カナンを偵察した斥候の報告を受けたイスラエル人が、主を信じずに嘆き悲しんだ結果、主は民を見限り、世代交代が起こるまでの40年間カナンに入らせないことを決めた。それにも拘わらず、イスラエル人は主がいるから勝てるはずだとカナンを責めようとした結果、敗北に終わった。そしてこの語38年間、荒地を放浪した。
民数記の記載
絶望したイスラエル人はエジプトへ帰ろうとした。
民数記14:1-4
共同体全体は声をあげて叫び、民は夜通し泣き言を言った。イスラエルの人々は一斉にモーセとアロンに対して不平を言い、共同体全体で彼らに言った。「エジプトの国で死ぬか、この
荒れ野で死ぬ方がよほどましだった。どうして、主は我々をこの土地に連れて来て、剣で殺そうとされるのか。妻子は奪われてしまうだろう。それくらいなら、エジプトに引き返した方がましだ。」そして、互いに言い合った。「さあ、一人の頭を立てて、エジプトへ帰ろう。」
それを聞き、偵察したきたヨシュアとカレブは、主の力により勝てると訴えた。
民数記14:5-9(P資料)
モーセとアロンは、イスラエルの人々の共同体の全会衆の前でひれ伏していた。土地を偵察して来た者のうち、ヌンの子ヨシュアとエフネの子カレブは、衣を引き裂き、イスラエルの人々の共同体全体に訴えた。「我々が偵察して来た土地は、とてもすばらしい土地だった。もし、我々が主の御心に適うなら、主は我々をあの土地に導き入れ、あの乳と蜜の流れる土地を与えてくださるであろう。ただ、主に背いてはならない。あなたたちは、そこの住民を恐れてはならない。彼らは我々の餌食にすぎない。彼らを守るものは離れ去り、主が我々と共におられる。彼らを恐れてはならない。」
しかしながらイスラエル人たちはヨシュアとカレブを信用しなかったため、主は無礼なイスラエル人らを殺そうとした。それに対してモーセが主を説得した。
民数記14:10-19
しかし、共同体全体は、彼らを石で打ち殺せと言った。主の栄光はそのとき、臨在の幕屋でイスラエルの人々すべてに現れた。
主はモーセに言われた。「この民は、いつまでわたしを侮るのか。彼らの間で行ったすべてのしるしを無視し、いつまでわたしを信じないのか。わたしは、疫病で彼らを撃ち、彼らを捨て、あなたを彼らよりも強大な国民としよう。」
モーセは主に訴えた。「エジプト人は、あなたが御力をもって、彼らのうちからこの民を導き上られたことを聞いて、この地方に住む者に伝えます。彼らは、主よ、あなたがこの民のただ中におられ、主よ、あなたが目の当たりに現れられること、また、あなたの雲が民の上にあり、あなたが、昼は雲の柱、夜は火の柱のうちにあって先頭に進まれることを聞いています。もし、あなたがこの民を一挙に滅ぼされるならば、あなたの名声を聞いた諸国民は言うことでしょう。主は、与えると誓われた土地にこの民を連れて行くことができないので、荒れ野で彼らを殺したのだ、と。今、わが主の力を大いに現してください。あなたはこう約束されました。
『主は、忍耐強く、慈しみに満ち、罪と背きを赦す方。しかし、罰すべき者を罰せずにはおかれず、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問われる方である』と。
どうか、あなたの大きな慈しみのゆえに、また、エジプトからここに至るまで、この民を赦してこられたように、この民の罪を赦してください。」
主はイスラエル人を許す代わりに、38年の間放浪させることを決めた。これは、主に従わなかった世代が死ぬのを待つためである。また、偵察をした12人のうち、ヨシュアとカレブ以外は土地について悪い噂を流したため、主は彼らを殺した。ここで出てくる主の言葉は内容的に重複しているが微妙に異なる。
前半の発言では、土地に入れるのはカレブだけである。
民数記14:20-25(JE資料)
主は言われた。「あなたの言葉のゆえに、わたしは赦そう。しかし、わたしは生きており、主の栄光は全地に満ちている。わたしの栄光、わたしがエジプトと荒れ野で行ったしるしを見ながら、十度もわたしを試み、わたしの声に聞き従わなかった者はだれ一人として、わたしが彼らの先祖に誓った土地を見ることはない。わたしをないがしろにする者はだれ一人としてそれを見ることはない。しかし、わたしの僕カレブは、別の思いを持ち、わたしに従い通したので、わたしは彼が見て来た土地に連れて行く。彼の子孫はそれを継ぐ。しかし、今はアマレク人とカナン人とがあの平野に住んでいるから、向きを変え、明日、葦の海の道を通って、荒れ野に向けて出発しなさい。」
しかし後半の発言ではヨシュアも入れることになる。
民数記14:26-39(P資料)
主はモーセとアロンに仰せになった。「この悪い共同体は、いつまで、わたしに対して不平を言うのか。わたしは、イスラエルの人々がわたしに対して言う不平を十分聞いた。彼らに言うがよい。『主は言われる。わたしは生きている。わたしは、お前たちが言っていることを耳にしたが、そのとおり、お前たちに対して必ず行う。お前たちは死体となってこの荒れ野に倒れるであろう。わたしに対して不平を言った者、つまり戸籍に登録をされた二十歳以上の者はだれ一人、わたしが手を上げて誓い、あなたたちを住まわせると言った土地に入ることはない。ただし、エフネの子カレブとヌンの子ヨシュアは別だ。お前たちは、子供たちが奪われると言ったが、わたしは彼らを導き入れ、彼らは、お前たちの拒んだ土地を知るようになる。しかし、お前たちは死体となってこの荒れ野で倒れる。お前たちの子供は、荒れ野で四十年の間羊飼いとなり、お前たちの最後の一人が荒れ野で死体となるまで、お前たちの背信の罪を負う。あの土地を偵察した四十日という日数に応じて、一日を一年とする四十年間、お前たちの罪を負わねばならない。お前たちは、わたしに抵抗するとどうなるかを知るであろう。主であるわたしは断言する。わたしに逆らって集まったこの悪い共同体全体に対して、わたしはこのことを行う。彼らはこの荒れ野で死に絶える。』」
モーセが遣わした男たちは、土地の偵察から帰ると、その土地について悪い情報を流し、共同体全体が彼に向かって不平を言うようにしたが、土地について悪い情報を流した者は、主の御前で疫病にかかって死んだ。しかし、土地を偵察に行った者のうち、ヌンの子ヨシュアとエフネの子カレブだけは生き残った。
モーセはこれらのことをイスラエルのすべての人々に語って聞かせた。民は深く嘆いた。
そしてイスラエル人たちは、この期に及んでやっと約束の地を奪おうとするが、すでに時遅く、イスラエルは敗北した。
民数記14:40-45
彼ら(イスラエル人)は翌朝早く起き、山の頂を目指して上って行こうとして言った。「さあ、主が約束された所へ上って行こう。我々は誤っていた。」
モーセは言った。「あなたたちは、どうして主の命令に背くのか。成功するはずはない。主があなたたちのうちにおられないのだから、上って行ってはいけない。敵に打ち破られてはならない。行く手にはアマレク人とカナン人がいて、あなたたちは剣で倒される。主に背いたから、主はあなたたちと共におられない。」
彼らはかまわず、山の頂を目指して上って行った。主の契約の箱とモーセは宿営から離れなかった。山地に住むアマレク人とカナン人は山を下って彼らを撃ち、ホルマまで来て彼らを破った。
申命記の記載
民数記では民を説得するのはカレブとヨシュアだが、
申命記ではモーセになっている。
申命記1:29-33
わたし(モーセ)はあなたたちに言った。「うろたえてはならない。彼らを恐れてはならない。あなたたちに先立って進まれる神、主御自身が、エジプトで、あなたたちの目の前でなさったと同じように、あなたたちのために戦われる。また荒れ野でも、あなたたちがこの所に来るまでたどった旅の間中も、あなたの神、主は父が子を背負うように、あなたを背負ってくださったのを見た。」
こう言っても、あなたたちの神、主をあなたたちは信じなかったが、この方こそ、あなたたちの先頭に道を進み、あなたたちのために宿営の場所を探し、夜は火、昼は雲によって行く手を示された方である。
そして主は民の放浪を決める。そしてカレブとヨシュア以外は約束の地に入れないとした。
申命記1:34-40
主はあなたたちの不平の声を聞いて憤り、誓って言われた。「この悪い世代の人々のうちで、わたしが与えると先祖に誓った良い土地を見る者はない。ただし、エフネの子カレブは例外である。彼だけはそれを見るであろう。わたしは、彼が足を踏み入れた土地を彼に与え、その子孫のものとする。彼は主に従いとおしたからである。」
主は、あなたたちのゆえにわたしに対しても激しく憤って言われた。「あなたもそこに入ることはできない。あなたに仕えているヌンの子ヨシュアだけはそこに入ることができる。彼を力づけなさい。イスラエルに嗣業の土地を継がせるのは彼である。あなたたちが略奪されてしまうと言っている乳飲み子や、まだ善悪をわきまえていない子供たちは、そこに入ることができる。彼らにわたしはその土地を与える。彼らがそれを取るであろう。あなたたちは向きを変え、葦の海の道を通って荒れ野に向けて出発しなさい。」
そして民は約束の地を奪おうとするが、失敗した。
申命記1:41-46
あなたたち(イスラエル人)は、わたし(モーセ)に答えて、「我々は主に対して罪を犯しました。我々は攻め上って、我々の神、主が命じられたように戦います」と言い、めいめい武器を携え、安易に考えて山地へ上って行こうとしたが、主はわたしに言われた。「彼らに言いなさい。攻め上って戦ってはならない。わたしはあなたたちのうちにいない。敵に撃ち破られてはならない。」
わたしはそう伝えたが、あなたたちは耳を貸さず、主の命令に背き、傲慢にも山地へ上って行った。山地に住むアモリ人たちはあなたたちを迎え撃ち、蜂が襲うようにホルマまで追撃し、セイルであなたたちを撃ち破った。あなたたちは戻って来て、主の前で泣いたが、主はあなたたちの声に耳を傾けず、聞こうとされなかった。あなたたちは、長い間、すなわちあなたたちが滞在した日数だけカデシュに滞在した。
内容の重複
この部分は典型的な重複記事で,背後にあった2つの別々の物語は多くの矛盾を含んでおり,その形跡が現在の 13‐14章に見られるとされる。
13:22(JE)では偵察隊はネゲブの地を探ったとあるのに,同じ13:21(P)では「ハマテの入口まで」となる (新改訳では別訳とされている)。これはカナン全土を意味していることになる。
13:30(JE)ではカレブだけが偵察隊のよくない報告に抗議しているの に、14:6(P)ではヨシュアとカレブとなっている。
最終更新:2017年03月02日 12:58