機甲盤古日本語翻訳wiki

第三十一章

最終更新:

kikoubanko_jp

- view
だれでも歓迎! 編集
機甲盤古 第三十一章
http://www.comibook.com/cb471



<翻訳者コメント>
※ 10ページ 提親:結婚前に執り行う儀式。
※ 13ページ 青樓:遊女屋のこと。
※ 18ページ 従良:身請けされた先に嫁ぐこと。



  • 1ページ
黄雷「どうした、もう動けないか?」
  (この様子じゃあ……)
  (天界の執行を待つまでもないかもな……)
盤古(………)

  • 2ページ
盤古(黄雷さん……)
  (あなたはどうして…)
黄雷『遠からず、天界の神官がお前の前に姿を現すだろう』
  『機甲兵であるお前を始末するために』

  • 3ページ タイトル:桂蘭坊[前編]

  • 4ページ
龐伸「あ、見えたー! とっちゃん、はやくはやく!」
龐松「慌てるねぇ。まずぁその辺で一休みしてだな…」
  「な…! 何でぇこいつぁ!?」

  • 5ページ
盤古「こんにちは」
龐伸「デッケぇカメだなあ! なあ、ソレ何だ?」
盤古「トビです。道端の草で作りました」
  「よろしければ差し上げますよ」
龐伸「わ! あんがとな!」

  • 6ページ
龐松「メカ亀盤古だぁ?」
  「喋る機械ってぇのは初めてでぇ」
盤古「驚かせてしまい、申し訳ありませんでした」
  (……? この方手を…)
  「あなたは…えー……」
龐松「龐松でぇ」
  「あっちはぁ息子の龐伸」

  • 7ページ
龐松「で、機械が何で一人で旅してんでぇ?」
  「敦煌に何かあんのか?」
盤古「…………」
龐松「何でぇ、話せねぇのか?」
盤古「い……いえ」
龐松「ま、深入りはぁしねぇよ」
  「触れられたくねぇ事情ってモンは、誰にでもあらぁな」
盤古「そんなことは…そう、整備をしに行くんです。工場に」
龐松「ほーう」
盤古(話したくない訳ではないのです)
  (ただ……)

  • 8ページ
盤古(本当にわからないのです…)
  (それがしは何故…敦煌を目指しているのでしょう……)
  「龐松さんはどうして…」
  「父子で旅をなさっているのですか?」
  「?」
  「深入りはぁしねぇよ、触れられたくねぇ事情ってモンは…」
龐松「やめねぇか!」
  「しゃーねぇなぁ…ナイショだぜ?」

  • 9ページ
龐松「実はぁよ…プロポーズしに行くんでぇ」
盤古「え?」
龐松「伸坊はぁ早くに母親ぁ亡くしちまってなぁ」
  「俺はぁ2年前、ある女に惚れちまって…」
  「そいつぁそこの桂蘭坊で働いてんだが…」
  「そん時…いつかお前を迎えに行くってぇ伝えたんでぇ」

  • 10ページ
盤古「ははあ……」
  「これはこれは! 素晴らしいですね」
  「それがし応援いたしますよ!」
龐松「け…けどよぉ」
  「俺はぁ見ての通りの武骨モンでよぉ…」
  「提親の作法なんざぁわかりゃしねぇ。前の女房もいい加減でよぉ」
  「どうにか誠意を示せねぇかと、休憩がてらここで知恵を絞ろうとしてたんでぇ」
盤古「提親ですか……」

  • 11ページ
盤古「提親で必要なものといいますと…酒…首飾り…飴…こんなところでしょうか」
龐松「亀が何でんなこと知ってんでぇ?」
盤古「それがし、万能型メカ亀ですので」
龐松「……吐け」
盤古「はい?」
龐松「提親の情報洗いざらい吐きやがれってんでぇ! でねぇとお前のその電線(タマ)ぁ…」
盤古「わあ! わかりました! わかりましたから! 少々お時間をください…!」

  • 12ページ
黄雷「………」
  (あの野郎……)
  (のんきに談笑してる場合かよ…)
  (自分の置かれてる立場がわかってるのか)
  (まあ、オレには関係ないけどな)
  (それにしても……)

  • 13ページ
黄雷(この辺はやけに女が多いな…何かあるのか?)
  (……っ!)
  (そうか、ここは…)
  (青樓だ……!)

  • 14ページ
黄亙『雷、見よ』
  『この先には、賭博、青樓を生業とする者で溢れている』
  『彼らもまた、虎神が守護を預かる者達なのだ』
黄雷『しかし父上、彼らは無法者のはず…』
  『何故父上は神明でありながら、彼らを処罰せず、守ろうとするのですか?』
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
  『虎神とは守護神』
  『もがき苦しみながらも、必死に生を全うしようとする者を支える存在…』
  『それは、闇を生きる彼らとて変わりはしない』

  • 15ページ
黄雷『そんなに多くの人を、私は守れるのでしょうか?』
黄亙『急くことはない。今はただ観るのだ。彼らの営みを』
  『雷、お前にもいつかその時が来るだろう』
  『だが、決して熱くはならぬことだ』
  『神明の力は、決して万能ではないのだから』
  『力では全てを救えぬこともある。雷よ、覚えておくのだ。お前が…』
  『己が無力さに苛まれた時は――』

  • 16ページ
黄雷「………」
  「ん?」
  (あいつら、虎神を祭ってるのか…)

  • 17ページ
女「う…う…」
楊鳳「もう泣くんじゃないよ」
  「しっかりおし。過ぎたことだ」
  「そんなに目を腫らしちゃ、また客に逃げられちまう」
  「痛い目は、もう見たくないだろう?」
女「……もう嫌」
 「ウチだって女の子なんだ。素敵な殿方と、普通の家庭を築きたい…なのに…そんな権利ウチには無いっていうの?」

  • 18ページ
楊鳳「あるさ」
  「女が女の幸せを願うのは当然のこと。それに、方法も無い訳じゃない」
  「あたし達を娶ってくれる男性(ヒト)に、従良に出されさえすれば…ね」
女「……簡単に言ってくれるね」
 「ウチ達の身体は子を産めないんだよ?」
 「そんな女を受け入れる男性(ヒト)なんて、いると思う?」

  • 19ページ
楊鳳「そりゃ難しいさ。けどだからこそ、あたし達は強くなきゃいけない」
女「どれだけ待てっていうの…5年? 10年?」
 「そんな虚無縹眇…ウチには無理」
 「ウチは、あんたみたいにはなれないよ…」
楊鳳「………」

  • 20ページ
楊鳳「…………な……!」
  (と……虎神様!?)
黄雷「お前、名は何という?」
楊鳳「は…わ……」
  「私めは、楊鳳と申しまする!」

  • 21ページ
楊鳳「あ…あの、虎神様ですか?」
黄雷「そうだ」
  「楊鳳、ちと訊ねたいんだが…」
楊鳳「は……はい!」
黄雷「お前……オレにやってもらいたいことはあるか?」
楊鳳「え…」
  「…………」
黄雷「?」

  • 22ページ
楊鳳「虎神様、私めは卑しき青樓女」
  「このような身で…虎神様のご厚意を給るわけには参りません」
黄雷「なに、その程度、些末なことだ」
  「気にすることはないんだぞ?」
楊鳳「虎神様は青樓に従事する私共でさえ、こうして見守って下さっていた。それがわかっただけで…」
  「私めには十分でございます」

  • 23ページ
楊鳳「…ご加護に感謝を!」

  • 24ページ
盤古「「保」という字は、こう、人に呆けると書きます」
龐伸「じゃあこれ「アホ」ってこと?」
盤古「そうではありません」
  「これは元々、大人が子どもを背負う姿を甲骨文字で表していたのです。ちょうど、信くんがお父さんにおんぶされているイメージですね」
  「そして、お母さんが子どもを抱っこする姿は、このように「女」+「子」で「好」という字になったのです」
龐伸「へえー! 盤古あったまいいー」
  「で、何でオイラにこんなこと教えてくれんの?」
盤古「まあ……ヒマ潰しでしょうか」

  • 25ページ
龐松『とっちゃんちょっくら用事あっからよぉ!』
   盤古と待っててくれぃ!
龐伸「こんな時間までなーにやってんだろ」
   もう夕方だぜ?
盤古「余程大事な用事だったのでしょうね」
龐伸「「ぷろぽーず」とか?」
盤古「し、知ってたのですか?」
龐伸「だってさー」
  「とっちゃん毎ばんユメん中で好きだ好きだ言ってんだぜ?」
   うるさくてねれやしねー
盤古「あはは……」
  「ということは……」

  • 26ページ
盤古「信くんは賛成なんですね? その、新しいお母さんが出来ること…」
龐伸「あ、うん。とっちゃんもよろこんでるみてーだし……」
  「親のケッコンなんてめったに見れねーもん。オイラ、スッゲー楽しみなんだ!」
盤古(それがしにはもう……)
  (あまり時間は残されていないのかもしれません)
  (ですが、この父子の……)
  (家族の幸せを願うことができるというのならば。それがしは…)

  • 27ページ
盤古「信くん」
龐伸「うん?」
盤古「ここで待っていても、時間をもて余すだけです。ならばいっそ……」
  「それがし達二人で…」
  「お父さんをこっそり応援しに行きませんか?」

  • 28ページ
黄雷(神明がこのまま、はいそうですかと引き下がれるかよ)
  (ともあれ、まずは青樓の内情を知らなきゃな)
  「文字幻術・透字訣!!」

  • 29ページ
客1「鳳ちゃんの琴は絶品だねえ!」
客2「なあ鳳ちゃん、今度食事でもどうだい?」
客3「オイ、先に誘ったのは俺だぞ!」
楊鳳「相すみません。あたし今ダイエット中なのさ♡」
  「お気持ちだけ頂戴しますね♡」

  • 30ページ
客1「相変わらずガード固いんだから、鳳ちゃんは」
客2「仕方ないさ。鳳ちゃん人気者だからな!」
黄雷(なるほど…確かにオレの助けはいらないのかもな)
  (あいつは娼婦としちゃ恵まれている…)
男「また客からのチップちょろまかしやがって! このアマ…っ!」
女「ご…こめんなさい…!」

  • 31ページ
黄雷(それに引き換え、底辺ではこの有り様だ)
  (どちらを優先すべきかは、一目瞭然!)
  「文字幻術…」
  「返字訣!!」
男「!?」
 「?」
 「?」
 「な…何しやがったテメェ!」
女「ひっ…!」

  • 32ページ
楊鳳「取り込み中かい?」
  「これ、さっき客から貰ったんだけどさ、あたしには似合わないみたいだ」
  「よかったらどうだい?」
男「おほ…!」
 「へへ、すまねえな」
楊鳳「それで、その娘がどうしたのさ?」
男「いや…何でもねえ」
 「へ、運のいい奴だ」

  • 33ページ
女2「鳳姐さん、あの首飾り本当によかったの?」
楊鳳「いいのさ。あの男…最近金銭絡みで随分と頭を抱えていたらしいから…」
  「少し手を貸してあげただけ」
  「まあ……」
  「ああして喜んでくれてる内は、あたし達を目の敵にすることもないだろうさ」
黄亙『悪しきを罰すは虎神の役目ではない』
  『虎神とは守護神』
黄雷(そうだ…忘れていた)

  • 34ページ
黄雷(守護神としての矜恃に従うなら)
  (あの男だって救うべき対象だったんじゃないか)
  (………)
  (こんな根本的なことを見落とすなんて!)
  (あいつを観ていると痛感する…)
  (オレは、まだまだ未熟者だ……)
  (今のオレじゃ、してやれることなんて…何も無い)
  (神明のくせに…オレは……!)

  • 35ページ
女2「鳳姐さん、またお稽古?」
楊鳳「京城の新曲が出たから、少し触れておきたいのさ」
女2「姐さんすっかりここの看板ね! でも、どうしてそんなに頑張るの?」
楊鳳「………知っての通り」
  「格の高い娼婦というのは門外不出。客を選ぶ権利さえある」

  • 36ページ
楊鳳「だけどそれは、客の相手を減らせるということでもある」
女2「………? どういうこと?」
楊鳳「あたしにはね、将来を約束した男性(ヒト)がいるのさ」
  「あの男性(ヒト)、あたしを嫁にしたいって、いつか迎えにくるって。そう言ってくれた」
  「けど、あたしは娼婦」
  「貞操を守り抜くなんて土台無理な話」
  「それが叶うとするなら…客達の劣情を寄せ付けない…」
  「圧倒的な高嶺の花で居続けるしかない」

  • 37ページ
楊鳳「だからあたしは自分を磨き続けるのさ。あの男性(ヒト)を待つ限り…あの男性(ヒト)のためなら、あたしはどんな努力も惜しまない」

  • 38ページ
女2「ねえ鳳姐さん、その男性(ヒト)ってどんな人?」
  「姐さんの想い人だものね。ハンサムでお金持ちで、優しいとか?」
楊鳳「いいや…ハンサムでもお金持ちでもなく」
  「不器用で荒々しくて、とびっきりガサツで…素敵な男性(ヒト)さ!」

  • 39ページ
盤古「あ…いましたいました」
龐伸「うしし、とっちゃんキンチョーしてやんの」
盤古「そうそう、こちらがバレないよう、気を付けてくださいね!」
龐伸「わかってらあ!」
盤古(あれは、提親の…)
  (龐松さん、本当に全て揃えられたのですね!)

  • 40ページ
盤古(しかし…龐松さんのケガが気になります)
  (プロポーズをするなら、ケガの完治を待ってからでもよかったのでは?)
  (……ケガといえば……)
  (魯泉は今頃、どうしているのでしょうか……)

  • 41ページ
龐伸「盤古!」
  「何してんの? こっちこっち!」
盤古「あ…」
  「すみません! すぐに行きます!」
龐伸「はやくはやく! おいてっちゃうよ!」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
人気記事ランキング
ウィキ募集バナー