機甲盤古 第三十一章
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<翻訳者コメント>
※ 10ページ 提親:結婚前に執り行う儀式。
※ 13ページ 青樓:遊女屋のこと。
※ 18ページ 従良:身請けされた先に嫁ぐこと。
※ 10ページ 提親:結婚前に執り行う儀式。
※ 13ページ 青樓:遊女屋のこと。
※ 18ページ 従良:身請けされた先に嫁ぐこと。
- 1ページ
黄雷「どうした、もう動けないか?」
(この様子じゃあ……)
(天界の執行を待つまでもないかもな……)
盤古(………)
(この様子じゃあ……)
(天界の執行を待つまでもないかもな……)
盤古(………)
- 2ページ
盤古(黄雷さん……)
(あなたはどうして…)
黄雷『遠からず、天界の神官がお前の前に姿を現すだろう』
『機甲兵であるお前を始末するために』
(あなたはどうして…)
黄雷『遠からず、天界の神官がお前の前に姿を現すだろう』
『機甲兵であるお前を始末するために』
- 3ページ タイトル:桂蘭坊[前編]
- 4ページ
龐伸「あ、見えたー! とっちゃん、はやくはやく!」
龐松「慌てるねぇ。まずぁその辺で一休みしてだな…」
「な…! 何でぇこいつぁ!?」
龐松「慌てるねぇ。まずぁその辺で一休みしてだな…」
「な…! 何でぇこいつぁ!?」
- 5ページ
盤古「こんにちは」
龐伸「デッケぇカメだなあ! なあ、ソレ何だ?」
盤古「トビです。道端の草で作りました」
「よろしければ差し上げますよ」
龐伸「わ! あんがとな!」
龐伸「デッケぇカメだなあ! なあ、ソレ何だ?」
盤古「トビです。道端の草で作りました」
「よろしければ差し上げますよ」
龐伸「わ! あんがとな!」
- 6ページ
龐松「メカ亀盤古だぁ?」
「喋る機械ってぇのは初めてでぇ」
盤古「驚かせてしまい、申し訳ありませんでした」
(……? この方手を…)
「あなたは…えー……」
龐松「龐松でぇ」
「あっちはぁ息子の龐伸」
「喋る機械ってぇのは初めてでぇ」
盤古「驚かせてしまい、申し訳ありませんでした」
(……? この方手を…)
「あなたは…えー……」
龐松「龐松でぇ」
「あっちはぁ息子の龐伸」
- 7ページ
龐松「で、機械が何で一人で旅してんでぇ?」
「敦煌に何かあんのか?」
盤古「…………」
龐松「何でぇ、話せねぇのか?」
盤古「い……いえ」
龐松「ま、深入りはぁしねぇよ」
「触れられたくねぇ事情ってモンは、誰にでもあらぁな」
盤古「そんなことは…そう、整備をしに行くんです。工場に」
龐松「ほーう」
盤古(話したくない訳ではないのです)
(ただ……)
「敦煌に何かあんのか?」
盤古「…………」
龐松「何でぇ、話せねぇのか?」
盤古「い……いえ」
龐松「ま、深入りはぁしねぇよ」
「触れられたくねぇ事情ってモンは、誰にでもあらぁな」
盤古「そんなことは…そう、整備をしに行くんです。工場に」
龐松「ほーう」
盤古(話したくない訳ではないのです)
(ただ……)
- 8ページ
盤古(本当にわからないのです…)
(それがしは何故…敦煌を目指しているのでしょう……)
「龐松さんはどうして…」
「父子で旅をなさっているのですか?」
「?」
「深入りはぁしねぇよ、触れられたくねぇ事情ってモンは…」
龐松「やめねぇか!」
「しゃーねぇなぁ…ナイショだぜ?」
(それがしは何故…敦煌を目指しているのでしょう……)
「龐松さんはどうして…」
「父子で旅をなさっているのですか?」
「?」
「深入りはぁしねぇよ、触れられたくねぇ事情ってモンは…」
龐松「やめねぇか!」
「しゃーねぇなぁ…ナイショだぜ?」
- 9ページ
龐松「実はぁよ…プロポーズしに行くんでぇ」
盤古「え?」
龐松「伸坊はぁ早くに母親ぁ亡くしちまってなぁ」
「俺はぁ2年前、ある女に惚れちまって…」
「そいつぁそこの桂蘭坊で働いてんだが…」
「そん時…いつかお前を迎えに行くってぇ伝えたんでぇ」
盤古「え?」
龐松「伸坊はぁ早くに母親ぁ亡くしちまってなぁ」
「俺はぁ2年前、ある女に惚れちまって…」
「そいつぁそこの桂蘭坊で働いてんだが…」
「そん時…いつかお前を迎えに行くってぇ伝えたんでぇ」
- 10ページ
盤古「ははあ……」
「これはこれは! 素晴らしいですね」
「それがし応援いたしますよ!」
龐松「け…けどよぉ」
「俺はぁ見ての通りの武骨モンでよぉ…」
「提親の作法なんざぁわかりゃしねぇ。前の女房もいい加減でよぉ」
「どうにか誠意を示せねぇかと、休憩がてらここで知恵を絞ろうとしてたんでぇ」
盤古「提親ですか……」
「これはこれは! 素晴らしいですね」
「それがし応援いたしますよ!」
龐松「け…けどよぉ」
「俺はぁ見ての通りの武骨モンでよぉ…」
「提親の作法なんざぁわかりゃしねぇ。前の女房もいい加減でよぉ」
「どうにか誠意を示せねぇかと、休憩がてらここで知恵を絞ろうとしてたんでぇ」
盤古「提親ですか……」
- 11ページ
盤古「提親で必要なものといいますと…酒…首飾り…飴…こんなところでしょうか」
龐松「亀が何でんなこと知ってんでぇ?」
盤古「それがし、万能型メカ亀ですので」
龐松「……吐け」
盤古「はい?」
龐松「提親の情報洗いざらい吐きやがれってんでぇ! でねぇとお前のその電線(タマ)ぁ…」
盤古「わあ! わかりました! わかりましたから! 少々お時間をください…!」
龐松「亀が何でんなこと知ってんでぇ?」
盤古「それがし、万能型メカ亀ですので」
龐松「……吐け」
盤古「はい?」
龐松「提親の情報洗いざらい吐きやがれってんでぇ! でねぇとお前のその電線(タマ)ぁ…」
盤古「わあ! わかりました! わかりましたから! 少々お時間をください…!」
- 12ページ
黄雷「………」
(あの野郎……)
(のんきに談笑してる場合かよ…)
(自分の置かれてる立場がわかってるのか)
(まあ、オレには関係ないけどな)
(それにしても……)
(あの野郎……)
(のんきに談笑してる場合かよ…)
(自分の置かれてる立場がわかってるのか)
(まあ、オレには関係ないけどな)
(それにしても……)
- 13ページ
黄雷(この辺はやけに女が多いな…何かあるのか?)
(……っ!)
(そうか、ここは…)
(青樓だ……!)
(……っ!)
(そうか、ここは…)
(青樓だ……!)
- 14ページ
黄亙『雷、見よ』
『この先には、賭博、青樓を生業とする者で溢れている』
『彼らもまた、虎神が守護を預かる者達なのだ』
黄雷『しかし父上、彼らは無法者のはず…』
『何故父上は神明でありながら、彼らを処罰せず、守ろうとするのですか?』
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
『虎神とは守護神』
『もがき苦しみながらも、必死に生を全うしようとする者を支える存在…』
『それは、闇を生きる彼らとて変わりはしない』
『この先には、賭博、青樓を生業とする者で溢れている』
『彼らもまた、虎神が守護を預かる者達なのだ』
黄雷『しかし父上、彼らは無法者のはず…』
『何故父上は神明でありながら、彼らを処罰せず、守ろうとするのですか?』
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
『虎神とは守護神』
『もがき苦しみながらも、必死に生を全うしようとする者を支える存在…』
『それは、闇を生きる彼らとて変わりはしない』
- 15ページ
黄雷『そんなに多くの人を、私は守れるのでしょうか?』
黄亙『急くことはない。今はただ観るのだ。彼らの営みを』
『雷、お前にもいつかその時が来るだろう』
『だが、決して熱くはならぬことだ』
『神明の力は、決して万能ではないのだから』
『力では全てを救えぬこともある。雷よ、覚えておくのだ。お前が…』
『己が無力さに苛まれた時は――』
黄亙『急くことはない。今はただ観るのだ。彼らの営みを』
『雷、お前にもいつかその時が来るだろう』
『だが、決して熱くはならぬことだ』
『神明の力は、決して万能ではないのだから』
『力では全てを救えぬこともある。雷よ、覚えておくのだ。お前が…』
『己が無力さに苛まれた時は――』
- 16ページ
黄雷「………」
「ん?」
(あいつら、虎神を祭ってるのか…)
「ん?」
(あいつら、虎神を祭ってるのか…)
- 17ページ
女「う…う…」
楊鳳「もう泣くんじゃないよ」
「しっかりおし。過ぎたことだ」
「そんなに目を腫らしちゃ、また客に逃げられちまう」
「痛い目は、もう見たくないだろう?」
女「……もう嫌」
「ウチだって女の子なんだ。素敵な殿方と、普通の家庭を築きたい…なのに…そんな権利ウチには無いっていうの?」
楊鳳「もう泣くんじゃないよ」
「しっかりおし。過ぎたことだ」
「そんなに目を腫らしちゃ、また客に逃げられちまう」
「痛い目は、もう見たくないだろう?」
女「……もう嫌」
「ウチだって女の子なんだ。素敵な殿方と、普通の家庭を築きたい…なのに…そんな権利ウチには無いっていうの?」
- 18ページ
楊鳳「あるさ」
「女が女の幸せを願うのは当然のこと。それに、方法も無い訳じゃない」
「あたし達を娶ってくれる男性(ヒト)に、従良に出されさえすれば…ね」
女「……簡単に言ってくれるね」
「ウチ達の身体は子を産めないんだよ?」
「そんな女を受け入れる男性(ヒト)なんて、いると思う?」
「女が女の幸せを願うのは当然のこと。それに、方法も無い訳じゃない」
「あたし達を娶ってくれる男性(ヒト)に、従良に出されさえすれば…ね」
女「……簡単に言ってくれるね」
「ウチ達の身体は子を産めないんだよ?」
「そんな女を受け入れる男性(ヒト)なんて、いると思う?」
- 19ページ
楊鳳「そりゃ難しいさ。けどだからこそ、あたし達は強くなきゃいけない」
女「どれだけ待てっていうの…5年? 10年?」
「そんな虚無縹眇…ウチには無理」
「ウチは、あんたみたいにはなれないよ…」
楊鳳「………」
女「どれだけ待てっていうの…5年? 10年?」
「そんな虚無縹眇…ウチには無理」
「ウチは、あんたみたいにはなれないよ…」
楊鳳「………」
- 20ページ
楊鳳「…………な……!」
(と……虎神様!?)
黄雷「お前、名は何という?」
楊鳳「は…わ……」
「私めは、楊鳳と申しまする!」
(と……虎神様!?)
黄雷「お前、名は何という?」
楊鳳「は…わ……」
「私めは、楊鳳と申しまする!」
- 21ページ
楊鳳「あ…あの、虎神様ですか?」
黄雷「そうだ」
「楊鳳、ちと訊ねたいんだが…」
楊鳳「は……はい!」
黄雷「お前……オレにやってもらいたいことはあるか?」
楊鳳「え…」
「…………」
黄雷「?」
黄雷「そうだ」
「楊鳳、ちと訊ねたいんだが…」
楊鳳「は……はい!」
黄雷「お前……オレにやってもらいたいことはあるか?」
楊鳳「え…」
「…………」
黄雷「?」
- 22ページ
楊鳳「虎神様、私めは卑しき青樓女」
「このような身で…虎神様のご厚意を給るわけには参りません」
黄雷「なに、その程度、些末なことだ」
「気にすることはないんだぞ?」
楊鳳「虎神様は青樓に従事する私共でさえ、こうして見守って下さっていた。それがわかっただけで…」
「私めには十分でございます」
「このような身で…虎神様のご厚意を給るわけには参りません」
黄雷「なに、その程度、些末なことだ」
「気にすることはないんだぞ?」
楊鳳「虎神様は青樓に従事する私共でさえ、こうして見守って下さっていた。それがわかっただけで…」
「私めには十分でございます」
- 23ページ
楊鳳「…ご加護に感謝を!」
- 24ページ
盤古「「保」という字は、こう、人に呆けると書きます」
龐伸「じゃあこれ「アホ」ってこと?」
盤古「そうではありません」
「これは元々、大人が子どもを背負う姿を甲骨文字で表していたのです。ちょうど、信くんがお父さんにおんぶされているイメージですね」
「そして、お母さんが子どもを抱っこする姿は、このように「女」+「子」で「好」という字になったのです」
龐伸「へえー! 盤古あったまいいー」
「で、何でオイラにこんなこと教えてくれんの?」
盤古「まあ……ヒマ潰しでしょうか」
龐伸「じゃあこれ「アホ」ってこと?」
盤古「そうではありません」
「これは元々、大人が子どもを背負う姿を甲骨文字で表していたのです。ちょうど、信くんがお父さんにおんぶされているイメージですね」
「そして、お母さんが子どもを抱っこする姿は、このように「女」+「子」で「好」という字になったのです」
龐伸「へえー! 盤古あったまいいー」
「で、何でオイラにこんなこと教えてくれんの?」
盤古「まあ……ヒマ潰しでしょうか」
- 25ページ
龐松『とっちゃんちょっくら用事あっからよぉ!』
盤古と待っててくれぃ!
龐伸「こんな時間までなーにやってんだろ」
もう夕方だぜ?
盤古「余程大事な用事だったのでしょうね」
龐伸「「ぷろぽーず」とか?」
盤古「し、知ってたのですか?」
龐伸「だってさー」
「とっちゃん毎ばんユメん中で好きだ好きだ言ってんだぜ?」
うるさくてねれやしねー
盤古「あはは……」
「ということは……」
盤古と待っててくれぃ!
龐伸「こんな時間までなーにやってんだろ」
もう夕方だぜ?
盤古「余程大事な用事だったのでしょうね」
龐伸「「ぷろぽーず」とか?」
盤古「し、知ってたのですか?」
龐伸「だってさー」
「とっちゃん毎ばんユメん中で好きだ好きだ言ってんだぜ?」
うるさくてねれやしねー
盤古「あはは……」
「ということは……」
- 26ページ
盤古「信くんは賛成なんですね? その、新しいお母さんが出来ること…」
龐伸「あ、うん。とっちゃんもよろこんでるみてーだし……」
「親のケッコンなんてめったに見れねーもん。オイラ、スッゲー楽しみなんだ!」
盤古(それがしにはもう……)
(あまり時間は残されていないのかもしれません)
(ですが、この父子の……)
(家族の幸せを願うことができるというのならば。それがしは…)
龐伸「あ、うん。とっちゃんもよろこんでるみてーだし……」
「親のケッコンなんてめったに見れねーもん。オイラ、スッゲー楽しみなんだ!」
盤古(それがしにはもう……)
(あまり時間は残されていないのかもしれません)
(ですが、この父子の……)
(家族の幸せを願うことができるというのならば。それがしは…)
- 27ページ
盤古「信くん」
龐伸「うん?」
盤古「ここで待っていても、時間をもて余すだけです。ならばいっそ……」
「それがし達二人で…」
「お父さんをこっそり応援しに行きませんか?」
龐伸「うん?」
盤古「ここで待っていても、時間をもて余すだけです。ならばいっそ……」
「それがし達二人で…」
「お父さんをこっそり応援しに行きませんか?」
- 28ページ
黄雷(神明がこのまま、はいそうですかと引き下がれるかよ)
(ともあれ、まずは青樓の内情を知らなきゃな)
「文字幻術・透字訣!!」
(ともあれ、まずは青樓の内情を知らなきゃな)
「文字幻術・透字訣!!」
- 29ページ
客1「鳳ちゃんの琴は絶品だねえ!」
客2「なあ鳳ちゃん、今度食事でもどうだい?」
客3「オイ、先に誘ったのは俺だぞ!」
楊鳳「相すみません。あたし今ダイエット中なのさ♡」
「お気持ちだけ頂戴しますね♡」
客2「なあ鳳ちゃん、今度食事でもどうだい?」
客3「オイ、先に誘ったのは俺だぞ!」
楊鳳「相すみません。あたし今ダイエット中なのさ♡」
「お気持ちだけ頂戴しますね♡」
- 30ページ
客1「相変わらずガード固いんだから、鳳ちゃんは」
客2「仕方ないさ。鳳ちゃん人気者だからな!」
黄雷(なるほど…確かにオレの助けはいらないのかもな)
(あいつは娼婦としちゃ恵まれている…)
男「また客からのチップちょろまかしやがって! このアマ…っ!」
女「ご…こめんなさい…!」
客2「仕方ないさ。鳳ちゃん人気者だからな!」
黄雷(なるほど…確かにオレの助けはいらないのかもな)
(あいつは娼婦としちゃ恵まれている…)
男「また客からのチップちょろまかしやがって! このアマ…っ!」
女「ご…こめんなさい…!」
- 31ページ
黄雷(それに引き換え、底辺ではこの有り様だ)
(どちらを優先すべきかは、一目瞭然!)
「文字幻術…」
「返字訣!!」
男「!?」
「?」
「?」
「な…何しやがったテメェ!」
女「ひっ…!」
(どちらを優先すべきかは、一目瞭然!)
「文字幻術…」
「返字訣!!」
男「!?」
「?」
「?」
「な…何しやがったテメェ!」
女「ひっ…!」
- 32ページ
楊鳳「取り込み中かい?」
「これ、さっき客から貰ったんだけどさ、あたしには似合わないみたいだ」
「よかったらどうだい?」
男「おほ…!」
「へへ、すまねえな」
楊鳳「それで、その娘がどうしたのさ?」
男「いや…何でもねえ」
「へ、運のいい奴だ」
「これ、さっき客から貰ったんだけどさ、あたしには似合わないみたいだ」
「よかったらどうだい?」
男「おほ…!」
「へへ、すまねえな」
楊鳳「それで、その娘がどうしたのさ?」
男「いや…何でもねえ」
「へ、運のいい奴だ」
- 33ページ
女2「鳳姐さん、あの首飾り本当によかったの?」
楊鳳「いいのさ。あの男…最近金銭絡みで随分と頭を抱えていたらしいから…」
「少し手を貸してあげただけ」
「まあ……」
「ああして喜んでくれてる内は、あたし達を目の敵にすることもないだろうさ」
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
『虎神とは守護神』
黄雷(そうだ…忘れていた)
楊鳳「いいのさ。あの男…最近金銭絡みで随分と頭を抱えていたらしいから…」
「少し手を貸してあげただけ」
「まあ……」
「ああして喜んでくれてる内は、あたし達を目の敵にすることもないだろうさ」
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
『虎神とは守護神』
黄雷(そうだ…忘れていた)
- 34ページ
黄雷(守護神としての矜恃に従うなら)
(あの男だって救うべき対象だったんじゃないか)
(………)
(こんな根本的なことを見落とすなんて!)
(あいつを観ていると痛感する…)
(オレは、まだまだ未熟者だ……)
(今のオレじゃ、してやれることなんて…何も無い)
(神明のくせに…オレは……!)
(あの男だって救うべき対象だったんじゃないか)
(………)
(こんな根本的なことを見落とすなんて!)
(あいつを観ていると痛感する…)
(オレは、まだまだ未熟者だ……)
(今のオレじゃ、してやれることなんて…何も無い)
(神明のくせに…オレは……!)
- 35ページ
女2「鳳姐さん、またお稽古?」
楊鳳「京城の新曲が出たから、少し触れておきたいのさ」
女2「姐さんすっかりここの看板ね! でも、どうしてそんなに頑張るの?」
楊鳳「………知っての通り」
「格の高い娼婦というのは門外不出。客を選ぶ権利さえある」
楊鳳「京城の新曲が出たから、少し触れておきたいのさ」
女2「姐さんすっかりここの看板ね! でも、どうしてそんなに頑張るの?」
楊鳳「………知っての通り」
「格の高い娼婦というのは門外不出。客を選ぶ権利さえある」
- 36ページ
楊鳳「だけどそれは、客の相手を減らせるということでもある」
女2「………? どういうこと?」
楊鳳「あたしにはね、将来を約束した男性(ヒト)がいるのさ」
「あの男性(ヒト)、あたしを嫁にしたいって、いつか迎えにくるって。そう言ってくれた」
「けど、あたしは娼婦」
「貞操を守り抜くなんて土台無理な話」
「それが叶うとするなら…客達の劣情を寄せ付けない…」
「圧倒的な高嶺の花で居続けるしかない」
女2「………? どういうこと?」
楊鳳「あたしにはね、将来を約束した男性(ヒト)がいるのさ」
「あの男性(ヒト)、あたしを嫁にしたいって、いつか迎えにくるって。そう言ってくれた」
「けど、あたしは娼婦」
「貞操を守り抜くなんて土台無理な話」
「それが叶うとするなら…客達の劣情を寄せ付けない…」
「圧倒的な高嶺の花で居続けるしかない」
- 37ページ
楊鳳「だからあたしは自分を磨き続けるのさ。あの男性(ヒト)を待つ限り…あの男性(ヒト)のためなら、あたしはどんな努力も惜しまない」
- 38ページ
女2「ねえ鳳姐さん、その男性(ヒト)ってどんな人?」
「姐さんの想い人だものね。ハンサムでお金持ちで、優しいとか?」
楊鳳「いいや…ハンサムでもお金持ちでもなく」
「不器用で荒々しくて、とびっきりガサツで…素敵な男性(ヒト)さ!」
「姐さんの想い人だものね。ハンサムでお金持ちで、優しいとか?」
楊鳳「いいや…ハンサムでもお金持ちでもなく」
「不器用で荒々しくて、とびっきりガサツで…素敵な男性(ヒト)さ!」
- 39ページ
盤古「あ…いましたいました」
龐伸「うしし、とっちゃんキンチョーしてやんの」
盤古「そうそう、こちらがバレないよう、気を付けてくださいね!」
龐伸「わかってらあ!」
盤古(あれは、提親の…)
(龐松さん、本当に全て揃えられたのですね!)
龐伸「うしし、とっちゃんキンチョーしてやんの」
盤古「そうそう、こちらがバレないよう、気を付けてくださいね!」
龐伸「わかってらあ!」
盤古(あれは、提親の…)
(龐松さん、本当に全て揃えられたのですね!)
- 40ページ
盤古(しかし…龐松さんのケガが気になります)
(プロポーズをするなら、ケガの完治を待ってからでもよかったのでは?)
(……ケガといえば……)
(魯泉は今頃、どうしているのでしょうか……)
(プロポーズをするなら、ケガの完治を待ってからでもよかったのでは?)
(……ケガといえば……)
(魯泉は今頃、どうしているのでしょうか……)
- 41ページ
龐伸「盤古!」
「何してんの? こっちこっち!」
盤古「あ…」
「すみません! すぐに行きます!」
龐伸「はやくはやく! おいてっちゃうよ!」
「何してんの? こっちこっち!」
盤古「あ…」
「すみません! すぐに行きます!」
龐伸「はやくはやく! おいてっちゃうよ!」
