだけでなく、キョン(涼宮ハルヒの憂鬱)や一方通行(とある魔術の禁書目録)など個性派男性キャラのナビゲートボイスも用意されている。
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プレイマットのデザインや「スキン」(データ表示部のデザインや各種エフェクト)も各作品の物が用意されており、好みやデッキに合わせて変更できる。
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ADVモードで展開される、オリジナルキャラとの学園恋愛ストーリーもそこそこ好評。
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よくある「カードゲームのストーリーモード」の域を超えており、立派にADVと呼ぶに足るボリュームがある。
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ただしシナリオについては「『カードゲームで全てが決まる学園』という設定なのに、カードゲームがストーリーや恋愛にほとんど絡まない」「1年間にわたって平板な日常描写が続き、ラストだけ唐突な超展開になる」などの欠点もある。ストーリーよりもキャラの魅力で支えているような内容である。
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中にはどんでん返しの結末が待っているヒロインもいる。
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周回数に応じて次の周でボーナスとして資金とCVPを加算されるので、その恩恵に与るのも良い。
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2周目以降はブシロードのマスコットキャラクター、「しよ子」こと河遠史緒を攻略可能に。
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デッキをなんと100個まで保存できる。保存枠が足りなくなることはまず起こらない。
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もちろん、所有カードを同時に複数のデッキに入れることも可能。
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デッキごとに作品ロゴと4つの色をあしらったアイコンを設定できるので、デッキが多すぎて探せないという事態も少ない。
問題点
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非常に長いディスクロードが頻繁に発生する。本作最大の問題点である。
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対戦の前後、ADVモードでの場所移動、デッキ編集の前後など、あらゆる操作のたびに15~30秒程度のロード時間が発生してしまう。メディアインストール機能はあるが、実際にはほとんど効果がない。
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ゲーム内のアルバイトで資金稼ぎができるが、画面が切り替わるごとにランダムに出てくるので狙う場合はかなり面倒。
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対戦中のプレイテンポは、オプションで最速に設定すれば特に問題がないレベル。思考時間も短い部類。
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ちなみに大手レビューサイト「mk2」での評価平均値は、他の要素は2.50~3.50点という一般水準なみの評価なのに、「快適さ」の値が0.83点と著しく低い。
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AIの思考ルーチンが馬鹿で物足りなく、興を削がれるという不満も多い。
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AIは圧殺を行わない。そのため敵がレベル0のキャラを前衛に3体並べたら、これを撃破しないようにサイドアタックのみで攻めれば、敵は手詰まりに陥りほぼ確実に勝てる。
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「パワーで負ける場合は必ずサイドアタック」「無意味にアンコールを行う」という癖があるため、「桜&ライダー」のような「正面のキャラのソウルを-1」のキャラを並べ、パワーを底上げすることによって、ほぼ確実に勝てる。
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一般に悪手とされる「先攻1ターン目からキャラを全力展開」を常に行なってくる。
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対象をとる効果を上手く使いこなせない。ひどい場合は対象が存在しないのに「チェンジ」の能力を起動してキャラをむざむざ自滅させたりする。
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イベントカードや起動能力(助太刀を除く)を全く使わない。
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クロックフェイズにおける行動が異常に消極的であり、先上がり(カードを置いて意図的にレベルアップ)を行わない。
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後衛向けのキャラを何故か前衛に置いたりする。しかも前衛から後衛への移動(逆も同様)を行わない。
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敵AIの馬鹿さをフォロー(誤魔化し?)するためか「おねがいシステム」というものが採用されている。
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対戦中にヒロインがプレイヤーの行動に対して色々な「おねがい」をしてくる。無視・失敗してもペナルティはほとんどないが、従うと好感度上昇やボーナスアイテムなどの恩恵がある。
勝利を目指す上で失策となる行動を進言してくる事もあるので、これに全て従おうとすると、プレイヤーにとってはちょっとしたハンデとなる。
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中には目的となるカードをデッキに入れてないのにそのカードを使って勝てといった無茶な「おねがい」をしてくることも。
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ラスボスが弱い
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悪役やライバルキャラの寄せ集めのデッキ(2種類ある)であり、何とも単純な内容である。
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ストーリーの展開からすれば妥当なのかもしれないが、もう少し強くしてもいい気がする。
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ギャルゲー部分をメインに楽しみたい人を考慮してあえて弱くしたのかもしれないが。
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おまけに、真の黒幕と言えるキャラの姿が見えず、ボイスのみである。
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せっかくのクロスオーバー作品なのに、イラストの一枚絵があれば少し違っていたかもしれないが。
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うっかりミスをしやすい。
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効果の対象を選ぶときに見えにくかったり、間違えてボタンを押してしまったりとミスをしやすい。
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最初の設定の時に主人公の顔(アバター)を決めることができるが、ゲーム内で表示される機会が少なすぎてほとんど無意味である。
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せめて一人称や口調が変わる仕様があれば面白かったのだが。
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参戦作品の少なさ、微妙なチョイス
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「リアルでカードの収集が困難なタイトルをゲームで使ってみたい」という声も多かったのだが、収録作品の少なさと古さに肩透かしを食らった者もいた。
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『D.C. ~ダ・カーポ~』シリーズや『リトルバスターズ!』はそこそこ人気があって種類も豊富なのになぜ参戦できなかったのか。後者に至ってはスピンオフ扱いの『クドわふたー』があるにもかかわらず未参戦。
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発売がバンナムな時点で、セガの『シャイニングフォースIXA』やカプコンの『戦国BASARA』、アトラスの『ペルソナ』シリーズなどが収録されないのは版権の問題上、仕方がないとも言えるのだが。
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さらに言えば、バンナムやブシロードが版権を持つ作品以外は個別に版権料を支払っているはずなので、この収録タイトルだけでも上出来だと褒めるべきなのかもしれない。実際、参戦作品は一部を除けば、いずれも人気・知名度が高いタイトルではある。
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プロモーションカード(レアリティPR)がほとんど収録されていない。「リアルで入手困難なカードだからこそ使ってみたかった」という声が多い。
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このせいで、自分がリアル版TCGで愛用しているデッキを再現したり、過去の大会優勝者のデッキをコピーしたりといった遊び方が困難。
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「色褪せた世界」というカードが収録されていないが、これは本作発売時点で禁止カード指定されていた物なので妥当な措置といえる。
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しかし本作発売以後に禁止や制限指定されたカード(「コーデリアのお花畑」「情報連結解除」など)は収録されており普通に使える。本作からリアルのヴァイスシュヴァルツに参戦する方は要注意。
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ルール処理に関する不備。
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複数のキャラがリバースした場合、本来アンコール処理の順番はキャラの所有プレイヤーが任意に決められるはずなのだが、本作では強制的に、キャラが場に登場した順番に処理させられる(このせいで、例えば「反英雄アベンジャー」というカードの能力を活用したい時に支障が生じる場合がある)。
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2体以上のキャラの自動能力による効果が同時に発生した場合も、同様に解決順が強制で決められる。
またそれらが同名カードであった場合、いま解決処理を求められている効果がどのカードの物なのかを判別できない(特に「方向音痴あずさ」で頻繁に発生)。
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バグのため「氷華&インデックス」というカードの効果が正常に機能しない。
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ゲーム開始時に選んだ初期デッキと同じシリーズのカードを、CVPというポイントを払って手に入れられる(その逆でいらないカードをCVPに変換もできる)「聖櫃の間」があり、周回プレイでどんどん開放されていくのだが、「バンダイナムコ」だけは聖櫃がない。
そのためR(レア)以上のカードを揃えたいのならば、有り余る資金に物を言わせてランダムパックを購入し続けるしかない。
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各タイトルのカードをコンプする場合、購買部でパックを買うよりも好感度を上げて聖櫃の間で入手した方が効率がいい。
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2バージョンそれぞれに対応するタイトルがパッケージに明記されていないので、購入の際には事前に調べておかなくてはならない。せめて裏面に書いておいて欲しかった。
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もっとも2周目以降のプレイでは両バージョンの違いはほとんどなくなるので、それほど深刻な欠点ではないが。
総評
もともと『ヴァイスシュヴァルツ』自体が定評ある良作カードゲームなのだが、PSP版である本作も、その本質的な魅力を損なっていない。
特に原作アニメと同じ声優を多数起用して大量のボイスを新規収録しており、「声」に対する力の入れよう・本気っぷりは驚異的である。
中にはベテランや人気声優も多く、彼ら支払うギャラだけでも決して安くはなかっただろう。
『ヴァイスシュヴァルツ』の特徴である「原作のキャラや名場面への思い入れ」という要素を、より強調した造りになっていると言える。
それだけに、ディスクロードという技術的な欠点により快適に楽しめないソフトとなってしまったのは、とても残念である。
最終更新:2024年08月19日 17:46