カナンに関する報告に関しては、
民数記と申命記に記されている。この語、38年間の放浪と、
イスラエルの敗北が起こる。
民数記の記載
はじめにモーセは、主の命令により、12人にカナンの偵察を行わせた。
民数記13章1-20節
主はモーセに言われた。「人を遣わして、わたしがイスラエルの人々に与えようとしているカナンの土地を偵察させなさい。父祖以来の部族ごとに一人ずつ、それぞれ、指導者を遣わさねばならない。」
モーセは主の命令に従い、パランの
荒れ野から彼らを遣わした。彼らは皆、イスラエルの人々の長である人々であった。その名は次のとおりである。(略。各部族から1人ずつ、計12人を任命した。)以上は、モーセがその土地の偵察に遣わした人々の名である。モーセは、ヌンの子ホシェアをヨシュアと呼んだ。
モーセは、彼らをカナンの土地の偵察に遣わすにあたってこう命じた。「ネゲブに上り、更に山を登って行き、その土地がどんな所か調べて来なさい。そこの住民が強いか弱いか、人数が多いか少ないか、彼らの住む土地が良いか悪いか、彼らの住む町がどんな様子か、天幕を張っているのか城壁があるのか、土地はどうか、肥えているかやせているか、木が茂っているか否かを。あなたたちは雄々しく行き、その土地の果物を取って来なさい。」それはちょうど、
ぶどうの熟す時期であった。
偵察の内容は以下である。
民数記13章21-24節
彼らは上って行って、ツィンの荒れ野からレボ・ハマトに近いレホブまでの土地を偵察した。
彼らはネゲブを上って行き、ヘブロンに着いた。そこには、アナク人の子孫であるアヒマンとシェシャイとタルマイが住んでいた。ヘブロンはエジプトのツォアンよりも七年前に建てられた町である。エシュコルの谷に着くと、彼らは一房のぶどうの付いた枝を切り取り、棒に下げ、二人で担いだ。また、ざくろやいちじくも取った。この場所がエシュコルの谷と呼ばれるのは、イスラエルの人々がここで一房(エシュコル)のぶどうを切り取ったからである。
13:21「レボ・ハマトに近いレホブまでの土地」(P資料)ではカナン全土を意味するが、13:22の「ネゲブ」(JE資料)ではきわめて一部に過ぎない。これは別訳に過ぎないという考え方もできるが、基本的には資料が異なることによる矛盾と考えられている。
そして、四十日後に12人は偵察から帰ってきて報告したが、そこには強くて巨大な民がすでにいて、イスラエル人は深いショックを受けた。そこでカレブだけが反対した。
民数記13章25-33節(JE資料)
四十日の後、彼らは土地の偵察から帰って来た。パランの荒れ野のカデシュにいるモーセ、アロンおよびイスラエルの人々の共同体全体のもとに来ると、彼らと共同体全体に報告をし、その土地の果物(※13:24に「一房のぶどう」とある)を見せた。
彼らはモーセに説明して言った。「わたしたちは、あなたが遣わされた地方に行って来ました。そこは乳と蜜の流れる所でした。これがそこの果物です。しかし、その土地の住民は強く、町という町は城壁に囲まれ、大層大きく、しかもアナク人の子孫さえ見かけました。ネゲブ地方にはアマレク人、山地にはヘト人、エブス人、アモリ人、海岸地方およびヨルダン沿岸地方にはカナン人が住んでいます。」
カレブは民を静め、モーセに向かって進言した。「断然上って行くべきです。そこを占領しましょう。必ず勝てます。」
しかし、彼と一緒に行った者たちは反対し、「いや、あの民に向かって上って行くのは不可能だ。彼らは我々よりも強い」と言い、イスラエルの人々の間に、偵察して来た土地について悪い情報を流した。「我々が偵察して来た土地は、そこに住み着こうとする者を食い尽くすような土地だ。我々が見た民は皆、巨人だった。そこで我々が見たのは、ネフィリムなのだ。アナク人はネフィリムの出なのだ。我々は、自分がいなごのように小さく見えたし、彼らの目にもそう見えたにちがいない。」
そして民は互いに不平不満を言い合った。
民数記14:1-4
共同体全体は声をあげて叫び、民は夜通し泣き言を言った。イスラエルの人々は一斉にモーセとアロンに対して不平を言い、共同体全体で彼らに言った。「エジプトの国で死ぬか、この荒れ野で死ぬ方がよほどましだった。どうして、主は我々をこの土地に連れて来て、剣で殺そうとされるのか。妻子は奪われてしまうだろう。それくらいなら、エジプトに引き返した方がましだ。」そして、互いに言い合った。「さあ、一人の頭を立てて、エジプトへ帰ろう。」
この後の場面では、約束の地へ向かうことを勧めたのが、直前の13:30ではカレブだけだったはずが、ヨシュアとカレブの両方が勧めていることになっている。これは、この間にヨシュアが改心したとも取れなくはないが、一般的には用いた原資料が異なるためと考えられている。
民数記14:4-6(P資料)
モーセとアロンは、イスラエルの人々の共同体の全会衆の前でひれ伏していた。土地を偵察して来た者のうち、ヌンの子ヨシュアとエフネの子カレブは、衣を引き裂き、イスラエルの人々の共同体全体に訴えた。「我々が偵察して来た土地は、とてもすばらしい土地だった。もし、我々が主の御心に適うなら、主は我々をあの土地に導き入れ、あの乳と蜜の流れる土地を与えてくださるであろう。ただ、主に背いてはならない。あなたたちは、そこの住民を恐れてはならない。彼らは我々の餌食にすぎない。彼らを守るものは離れ去り、主が我々と共におられる。彼らを恐れてはならない。」
申命記の記載
申命記でも、12人をカナンに偵察に行かせた経緯が書かれる。しかし、主の命令ではなくて、民の提案によるものとなっている。
申命記1:19-23
我々は神、主が命じられたとおり、ホレブをたち、あなたたちが見たあの広くて恐ろしい荒れ野を通り、アモリ人の山地に至る道を、カデシュ・バルネアまで来た。わたし(モーセ)が、「あなたたちは、我々の神、主が与えられたアモリ人の山地まで来た。見よ、あなたの神、主はこの土地をあなたに与えられた。あなたの先祖の神、主が仰せになったとおり、上って行って取りなさい。恐れてはならない。おののいてはならない」と言うと、 あなたたちはそろってわたしのもとに来て、「まず人を派遣し、その土地を探らせ、我々がどの道を上り、どの町に行くべきか報告させましょう」と言った。
それは名案だと思われたので、わたしは各部族から一人ずつ、合わせて十二人を選び出した。
そして、申命記でも同様に、強くて巨大な民の前にイスラエル人たちは絶望した。
申命記1:24-28
彼らは出発し、山地に上り、エシュコルの谷に着きそこを偵察し、その土地の果実を取って持ち帰り、「我々の神、主が与えてくださる土地は良い土地です」と報告した。
しかし、あなたたちは上って行こうとはせず、あなたたちの神、主の命令に逆らって、天幕にとどまって不平を言い合った。「主は我々を憎んで、エジプトの国から導き出し、アモリ人の手に渡し、我々を滅ぼそうとしておられるのだ。どうして、そんな所に行かねばならないのだ。我々の仲間も、そこの住民は我々よりも強くて背が高く、町々は大きく、城壁は天に届くほどで、しかもアナク人の子孫さえも見たと言って、我々の心を挫いたではないか。」
最終更新:2017年03月02日 13:54