キリストの降誕

『羊飼いたちと御使い』カール・ハインリッヒ・ブロッホ(1879年)

イエスの誕生時のときのことについてはルカ福音書のみが触れている。(ルカ2:1-7)
そのころ(洗礼者ヨハネが生まれた頃)、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。
ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。

この「キリニウスがシリア州の総督であったとき」というのは誤りの可能性が指摘されている。これについては「イエスの誕生日」を参照されたい。
飼い葉桶は馬小屋と解釈されることもあるが、馬がいるとは書かれていない。

この後、天使によってメシアの誕生を知らされた羊飼いたちがこの場を訪れている。(ルカ2:8-20)
その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。
天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」
すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言った。
「いと高きところには栄光、神にあれ、
地には平和、御心に適う人にあれ。」
天使たちが離れて天に去ったとき、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と話し合った。そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。その光景を見て、羊飼いたちは、この幼子について天使が話してくれたことを人々に知らせた。聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の話したとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。

イスラム教の聖典であるクルアーンでは、マリアは一人でイエスを出産したこととなっている。(クルアーン19:22-34)

ミカ書に預言されたベツレヘムでの誕生

ミカ書では、ベツレヘムから「イスラエルを治める者」が生まれることを預言している。「彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる」とあることから、これがメシアであり神であることを暗示している。

ミカ書5:1-3
エフラタのベツレヘムよ
お前はユダの氏族の中でいと小さき者。
お前の中から、わたしのために
イスラエルを治める者が出る。
彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる。
まことに、主は彼らを捨ておかれる
産婦が子を産むときまで。
そのとき、彼の兄弟の残りの者は
イスラエルの子らのもとに帰って来る。
彼は立って、群れを養う
主の力、神である主の御名の威厳をもって。
彼らは安らかに住まう。
今や、彼は大いなる者となり
その力が地の果てに及ぶからだ。

イエスの両親の居住地

ルカ福音書では上記にように、元々ガリラヤのナザレに住んでいたヨセフとマリアが住民登録のためにユダヤのベツレヘムへやって来ている。その後、神殿での奉納を終えると、何事もなくナザレに戻ってきている。
一方マタイ福音書では、元々ユダヤ(恐らくベツレヘム)にヨセフとマリアは住んでおり、イエスを守るためにエジプトへの逃避をした後、ガリラヤのナザレに移り住んでいる。
最終更新:2020年10月01日 07:08