申命記

死を間際にしたモーセによる説話をまとめたものである。

名称

ヘブライ名は冒頭1番目の言葉から"דברים"(Devārīm,「言葉」の意味) である。
ギリシャ語名"Δευτερονόμιον" (Deuteronómion,「第二の律法」の意味)は、七十人訳の訳者が17章18節になる「律法の写し」という言葉を「第二の律法」という意味に誤訳したことからつけられた名称である。
英語名"Deuteronomy"は、ギリシャ語の音写である。
和名『申命記』は、本書が律法を繰り返し述べたことから、「繰り返し命じる」という意味の漢語「申命」に由来する。

内容

1.第1の説話(1-4章)

2.第2の説話~十戒(5章-11章)
  • 十戒の授与(5章)
  • 主の愛に関する規則(6章)
  • 敵への勝利に関する規則(7章)
  • 自分の力への過信(8章)
  • 自分の正義への過信(9-10章)
  • 祝福と呪い(11章)

3.第2の説法~律法(12章-26章)
  • 主の選ぶ場所(12章)
  • そそのかす者たち(13章)
  • 主の聖なる民(14章)
  • 財産の手放し(15章)
  • 主が選ばれる場所(16章)
  • 裁く者たち(17章)
  • レビ族や預言者などの神の奉仕者(18章)
  • 領土の拡大(19章)
  • 戦争の時(20章)
  • 抑えるべき罪(21章)
  • 神の造られた秩序(22章)
  • 聖なる神の証し(23章)
  • 虐げへの戒め(24章)
  • 神の民の保持(25章)
  • 主のもたらす収穫(26章)

3.最後の説話(申命27-30章)
  • 主の律法の宣言(27章)
  • 祝福と呪い(28章)
  • 土地の契約(29章-30章)

4.モーセの死

律法の書

申命記には、モーセが申命記を「この律法の書」と呼ぶ場面がある。

申命記30:9-10
あなたの神、主は、あなたの手の業すべてに豊かな恵みを与え、あなたの身から生まれる子、家畜の産むもの、土地の実りを増し加えてくださる。主はあなたの先祖たちの繁栄を喜びとされたように、再びあなたの繁栄を喜びとされる。あなたが、あなたの神、主の御声に従って、この律法の書に記されている戒めと掟を守り、心を尽くし、魂を尽くして、あなたの神、主に立ち帰るからである。

このことから、旧約聖書にたびたび登場する「律法の書」は、申命記を意味すると考えられている。

ヨシュア1:8
この律法の書をあなたの口から離すことなく、昼も夜も口ずさみ、そこに書かれていることをすべて忠実に守りなさい。そうすれば、あなたは、その行く先々で栄え、成功する。

ヨシュア8:34
その後ヨシュアは、律法の言葉すなわち祝福と呪いをことごとく、すべて律法の書に記されているとおりに読み上げた。

列王記下14:6
しかし、モーセの律法の書に記されているところに従い、殺害者の子供たちは殺さなかった。主がこう命じておられるからである。「父は子のゆえに死に定められず、子は父のゆえに死に定められない。人は、それぞれ自分の罪のゆえに死に定められる。」

歴代誌下17:9
彼らは主の律法の書を携え、ユダで教育を行い、ユダのすべての町を巡って、民の教化に当たった。

列王記下22:8-11
そのとき大祭司ヒルキヤは書記官シャファンに、「わたしは主の神殿で律法の書を見つけました」と言った。ヒルキヤがその書をシャファンに渡したので、彼はそれを読んだ。
書記官シャファンは王のもとに来て、王に報告した。「僕どもは神殿にあった献金を取り出して、主の神殿の責任を負っている工事担当者の手に渡しました。」更に書記官シャファンは王に、「祭司ヒルキヤがわたしに一つの書を渡しました」と告げ、王の前でその書を読み上げた。王はその律法の書の言葉を聞くと、衣を裂いた。
歴代誌下34:14-19
主の神殿に寄せられた献金が取り出されている間に、祭司ヒルキヤがモーセによる主の律法の書を見つけ、書記官シャファンに、「わたしは主の神殿で律法の書を見つけました」と言った。
ヒルキヤがその書物をシャファンに渡したので、シャファンはそれを王のもとに届け、また王に報告をした。「あなたの僕たちにゆだねられた工事はすべて進行しています。彼らは主の神殿にあった献金を取り出して、監督と工事担当者の手に渡しました。」更に書記官シャファンは王に、「祭司ヒルキヤがわたしに一つの書を渡しました」と告げ、王の前でその書を読み上げた。王はその律法の言葉を聞くと、衣を裂いた。

申命記と列王記下との関係

高等批評では、申命記はヨシヤ王の宗教改革の際に執筆されたものとみなされる。したがって、申命記と列王記下には関連性がみられる。
命令 申命記 列王記下
祭壇を倒し、石柱を砕き、アシェラの像を粉々にし 7:5, 12:3, 16:21 23:4,6,7,14
天の万象の礼拝を禁じる 17:3 23:4-5
高台や異教の礼拝所を破壊する 17:2 23:13
太陽と月の礼拝を禁じる 17:3 23:5,11
神殿娼婦・神殿男娼を禁じる 23:18[17] 23:7
モレク礼拝を禁じる 12:31, 18:10 23:10
異教の神々の礼拝を禁じる 12:29-30 23:13
使者を伺うことを禁じる 18:11 23:24
一つの場所での過越祭 16:1-8 23:21-13
契約破りの上に神の呪い 27:15-26, 28:15-68, 29:20-28, 30:17-18 22:11-23:17

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最終更新:2018年01月07日 10:36