機甲盤古 第三十六章
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<翻訳者コメント>
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爺官「「これより、神都敦煌仙試科舉を開始いたします」」
「「受験生各位におかれましては、フェア精神のもと…」」
允玄「ストップ。何ですかそれは?」
爺官「開幕の挨拶にございます。陛下に内容の是非を伺いたく…」
允玄「ではなく、何を長々と読み上げているのかと聞いたのです」
「公文処理は効率が肝要…」
「「受験生各位におかれましては、フェア精神のもと…」」
允玄「ストップ。何ですかそれは?」
爺官「開幕の挨拶にございます。陛下に内容の是非を伺いたく…」
允玄「ではなく、何を長々と読み上げているのかと聞いたのです」
「公文処理は効率が肝要…」
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允玄「文書内容は朕にメールしてくだされば結構!」
「折り返し返信します」
爺官「え?」
允玄「本年度国防予算審査、返信」
「新地開拓事業報告書、送信」
「ね、早いでしょう?」
爺官「陛下…おそれながら、それではあまりに荘厳に欠けると申しますか…」
允玄「朕のメールボックスです」
「後はこちらで」
爺官「…御意に」
「折り返し返信します」
爺官「え?」
允玄「本年度国防予算審査、返信」
「新地開拓事業報告書、送信」
「ね、早いでしょう?」
爺官「陛下…おそれながら、それではあまりに荘厳に欠けると申しますか…」
允玄「朕のメールボックスです」
「後はこちらで」
爺官「…御意に」
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允玄「敦煌もまだまだのようですね」
班「ご謙遜を。陛下のご躍進は伝え聞いております」
「準備は順調。予行もつつがなく。仙試科擧は大成功間違いないでしょう」
「それに、天界の神明がこの地に一堂に会するというのですから…」
允玄「…期待されていると?」
班「それはもう! 我々人間は、神明と中々関わりを持てませんので」
班「ご謙遜を。陛下のご躍進は伝え聞いております」
「準備は順調。予行もつつがなく。仙試科擧は大成功間違いないでしょう」
「それに、天界の神明がこの地に一堂に会するというのですから…」
允玄「…期待されていると?」
班「それはもう! 我々人間は、神明と中々関わりを持てませんので」
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允玄「朕には面倒なだけですがね」
「国事も滞っているというのに」
「京城から遠路はるばる、天界との共催活動なんて」
班「陛下がそれほどのお人なのですよ。あちらが招かざるを得ないほどの…」
允玄「お世辞は結構」
「あれは…雲に……人?」
班「ん?」
「国事も滞っているというのに」
「京城から遠路はるばる、天界との共催活動なんて」
班「陛下がそれほどのお人なのですよ。あちらが招かざるを得ないほどの…」
允玄「お世辞は結構」
「あれは…雲に……人?」
班「ん?」
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班「おそらくは神明でしょう」
允玄「ほう……」
班「……え?」
允玄「ほう……」
班「……え?」
- 6ページ・7ページ タイトル:神都敦煌[前編]
- 8ページ
戴逢「言うとおり敦煌まで送ってやったぞ!」
「魏恩! 後は知らんからな!」
「ケっ!」
ヨーゼフ「何故ミー達モ牢屋ニ?」
魏恩「すぐに出られる。しばしの我慢だ」
「黄雷、見張りを頼むぞ」
黄雷「はい」
「魏恩! 後は知らんからな!」
「ケっ!」
ヨーゼフ「何故ミー達モ牢屋ニ?」
魏恩「すぐに出られる。しばしの我慢だ」
「黄雷、見張りを頼むぞ」
黄雷「はい」
- 9ページ
魏恩「では」
「儂は準備がある故…」
守芬「待って魏恩!」
「あなた、「治」の字が使えるんでしょ?」
「お願い…」
「魯泉のケガを治して!」
魏恩「……」
「すまぬ…それは後だ」
「儂は準備がある故…」
守芬「待って魏恩!」
「あなた、「治」の字が使えるんでしょ?」
「お願い…」
「魯泉のケガを治して!」
魏恩「……」
「すまぬ…それは後だ」
- 10ページ
守芬「あ…ちょっと…!」
盤古(魯泉が治療を待っているというのに…)
(それがしときたら……!)
「く…!」
「がああああああ!!!」
魯泉「!!」
黄雷「メカ亀! 何やってんだ!?」
盤古(魯泉が治療を待っているというのに…)
(それがしときたら……!)
「く…!」
「がああああああ!!!」
魯泉「!!」
黄雷「メカ亀! 何やってんだ!?」
- 11ページ
盤古「手錠さえ外せば…文字幻術が使える! 魯泉を治せる!」
黄雷「バカ!」
「お前の手の方が先に壊れちまうぞ!」
盤古「……」
魯泉「盤古! やめて!」
「ぼくは大丈夫だから!」
「それ以上はダメだ!」
黄雷「バカ!」
「お前の手の方が先に壊れちまうぞ!」
盤古「……」
魯泉「盤古! やめて!」
「ぼくは大丈夫だから!」
「それ以上はダメだ!」
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盤古「………すみません……」
「それがしの事情に、あなた方まで巻き込んでしまって…」
徐梅「そんな…盤古さんは命の恩人じゃないですか」
「今度は、私達の番です。盤古さんの命は、私達が守ります」
盤古「命……ですか?」
「それがしの事情に、あなた方まで巻き込んでしまって…」
徐梅「そんな…盤古さんは命の恩人じゃないですか」
「今度は、私達の番です。盤古さんの命は、私達が守ります」
盤古「命……ですか?」
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盤古「機械の体……作り物の感情…」
「果たしてこれを、「命」と呼んでよいものでしょうか?」
「それがしがそれを主張したところで…」
「所詮は機械。その気持ちさえ、紛い物でしかないのです」
守芬「……」
盤古「あなた方は生きている。「命」がある」
「何も…こんな所で危険を冒すことはありません」
「お気持ちは嬉しいですが、それがしのことはもう…」
「果たしてこれを、「命」と呼んでよいものでしょうか?」
「それがしがそれを主張したところで…」
「所詮は機械。その気持ちさえ、紛い物でしかないのです」
守芬「……」
盤古「あなた方は生きている。「命」がある」
「何も…こんな所で危険を冒すことはありません」
「お気持ちは嬉しいですが、それがしのことはもう…」
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守芬「盤古」
「私、旅の最中は付けるのを控えてたんだけど……」
「肌身離さず持っている物があるの」
「フィアンセの……友俊がくれた婚約指環」
盤古「…? はい…それが…?」
「あ……」
「私、旅の最中は付けるのを控えてたんだけど……」
「肌身離さず持っている物があるの」
「フィアンセの……友俊がくれた婚約指環」
盤古「…? はい…それが…?」
「あ……」
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盤古「守芬さん! 何をなさるのですか!?」
守芬「何って何よ。どうかした?」
盤古「それは、翁さんから贈られた大切な…!」
守芬「何って何よ。どうかした?」
盤古「それは、翁さんから贈られた大切な…!」
- 16ページ
守芬「大切な……「物」よ? だから何?」
「「命」じゃあるまいし。自分は機械だと卑下しておいて、指環の心配はするんだ?」
盤古「……あっ……!」
守芬「機械整備士はね、そういう想い…」
「機械への想い。忘れないものなのよ」
盤古「で…ですが…」
「何もそのために大事な指環まで壊すことは…」
「「命」じゃあるまいし。自分は機械だと卑下しておいて、指環の心配はするんだ?」
盤古「……あっ……!」
守芬「機械整備士はね、そういう想い…」
「機械への想い。忘れないものなのよ」
盤古「で…ですが…」
「何もそのために大事な指環まで壊すことは…」
- 17ページ
守芬「私ね…魯泉みたいにはできないかもしれないし」
「一度はあなたを見捨ててしまった人間よ」
「それでも盤古。何と言われようと、あなたを大切に思う気持ちに嘘はないの」
「これはせめてもの償い…私はあなたを助けたい」
黄雷「おい……」
「一度はあなたを見捨ててしまった人間よ」
「それでも盤古。何と言われようと、あなたを大切に思う気持ちに嘘はないの」
「これはせめてもの償い…私はあなたを助けたい」
黄雷「おい……」
- 18ページ
黄雷「盤古の審判が迫ってるんだぞ」
「考えるべきは、他にあるんじゃないか?」
守芬「…わかってるわよ、そのくらい」
「けど、私達じゃ天界の事柄に介入できないもの」
「今は魏恩を頼るしかないわ」
黄雷「そんなんでいいのかよ?」
「機甲兵は天界の兵器なんだ」
「それほどの存在(リスク)を、盤古との絆を強調した程度で覆せると思うのか?」
霍安「……」
「考えるべきは、他にあるんじゃないか?」
守芬「…わかってるわよ、そのくらい」
「けど、私達じゃ天界の事柄に介入できないもの」
「今は魏恩を頼るしかないわ」
黄雷「そんなんでいいのかよ?」
「機甲兵は天界の兵器なんだ」
「それほどの存在(リスク)を、盤古との絆を強調した程度で覆せると思うのか?」
霍安「……」
- 19ページ
黄雷「何がおかしい?」
霍安「ああ、いやいや……」
「ま……追々わかるさ」
魯泉「……?」
霍安「今は……」
「審判の時を粛々と待とうじゃないの」
霍安「ああ、いやいや……」
「ま……追々わかるさ」
魯泉「……?」
霍安「今は……」
「審判の時を粛々と待とうじゃないの」
- 20ページ・21ページ
魏恩「こちらが、件の少年と機甲兵である」
「僭越ながら…これより経緯を説明させていただく」
「僭越ながら…これより経緯を説明させていただく」
- 22ページ
班「……え?」
「盤古!?」
允玄「顔見知りで?」
班「はい。彼らには靈石市の山賊検挙、火災の件で恩がありまして…」
「それが何故こんな…?」
「盤古!?」
允玄「顔見知りで?」
班「はい。彼らには靈石市の山賊検挙、火災の件で恩がありまして…」
「それが何故こんな…?」
- 23ページ
允玄「……あの亀は神明ですか?」
班「いえ、彼はメカ亀…ロボットです」
允玄(ロボット…ね)
「班判官」
「その靈石市での子細、朕にお聞かせください」
班「は……はい!」
班「いえ、彼はメカ亀…ロボットです」
允玄(ロボット…ね)
「班判官」
「その靈石市での子細、朕にお聞かせください」
班「は……はい!」
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魏恩「…これにより、この機甲兵を無害と判断」
「かつ、その人道的功績は……」
黄雷(おかしい……)
(天界の兵器を前にした審判だってのに……)
(何故だ? 長官らはまるっきり他人事の様だ…)
「かつ、その人道的功績は……」
黄雷(おかしい……)
(天界の兵器を前にした審判だってのに……)
(何故だ? 長官らはまるっきり他人事の様だ…)
- 25ページ
魏恩「所有者、魯泉については…」
葛涅「あ、はい?」
「はいはいはい。はーい。ちょっと待ってな」
魏恩「長官殿…!」
葛涅「ふう…」
「魏恩……」
「大勢呼びつけ何事かと思えば…」
「機甲兵の処分の是非を問うだけとはな」
魏恩「しかし…!」
葛涅「命令はもう出してあったろう。全く…仙試科舉前で皆忙しいというのに…」
葛涅「あ、はい?」
「はいはいはい。はーい。ちょっと待ってな」
魏恩「長官殿…!」
葛涅「ふう…」
「魏恩……」
「大勢呼びつけ何事かと思えば…」
「機甲兵の処分の是非を問うだけとはな」
魏恩「しかし…!」
葛涅「命令はもう出してあったろう。全く…仙試科舉前で皆忙しいというのに…」
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葛涅「機甲兵の件など、ハナから重視しておらん」
「くだらんことに時間を取らすな」
黄雷「く……くだらないだって?」
霍安「フッ」
「虎ちゃんよ……」
「聞けば、キミが盤古のこと上に報告したんだってな?」
「機甲兵は天界の兵器だが、現存するほとんどは使い物にならないし、実物を見たことのある奴さえ稀だ」
「おまけに天界のこの関心の低さ。黙ってたって、誰も困りゃしないのさ」
「くだらんことに時間を取らすな」
黄雷「く……くだらないだって?」
霍安「フッ」
「虎ちゃんよ……」
「聞けば、キミが盤古のこと上に報告したんだってな?」
「機甲兵は天界の兵器だが、現存するほとんどは使い物にならないし、実物を見たことのある奴さえ稀だ」
「おまけに天界のこの関心の低さ。黙ってたって、誰も困りゃしないのさ」
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霍安「キミがやってるのは…」
「単なる自己満足。正義感に酔ってるだけ」
黄雷(……!!)
霍安「魏恩もよくやるよ」
「同情得ようと、ガキのケガそのまんまにしたりさ」
「ま……」
「神都はそうそう、同情票なんざ認めちゃくれないがな」
魏恩(ぐ…)
(いかん! 反応がいまいちだ……!)
「単なる自己満足。正義感に酔ってるだけ」
黄雷(……!!)
霍安「魏恩もよくやるよ」
「同情得ようと、ガキのケガそのまんまにしたりさ」
「ま……」
「神都はそうそう、同情票なんざ認めちゃくれないがな」
魏恩(ぐ…)
(いかん! 反応がいまいちだ……!)
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葛涅「魏恩、言いたいことは」
「大体わかった」
「この機甲兵は…そこな少年と切っても切れぬ関係にある」
「改造により兵器としての脅威も持ち合わせてはおらず」
「何より…感情と思考を持つ以上は、みだりに処分してはならんと」
「…そうだな?」
魯泉「は……はい!」
葛涅「――しかしだ…」
「大体わかった」
「この機甲兵は…そこな少年と切っても切れぬ関係にある」
「改造により兵器としての脅威も持ち合わせてはおらず」
「何より…感情と思考を持つ以上は、みだりに処分してはならんと」
「…そうだな?」
魯泉「は……はい!」
葛涅「――しかしだ…」
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葛涅「判例を認め、事ある毎に泣きつかれて来られるとなると…」
「我々も憂慮せざるを得ない…全てを赦免していてはキリがなかろう?」
「残念だが…天界の兵器管理法に基づき」
「この機甲兵は裁かねばならん。これより判決を……」
「我々も憂慮せざるを得ない…全てを赦免していてはキリがなかろう?」
「残念だが…天界の兵器管理法に基づき」
「この機甲兵は裁かねばならん。これより判決を……」
- 30ページ
葛涅「はい、どちらさん?」
「…はい? 何だって?」
「誰かね君は?」
允玄「ですから――」
「…はい? 何だって?」
「誰かね君は?」
允玄「ですから――」
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允玄「チャンスを与えてはどうかと言ったのです」
葛涅「……うん?」
葛涅「……うん?」
- 32ページ
魯泉「班様?」
班「魯泉!」
葛涅「あの2人は…?」
刑普「はて…どこかで見たような…」
魏恩「な…仙試科舉の関係者が存ぜぬと?」
「右の者はさておき…」
「左の者は、人間の「皇帝」である」
『皇…』
班「魯泉!」
葛涅「あの2人は…?」
刑普「はて…どこかで見たような…」
魏恩「な…仙試科舉の関係者が存ぜぬと?」
「右の者はさておき…」
「左の者は、人間の「皇帝」である」
『皇…』
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魯泉「ええええええええええ!!?」
守芬(信じられない…玉座におわす皇帝陛下が…)
(どうして突然現れて私達に助け船を出すのよ!?)
守芬(信じられない…玉座におわす皇帝陛下が…)
(どうして突然現れて私達に助け船を出すのよ!?)
- 34ページ
允玄「事情は概ね聞きました」
「そこの亀は全くもって罪を犯していないといいます」
「規定はあれど…」
「問答無用で切り捨てるのは、些か道理に欠けましょう」
刑普「控えよ! 人間が天界の案件に口を挟むなど…」
葛涅「彼は仙試科舉共催の要人だ。彼が要望を出すなら」
「それは建議に値する」
「まあ、適当に聞き流しておけばよい」
「そこの亀は全くもって罪を犯していないといいます」
「規定はあれど…」
「問答無用で切り捨てるのは、些か道理に欠けましょう」
刑普「控えよ! 人間が天界の案件に口を挟むなど…」
葛涅「彼は仙試科舉共催の要人だ。彼が要望を出すなら」
「それは建議に値する」
「まあ、適当に聞き流しておけばよい」
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允玄「活動規約を読む限り、抵触はしていませんでした」
「ならば…」
「どうでしょう。そこの亀を…」
「仙試科舉に出してみては?」
守芬「仙試科舉?」
「何それ?」
黄雷「ああ…そういえばあの時の公文にあったな」
「ならば…」
「どうでしょう。そこの亀を…」
「仙試科舉に出してみては?」
守芬「仙試科舉?」
「何それ?」
黄雷「ああ…そういえばあの時の公文にあったな」
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黄雷「天界主催の試験で、今年6月に行われるんだ」
守芬「それが?」
魏恩「………」
「黄雷、重要な点を忘れておるぞ」
「人間界では、科舉に通った進士は官職を与えられる」
「仙試科舉も然り。合格すれば天界の官職を得られ、神明と成るのだ」
守芬「それが?」
魏恩「………」
「黄雷、重要な点を忘れておるぞ」
「人間界では、科舉に通った進士は官職を与えられる」
「仙試科舉も然り。合格すれば天界の官職を得られ、神明と成るのだ」
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魏恩「過去には、妖怪が神明と成ったケースも存在する」
「すなわち、盤古も仙試科舉に通れば……」
「機甲兵からその身を変え」
「天界の神明に成れるということだ!」
「すなわち、盤古も仙試科舉に通れば……」
「機甲兵からその身を変え」
「天界の神明に成れるということだ!」
