長い演説の高等批評
E資料のエロヒストは、指導者たちに長い演説を語らせる特徴がある。ヨセフがその兄姉たちに語った演説(
創世記45:7-14/50:15-26)、モーセがイスラエルの民に語った演説(
出エジプト記20:18-20)などがこれである。このように、歴史を教訓的に見る点において、彼の記述は
申命記の内容に類似している。E資料と
申命記的な伝承は共通するところが多く、その伝承はおそらく北王国に起源を有していると考えられる。
ヨセフの告白
ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることができなくなり、「みんな、ここから出て行ってくれ」と叫んだ。だれもそばにいなくなってから、ヨセフは兄弟たちに自分の身を明かした。
神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神がわたしをファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。
急いで父上のもとへ帰って、伝えてください。『息子のヨセフがこう言っています。神が、わたしを全エジプトの主としてくださいました。ためらわずに、わたしのところへおいでください。そして、ゴシェンの地域に住んでください。そうすればあなたも、息子も孫も、羊や牛の群れも、そのほかすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます。そこでのお世話は、わたしがお引き受けいたします。まだ五年間は飢饉が続くのですから、父上も家族も、そのほかすべてのものも、困ることのないようになさらなければいけません。』
さあ、お兄さんたちも、弟のベニヤミンも、自分の目で見てください。ほかならぬわたしがあなたたちに言っているのです。エジプトでわたしが受けているすべての栄誉と、あなたたちが見たすべてのことを父上に話してください。そして、急いで父上をここへ連れて来てください。」
ヨセフは、弟ベニヤミンの首を抱いて泣いた。ベニヤミンもヨセフの首を抱いて泣いた。
その後のヨセフ
50:15-26
ヨセフの兄弟たちは、父が死んでしまったので、ヨセフがことによると自分たちをまだ恨み、昔ヨセフにしたすべての悪に仕返しをするのではないかと思った。そこで、人を介してヨセフに言った。「お父さんは亡くなる前に、こう言っていました。『お前たちはヨセフにこう言いなさい。確かに、兄たちはお前に悪いことをしたが、どうか兄たちの咎と罪を赦してやってほしい。』お願いです。どうか、あなたの父の神に仕える僕たちの咎を赦してください。」これを聞いて、ヨセフは涙を流した。
やがて、兄たち自身もやって来て、ヨセフの前にひれ伏して、「このとおり、私どもはあなたの僕です」と言うと、ヨセフは兄たちに言った。「恐れることはありません。わたしが神に代わることができましょうか。あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。どうか恐れないでください。このわたしが、あなたたちとあなたたちの子供を養いましょう。」ヨセフはこのように、兄たちを慰め、優しく語りかけた。
ヨセフは父の家族と共にエジプトに住み、百十歳まで生き、エフライムの三代の子孫を見ることができた。マナセの息子マキルの子供たちも生まれると、ヨセフの膝に抱かれた。
ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしは間もなく死にます。しかし、神は必ずあなたたちを顧みてくださり、この国からアブラハム、イサク、ヤコブに誓われた土地に導き上ってくださいます。」それから、ヨセフはイスラエルの息子たちにこう言って誓わせた。「神は、必ずあなたたちを顧みてくださいます。そのときには、わたしの骨をここから携えて上ってください。」
ヨセフはこうして、百十歳で死んだ。人々はエジプトで彼のなきがらに薬を塗り、防腐処置をして、ひつぎに納めた。
モーセ
出エジプト20:18-20
民全員は、雷鳴がとどろき、稲妻が光り、角笛の音が鳴り響いて、山が煙に包まれる有様を見た。民は見て恐れ、遠く離れて立ち、モーセに言った。「あなたがわたしたちに語ってください。わたしたちは聞きます。神がわたしたちにお語りにならないようにしてください。そうでないと、わたしたちは死んでしまいます。」
モーセは民に答えた。「恐れることはない。神が来られたのは、あなたたちを試すためであり、また、あなたたちの前に神を畏れる畏れをおいて、罪を犯させないようにするためである。」
最終更新:2018年01月03日 16:33