耶麻郡川西組大寺村

陸奥国 耶麻郡 川西組 大寺(おほてら)村・本寺(もとてら)
大日本地誌大系第32巻 24コマ目

大寺・本寺は昔1村にて尾寺と唱え(恵日寺の条下に詳なり)また大寺とも称し、今の大寺村を本町と唱え本寺を新町と称し総称を大寺といいしを、猪苗代城下の町名に同名あるにより何れの頃にか分て両村とし今の名とすという。されどもなお境界を分たず。またこの辺数里の間は恵日寺繁栄の時全くその境内にて、四方の諸村多くはその旧址に開けし民居なれば俗に大寺郷という。

大寺村は府城の北に当り行程2里7町余。
家数74軒、東西1町2間・南北8町50間。
二本松街道に住す。四方田圃(たんぼ)にて南に日橋川あり。

本寺村はここより北5町余にあり。
家数43軒、東西2町35間・南北2町45間。
北は山に続き四方に田圃あり。

東は大寺村より4町30間磨上新田村の界に至る。その村まで29町10間余。
西は大寺村より6町45間塩川組入倉村の界に至る。その村まで11町。
南は大寺村より4町45間河沼郡代田組八田野村に界ひ日橋川を限りとす。その村まで16町40間余。
北は本寺村より2町山麓に至る。その奥は檜原村の山に連なり界域分明ならず。

大寺村は二本松街道駅所にて、村中に官より令せらるる掟条目の制札あり。
府下よりここに継ぎ、ここより3里50間猪苗代城下に継ぐ。
また檜原村に通る山径あり。行程6里余。

大寺村 小名

小中野(こなかの)

本寺村より酉戌(西~西北西の間)の方8町にあり。
延寶2年(1674年)に開て見祢山土津神社の神料に寄付す。
家数2軒、東西1町10間・南北5町20間。
山腰にて高敞の地なれば居平の諸村一望の中にあり。

大寺村 端村

沼田新田(ぬまたしんでん)

本村より戌亥(北西)の方8町余にあり。
家数2軒、東西4町30間・南北4町50間。
東は山を擁し北は大谷川に傍ふ。

山川

磐梯山(はんたいやま)

大寺村の丑寅(北東)の方にあり。
東南は猪苗代城下に属し北は檜原村の山に連なる。
高山なればその根みな原野にて諸村より来り秣場とす。
(本郡の条下に詳なり)

厩嶽(まやがたけ)

大寺村より丑(北北東)の方1里30町にあり。
それより北に続き数峯重畳す。
上に馬頭観音堂あり。

百堂山(ひやくたうやま)

本寺村の北7町計にあり。
むかし恵日寺繁栄の時百堂ありしとてこの名あり。

日橋川(につはしかわ)

大寺村の南4町計にあり。
一沢村の界より来り、申酉(西南西~西の間)の方に流るること15町塩川組入倉村の界に入る。
広20間。
両山の間にて大石峙ち白波激し甚だ急流なり。大旱といえども渉るべからず。

大谷川(おほたにかわ)

本寺村の南30間にあり。
上流を小屋川という。
磐梯山の諸渓より集まり来る(ゆえ)大谷川という。丑寅(北東)の方より未申(南西)の方に流れ、磨上新田・源橋両村の境内を経て凡1里23町流れ入倉村の界に入る。
広10間。

花川(はなかわ)

本寺村の北城脇山(しやうのわきやま)というより流れ出て、北より午未(南~南南西の間)の方に流るること13町本寺村の中を経て大谷川に注ぐ。
広2間。

五鬼清水(こきしみず)

本寺村より丑(北北東)の方22町、五鬼岩という岩下より湧き出す。
その岩に五の鬼常に住しこの水を飲しという。空海加持の時この鬼も失去りしとぞ。

梵字清水(ほんししみず)

大寺村より寅卯(東北東~東の間)の方30町にあり。
1間四方。
空海河沼郡にて病悩山を加持し空中に独鈷を投じ勝地とせしに初めその落る所をしらず。然るにその清水の辺に来り憩い名號を唱えしかば、梵字(たちま)ち空中にあらわれ戌亥(北西)の方にたなびきしに因り、その落ちる所を尋ね得たりという。

大寺村より辰巳(南東)の方5町40間にあり。
周170間。

原野

六郎原

大寺村より辰(東南東)の方19町にあり。
東西21町・南北28町。
むかし六郎右衛門という者居りしという。
数10ヶ村入逢の秣場なり。

七森原(ななつもりはら)

大寺村より寅(東北東)の方1里12町にあり。
東西8町・南北10町40間。
また数10ヶ村入逢の秣場なり。

長峯原(なかみねはら)

大寺村より丑寅(北東)の方29町にあり。
東西8町50間・南北5町20間。
数10ヶ村入逢にて原中に源橋村の端村長峯新田の田圃あり。

妙法原(めいほふはら)

本寺村の東10町にあり。
東西4町余・南北5町余。
大寺・本寺両村の秣場なり。
昔恵日寺の子院妙法寺ありし(ゆえ)名く。

牧場2

一は大寺村の巳(南南東)の方4町にあり。東西2町40間・南北2町余。
一は本寺村の北6町にあり。東西1町・南北1町40間。

関梁

日橋

大寺村より未申(南西)の方7町余にあり。
日橋川に架す。両岸に石を積でその上より架し出す。左右に勾欄あり。幅3間・長16間。この川急流なれば柱を建べからず。中流に大石あり。その上にあまたの柱を建て梁をうけしむ。
天正中(1573年~1593年)磨上の役に敵既にこれを引落しければ、葦名の軍勢敗れてこの橋を渡らんとて走り来りし者とも溺死すること数をしらず。されば大旱のとき水落れば往々兵器の朽損したるを得るという。
昔は日橋を新橋に作れり。塩川組落合村にて新橋を架してより今の文字にあらたむ。

水利

掘抜堰(ほりぬきせき)

布藤村の方より来り田地の養水とし大谷川に入る。

大寺村の未(南南西)の方7町計、日橋川の上にあり。
幅5尺・長19間余。
この樋は村より8里計山奥吾妻山・檜原山の間より諸木を伐出し、檜原川の流れを下し土津堰に入りそれより大谷川を経て堰堀に入て(この岸に土瓢(つちふくへ)とて千なり瓠に似たる石出つ。蔓葉の形まであり。奇というべし)この樋に至り河沼郡代田組の日橋堰に瀉ぎ、その堰を経て会津郡滝沢組藤原村に至る。藤原流木と唱え府下士民の薪とす。

神社

山神社

祭神 山神?
相殿 山神
鎮座 不明
大寺村の辰(東南東)の方1町余にあり。
鳥居拝殿あり。三城潟村佐野壱岐が司なり。

橋姫神社

祭神 水波女命
勧請 不明
大寺村の未(南南西)の方6町、日橋川の北岸にあり。
鳥居拝殿あり。恵日寺の社人忠大夫司なり。

寺院

恵日寺

本寺村の北にあり。
恵日寺

馬頭観音堂

厩嶽の山上にあり。
3間半に3間、南向き。
行基の開きし所という。
馬頭観音、長1尺3寸。座像なり。行基作という。
4月7日・8日、6月16日・17日両度の合式あり。

別当 観音院

恵日寺二王門の前にあり。
真言宗、恵日寺の末山なり。山號を厩嶽山という。
恵日寺の衆徒と称す。
草創の初伝わらず。

能満寺

大寺村にあり。
寛永中(1624年~1645年)恵日寺の徒延命印榮存草創せり。
今も密宗にて恵日寺の衆徒と称し別に山號なり。
本尊不動客殿に安ず。

虚空蔵堂

客殿の北にあり。

墳墓

如蔵尼墓

本寺村の酉戌(西~西北西の間)の方5町、山腰にあり。
小き五輪3基相並べり。後人供養の為に建しと見ゆ。
如蔵尼の事今昔物語・元享釈書に出つ。
この尼は平将門第3の女にて形美麗なり。諸家聘を通すれどもきかず、将門誅せられて後奥州に来り恵日寺の側に住す。日来病*1に罹りて死せしを、地蔵の冥感によりて蘇息せしかば世に地蔵尼と称せしとぞ。その後年80余にて終れりという。
側に清水あり。3尺に4尺。この尼常に用いし水なりとぞ。享和2年(1802年)その側に碑をたつ。その文左に録す(※略)。文化2年(1805年)この地を恵日寺に属し墓を守らしむ。

金上遠江守盛備墓

大寺村の北1町50間余にあり。
4尺計の五輪なり。後に古松樹あり。
天正17年(1589年)6月5日磨上の役に盛備味方の者とも身にそまぬ軍して敗軍に及び、国難に(かかずら)う者なきを憤り忠死す。
(葦名記には磨上の役と盛備の討死を6月6日の事とし、河沼郡坂下組金上村金上寺の盛備位牌には『佛照院殿一岳道無居士六月十五日』とあり。共に誤りなり。盛備が伝は津川町の条下に出す。越後国蒲原郡津川町新善光寺天正中(1573年~1593年)の過去帳に『功岳宗忠居士禅定門金上殿六月五日』とあり)
かかる忠臣なれば伊達氏命じて厚く葬らしめしという。今なお霊威残りて瘧をやむもの竹木にて太刀長刀を造り報賽すればその応じありとぞ。文化2年(1805年)より年々1夫の役を免じその墓を掃い荒穢せさらしむ。
側に碑あり。その文如左(※略)。

古蹟

館跡3

一は大寺村の丑寅(北東)の方3町計、田の中にあり。68間に50間、葦名の家臣佐瀬河内某という者居しという。
一は大寺村より子丑(北~北北東の間)の方3町計にあり。40間余に35間、葦名の家臣佐瀬平八郎常雄居しりという。
一は大寺村より辰(東南東)の方2町計にあり。24間に20間。松山和泉某というもの居という。何人にか詳ならず。

寺跡3

一は本寺村の寅(東北東)の方17町にあり。今に旧礎残れり。観音堂の跡なりという。
一は本寺村より寅(東北東)19町にあり。法花寺の跡なりという。
一は大寺村にあり。圓明院の跡なりという。
共に恵日寺の子院なりしとぞ。

戒壇場跡

本寺村より戌亥(北西)の方5町余にあり。
15間四方。
空海恵日寺にありし時寳祚(ほうそ)を祈り受戒せし所なりとぞ。

拝林(おかみはやし)

本寺村より戌亥(北西)の方4町にあり。
30間に17間計。
恵日寺境内にある所の神社佛宇路遠ければ日々参拝することあたわず。住僧(ここ)にて遥拝(ようはい)せし処なりとぞ。




追記。
コメント欄で情報頂きました。
金上遠江守盛備墓は現存しており、付近の字は金上壇となっているそうです。金上壇地区は能満寺のある辺りで墓はその北の方にあります。


最終更新:2020年07月05日 14:22