機甲盤古 第十五章
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<翻訳者コメント>
- 1ページ
守芬「ここは万里の長城よ」
魯泉「これ、数千年前からあったんだよね?」
守芬「ええ…」
「けど、今見えてる部分は明の時代に造られたもので…」
「2000年も前のものは…」
「ほとんど無くなってしまっているの」
魯泉「これ、数千年前からあったんだよね?」
守芬「ええ…」
「けど、今見えてる部分は明の時代に造られたもので…」
「2000年も前のものは…」
「ほとんど無くなってしまっているの」
- 2・3ページ タイトル:萬里長城〔前編〕
- 4ページ
魯泉「………」
「盤古、あのさ……」
「龍神さまが言ってたこと、あれって本当なの? きみが仙界製の兵器だっていうのは…」
盤古「…本当です」
魯泉「じゃあ…」
「初めて会ったとき、どうして言わなかったの?」
「盤古、あのさ……」
「龍神さまが言ってたこと、あれって本当なの? きみが仙界製の兵器だっていうのは…」
盤古「…本当です」
魯泉「じゃあ…」
「初めて会ったとき、どうして言わなかったの?」
- 5ページ
魯泉「あの時きみは、兵器じゃなくて汎用型のメカ亀だっていってたよね?」
守芬「………」
魯泉「盤古には触れられたくないことなのかもしれない」
「だから無理にとは言わないよ」
「でも、話せる範囲でいいんだ…」
「きみのこと、もっとぼくに教えてくれないかな?」
盤古「わかりました」
守芬「………」
魯泉「盤古には触れられたくないことなのかもしれない」
「だから無理にとは言わないよ」
「でも、話せる範囲でいいんだ…」
「きみのこと、もっとぼくに教えてくれないかな?」
盤古「わかりました」
- 6ページ
魯泉「え?」
盤古「すみません。隠しているつもりはなかったのです」
「それがしは機械ですし……」
「聞かれなければ、特別お話ししておくことでもないと思いまして…」
守芬「じゃあ聞くわ…」
「まず機甲兵とはどういうものなのか…2000年前に一体何があったのか……」
「そして、魯泉の前、つまり2000年前のあなたのご主人様は誰なのか…」
魯泉「そ、それも聞くの?」
盤古「すみません。隠しているつもりはなかったのです」
「それがしは機械ですし……」
「聞かれなければ、特別お話ししておくことでもないと思いまして…」
守芬「じゃあ聞くわ…」
「まず機甲兵とはどういうものなのか…2000年前に一体何があったのか……」
「そして、魯泉の前、つまり2000年前のあなたのご主人様は誰なのか…」
魯泉「そ、それも聞くの?」
- 7ページ
盤古「ええ、了解いたしました」
「お答えしましょう…」
「あれは…それがしがまだ工場にいた時のことです……」
「お答えしましょう…」
「あれは…それがしがまだ工場にいた時のことです……」
- 8ページ
研究員「検査の進捗はどうだ?」
男「ええ、全て順調です」
研究員「…しかし、未だに信じられんな…」
「神明が我らに力を貸すとは…挙げ句に機甲兵まで造らせ、使用させているのだぞ?」
「神明らが人間の戦争に関与するなど…一体どういうつもりなのだ」
「陸文、お前はどう思う?」
陸文「はい?」
「口出しするようなことではないでしょう」
男「ええ、全て順調です」
研究員「…しかし、未だに信じられんな…」
「神明が我らに力を貸すとは…挙げ句に機甲兵まで造らせ、使用させているのだぞ?」
「神明らが人間の戦争に関与するなど…一体どういうつもりなのだ」
「陸文、お前はどう思う?」
陸文「はい?」
「口出しするようなことではないでしょう」
- 9ページ
陸文「我々研究員は与えられた仕事をこなすまで…」
「そのような思考は一切不要です!」
研究員「それもそうだな…」
「じゃ、あとの調整と記録は任せたぞ…」
陸文「わかりました…」
研究員2「相変わらずしっかりしてんなあ…」
研究員「あいつはそういう奴さ…」
「そのような思考は一切不要です!」
研究員「それもそうだな…」
「じゃ、あとの調整と記録は任せたぞ…」
陸文「わかりました…」
研究員2「相変わらずしっかりしてんなあ…」
研究員「あいつはそういう奴さ…」
- 10ページ
陸文「………」
「盤古」
盤古「はい、ご主人様」
「盤古」
盤古「はい、ご主人様」
- 11ページ
陸文「うるさいのはいなくなったぞ! さあ、一局付き合ってくれ!」
盤古「オーケーです! ご主人様!」
「演技とはいえ、感情のない機械というのはままならないものですね」
陸文「すまないな、毎回そんなことをさせてしまって…」
盤古「オーケーです! ご主人様!」
「演技とはいえ、感情のない機械というのはままならないものですね」
陸文「すまないな、毎回そんなことをさせてしまって…」
- 12ページ
陸文「こうやってお前といることが、何よりの息抜きだ…」
「研究員の仕事をしていると、自分が嫌になってくる…」
「お前がいてくれて本当によかったよ!」
盤古「我々研究員は与えられた仕事をこなすまで」
「そのような思考は一切不要です」
「嫌になる自分とはこういうことですか?」
陸文「…今の私かね?」
〔それがしの前のご主人様は、密かに機甲兵の中でそれがしだけに感情回路の改造を施していたのです〕
「研究員の仕事をしていると、自分が嫌になってくる…」
「お前がいてくれて本当によかったよ!」
盤古「我々研究員は与えられた仕事をこなすまで」
「そのような思考は一切不要です」
「嫌になる自分とはこういうことですか?」
陸文「…今の私かね?」
〔それがしの前のご主人様は、密かに機甲兵の中でそれがしだけに感情回路の改造を施していたのです〕
- 13ページ
〔来る日も来る日も、あの方はそれがしに多くの話を聞かせてくださいました〕
陸文「盤古、聞いてくれ。笑えるんだこれが!」
盤古「はい!」
陸文「…笑わないな? 感情回路は問題ないはずなのだが…」
盤古「はあ、それは面白くなかったからでは…」
陸文「そんなわけあるか! 故障か? 故障なんだな!? 修理しちゃる!」
盤古「わははは! おっかしー! ご主人様は天才でーす!」
〔感情とは何なのか、それがしに教えてくださったのです〕
陸文「盤古、聞いてくれ。笑えるんだこれが!」
盤古「はい!」
陸文「…笑わないな? 感情回路は問題ないはずなのだが…」
盤古「はあ、それは面白くなかったからでは…」
陸文「そんなわけあるか! 故障か? 故障なんだな!? 修理しちゃる!」
盤古「わははは! おっかしー! ご主人様は天才でーす!」
〔感情とは何なのか、それがしに教えてくださったのです〕
- 14ページ
兵「陸文!」
陸文「はい!」
陸文「はい!」
- 15ページ
兵「この壊れた機甲兵をすぐ修理に回してくれ!」
「修理がきかないものは処分してかまわん!」
陸文「……わかりました」
盤古「ご主人様、そのケガ…」
陸文「い…いやなに…それより手伝ってくれ…」
「修理がきかないものは処分してかまわん!」
陸文「……わかりました」
盤古「ご主人様、そのケガ…」
陸文「い…いやなに…それより手伝ってくれ…」
16ページ
盤古「これは!?」
陸文「戦場で破壊された機甲兵だ…」
「すべて私が直してみせる」
盤古「……!」
「機甲兵がここまで壊れ、ご主人様までケガをして……外は一体どうなっているのですか?」
陸文「恐いか? 安心しなさい。お前を戦場に出したりはしない!」
盤古「これは!?」
陸文「戦場で破壊された機甲兵だ…」
「すべて私が直してみせる」
盤古「……!」
「機甲兵がここまで壊れ、ご主人様までケガをして……外は一体どうなっているのですか?」
陸文「恐いか? 安心しなさい。お前を戦場に出したりはしない!」
- 17ページ
盤古「だ、だとしても、ご主人様がケガを負っていてはそれがしだって…」
陸文「仕方がない。戦争が早く終わることを祈ろう…」
「本当はな…私だって恐いのだ……」
盤古「どうして…どうしてこんな、悲しみや苦しみの感情があるのでしょうか?」
「快楽や幸福、それだけではいけないのですか?」
陸文「…感情とはそういうものだ…」
「決してすべての動物が痛みや恐怖を感じるわけではない」
「だが、それを感じる動物は、危機回避能力に長けている」
陸文「仕方がない。戦争が早く終わることを祈ろう…」
「本当はな…私だって恐いのだ……」
盤古「どうして…どうしてこんな、悲しみや苦しみの感情があるのでしょうか?」
「快楽や幸福、それだけではいけないのですか?」
陸文「…感情とはそういうものだ…」
「決してすべての動物が痛みや恐怖を感じるわけではない」
「だが、それを感じる動物は、危機回避能力に長けている」
- 18ページ
陸文「だからこそ、機甲兵には感情がない…ただひたすら動かなくなるまで壊し合うために…」
「お前はこうなりたいか?」
盤古「い、いえ……!」
陸文「悲しみや痛みには価値がある。意味がある!」
「私は考えてほしい。感情を持つお前に…」
「感情を持つという意味を……」
「お前はこうなりたいか?」
盤古「い、いえ……!」
陸文「悲しみや痛みには価値がある。意味がある!」
「私は考えてほしい。感情を持つお前に…」
「感情を持つという意味を……」
- 19ページ
〔数日後〕
陸文「お呼びですか?」
「修理がまだですので、手短にお願いします」
研究員「陸文、お前一度ケガを診てもらえ」
「この前の傷を回復しないわけにはいかんだろう……」
陸文「……この程度、大したことはありません!」
研究員「そんなに強がるな…入院が必要な程のケガだということくらい、私にもわかる…」
陸文「………」
陸文「お呼びですか?」
「修理がまだですので、手短にお願いします」
研究員「陸文、お前一度ケガを診てもらえ」
「この前の傷を回復しないわけにはいかんだろう……」
陸文「……この程度、大したことはありません!」
研究員「そんなに強がるな…入院が必要な程のケガだということくらい、私にもわかる…」
陸文「………」
- 20ページ
陸文「ですが、機甲兵の修理を投げ出すわけには…!」
研究員「その点は大丈夫だ! 一ついい報せが入った……」
「戦争が終わったそうだ!」
「上からの命令でな…機甲兵はすべて処分するように、とのことだ!」
「だからもう修理はいい! 治療に専念してくれ!」
陸文「……はい」
研究員「その点は大丈夫だ! 一ついい報せが入った……」
「戦争が終わったそうだ!」
「上からの命令でな…機甲兵はすべて処分するように、とのことだ!」
「だからもう修理はいい! 治療に専念してくれ!」
陸文「……はい」
- 21ページ
盤古「ご主人様、何を話されていたのですか? 戦争が終わった、などと聞こえましたが、本当ですか?」
陸文「ああ!」
盤古「では、それがし達はもう戦場に出る必要はなくなったのですね?」
陸文「………」
「盤古、何も言わず…私に付いてきてくれ…」
盤古「え?」
陸文「私は…お前を連れてここを離れる!」
「遠くへ…できるだけ遠くへ…」
陸文「ああ!」
盤古「では、それがし達はもう戦場に出る必要はなくなったのですね?」
陸文「………」
「盤古、何も言わず…私に付いてきてくれ…」
盤古「え?」
陸文「私は…お前を連れてここを離れる!」
「遠くへ…できるだけ遠くへ…」
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盤古「ご主人様、掘りましたが…こんな山奥で何をなさるのですか?」
陸文「盤古…落ち着いて聞いてくれ…」
陸文「盤古…落ち着いて聞いてくれ…」
- 23ページ
盤古「それがしを地下に埋める!?」
陸文「ああ、大丈夫だ。お前の機体はこれくらいじゃ壊れん」
盤古「どうしてそのようなことを?」
陸文「なんと説明すればいいかな…」
「戦争はもう終わった…」
「お前ももう兵器ではない…」
「お前はこれから何だってできる…」
「文字幻術の力だって、もっと別のことに…」
陸文「ああ、大丈夫だ。お前の機体はこれくらいじゃ壊れん」
盤古「どうしてそのようなことを?」
陸文「なんと説明すればいいかな…」
「戦争はもう終わった…」
「お前ももう兵器ではない…」
「お前はこれから何だってできる…」
「文字幻術の力だって、もっと別のことに…」
- 24ページ
陸文「そう、例えば…」
「誰かに字を教えたり、他人を助けたり…」
「文字幻術を破壊の為ではなく、何かを作り出すことに使ってくれ」
盤古「? あ、了解です…」
「ですが、それがしを埋めることと何の関係が…?」
陸文「……私は兵器の研究員だ…」
「私の役目は、もう終わってしまった…だから……」
「お前とはもう離れなくてはならない……」
「誰かに字を教えたり、他人を助けたり…」
「文字幻術を破壊の為ではなく、何かを作り出すことに使ってくれ」
盤古「? あ、了解です…」
「ですが、それがしを埋めることと何の関係が…?」
陸文「……私は兵器の研究員だ…」
「私の役目は、もう終わってしまった…だから……」
「お前とはもう離れなくてはならない……」
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陸文「これからお前の未来は…お前が決めるんだ!」
「いつの日か、お前に再び電源が入るとき…その時はお前が新しいご主人様を決めてくれ!」
盤古「し、しかし……それではご主人様はそれがしと離ればなれに…」
「そんなの寂しすぎます!」
「いつの日か、お前に再び電源が入るとき…その時はお前が新しいご主人様を決めてくれ!」
盤古「し、しかし……それではご主人様はそれがしと離ればなれに…」
「そんなの寂しすぎます!」
- 26ページ
陸文「…そうか?」
「私はお前の新しいご主人様に期待しているんだぞ?」
盤古「え?」
「期待…これは、期待することなのですか?」
陸文「そう、だから私の心配はいらない…」
「じゃあ…電源を落とすぞ…」
盤古「…ご主人様……」
陸文「眠くなってきたろう…ゆっくり休んでくれ…」
盤古「…は……い…」
「私はお前の新しいご主人様に期待しているんだぞ?」
盤古「え?」
「期待…これは、期待することなのですか?」
陸文「そう、だから私の心配はいらない…」
「じゃあ…電源を落とすぞ…」
盤古「…ご主人様……」
陸文「眠くなってきたろう…ゆっくり休んでくれ…」
盤古「…は……い…」
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陸文「………」
「それじゃあな…盤古…」
「それじゃあな…盤古…」
- 28ページ
盤古「その後目を覚まし…」
「それがしはご主人様と出会ったのです…」
魯泉「そ…それで…」
「陸文さんはどうなったの?」
盤古「わかりません…」
「機甲兵が廃棄されたことさえ、龍神様から話を聞くまで知りませんでした」
守芬「2000年も経ってたんじゃ…」
「どのみち、もう会うことは叶わないわね…」
「それがしはご主人様と出会ったのです…」
魯泉「そ…それで…」
「陸文さんはどうなったの?」
盤古「わかりません…」
「機甲兵が廃棄されたことさえ、龍神様から話を聞くまで知りませんでした」
守芬「2000年も経ってたんじゃ…」
「どのみち、もう会うことは叶わないわね…」
- 29ページ
守芬「盤古に危険が及ばないよう、その前に別れたんだわ…」
「わざわざ嘘までついて…」
盤古「はい…」
「それがしは気付けませんでした…」
「あの方がそれがしに向けた最後の笑顔が、何を意味していたのかを…」
魯泉「盤古……」
守芬「話題を変えましょう!」
「ふと思ったんだけど…」
「わざわざ嘘までついて…」
盤古「はい…」
「それがしは気付けませんでした…」
「あの方がそれがしに向けた最後の笑顔が、何を意味していたのかを…」
魯泉「盤古……」
守芬「話題を変えましょう!」
「ふと思ったんだけど…」
- 30ページ
守芬「盤古は2000年もの間埋められてて彼の消息が全くわからない。だからこそ工場に行って整備を受けなきゃいけない!」
「けど問題は…」
「2000年が過ぎて、機甲兵が廃棄されてしまっている今、」
「工場はもう無くなってるんじゃないかしら?」
魯泉「あ…!!」
守芬「それでもあなた達は敦煌に向かうの?」
「そしてもう一つ…」
「けど問題は…」
「2000年が過ぎて、機甲兵が廃棄されてしまっている今、」
「工場はもう無くなってるんじゃないかしら?」
魯泉「あ…!!」
守芬「それでもあなた達は敦煌に向かうの?」
「そしてもう一つ…」
- 31ページ
守芬「この旅が終わったら…あなたはどうするつもりなの?」
盤古「う……」
「そ…それは…」
「それは、ご主人様に…」
盤古「う……」
「そ…それは…」
「それは、ご主人様に…」
- 32ページ
魯泉「盤古が故郷に行くなら、ぼくも付き合うよ。でも…」
「ぼくが行かないって言ったら、きみは…ぼくと家に帰るの?」
盤古「? もちろんです」
「それがしは多機能汎用型メカ亀…」
「ご主人様の家にご迷惑をお掛けするようなことは…」
魯泉「…それじゃあダメだ…」
「もしここで引き返すなら、盤古には守芬姉さんの家に行ってもらう!」
盤古「え…!!」
「ぼくが行かないって言ったら、きみは…ぼくと家に帰るの?」
盤古「? もちろんです」
「それがしは多機能汎用型メカ亀…」
「ご主人様の家にご迷惑をお掛けするようなことは…」
魯泉「…それじゃあダメだ…」
「もしここで引き返すなら、盤古には守芬姉さんの家に行ってもらう!」
盤古「え…!!」
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魯泉「ぼくは…」
「ぼくはきみを連れては帰れない」
「ぼくはきみを連れては帰れない」
- 盤古の過去が分かるとても重要な回。見るからに難しそうな言い回しが多く、翻訳も大変だったでしょうが、本当に素晴らしい翻訳でした。お疲れ様です! -- てすと (2014-06-29 16:54:31)
