ポケットモンスターを極める本

登録日:2024/07/13 Sat 17:28:00
更新日:2025/03/13 Thu 23:00:22
所要時間:約 14 分で読めます



/!\ 注意
本項目には、一部のポケモンのファンの方が読むと極めて不快に思う可能性のある表現が含まれておりますが、
あくまで本書の内容を正確に紹介するための引用であり、なおかつ現在とは対戦環境および一般プレイヤーが入手できる情報量などが全く異なる時代の書物であることを念頭に置いた上でお読みください。


ポケットモンスターを極める本」とは、1997年にキルタイムコミュニケーションから発売された、初代ポケットモンスター(赤・緑・青)の攻略本である。
発売時期の関係で、ピカチュウバージョンは網羅されていない。

このシリーズは「ポケットモンスター赤(緑・青)を遊びつくす本」「ポケットモンスターを150匹集める本」に本作を含めた「ポケットブックス」5部作となっている。
「遊びつくす本」はゲーム内の攻略情報、「150匹集める本」はポケモンの収集をメインにした内容だったのに対し、本書では対戦がメインとして扱われている。
ちなみに表紙は、これまでのポケットブックスと同様に初代パッケージイラストを模した構図*1で、紫色を基調に、真ん中の白丸の中にニドキングが描かれている。
なぜ紫色の表紙かつニドキングがチョイスされたのかは不明。


●目次


概要

本書はポケモン攻略本史上でも特筆すべき位置付けを持つ。
それは、「対人戦」についてメインに書かれた最初期の攻略本であるということである。

現在でこそ、ポケモンは対人戦をある程度考慮してタイプや種族間のバランスを調整している傾向にあるが、初代の発売時点では必ずしもそうではなく、マスターアップの数週間前に対戦機能を急遽後付けしたという経緯から、対戦バランスが今と比べるとかなり歪なものとなっている。
強すぎるタイプや技、あるいは弱すぎて対戦で使い物にならないポケモンや技が今の比ではないほど多かったのである。
そもそも開発陣の意図からして、初代の主軸はあくまで「ポケモン収集」と「シナリオ攻略」にあり、通信対戦機能はオマケに過ぎなかったとも言われている。*2

やがてプレイヤー間で対人戦の比重が高まり、第一回公式大会が開かれるに到るわけだが、本書はその第一回公式大会が開催された1997年に出版されたものである。
本書以前には、ポケモンの対人戦について詳しく書かれた攻略本は皆無に近かった。

現在では本書は後述のネタ的要素のみを取り上げられがちであるが、その歴史的な意義は決して小さくないことは指摘しておこう。
また、今見ればツッコミどころ満載の内容も、当時の情報・環境を考えれば仕方がない部分も多い。
世界中のトレーナーとお手軽に対戦が行える現在とは異なり、当時は通信ケーブルが必須であり、必然的にごく狭いコミュニティ内で行われていたという事情もある。
後述するイワークの過大評価なども、「事実上ノーマル技しか覚えないポケモン」がザラにいた時代であることを念頭に置くならば、また違った評価ができるだろう。
なお、この本では一貫して「タイプ」の事を「属性」と表現している。意味は通じるのだが気になる点と言えるだろう。
まだ一作目なのでポケモンの用語があまり浸透しておらず、他のゲームで使われやすい言葉を当てはめられた結果だろうか。



しかし、それら諸々を加味した上でも、「これはいくらなんでもないだろう」という記述の多い奇書であるのもまた、厳然たる事実。
そのため本書は、平成という時代ならではのトンデモ攻略本として現在まで語り継がれている。

以下は、本書の内容を順に解説していこう。


内容

どう育てる?レベルアップ大研究

冒頭の袋とじコーナー。
ポケモンの効率的なレベルアップ方法について述べたもの。
本書に限ったことではないが、この時代には「努力値」の概念がほとんど知られていなかったため、袋とじ内で「基礎ポイント」の存在について僅かに言及される程度に留まっている。
一方、四天王戦において「カンナヤドランワタルハクリューカイリューはほとんど攻撃して来ない」(当時のAIの仕様による)など、地味に役立つ情報も。*3


パーティの組み方、作り方

いくつかの特徴的なパーティを組み、実際に戦わせることで理想的なパーティの組み方を考察していくコーナー。
  • 極悪非道!ミュウツーパーティ
  • 豪華絢爛!伝説のポケモンパーティ
  • 戦闘意欲を奪い去る ラブリーパーティ
  • 水属性100% 海の幸パーティ
  • あふれる野性味 ケモノパーティ
  • 「へんしん」あるのみ!メタモンパーティ
  • 不思議パワー炸裂!エスパーパーティ
  • 地獄へ道づれ 自爆パーティ
  • 躍動する肉体、ほとばしる汗、格闘パーティ
  • チョット地味デ~ス!虫パーティ
  • ポケモンの空軍部隊飛来!鳥パーティ
  • 雑草のようにたくましく!草パーティ
  • さいみんじゅつの恐怖!ゲンガーパーティ
  • 選べる3種をすべてゲット!オーキドwithイーブイパーティ
といった作例が紹介されている。
……が、のっけからミュウツー6匹パーティなどという、いろんな意味で破壊力の強いものが登場。
おまけに「こんなパーティで勝っても何も楽しくない」という、身も蓋もないコメントが載せられている。

他にもメタモン6匹パーティ(「相手が6回攻撃するだけで終わった試合が多かった」)など、到底使い物にならないパーティが掲載されている。

一方で、現在における「統一パーティ」に相当するものが紹介されているなど、興味深い部分も無くはない。


間違いだらけのポケモン選び

ある意味本書最大の問題コーナー
「レベル100まで育てても意味のないポケモン」として、コイキングイーブイキャタピー、トランセルビードル、コクーンメタモンウインディが紹介されている。
詳しくは後述。


対戦のススメ

実質的なメインといってもいいコーナー。
まず最初に「対人戦とNPC戦との違い」についてかなりの分量を割いて書かれており、現在では考えられないが、やはりこの時代は対人戦はどちらかといえばマイナーだったことがわかる。
その他、入れ替えについての考察など、やはり現在から見れば疑問点はあれども、この時期の対人戦についての資料としてかなり貴重なものとなっている。

なお、強いタイプについて考察しているページでドラゴンは弱点であるドラゴンが弱いから強い」という、やや紛らわしい文章がある。
「技としてのドラゴンタイプは(初代は事実上ドラゴンタイプの技が存在しない*4ので)弱いので、それが弱点に設定されているドラゴンタイプのポケモンは強い」という理屈を言っているのだが、当時読んで混乱した人も多いのではないだろうか。


強敵攻略 コイツが来たらこう戦え

今で言えば「要対策ポケモン」の対策法について述べているコーナー。
ミュウツーカイリューギャラドスエビワラーフリーザーユンゲラーラプラスイワークゲンガーパラセクトスリーパーといった顔触れが取り上げられている。
ミュウツー、フリーザー、ラプラス、ゲンガーといった初代のトップメタ勢に交じって、イワークやエビワラー、パラセクトといった、お世辞にも当時強かったとは言えないポケモンが混じっている。
何気にフーディンを押しのけてユンゲラーがいるのも謎。友達がいなかったのだろうか。*5


ポケモンステータスランキング

「HP」「こうげき」「ぼうぎょ」「すばやさ」「とくしゅ」「総合」の各部門別にベスト10を紹介するというありがちなコーナー。


“じばく”を極めるコーナー

全国1億2千万の「じばく」「だいばくはつ」ファンへ贈るミニコラム。
自爆技の効果的な使い方についてQ&A形式で紹介。自爆同好会ってなんだよ……。




ポケットモンスターレベル100図鑑

本書後半のほとんどを占めるコーナーであり、本書のメインにして、現在まで語り継がれる理由の大半を占めるコーナー。
150匹全てのポケモンの、レベル100でのステータスが網羅されている。

……何しろ種族値の概念がほとんど知られていない時代なので、ポケモンの強さを示すために全員を無理やりレベル100まで上げて実数値を載せるというストロングスタイル。
それでも、何しろ情報が少ない時代なので、それなりに役に立ったと言う人も多いだろう。
他にも、編集部おススメの「レベルアップで覚えるわざ」と「わざマシンで覚えるわざ」が各1つずつ紹介されている。

また、巻末では発売記念スペシャルとして、レベル100の150匹のポケモンが収録された青バージョンのプレゼント企画を行っていた。

しかし、問題なのは、各ポケモンに添えられたワンポイントアドバイス(一言コメント)である。
この中に、時たまとんでもなく辛口のものや、妙にツッコミどころのあるもの散見されるのである。
ここではいくつかを引用してみよう。


使える技マシンに「はかいこうせん」が増えただけなのですごい寂しい
直球。
他にも本書では、オニスズメ系列と比較してポッポ系列が下げられており、オニスズメ(88頁)のコメントには「ポッポよりはずっと役に立つはず」と書かれている。
当時は一番まともな飛行技である「ドリルくちばし」を覚えるオニドリルが圧倒的優位で、そのオニドリルもこうげきで勝るドードリオの劣化扱いだったというのは事実。
後の世代におけるピジョットとオニドリルの立場の違いを考えると隔世の感がある。


これといった取り柄がないのが悲しい。他に役に立つポケモンは、いっぱいいるのでそっちのほうがよいかも
やっぱり直球。
この時代のアズマオウは、「こうそくいどう+つのドリル」という、当時の一撃技の仕様*6上、かなり怖いコンボが使えるので、決して無個性ではないのだが、そんなわけのわからない仕様がそこまで知られていない当時、ガチ勢以外が注目することは少なかった。
というか97年時点においては、全国大会出場者のダグトリオですら「じわれ」が不採用なので、この使い道に気付けというのは酷ではある。


対抗の電気属性の進化。「10まんボルト」や「かみなり」などの技マシンがないと、ただの犬なのでそこのところをわきまえよう
第1世代トップメタであるサンダースに対して、この言い草。当時はレベル技が貧弱だったので事実ではあるが。
なお「対抗」とあるが、本命とされているのは「とにかく変な技ばかり覚える(100頁)」シャワーズ
結果的にサンダースが初代の対戦環境のトップメタになるとは、予想もしていなかったのだろう。
ではブースターはどうかというと……(後述)


属性的には優れているが、いかんせん覚えられる技がヘボくて話にならない。自分の属性の技くらい覚えて欲しい。
直球直球アンド直球。
技がヘボイのは全くその通りなので何も言えないのだが……イワークで止まります。
強そうな見た目や悪くないステータス、むしタイプであることからエスパーキラーとしての活躍を期待して裏切られたプレイヤーも多そうである。
確定急所の「きりさく」を使えるが一致で使える上に対戦では(かくとうが弱いので)実質ほぼ弱点なしのペルシアンで良いため、でんき技や「ふぶき」に弱いストライクを優先するメリットはない。
なので上記で褒められている属性面でも、初代におけるコイツは優れているとは言えなかった。
ストライクガチ育成時に軸に選ぶものとしてよく挙がるとくせいのシステム(近年ではテクニシャン軸がけっこう研究されている)や、ハッサムバサギリといった進化形の双方が未実装の時期の資料としてならば優秀っちゃ優秀だが…。


「ハサミギロチン」は対戦ではお世話になることはないが、屈辱技として使うのには最適だ
どういう意味だよ。どういう発想だよ。


基本的にニドラン♀と変わらないが、角が生えているので「つのドリル」が覚えられるが、だからなんだという程度である
そ、そうですか……。


正攻法だけでなくトリッキーな動きを身につけよう
として、技マシン「あなをほる」を使うことが推奨されているのだが、ユンゲラーにそんなの覚えさせてどうするんだ?
確かに能力に合った対戦向きの攻撃技は「サイコキネシス」ぐらいしかなかったが、それでも変化技に枠を割いた方がマシである。
なお、同時期に出た他の攻略本では、ケーシィ系統について「物理技は覚えさせるだけマシンの無駄」と書かれており性能をよく理解していた(当時のわざマシンはガチの使い捨て。ひでんマシン以外のわざにもなんらかの使いまわし方法が実装されたのは第五世代)。


防御力400は脅威中の脅威。弱点をつかれてもなんとかなってしまうことも
初代の対戦で、イワークが弱点を突かれてなんとかなることなんて滅多にないぞ。
不一致の「じしん」や「じごくぐるま」くらいなら耐えることこそできるが、HPが低く火力もポッポなので結局押し負けてしまう。
本書は何故かイワークを過大評価しており、またイワークよりも防御力の高いパルシェンについて何故かほとんどスルーしている。
ちなみに、このページに掲載されたイワークの防御力は330である。400という数字はどこから来たのか?


ポケモン全般

本書の真骨頂・炎タイプディスり
パーティ構築コーナーから「炎は弱い」と繰り返し記述されていたのだが、いよいよこのコーナーで牙をむく。
もっとも現代の初代環境で炎の生命線とされる「ほのおのうず」*7によるハメ戦術が対人戦でも通用するほど強いという評価は97年当時はされておらず、全国大会での採用例も皆無であることには注意しておこう。

結局、進化しても使える技マシンが「はかいこうせん」しか増えないので、あまり変わらない。しかも属性が違うので弱いし
ド直球。
この世代の炎としては高いこうげきとすばやさを持つギャロップに対して、他に言うことは無かったのか。
ただ、これは言い方を変えれば「『はかいこうせん』が一致ならまだマシだったのに」ということである(後述のウインディも同じことを書かれている)。
後の世代ではノーマル複合のバリエーションも増えほのお・ノーマル複合のポケモンもいるため、当時対戦で活躍できなかったギャロップやウインディにもそういう個性があればという気持ちは分からなくもないか。
当時の「はかいこうせん」は敵を倒せば反動無効のチート技なので、高速かつ物理寄りのステータスのノーマルタイプはそれだけで強かった。
初代対戦環境において最強の一角だったケンタロスの最大の強みこそ、まさにそこである。まあこの本ではケンタロスの強さもそこまで評価されていないが


避けた方がいい炎属性への進化。炎ポケモンマニアでもない限りはこんな苦行じみた進化はさせるべきではないだろう
進化が苦行呼ばわり。
この時代はタマゴがなくイーブイは1つのIDにつき1匹しか入手できないので、旅パでも対戦でも活躍できないブースターに進化させるデメリットを考えるとあながち間違いとも言えないのだが……。
ブースターは後の世に『唯一王』と言われることになるポケモンで、今も昔も変わりなく対戦ゲームとしては不遇キャラ*8なのが見て取れる。

エレブーの炎版といった感じのするブーバー。属性の分だけこっちのほうが使えないかも。他の炎ポケモンよりは使える
わざわざ二重に炎ポケモンをディスっていくスタイル。
具体的に当時の他のほのおポケモンにはないブーバーの強みとしては習得の遅い「かえんほうしゃ」やわざマシン限定だった「だいもんじ」以外に手頃なレベル技「ほのおのパンチ」を習得すること、唯一わざマシンで「サイコキネシス」を覚えたことだろうか。
やはり進化形がまだない以上対戦での存在感は皆無ではあったが…。

そして、炎の中でも極めつけと言えるのがこのウィンディの扱いである。
このコーナーのコメントでは無難なことしか書かれていないのだが、問題は前述の「間違いだらけのポケモン選び」のコーナー。
ここでは「レベル100まで育てる価値のないポケモン」が紹介されているのだが、コイキング、キャタピー、コクーンといった面々に交じって、なんとウインディが堂々の掲載
いくら炎不遇の時代とはいえ、ギャロップやキュウコンはおろか、自分の進化前であるガーディすら差し置いての選出である。
どうやらお世辞にも強いと言えないにもかかわらず「でんせつポケモン」という大層な分類をされていることが決め手だったようだ。
期待して育てただけに、裏切られた感じがする(56頁)
ガーディの時点で「かえんほうしゃ」「だいもんじ」、他に強いて言うなら「のしかかり」くらいしかまともな技が使えないとはいえ、これはあんまりである。

これだけにとどまらず、パーティ構築のコーナーでは、三鳥をメインとした「伝説パーティ」の中に無理やりウィンディを入れておいて
「伝説のポケモン」とは名ばかりで覚える技も少なく、これといった特徴もないのであまり活躍は望めないだろう
さらに検証終了後には
案の定ウインディは役立たずであった
と追い打ち。

ここまでくると、本書の著者はウインディに実家でも燃やされたのか、もしくは犬が嫌いなのかと聞きたくなってくる。

そしてついでに、ファイヤー
「そらをとぶ」があるファイヤーは、力押しだけでも戦力になるが(27頁)
先の伝説の鳥ポケモン達と比べるとちょっと頼りない感じがする。炎属性を生かせるときしか活躍の場が期待できない(112頁)
(とくしゅの実数値がミュウツー、フーディンに次ぐ三位だったのを受けて)なのにどうしてあんなに弱いんだろう?(80頁)
明らかにフリーザー・サンダーと比べて劣る扱いであった。
まあのちにファイヤーが評価されるのは当時未評価の「こうそくいどう」「ほのおのうず」コンボによるハメ戦術なので仕方ない。


ポケモン全般

炎ほどではないが、
結局は相手に嫌がられたり、迷惑がられたりはするが、弱い(47頁)
モンジャララフレシアに至っては使い道すら思いつかない(同じく47頁)
と厳しいコメント。
これも当時はほぼ確定急所*9「はっぱカッター」を覚えるフシギバナとウツボット、エスパー複合のナッシーを除き草属性のメインウェポンは威力わずか40の「メガドレイン」か攻撃するのに2ターンかかる「ソーラービーム」しかなく、状態異常や「やどりぎのタネ」で散々嫌がらせをしても普通に押し負けるという展開になりがちだった。
ただしナッシーについては当時は他の草ポケモンとは別格レベルで強く、この本でも僅かに言及されてはいる。
草統一パ紹介の前置きでは「雑草などという草はない」なんて言ってたのに……。


このようにツッコミどころ、行き過ぎではないかと思われる部分も多々あれども、最初に述べたように、「対人戦を扱った初のポケモン攻略本」という歴史的意義を持つ本書。
知名度が高いが故に古書市場でも高値をキープしているが、運よく見つけた人は手に取ってみて、黎明期のポケモン対戦に思いを馳せてもいいだろう。


余談

パーティ構築コーナーにて「炎のポケモンは本当に弱いのか?」と題したミニコラムがあり、本書内で散々書かれている「炎ポケモンダメ説」の最大の理由を「水属性に弱すぎること」としており、
お手軽に覚えられ、かつ強力な技である「なみのり」に対して弱かったり、こちらの炎攻撃は効果が薄いのに、相手からの水攻撃は効果抜群なのである。
どのパーティにも必ずといっていいほど存在する水属性に弱いというのはかなり致命的なのである。
と解説されている。

研究が進んだ現代基準で語られる初代対戦環境では、みずタイプであってもなみのりが採用されることはほとんどない。
というのも、なみのりを覚えるポケモンの大半はふぶきやれいとうビームをぶっ放した方が強いのである。
不一致だろうがとくしゅが低かろうが覚えられるならふぶきを連打するのが強い、それくらいこの技は初代環境においてずば抜けていた。
ただし、97年という対戦黎明期においてそこまで先見の明があったプレイヤーは全国大会出場者の中でもさらに一部に限られ、なみのりを採用する出場者も普通に存在している。

また今も昔も変わらずなみのりが高評価されるのは対戦よりも旅パ。
初代ではまともな技が存在しなかったり、あっても覚えるポケモンが限られるか貴重な技マシンの奪い合いになるタイプも多かった中、誰でも秘伝マシンでなみのりを覚えられる水タイプは非常に扱いやすかった。
秘伝マシン入手以前にも「みずでっぽう」「バブルこうせん」の技マシンが序盤で手に入るのも大きい。
このあたりは「だいもんじ」の技マシンを使う(≒ゲーム終盤)かレベルを上げて「かえんほうしゃ」を覚えさせるまで当分「ひのこ」しかない炎タイプとは対照的である。

そんなわけで大会に出るほど研究していない、それこそ小学生が旅パの延長行う対戦などでは、なみのり持ちみずタイプとの遭遇率はもっとずっと高かっただろう。
つまりこの時代の平均的な知識水準において、なみのり持ちみずタイプが多くてほのおが使いづらかったというのを間違いと断じるのは難しい。
ただし、それならなんで水が4倍弱点のイワークがあんなに評価が高いのかは謎である。

また、「本書には全ポケモンをレベル100まで育て上げた実数値が載っている」と書いたが、有志の検証によるとその「実数値」には努力値がほとんど含まれていないらしい。
それはつまりバグ技*10で一気にレベル100まで上げたということを意味する。
「育てるために四天王戦を何度も周回した」「がくしゅうそうちを使った*11」などと書かれているが、大嘘である*12
これが発覚したのはポケモン育成に関する研究が進み諸々の計算式が明らかになった後年だったためあまり問題にはならなかったが、いくら情報の少ない時代の書物とはいえ内容の信頼性に大きくかかわる事態である。
当時の読者の中には、実際にレベル100までポケモンを育ててみたら記載値より強くなったことに違和感を抱いた人も多かったはず。



追記・修正はコイキング・イーブイ(もしくはブースター)・トランセル・コクーン・メタモン・ウインディで殿堂入りしてからお願いします。

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最終更新:2025年03月13日 23:00

*1 「遊びつくす」2冊は赤・緑そのまま、「150匹集める」はピンクのパッケージでミュウツーが描かれている

*2 「イワークの攻撃種族値はポッポ並み」として今もネタにされているが、これも「防御が高いだけで攻撃面は道中の敵とそんなに変わらない」というRPGのボスあるあるを体現しているとも言える。

*3 「弱点を突けるなら、そのタイプの技を優先して使う」という至極当然の動きだが、初代は攻撃技と変化技の区別なく使うという致命的な欠陥がある。ここで挙げられているカンナのヤドランやワタルのハクリュー・カイリューは、くさ・どくタイプのフシギバナを出せばエスパー技の「ドわすれ」「こうそくいどう」「バリアー」を撃ち続けるため完封できるのである。しかもNPCのポケモンのPPは無限だったため他の技に変えるという動きもできない

*4 当時のドラゴン技は固定ダメージを与える「りゅうのいかり」のみ。本格的にドラゴン技が登場したのは次作の『金・銀』から

*5 本書発売から2年後に開催された公式大会「ニンテンドウカップ99」では上位25匹のポケモンが使用禁止になったため、使えないフーディンの代用としてユンゲラーが重宝されてはいたのだが……

*6 すばやさが同値以上なら約30%で固定。すばやさが上回る相手には当たらない。勘違いされがちだが、すばやさが高いほど命中が上がるというわけではない。

*7 当時のバインド技は先制・命中できる限り相手が技を出せず一方的に攻撃可能

*8 ブイズパにおいては唯一フェアリータイプを半減できるという個性はある。

*9 すばやさ種族値依存だが、フシギバナとウツボットのいずれも上限の255/256に達する。

*10 ふしぎなアメを量産したか、セレクト7番目バグと思われる。

*11 がくしゅうそうちでも努力値は入る。

*12 ただし一部のポケモンは真っ当に育成したらしく、カイリキーのこうげきが種族値で勝るカイリューを上回っていたり、カメックスが能力値合計トップ10に食い込んでいたりする。