ミスティックドラグーン

【みすてぃっくどらぐーん】

ジャンル ロールプレイングゲーム


対応機種 プレイステーション
発売元 エクシング
開発元 デュアル
発売日 1999年6月17日
定価 5,800円(税抜)
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
※ゲームアーカイブスで付加
廉価版 エクシングマル安シリーズ
2000年8月31日/1,980円(税抜)
配信 ゲームアーカイブス
2017年11月22日/628円
セーブデータ 2ブロック(1つのメモリーカードに3つまで)
判定 クソゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント 赤信号みんなで渡るしかない
敵の行動早すぎ・エフェクト長すぎ
竜が移動の邪魔
4文字以上の名前は省略
落ち着きのない登場人物
ご都合主義が目立つシナリオ



この想い、きっとあなたへ…



概要

航時(タイムトラベル)がストーリーの主軸の戦記物RPG。メインキャラクターデザインは『ブレインロード』でも知られるアニメーターの神村幸子氏が担当。
開発は過去にPCEの怪作STG『パラノイア』を手掛けたデュアル。RPGの開発はSFCの『ヴェルヌワールド』に続いて2作目。
発売日の翌日に『俺の屍を越えてゆけ』、一週間後に『ペルソナ2 罪』、『グランディア』のPS移植版とRPGの話題作に少しだけ先行する形でひっそりと発売された本作は、
ゲームとして多数の問題点を抱え、埋もれるべくして埋もれた残念なゲームであった。

本項ではそんな本作の内容を紹介していく。

ストーリー

(説明書1ページより引用)

その少年は竜に乗りやってきた。少年の名はクリフ。
祖父の元を旅立った少年は、竜の導くままコレット養竜場に降り立ち、そこで少年時代を過ごした。
しかしある日、一つの悲劇を少年が襲った。
養竜場が他国の謎の襲撃を受け、育ての親を失ってしまう。
少年はとまどいながらも仇を討つため立ち上がり、戦いへと足を踏み入れていくことに…
しかしそれは偶然ではなく彼の宿命、狂いつつある歴史を戻すという大きな宿命の序章にすぎなかった。

+ 登場人物(仲間キャラクターのみ・ネタバレ注意)
  • クリフ・クーリガン (名前変更可能)
    • 本作の主人公。竜と心が通じる少年。父・祖父は高名な竜騎士。
  • アルフ (名前変更可能)
    • クリフを養竜場に導いた母竜ライラの子供。航時の力を持つ航時竜。成長後はクリフを乗せて飛行する。
  • レコル
    • 時の女神クロノスの使いの妖精。メニュー画面における進行役。
  • エルミス・D・エバレイス
    • 本作のヒロイン。グレイゼル国の政治を司るエバレイス家の次女。彼女の「竜が世界を滅ぼす」という予言が戦乱のきっかけとなる。
  • ユーゴ・コレット
    • コレット養竜場の主の息子でクリフ達幼馴染のリーダー。正義感が強い。
  • ミラ・コレット
    • ユーゴの妹。若年10歳ながらクリフ達と共に戦う。20年後の未来世界では最後の竜騎士として航時したクリフの手助けをする。
  • バド・ストローイ
    • コレット養竜場に捨て子として引き取られた少年。長い髪で耳を隠している。
  • ロキシー・レヴェンテ
    • コレット養竜場お抱えの竜医の娘でバドの恋人。勝気な女性。
  • パメラ・ルビーン
    • プラーマ連邦の戦略竜騎士隊「タクティカドラグーン」のリーダー。姉御肌の女性。
  • ビア・クイン
    • タクティカドラグーンのメンバー。豪快だが頭も切れる。ビールが好物。シャンパン・クインとは血縁。
  • シャンパン・クイン
    • タクティカドラグーンのメンバー。物静かだが戦場では鬼神と化す。シャンパンが好物。
  • サイ・リュンクス
    • タクティカドラグーンのメンバー。慎重でクールな女性。
  • バナ・ストローイ
    • 未来世界でのバドとロキシーの娘。竜騎士に憧れ、航時したクリフの手助けをする。
  • マグニエ
    • 謎の女性。正しい歴史を守るためにクリフ達の前に現れる。

システム・特徴

オーソドックスな2DグラフィックのRPG。戦闘はサイドビュー。パーティは最大5人制。

  • フリーターンシグナルバトル
    • ターンが存在せず、プレイヤー・敵共にいつでも行動することが出来る*1。FFシリーズのアクティブタイムバトルの亜流の戦闘システム。
      • 味方・敵キャラそれぞれが個別にシグナルを持ち、行動終了から時間が経過するごとに赤→黄→緑の順に変化。赤の状態だと命中率・回避率が通常の50%まで低下するが、黄の状態では70%まで緩和され緑の状態だと低下しない*2
      • 戦闘開始時は黄シグナルからスタートする。時間の経過は右上に表示されるバトルウォッチに表示される。
  • 連携
    • 特定の敵に対し、複数の属性の攻撃を組み合わせ、連続して敵に攻撃を加える事で敵に大ダメージを与えられるシステム。
      • 成功時は「GOOD」の文字エフェクトが表示される。
    • さらに連携成功でとどめを刺せば敵がレアアイテムを落とすようになる。『世界樹の迷宮』シリーズの条件ドロップを複雑化したようなものである。
      • 入手できるレアアイテムは主に鍛冶屋で強力な武器・防具に加工できるアイテム。高額で換金もできる。
    • また、特定の敵を弱点属性*3で一撃で倒すとレアアイテムを落とすようになっている。
  • 陣形
    • 各キャラごとに前列・中列・後列の3つに配置する。前列は与えるダメージと受けるダメージが増える。後列は逆で中列はその中間。
      • 弓は例外で後列で与えるダメージが増える。
      • 戦闘中に陣形を変更することも可能。
  • 空戦
    • 物語が進むと竜に乗ってフィールドを飛行して移動できるようになり、飛行中に敵とエンカウントすると空戦になる。
      • 陣形の概念が無くなり、アイテムが使用不能になる代わりに乗っている竜による体当たりとブレス攻撃が行えるようになる。
  • 紋章
    • 紋章屋という店で頭・腕・体に彫って、防御力や属性・状態異常の耐性を上昇させる刺青のようなもの。キャラクターのビジュアルには反映されない。
    • 別の紋章を新たに彫る場合はクリニックという店で前の紋章を消す必要がある。費用は彫った時の代金の数倍もかかる。
  • ブラックマーケット
    • 特定の町に存在し、別のセーブデータの所持アイテムを通常の倍額で購入できる。
    • 相応のお金が必要だが、アイテムの複製やクリア直前データから強力な武器を入手して限定的な周回プレイも出来たりする。
  • 武器は剣・槍・弓・斧・ハンマー・ナックルの6種類。それぞれに熟練度があり、使い続けることによって必殺技を覚えることが可能。
    • 斧・ハンマーは女性キャラは装備出来ない。弓とナックルは両手持ちで盾と同時に装備出来ない。
    • 各キャラクターには得意・不得意武器があり、武器攻撃力に補正がかかる*4
  • 魔法は各地の町などにいるエルフに話しかけることによって、その時のパーティ全員が習得できる。
    • 魔法にも熟練度があり、使い込むことによって効果が上昇する*5。レベルによってエフェクトも変化する。
  • 各キャラクターおよび敵には属性があり、特定の必殺技の成否判定に影響する。
    • 属性攻撃魔法を受けるとその魔法の属性に一時的に書き換えられる。
  • 戦闘時のコマンド選択は『エストポリス伝記II』、『ワイルドアームズ』に類似した方向キーショートカット方式。
  • 弓の攻撃や魔法の攻撃・回復は複数の対象を個別に選択し、最後に中央に表示される「OK!」のアイコンを押して決定する。
    • □ボタンで全体一括選択も可能。
    • 魔法は対象を複数選択しても効果が減少することがない代わりに、MPを対象分多く消費する。
  • 戦闘勝利時、各キャラの行動回数に応じて経験値にボーナスが加算される。
  • 基本的に人間タイプの敵はお金、モンスタータイプの敵は換金用のアイテムをドロップする。換金用アイテムは回復アイテムとして使用できる物もある。
  • メニュー画面でのアイテムや魔法でのHP回復時、あらかじめ一度に回復する量を確認できる*6
  • セーブはどこでも可能。
  • 町や城などに置かれている宝箱を勝手に開ける、いわゆる勇者行為に対して本作はそれをしていい理由付け*7がされている。

問題点

戦闘・ゲームバランスの問題点

本作で最もゲームとしての評価を落としている部分である。

  • 戦闘システム「フリーターンシグナルバトル」が破綻している。
    • 命中・回避を重視しようと緑のシグナルになるまで待っていると、その間に敵は何巡も行動するので大体戦闘不能者が出てしまう。ゲームの最初の戦闘で説明書の内容を信じたプレイヤーがこの事態に遭遇するのである。
      • しかも、敵は赤シグナルだろうと平然と攻撃を当ててくる。命中率50%と説明書に記載されているが、間違いなくそれ以上の確率で当ててくる。
      • プレイヤー側も赤シグナルの命中率低下の影響は薄く、後述する異様な敵の行動速度もあるため、敵も味方も赤シグナルで行動するのが常態化する
      • 一応、赤シグナル時は体感レベルで攻撃を外しやすくなり、緑シグナル時は体感レベルで敵の攻撃を回避出来るようになるので、(あえて待つ価値はないだけで)シグナルが全く無意味というわけではない*8
    • 魔法はシグナルの色によって命中率に影響するという事はなく、必中なためシグナルを気にする必要がない。
    • 緑シグナル時のメリットを増やす、敵も状況に応じてシグナル待ちをする設定にするなど、煮詰めれば面白いシステムになっただけに非常にもったいなく感じる。
  • 味方に比べて敵の行動速度が圧倒的に早い。
    • ゲーム最序盤から最後までまず敵に先に行動される上、味方パーティが一通り行動し終える頃には敵の行動が2・3巡してる事も多い。
      • ファイナルファンタジーIV』のバトルスピードを最速から変更できない、と言えばわかりやすいだろうか? その為、絶え間なく行動する敵に対し、何とか味方が割り込んでいくといったプレイ感覚になる。
    • ボス戦は特に辛く、ゲームが進むにつれボスの攻撃力も加速度的に上昇するため、回復タイミングを誤って戦闘不能キャラが出た後に押し切られて全滅…という事も珍しくなくなる。
  • デフォルト設定で戦闘中にポーズに該当する操作を行えない。
    • オプションでバトル操作モードを「停止」(ATBを採用したファイナルファンタジーシリーズのウェイトモードに相当)にしないと戦闘中にトイレに行くことも出来ない。
    • 上記の敵の行動速度の異常さも合わさって、デフォルト設定だとボス戦ではコマンド入力に手間取るだけでパーティーが簡単に崩壊する。
  • 状態異常がやたらと多い*9上、説明不足。
    • 説明書ですべての状態異常を紹介していない。また状態異常ひとつひとつの視認性が悪く、「初見で何が起こったのか分からない」という状況になりやすい。
    • 課されるペナルティも行動不能系*10が多く、上記の敵の行動速度も絡み、一方的に固められて全滅することも。
      • 最序盤からすべての状態異常を治療できる魔法をパーティー全員が習得できる点では『ライトファンタジー』よりマシではあるが…。
  • エフェクトが無駄に長い。
    • 本作のエフェクトは「くどい」「しょぼい」の二言で説明が付くレベルでクオリティが低い。
      • 例えば魔法使用時。「呪文を詠唱する表現のような文様がキャラの周囲に表示される→キャラに集中線が入る」という共通のエフェクトだけで6秒ほどかかる。魔法によっては合わせて20秒以上かかるようなものも。
    • 敵も頻繁に魔法を使用するため、これだけで戦闘のテンポが非常に悪い。
    • 敵の技も味方が覚える必殺技の使いまわしが多く、目新しさに乏しい。
  • 達成が難しい連携システム。
    • このゲームでは攻撃属性が「斬る」「刺す」「叩く」「火」「水」「氷」「金」「土」「木」「雷」と種類が多く、当然組み合わせ数も膨大になる。
      • 「刺す属性の後に斬る」など比較的簡単なものから、「睡眠にして叩いて火」など状態異常も絡めた3つの行程が条件のものもある。
      • 「火」「水」「氷」「金」「土」「木」「雷」の属性はその属性で攻撃するだけではなく、敵の属性を攻撃属性に書き換えることが条件である。属性書き換えは確実に発生しないため運にも左右される。
      • 当然、敵ごとにパターンが異なるので全ての敵の条件を自力で調べるのは非常に困難。シナリオが進むと戦えなくなる敵も多い。
      • 一応、連携で手に入るレアアイテムとそれを使って鍛冶屋で作る武器・防具は無くてもクリア可能ではある*11
  • 必殺技の問題点。
    • 属性持ちの必殺技は「相手が技と同じ属性を持っている状態」だと100%ミスになる仕様*12がある。
    • この仕様の説明がゲーム中に無いため、「必殺技は当たらない」と勘違いしてしまいやすい。
  • 理不尽な空戦での「墜落」。
    • 空戦では戦闘不能・行動不能になると墜落してその戦闘中の復活は不能になる。パーティー全員が墜落すると全滅扱い。
      • 上記の通り行動不能系の状態異常は多く、墜落の頻度は高い。
      • 空戦イベントボスの中に「ふきとばし」で強制的に墜落させてくるボスまでいる。そのボスとの戦いは運ゲーと化す。
      • 地上戦でも「突進」で墜落と同じ戦闘復帰不能の攻撃を仕掛けてくる敵がいる。こちらも全員いなくなると全滅扱い。
  • 戦闘リザルトの問題点。
    • アイテムドロップで処理が長くなる事がある。敵が複数のアイテムをドロップした場合でも、リスト化されずわざわざ1つずつ表示されるため。
    • ゲーム序盤は敵が低額の換金アイテムを多数落とすようになっているため、アイテムドロップの表示がかなり長くなる。決定ボタンを押せば早送りできるが、1回の表示ごとにボタンを押す必要がある。
    • お金を落とすタイプの敵に勝利した場合、入手したお金の額が表示されない。メニューで増えた分を確認しないと分からない。
    • 魔法の熟練度レベルが上がった事に対してのアナウンスがない。また、武器の熟練度レベルが上がって必殺技を習得した時に誰が習得したかまでは表示されない。
  • 雑な経験値調整。
    • ゲーム中盤以降、ボス戦で大量に経験値が手に入るようになり、1回のボス戦で2レベル以上アップすることも珍しくなくなる。
      • 戦闘不能のキャラは経験値が入らなくなるので、ボス戦で戦闘不能のまま勝利してしまうとレベルアップがかなり遅れてしまう。
    • その一方、ザコ戦の経験値はゲームを進めても低く、上記の戦闘のテンポの悪さも重なりザコ戦でのレベル上げは非常に時間がかかるようになる。
    • 行動回数に応じた経験値ボーナスもゲーム全体を通して1行動=1EXPなので、メリットを感じるのはゲーム序盤のみ。
  • ストーリーの都合上、強制イベントで一つ前の町にも戻れなかったり、クリアするまで出られないダンジョンが多く、どこでもセーブとの相性が悪い。
  • ストーリーの都合上、仲間キャラクターの総入れ替え・永久離脱が多い。
    • 当然レベルや武器・魔法の熟練度は引き継がれない*13ので武器・魔法の熟練度制と相性が悪く、パーティ全体の育成計画が崩れやすい。
      • 新加入キャラはある程度熟練度が上がった魔法や武器の必殺技を覚えているが、ストーリーの都合上習得できない魔法がある。
    • なお、離脱キャラの装備は基本的に外れる*14
  • ストーリー中盤、異様に強いボスと立て続けに戦う時期がある。
    • 頻繁にパーティー全体を「銅像」の状態異常にするボス。一方的に固められて全滅することも多い。
    • 上述の「ふきとばし」と同義の「はばたき」を使うボス。運ゲーになる。
    • HP吸収魔法と自己回復行動で大量かつ頻繁に自身のHPを回復するボス。回復量を超えるダメージを与え続けられないと詰む。
    • 直接攻撃力が高い上、3人という少ないメンバーで戦う事を強いられるボス。
  • ストーリー終盤、主人公単独でイベント空戦を行う場面がある。空戦は回復アイテムが使えないので主人公の回復魔法のレベルを上げていないと行き詰まる*15
+ ネタバレを含むので格納
  • ラスボス戦が主人公とヒロイン2人での戦いになる上、ラスボスが即死技ばかり使ってくる。
    • ただし、味方が習得できるナックルの必殺技と同じもの*16なので実際に即死が発動する確率は低い。

UI・ユーザビリティの問題点

  • NPCの判定が見た目より横に広く3キャラ分もあるため、移動時に引っ掛かりやすい。
     ● ←NPC
    *  ←主人公
    
    • 上の図の形で、上移動でNPCの横を通ろうとすると、判定に引っ掛かって通れない。場所によっては扉になかなか入れない事態も発生し、ストレスになる。
      • NPCに見た目通り横幅が広い竜タイプのキャラがおり、それを基準に他のNPCにも同じ判定を導入してしまっているからだと思われる。
  • 主人公の相棒の竜が移動の邪魔をする
    • ゲームのストーリーがある程度進行すると主人公の相棒の竜が成長し、以降町などで主人公の後ろについて来るようになる。だが…。
    • 進行方向からUターンして反対方向に移動しようとする際、竜にぶつかって移動が一旦止まってしまう。その後1秒ほどで主人公と竜の場所の入れ替えが発生する。
    • 町は道が入り組んだ箇所も多く、上記のNPC判定の仕様も重なり、非常にストレスになりやすい。
  • マップ上の宝箱やアイテム袋を拾うとき、いちいち取るかどうかの選択肢が発生する。
    • しかも選択肢の並びがいいえが上、はいが下でカーソルのデフォルト位置はいいえである
    • いいえを選択した場合、丁寧にアイテムをしまうアニメーションまで表示される。
    • 本作に持ち物の種類数の制限*17やアイテムを拾う行為自体のデメリットは全くない。プレイヤーにもよるが、100回以上は行う要素にボタンを押す手間が多いのは地味にストレスがたまる。
  • 防具の耐性は基本的にマスクデータで、弱点が付与されてしまうものもある。
    • アクセサリも装備効果が分かり辛いもの*18が存在する。
  • 紋章は彫る事のメリットの説明がゲーム中に無い。
    • さらに紋章は対応した箇所に防具を装備していると効果を発揮しない
  • 入れる建物・扉と入れない建物・扉の区別がつかない箇所が多い。
  • その他、99年発売のRPGとしては古臭い部分。
    • ゲーム中のチュートリアル要素の不足。
      • せいぜい換金アイテムの説明や魔法の習得くらいのもの。メニュー画面で戦闘の説明が見れるが、よりによって上記の破綻している戦闘システムのみの説明である。
    • 斜め移動に対応していない。
    • 建物や部屋に入る際、いちいち扉を決定ボタンで開ける必要がある。
    • L1・L2・R1・R2ボタンをデフォルト設定で使用していない。
      • オプションで他ボタンの機能を割り当てる事は出来るが、ショートカット機能の割り当ては無い。この時期のRPGでは特定機能へのショートカットに割り当てられている例も見られる*19ので残念なところ。

演出・ストーリーの問題点

  • 会話ウィンドウの冒頭で表示されるキャラの名前が3文字までのせいで、名前が省略されるキャラが多数いる。
    • 「ソリッシュ」というキャラが「ソリッ」、「ビア・クイン」「シャンパン・クイン」というキャラがそれぞれ「Bクイ」「Cクイ」と失笑ものな略され方をする。
      • この仕様のせいで正しい名前が判らないキャラ*20も存在する。
    • モブキャラはもっと酷く、「プラーマ連邦役人」→「プ役人」、「コックA」「コックB」→「コッA」「コッB」とも意味不明レベルに略されるものも。
      • 「プラーマ連邦兵士」が「プラー」だったり「プラ兵」「プ兵A」「兵士」だったりと略称が一定してないものまである。
    • そもそも本作の会話は一度に表示される最大の4行全てを使って表示されることは少ないので、素直に1行目にキャラの名前のみを表示する形にしておけば良かったと思われるのだが……。
    • 開発元のデュアルが本作の前に手掛けた『ヴェルヌワールド』では会話ウィンドウでキャラ名は最大7文字、顔グラフィックも表示されるなど余裕のあるウィンドウの使い方が出来ていた。それを考えるとどうしてこうなった…と言わざるを得ない。
  • イベント中、一部のキャラクターがやたらと周囲をウロウロしたりキョロキョロしたりするシーンが多い。
    • オープニングイベントでモブキャラが「こういう時、男ってウロウロするだけなんだよねぇ」というセリフを言うが、このゲームにおいては老若男女が空気も読まずイベントシーンでやたらとウロウロするのである。設定上落ち着いた性格のキャラまでも。
      • 酷いものになると中盤以降の戦争イベントで両軍の兵士が互いにぶつかり合う→互いに背を見せてウロウロ…を繰り返す目も当てられない光景が繰り広げられる。
    • NPCの移動プログラムがイベントシーンでも適用されるようになっているように思われるが、何故そうなってしまっているのかは謎。
      • 『ヴェルヌワールド』でもわずかながら見られる現象だったが、本作ではそれが非常に悪化してしまった。
  • キャラの死亡描写が半透明になって溶けるように消えていくといった気味が悪い描写になっている。
  • ファイナルファンタジー』シリーズのような戦闘中の会話イベントが何故かオープニングの負け戦闘時の一度だけ。
    • 効果的な演出方法なのにたった一度きりなのはもったいなく感じる。
  • ご都合主義な展開のイベントが多い。
    • 航時(タイムトラベル)するためのルールが物語中明確に提示される*21が、全編を通して守られていなかったり、取ってつけたような理由でクリアされることが多い。物語中盤で「時の女神クロノス」というキャラが登場して以降は特に顕著。
    • 主人公の相棒の竜が幼い姿からイベントもなく突然成長する*22。直後に竜に乗っての移動が可能になるためとはいえ強引な展開である。
    • 物語中盤、敵国の大陸に上陸した後、事を起こさず関所を抜ける必要が出たため、敵国の国教の僧侶に変装して抜けることになるが僧衣が現代では手に入らず、主人公1人が過去に航時して僧衣を入手するがパーティ人数分揃えるのを忘れてしまう。
      • パーティメンバーの機転でなんとか関所を抜けることに成功するのだが、その後すぐにしょうもないミスで敵に潜入した事がバレてしまう。*23
+ 一例:ネタバレを含むので格納
  • 養竜場の仇である因縁キャラと対決するイベントではそのキャラが呆れるレベルでしぶとく描写される。
    • 船上で海に叩き落とされたとはずなのに平然とまた船上に現れ、しかし船の爆発に巻き込まれて今度こそと思ったら、ちゃっかり生きていて結局パーティキャラの一人を道連れにしてしまう。
  • 未来世界から帰還した主人公が味方軍の陰謀で空爆を受け、その後救助された先でパーティの一人が瓦礫の下敷きになって死んだ、と伝えられる。
    • この後すぐに新キャラクターがパーティに加入するために雑に退場させられたと感じさせる。
  • ラストでは黒幕が最初に歴史を変える前に殺害する事になるのだが、そもそもオープニングで黒幕を過去に送り込んだ人物が元凶であるのに特に処罰はされない。
  • タイムトラベルによる歴史改変がストーリー中幾度か発生するが、タイムパラドックスに陥っている部分が多数見られる。
    • 名作と呼ばれるタイムトラベルものでも何かしら矛盾が生じるのは珍しくないことではあるが、本作はかなりお粗末な部類であり、無視されるパラドックスや過去改変のリスクを鑑みない軽率な行動といったツッコミどころが目立つ。
    • オープニングからして、航時で過去に刺客を送って他国の元首を暗殺する描写があるのだが、その元首が元の時代まで生きており聴衆の前でいきなり消えるというツッコミどころしかない光景が展開される。
      • 演出だけ見るとありがちなシーンに見えなくもないが、結果として元首の存在が無かったことになったりするのではなく、前述の見たままの出来事が本編世界の事実として認識されているのである。
+ 一例:ネタバレを含むので格納
  • 物語終盤、過去世界で味方キャラ数名に深く関わる人物と戦場で遭遇し、やむなく殺害してしまう。主人公とパーティメンバーが出会わなくなる可能性が発生するが、軽く流してしまう。
  • 物語最終盤、黒幕が誰も歴史を変えられないように過去に航時し、主人公たちに阻止されかけるも、航時の理論を発見した人物の先祖を殺害され、航時の手段が消失し、主人公は過去に取り残されてしまう。
    • 改変で起こった出来事自体はまだしも、「航時が無くなったなら、航時で殺した事実も無くなるのでは?」といういわゆる親殺しのパラドックスが生じているが、特に問題にはされない。
  • ヒロイン・エルミスが空気ぎみ。
    • 敵国の人間であるため、ゲームの折り返し地点でパーティー加入するまでは物語の節目で顔見せする程度の出番。加入後もイベントシーンは他キャラ中心で進行するため空気がちに。
      • また、加入してからしばらくすると長期離脱してしまう。再加入は敵の本拠地に突入する最終盤とゲーム全体を通して3分の1ほどしか使用できない。

その他の問題点

  • フィールドマップのグラフィックが粗く、ドット絵を単純に拡大したように映る。
  • モンスターグラフィックはアニメーションするが、攻撃時はグラフィックが上に伸び縮みし、待機時はグラフィックが単純に膨張・収縮を繰り返すという雑なもの。
    • かの『黄昏のオード』と似たような手法である…あちらは攻撃モーションのグラフィックが用意されているが。
  • 戦闘中の回復魔法など耳障りな効果音がいくつかある。
    • オプションではBGMの音量しか調節できない。

賛否両論点

  • マップグラフィックが昔の子供向けアニメのような陳腐さでかつ、全体的にどぎつい色使いのため好みが分かれやすい。
  • 歩行・戦闘時の頭でっかちな2頭身のSDグラフィックはシリアスな物語に対してミスマッチな感が否めない。
  • サブキャラクターデザインの作風。
    • トータルコーディネーター*24の福田道生氏のデザインは耽美な神村氏デザインとは対照的にアニメチックで濃いデザインが多い。キャラデザインに多様性をもたらしているとも言えるが。
  • 印象に残る戦闘曲BGMが少ない。
    • 主旋律を抑えた物が多く、BGMとしての役割に徹している物が多い。特に因縁のある名前ありボスとの戦闘BGMは物静かなイメージで好みが分かれるところ。
    • 中盤から終盤に差し掛かる間、通常ボスの戦闘曲を勇壮なイメージでアレンジした聞きごたえのある曲が戦闘に使われるのだが、使用期間が非常に短い*25のが残念である。
    • 終盤のボス戦BGMはボスが所属する国のテーマ曲を単純に早送りしたようなもので、手抜き感がある。
  • 隠し要素・やり込み要素は少ない。
    • 空戦の勝利回数に応じて貴重な武具をもらえる「竜騎士評議会」くらいのもの。
      • その勝利回数も最大で400回と達成が苦痛なレベル。ざっと10時間くらいはかかる。序盤から最強クラスの武具が入手できるので以降が楽にはなるのだが。
    • 隠しダンジョン・ボスは存在しない。
+ エンディングのネタバレなので格納
  • エンディングは黒幕がいなくなったことで歴史が修正された後の世界で、キャラの死亡も無かったことになる。主人公とヒロインだけは以前の記憶を受け継いだ描写がされる。
    • 主人公たち養竜場のメンバーは本編と同様に竜騎士になっているが、オープニングの襲撃も無くなっているので彼らが竜騎士になる動機が乏しく、ご都合主義感が否めない。
  • この手のオチではそうした疑問点は生じやすいので目を瞑るとしても、リセットオチということ自体が賛否が分かれやすいところである。

評価点

グラフィック・演出・素材

  • 神村幸子氏のメインキャラクターデザイン。有名アニメーターが手掛けただけあってクオリティは高い。ゲームの初回特典にはミニ原画集の小冊子が付属しており、一番のセールスポイントである事を感じさせる。
    • メニュー画面では仲間キャラのバストアップ絵が表示される。ただし、解像度の都合で現在主流のハイビジョンのテレビ・モニターだとジャギーやノイズが目立つのが難点。
    • 歩行・戦闘時のSDグラフィックにも特徴がよく反映されている*26
  • 各キャラクターの戦闘・イベント時のリアクションが豊富。一度のみのリアクションも多い。
    • このリアクションの凝りようが戦闘のテンポの悪さの一因*27になってしまっている点も否めないが。
  • メニュー画面での登場人物のライブラリ機能。登場人物の多いゲームだけにありがたい要素。
    • 同一キャラの幼年時代や未来の姿なども閲覧でき、最終的に総数は70を超える。
  • ストーリーの大筋自体は比較的まともである。
    • 伏線もそれなりに張られ回収される*28。各キャラクターもそこそこ魅力的に描写されている。それだけにご都合主義展開の多さや演出面の酷さが残念な部分である。
  • 壮大なイメージのフィールドBGMなど、一部のBGMは聞きごたえがある。
    • 単調なBGMもあるが、聞いて不快になるようなBGMはない。
  • 動詞+固有名詞で設定された独特の魔法名*29や全てのアイテムに設定されたフレーバーテキストなど、独自の世界観を構築しようとした姿勢が見て取れるところ。
  • 戦闘画面の背景は豊富。概ね戦っている場所に忠実なグラフィックが表示される。

ゲーム性

  • 移動スピードは速く、□ボタン押しっぱなしで超高速な移動も可能。町中では上記の問題点のおかげで必ずしも快適とは言えないが。
    • オプションで通常移動を超高速、□ボタンを押した移動を遅くすることも可能。
  • 他のセーブデータからアイテムを購入するという発想は斬新と言える。
  • ゲームの進行に関わる重大なバグはない。
  • ディスク読み込み関連でストレスを感じる要素はない。

総評

キャラクターデザインは上質、タイムトラベル&戦記物という題材自体も悪くはなく、隠れた佳作になりえる資質自体はあった。
だが、システムが破綻し、かつ苦痛度の高い戦闘や常識を疑うレベルの一部UI・演出、ご都合主義的シナリオがそれらを台無しにしてしまった。
「この想い、きっとあなたへ…」とキャッチコピーにはあるが、ゲーム作りに対しての配慮に欠けた想いはプレイヤーには全く届かないだろう。
クソゲーとしてもネタになる要素に乏しく、本作は二重の意味で埋もれるべくして埋もれた残念なゲームとなってしまった。

余談

  • 設定画集「ミスティックドラグーン・マテリアルズ」がケイエスエスから発売されている。
    • メインキャラデザインの神村氏の原画やサブキャラデザインの福田氏の原画が網羅されている。
    • モンスター・乗り物の原画や各ロケーションのコンセプトアートも掲載。
    • ストーリーのダイジェストもエンディングを除いて最後まで掲載。ストーリーだけを知りたければゲームをプレイしなくてもこの本で事足りてしまう。
    • 制作スタッフのコメントも掲載。正直ゲームの出来に対してビッグマウスとしか言いようがないが。
  • 徳間書店から攻略本が発売されている。
    • 各キャラの得意武器や全状態異常の解説、全モンスターの連携条件など本書を見ないと詳細を知るのが困難な要素は多い。
    • 巻末に「各キャラの乗る竜の名前」が掲載。作中で一部しか判明せず、何気に上記の設定画集にも載っていない情報。
  • キングレコードからサウンドトラックが発売されている。
    • 本作の関連グッズの中では最もプレミアが付いている。
最終更新:2025年03月27日 17:49

*1 ただし、コマンド入力後、行動終了後の待機時間は多少存在する。

*2 説明書での記述。ただし問題点の項で述べている通り実際は違う。

*3 弱点を突いた時は「NICE」の文字エフェクトが表示される。

*4 マスクデータなので装備画面にてキャラごとの上昇幅を確かめる必要がある。

*5 レベルの表示はなく、消費MPの上昇で表される。メニュー画面で使用しても熟練度は上昇しない。

*6 本作の回復アイテム・回復魔法は全て最大HPに対しての割合回復。

*7 敵が残していった物、いらない物だから持って行けと許可が出るなど。

*8 緑シグナル状態に固定する有用な魔法もある。

*9 戦闘不能系、属性変更を除くと18種類。

*10 マヒ・睡眠・混乱・燃える(混乱とほぼ同じ)・銅像。いずれも自然治療は可能。

*11 武器はレアアイテムの他、ラストバトル直前で購入できる武器を必要とするものが多く、蛇足感が否めない。

*12 槍の必殺技は例外。

*13 未来世界で加入する現代キャラと同一存在のキャラもデータ上は別キャラ扱い。

*14 ゲーム最終盤で一時的に外れるキャラの装備が外れない例外はある。

*15 斧の最後に覚える必殺技が全体回復効果で魔法の代用になるが、あまり現実的ではない。

*16 各キャラクターの持つ属性に対して発動する即死技。

*17 拾ったアイテムと同じアイテムを所持限度の99個持っていた場合は「持ちきれません」の表示が出て入手できない。

*18 混乱の完全耐性アクセサリが「酒の酔いを治す」、マヒの完全耐性アクセサリが「熱治療の効果がある」とフレーバーテキストで説明される。

*19 同年発売のサガフロンティア2、俺の屍を越えて行けなど

*20 オープニングに登場する25年前のプラーマ連邦の元首、各地にいるエルフなど。

*21 「航時竜」「腕のいい竜の乗り手」「ピュアウォーター(記憶を持つ水。ゲーム開始時の現代では海のピュアウォーターは消滅している)」「その年代に関する品物(該当する年代に購入した帽子でもOK)」の4つ。

*22 それまでのイベントで「だいぶ成長した」と言われるがその時はまだ幼い姿のまま。

*23 竜は見つけ次第殺す、という方針の国の町中で堂々と竜を連れて歩いてしまう。

*24 モンスターや乗り物、マップグラフィックの原画などを担当。

*25 未来世界最後のボス戦から過去世界へ行く前の現代での通常戦闘の間。

*26 ただし、仲間キャラのサイ・リュンクスはイラストと違い、肌の色が黒人のようで違和感があるグラフィックになっている。

*27 回復魔法がかかると喜ぶ、攻撃を外すとうなだれるといったリアクションをとるなど。

*28 物語序盤で航時した時に手に入れたアイテムが最終盤で航時するための鍵になるなど。

*29 「燃えさかるプロクス」「濡れそぼつプルイア」など。