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サマースウィートハート

【さまーすうぃーとはーと】

ジャンル 恋愛シミュレーション
対応機種 Nintendo Switch(ダウンロード専売)
発売元 風雲→Funalter Games
開発元 風雲
発売日 2019年10月17日
定価 2,480円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO: D(17歳以上対象)
判定 クソゲー
怪作
ポイント 2019年クソゲーオブザイヤー据え置き機部門大賞
女の子達と過ごす長すぎる1年間
黎明期のギャルゲーにも劣るシステム
情緒不安定な女の子達
そもそも不安定な世界観
珍翻訳と誤字脱字の数々が織り成す逸品
「お兄ちゃんの彼女だニャン!」
こんなゲームより私の写真集を買え (後述)
クソゲーオブザイヤー関連作品一覧


概要

原作は2018年に中国のSteamで発売された実写恋愛シミュレーションゲーム『女神驾到(Happy Together)』。『女神驾到』は低価格帯とはいえ有料のゲームながら課金によるゲーム内イベントの時短要素や課金ガチャ要素を搭載しており、中国本土においても不評を受けていた(のちにアップデートで緩和された)。
本作は『女神驾到』からそういった課金要素を取り除き(ガチャ自体は残っている)、新たに日本語翻訳や日本のプロ声優による吹き替えボイスを追加したバージョンアップ版である。Steam版も『サマースウィートハート』相当にアップデートされているが、現在日本のストアからは入手不可能になっている。
この記事ではSwitch移植版の『サマースウィートハート』について取り上げる。

「10人の女の子達と一夏の甘いひとときを過ごす」という触れ込みだが、実際はゲームシステム自体の欠陥に加え、支離滅裂な世界観やシナリオ、共感できない女の子達、そして低品質にも程がある翻訳により、原作の低評価を覆すことはできなかった一方で、それらの要素が合わさり今までのギャルゲーとは一線を画す強烈な味わいを持つ作品として注目を集めた。


システム

1日の流れ

  • 「日程表」を開くとランダムで選ばれた行動の一覧が表示され、そこから朝、昼、夕方、夜の4コマの行動を選んで実行して1日を過ごす。「休みをとる」以外の行動は「Vigor」(活力)を消費する。
  • 行動は能力上昇系と金稼ぎ系、レア行動と「ぶらつく」「休みをとる」に分類される。
    • 最低レベルのものを除いた能力上昇系行動を実行するには資金となるコインが必要。能力上昇行動にはレベル(アイコンの花マーク)の概念があり、レベルが高いほど能力の上がり幅と必要コインが多くなる。
    • コインは金稼ぎ系行動で稼ぐことができる。中には特定のヒロインの好感度が無条件で上昇する金稼ぎ行動もある。
    • 「ぶらつく」、「休みをとる」、黄色のミニゲーム以外の行動は「好調」「絶好調」「不調」の3種類のマークが1日あたり1つずつの行動に付与され、「好調」「絶好調」のイベントは能力上昇/獲得資金が2倍/3倍になり、不調のイベントは失敗しやすくなる。金稼ぎ行動は不調の時以外基本的に失敗しない。
    • レア行動は必要コインが多い代わりに能力の上昇幅が大きかったりダイヤモンド(後述)を獲得できるオレンジの背景の遠征系の行動と、ミニゲームを遊んで結果に応じて能力やヒロインの好感度が大幅に上昇する黄色の背景の行動がある。ミニゲームは失敗しない。
    • 毎日2〜4コマ固定で登場する「ぶらつく」を実行すると街のマップが表示され、移動先を選んでヒロインとのイベントを閲覧できる。新しいサブヒロインは「ぶらつく」で出会うことにより解放される。
    • 毎日1コマ固定で登場する「休みをとる」を実行すると活力を回復できる。こちらにもレベルの概念があり、レベルが高いほど活力の回復量が多くなる。また、余計に休みを取ることで上限を超えて活力を回復できる。
  • ストーリーの進行により起こる「事件」や、デートの約束で行動のコマが強制的に埋まる場合もある。

電話

  • 主人公が持っているスマートフォンで、ヒロインに電話をかけたり、「Like」というSNSアプリでヒロインと交流したり、ガチャを引いて衣装を獲得することができる。
  • 電話ではこれまでに出会ったヒロインに電話をかけて、デートの約束を取り付けることができる。デート先によって消費するコインが異なり、一部のデート先は予約できる時間帯も限られている。
  • Likeには「チャット」と「モーメンツ」2つの機能がある。
    • 「チャット」はLINEのようなメッセンジャーアプリで、メインヒロインと前日あったイベントに関する会話ができるほか、サブヒロインからも縦長のムービーが送られてきたり、デートの感想を言われたりする。
    • 「モーメンツ」はFacebookやInstagramのようなミニブログで、メインヒロインが前日あったイベントにまつわる投稿をしている。
      • 投稿には主人公から「いいね」やコメントをつけることができる。コメントにはヒロインからの返信も返ってくる。
    • いずれの交流でも、選択肢によってヒロインの好感度が増減する。
  • ガチャ(Couture)ではダイヤモンドを使ってヒロインの衣装を獲得可能。当てた衣装はヒロインにプレゼントした扱いになり、いつでも立ち絵の衣装を変更できる。
    • 一部の衣装はプレゼントした際、ヒロインが試着する縦長ムービーがチャットで送られてくる。
    • 衣装がダブった場合は集めることで好きな衣装と交換できる交換ポイントに変換される。
    • ダイヤモンドはメインヒロインのムービーを解放した時に1回分もらえるほか、大量のコインを消費するレア行動でも獲得できる。

女の子との交流

  • プレイ開始時にメインヒロインを2人の中から選択する。選んだヒロインは主人公のルームメイトとなり、一つ屋根の下共に過ごすこととなる。
    • セーブデータのシステムが「少し独特」であり、1つのデータの中にそれぞれのメインヒロインの進行が別々に記録される。同じデータで2人目のヒロインの攻略を始める時には、1人目のヒロインで上げた主人公のステータスやサブヒロインの好感度を引き継ぐことができる他、2人目のメインヒロインが1人目のメインヒロインのデータでもサブヒロインとして登場するようになる。
  • ホーム画面には次に起こる「事件」(メインヒロイン関係のイベント)と起こるまでの日数、それまでに必要な能力値が表示されており、期日までに能力を上げ切っていれば日程表にムービーなどのイベントが追加されるが、能力値を満たしていなかったらそのイベントは焼失してしまう(「消失」ではなく、 本当に燃えて無くなる演出が入る。)
    • 主人公の能力は、知識、芸術、体力、魅力*1の4つ。一部のイベントでは主人公の能力値を参照して成否が決まるほか、「蓄電タンク」(後述)のためやすさにも影響する。
  • 「ぶらつく」やデートなどで発生するヒロインとの会話イベントでは、通常の選択肢会話の他にも「蓄電タンク」という制限時間内にAボタンを連打してメーターを規定量まで上げるミニゲームが発生することがある。
    • 蓄電タンクには参照する能力値が表示されており、それを上回っていると簡単にMAXまで貯まるようになる。逆に言えば、1でも規定値に達してないといくら連打しても時間内にMAXまで貯めることはできない。
      • ただし、蓄電タンクは必ずしも規定量まで貯めることが正解とは限らず、逆に失敗することで好感度が上がるシーンもある。

問題点

Switchにソフトをダウンロードすると、HOME画面でのソフト名表示が「夏の甘い心」*2と誤翻訳されており、早くも嫌な予感がするが、いざゲームを始めるとそんなことは瑣末に思えるような問題の数々がプレイヤーへと襲いかかってくる。

システム面の問題点

  • 『サマー』と名打ったタイトルに反し、ストーリーはほぼ1年間にわたって展開される。
    システム解説で「1日ずつ日程表を作って行動する」と述べたが、つまり美優編では200回分、夏美編では366回分*3日程を作り行動する必要があるということである。3年間を過ごすにあたって平日と土日をそれぞれまとめている『ときめきメモリアル』のような工夫もない。
    • これが見た目以上に凄まじく時間がかかる。1日4回の行動1個1個に主人公のちびキャラのアニメーションと時間移行のアニメーションがそれぞれ5秒以上表示され、スキップ不可
    • ならば何も日程を入れずに行動しなければいいのでは、と思われるかもしれないが、予定を入れなかった日程は自動的に「休みをとる」扱いとなり、主人公がベッドで寝ているアニメーションがきっちり4回表示される
      特に能力が上がりきった2周目以降に顕著で、下手すると女の子を見ている時間より主人公の寝姿を見ている時間の方が長くなる
      • なお「休みをとる」はスケジュール表には1コマしか並ばず、2コマ以上休みをとりたい場合はスケジュールを空欄にした状態で1日を始め「空いているスケジュールは休みになるが大丈夫か」というダイアログにいちいち承諾しなくてはならないのも地味に面倒。
    • この仕様のせいで、まともにプレイしていたら1周10時間以上はかかる計算。
      そんなゲームデザインなのに何を思ったのか周回要素が搭載されており、1周ではムービーの分岐をコンプリートできない。しかもメインヒロインは2人いるため、コンプリートには最低4周もかかる。
    • そもそも『サマー』というタイトルに反して美優編は1月からスタートするのはもはや些細な問題である。
  • 行動の選択肢にどれが並ぶかは完全ランダム。
    • ストーリー進行や能力上昇によりある程度ラインナップは変わるものの、序盤に能力や資金不足で実行できない行動が大量に並んだり、逆に後半になっても能力の上がり幅がしょぼい行動しか並ばなかったり、すでに事件やデートで日程が2つも埋まってるのに「ぶらつく」が上4つを占領したりといったことも頻発する。
  • 好調/絶好調マーク付き以外の能力上昇行動は失敗して能力が下がることもあるのだが、不調マークが付いていない行動でもかなりの確率で失敗する*4。そのため、次の事件に必要な能力値をギリギリ満たしている状態だと好調行動以外はおいそれと選べない。単純に金を取られて能力を下げられるというのも理不尽な話。
    • オレンジの遠征系レア行動でも失敗する。しかも能力の下がり幅も大きい。大金を取られて能力を大幅に下げられるのは…
  • ヒロインに電話して誘うデートは断られることがない。そのため「毎日デート」といった極端なことも可能。
    • 毎回同じデート先でも選択肢に正解すれば文句を言われることもないため、駆け引きも何もあったものではない。
  • おそらく周回前提なのだろうか、「事件」や「蓄電タンク」に要求される能力値の中には、引き継ぎを利用しない1周目には到達できないような値のものも含まれる。
    • かと思えばその次の事件の要求値が前の事件の半分だったりすることもあり、全体的に安定しない。
    • なお、2人のメインヒロインのうち夏美編の方が美優編より要求される能力値が高い傾向にある。後述の通りシナリオに関しては美優編の方が上級者向けだが
  • イベント中に出てくる「蓄電タンク」のミニゲームも問題だらけ。
    • そもそもミニゲーム自体が唐突に挿入され、何のために蓄電タンクを貯めているか、このタンクは規定値まで貯めるのが正解なのかも把握しづらい
      • 重いものを持ったり逃走犯を捕まえるといった力のいる仕事なら大抵はMAXまで貯めれば成功のためわかりやすいが、折り紙など繊細な仕事はMAXまで貯めると壊してしまい失敗扱い。なのに「餡を皮で包む」場面はMAXまで貯めるのが正解など、一貫性がない。
      • 「倒れ込みそうになったヒロインを受け止める」場面でMAXまで貯めると受け止められず失敗など、不可解なものもある。
    • タンクには要求される能力の数値と現在の主人公の数値が表示されているが、どの能力値なのか種別は表示されない
      • 上記の「何をするためにタンクを貯めるのかわかりずらい」問題はどの能力値を参照しているかである程度推察できるものの、それには主人公の現在の能力値を覚えておいて画面表示と突き合わせる必要がある。
  • クソADVのお約束として既読スキップ、バックログといった今日のADVお馴染みの便利機能は搭載されていない
    • 一応、テキストは一括で表示されるため、既読スキップがなくてもテンポは悪くない。そのせいで重要なセリフを読み飛ばしてしまってもバックログで確認できないのだが。また、ムービーのみは2周目以降は一度見たムービーをスキップできるようになる。
    • ムービー中はボイス付きのヒロインのセリフだけでなく、ボイスの無い主人公のセリフのウィンドウも読む間もなく消えてしまうことも多い。ムービーにもバックログはない。一応、後からムービーを見返すことはできるが…。
  • セーブしてあるデータのロードがゲーム内からできず、ロードしたい時にはいちいちゲームを終了してからセーブデータを選ぶ必要があるオプションからタイトル画面に戻ることすらできない
    • 恋愛SLGというジャンル、特に本作では行動に失敗して能力が下がったり選択肢に失敗して好感度が下がった時にロードし直したい画面が多いことを考えるとかなり面倒。
    • 「手動アーカイブ」と表記されるべきセーブデータの名前が「主導アーカイブ」と誤植されているのはもはや些細な問題。
  • 衣装ガチャもテンポが悪く、1回回すたびに8秒くらい演出にかかる上に、10連ガチャといった気の利いた機能はない。

テキストと翻訳

  • ほぼ全編にわたって繰り広げられる、かつてのエキサイト翻訳以下の低品質極まりない日本語訳
    • 記憶の中の匂いを掻いた」、風の音を「サーサーの音」と書くような拙い表現に加え、てをにはの誤りや抜け、不自然な表現やぎこちない文章が頻繁に出てくる。
    • 女の子が突然男まさりな口調になったり、主人公が女口調になったり、ゴロツキの口調が子供のようだったり、口調も全く安定しない。キャラによってテキストウィンドウの色が変わるといった配慮もないため、顔写真が表示されるヒロイン以外はパッと見ただけでは誰のセリフなのか理解できないこともしばしば。
      • というか、一部のイベントでは何の前触れもなく本当に主人公とヒロインのセリフが入れ替わる。上記のような翻訳ミスかと思いきや、選択肢までヒロイン目線になっているので意図した仕様なのかは判別困難。
    • 表現の不統一も当たり前のようにあり、「ゴロツキA、B」と表記されていたのが次のテキストでは「ゴロツキ甲、乙」になったりする。
    • 突然中国語や英語になる場面も多数。中国語はともかく、原語以外の言語である英語が挿入されるのはなかなか珍しい現象。
  • 低品質な翻訳を抜きにしても「身の程知らず目!」「銃弾に撃たれたのk?」「君に店たっ方んだけど」、チャットにおける主人公の発言の末尾によく「>」がついているなど、誤字・脱字・誤変換も完備。しかも頻発する
    小さく頃きたことがらう」(おそらく「小さな頃来たことがある」が正しい)など、翻訳ミスと誤字脱字の合わせ技すらある
    • 後述するカオスな世界観も併せて、例えるなら里見の謎』と『大奥記』のテキストを混ぜ合わせてエキサイト翻訳にかけたような文章がほぼ全編にわたって展開される。
  • 選択肢が入れ替わっていたり、ムービー内容と一致しないことも頻繁にある。
    • 例えば夏美編の冒頭で、彼女に服を貸出す選択肢で「ポロシャツ」を選んだのに、分岐したムービーで彼女が着ている服はどう見てもタンクトップ(しかもキャップ柄)になっているなど。のっけからこんな調子である。
      体育館のデートでは複数のヒロインで選択肢が入れ替わっているようで、「水泳」を選ぶとスケートを始める。残りのヒロインではちゃんと水泳を始めるので訳が分からない。
      • 幸い選択肢の入れ替わり方は一定なので、汎用イベントでは選択肢が入れ替わっていることを覚えていれば対処はできる。
    • 選択肢以外の分岐テキストも多く入れ替わっており、女の子に罵倒されながら好感度が100上がるという光景も起きる。逆も起きるのでなぜ好感度が下がったのか理解できないこともしばしば。特に美優編は「褒められたのに好感度が下がる」イベントが多い。
  • Likeのチャットやモーメンツの選択肢もおかしく、前の選択肢と話が繋がっていなかったり、途中で途切れていたり、長すぎて読めなかったりするのものも日常茶飯事。 会話のドッジボール
    • ヒロインのセリフが主人公の発言の選択肢に誤って入っており、それを選ぶとヒロインが同じセリフを返してくるなんて現象も。
  • 背景やモーメンツに投稿される写真がテキストと一致していないことも多く、プールにいるのに背景は図書館だったり、金時人参を切ったような料理が「アイスクリーム」と書かれていたりする。
+ アイスクリームとされる謎の人参料理の画像
調理中 問題の投稿(クリックで拡大) アイスクリーム…?
  • アイスクリームでは無いのは明らかだが、これは一体何の料理なのだろうか。中国の食文化に詳しい方の情報を求む。
    • なお「まぐろ」は設定した主人公の名前。投稿では「ルームメートのかげで」と脱字をかましているが、誇張抜きで全編このクオリティのテキストである

登場人物

  • デフォルト名が「しょうた」なのからも分かる通り、主人公の名前は、ひらがなカタカナ5文字までしか入力できない。
    周囲の登場人物は漢字でフルネームのため、主人公の名前が浮いてしまっている。
  • ヒロインごとに扱いに格差がある。
    • メインヒロインはムービー付きのイベントも豊富に用意されており、Likeでの交流もできるため好感度が上がりやすいのだが、そうでないサブヒロインは地道にデートを繰り返して好感度を上げていくことになる。
      • 一応、サブヒロインもLikeは使用するが、サブヒロインのチャットは相手が一方的に送ってくるだけで、主人公から反応を返すことはできない既読スルー状態
    • 何より、エンディングが用意されているのは最初に選んだメインヒロインのみ
      苦労してサブヒロインの好感度をMAXにしても、情報にヒロインのサインと「LOVE」のハンコがつくだけ。あまりにも報われない。
      • ヒロイン同士の修羅場イベントのようなものもないため、好感度不足でバッドエンド打ち切りにならないようにメインヒロインに構いながら、サブヒロインとのデートにも時間と資金を費やすことになる。
    • そればかりかサブヒロイン間にも格差があり、Likeで縦長ムービーが送られてきたり、回想イベントが開放されるのはサブヒロイン8人中3人のみ。後の5人はムービーがなく、衣装も2着しかない上に衣装のDLCもない
  • テキストの拙さや超展開も相まって、掴みどころがなく感情移入しづらいヒロインたち
    • ヒロイン全体に共通する問題点として、テキストの拙さや選択肢の入れ替わりも相まって感情の機敏が伝わって来ず、唐突に機嫌が悪くなったりよくなったりするなど、情緒不安定に見えてしまう。
+ アクの強いヒロインたち。一部ネタバレ含む
  • メインヒロイン2人のうち、林美優(CV:若林直美)の設定の突飛さが目につく。
    • 訳があって幼い頃から両親に猫として育てられたため、自分を猫だと思い込んでいて、猫言葉(?)で喋るという、極めてクセの強い設定である。衣装も猫耳衣装がほとんどを占める。
      • 「お兄ちゃんの彼女だニャン!」というセリフは、彼女の、ひいては本作の珍妙さを象徴するセリフとして話題になった。
    • ネタバレになるため詳細は割愛するが、猫として育てられた理由や幼少期に受けたしつけはほとんど母親からの虐待まがいのもの。そんな母親はシナリオ中に逝去し、暗い影をシナリオに落とす。
    • 社会から隔離されて育ったため一般常識もわからない、花や金魚を食べようとするという有様。シナリオ中で主人公の指導により働けるまでに成長するが。
    • 「優しくて純粋」というキャラ紹介ではあるが、実際には性格面にも難がある。わがままで主人公の言うことを聞かなかったり、都合の悪い時だけ猫としてふるまったりと感情移入しにくい。
  • もう1人のメインヒロインである宮水夏美(CV:今井麻美)は漫画家志望のツンデレ女学生という、比較的常識的でまともなキャラクターである。ちゃんと内面での成長も描かれ、美優とは違いシナリオでは一定の評価を得ている。
    • しかし一応ファンデーションで薄めているものの、腕と足にいかついタトゥーが見え隠れしており、創作には真摯な学生というキャラクター像と乖離している。
      そして彼女もムービーで唐突に猫のコスプレをする。スタッフに猫耳推しがいるのか…?
  • サブヒロインの中で特に設定のアクが強いのが、芸術大学に通う女学生の峰山千尋(CV:赤星麻衣子)。
    • プライドの高い自信家で、大学で組んでいるバンドのドラムを担当しているというのは表向きの顔。
      秘密の隠れ家で怪しげな研究に没頭しており、主人公を新しい治療法の実験台にしたり(本人曰く「成功率は1%しかない」)、「業界のブラックリストに載っている」と自称したり、ゲーム内プロフィールにも「彼女にはお気を付けてね」と書かれたりする危ない一面を持つ。
    • そもそも初対面のイベントが月明りの中剣を背負って登場し、主人公を襲ったゴロツキを撃退するという突飛な上に上記の研究者設定とは関係のないもの。
  • 2人目のサブヒロインであるカフェのオーナーの杉本雅(CV:松舞奈)は常識人ポジ。
    「パフォーマンスアート」と称して椅子のふりをしている主人公に気付かず座ってしまうなど、騙されやすい被害者ポジションでもある。
    • 実は先天的な難病を持っているらしく、周囲から「化け物」のレッテルを貼られたこともあると主人公に打ち明けるが、どのような病気なのか、なぜ化け物呼ばわりされたのかは語られずじまい。そしてこれは何度も発生する汎用イベントのため秘密を何回も打ち明けられる
  • 3人目のサブヒロインである江口歩(CV:江口育美)は、正義感の強い刑事。
    • アイスクリームを見て殉職した警察官の父親との思い出を主人公に打ち明ける、という重要そうなイベントあるが、これも汎用イベントとして設定されており、何度も重い過去を打ち明けられることになる。
    • Likeで送られてくる縦長ムービーの中では「犯罪者に緊縛されて動けずもがいている」という危機感溢れるものもあるが、特に主人公が助けに行くイベントが発生する訳でもなく、投げっぱなしで終わる
  • 上記ヒロイン間の格差におけるムービーが用意されていない水増しヒロインとして、海辺にあるバーのセクシーなオーナーである市川玲華(CV:笹本奈津枝)や、高飛車で中二病なお嬢様で、「宝がありそう」という理由で深夜のビルなどに主人公を巻き込んで不法侵入しようとする頭のネジがぶっ飛んだ赤羽星(CV:高木遥香)、そそっかしいOLの島崎良子(CV:山石さとみ)、花屋を営む優しい性格の新堂鈴江(CV:鈴木麗子)、主人公の隣に住む、頭は良くないが活発な女子高生の柳瀬楽(CV:篠田有香)がいる。
  • 主人公も主人公でカフェで「パフォーマンスアート」と称して椅子の真似をしたり、(しかも店員が人だと気づかないまま普通に座ってる)、ヒロインの犯罪行為にノリノリで付き合ったり職務中の女刑事にアルコールを飲ませようとする誕生日にビルの窓を突破ってサプライズしようとするなど、掴みどころのないキャラクターである。
    • 「選択肢によって変な行動をとったり、セクハラ行動をとる」くらいなら他のギャルゲーでもまだよくあるが、上記の椅子の真似や飲酒強要は特に選択制ではなく、主人公が勝手にとる行動である。
  • ムービー部分以外は所謂パートボイスで進行するが、使い所がおかしくデートが始まる時に「楽しかった」と発言したり、内容も「不機嫌〜!」と泣いたりと投げやりだったり、全ヒロインで「早くあなたに会いたいです」という内容の似たり寄ったりなボイスがあったりと個性が薄まっている部分もある。

世界観とシナリオ

  • 現代を舞台にした恋愛アドベンチャーゲームのはずなのに、その世界観を無視した展開が唐突かつ頻繁に繰り広げられる、理解し難い世界観。
    • ヒロインが銃弾戦に巻き込まれたり、剣を背負って登場するのはまだ序の口。別のイベントでは主人公の口から「ここは法治国家だぞ」という言葉が出るのにもかかわらず全体的に治安が悪いのは当たり前。
    • なんの前触れもなく ショッピング街にある結界を超えて『千と千尋の神隠し』 *5 のような異世界に転移したり 「業界のブラックリストに載っている」怪しい治療術で主人公の足を回復させるヒロインオフィスで何者かに怪しい光を浴びせられエレベーターが水槽になる幻を見せられる見世物小屋に異形の化け物が展示されているなど、あきらかに現代日本という設定を逸脱した展開が唐突に、頻繁に出てくる
      • このようなカオスな世界観になっているのは主に「ぶらつく」で発生するイベント。デートやメインストーリーなど他の部分では普通の現代日本を舞台にした世界観であるため、整合性も何もあったものではない。
  • ローカライズにあたって人名や行動先の地名などが日本のものに置き換えられており、舞台は日本だと思われるが、原語版における中国特有の風習や民俗などがそのままになっており、多くの日本人には馴染みのない年中行事や食べ物、故事などが選択肢にも絡んでくる。現代日本の公園でいきなり坐禅を組み始め「やはり子の刻は入定しやすい」とのたまう主人公に日本人プレイヤーは置いてけぼりになるはず。
    • 日本に暮らす多くの日本人ならばまず知らないような故事成語の知識も求められるため、そのような選択肢を出されたらわざわざ調べるか失敗を覚悟して当てずっぽうで行くしかない。
  • 先述の通り1年にわたってストーリーが展開し、中国の節句も出てくるなど、一応季節に応じたイベントが繰り広げられるが、クリスマスなどメジャーかつギャルゲーでは定番の行事はスルーされたり、ムービーではヒロインが真冬でも夏服を着てたりと、季節感が薄い。
    • それどころではデートでは行き先によって夏に温泉で雪を見たり真冬にビーチでサンオイルを塗ったりと、季節感をかなぐり捨てたイベントが展開される
  • サブヒロインとデートを重ねることで、逆にサブヒロインからデートのお誘いの電話が来ることがあるのだが、電話はどのヒロインでも共通して「ねっ、今日天気がいいから、(時間帯)に一緒に(場所)へ行きませんか」から始まる。
    • デート場所がどこであれ「天気がいいから」の部分は固定であり、「天気がいいから、深夜に一緒に地下鉄へ行きませんか」「天気いいから、昼に一緒にピアノの部屋に行きませんか」と天候が関係ない場所に誘われたりする。 天気がいい日はダンジョン日和ってか
  • そもそもの問題として、イベントの内容が全体的に説明不足
    翌日のモーメンツを見てようやく何が起こったのかわかるムービーや、説明不足のまま終わるイベントが多い。
    先述の雅の難病のような、設定は語られても結末は語られず投げっぱなしというイベントも多い。
    • 主人公やヒロインの職業といった基本的な設定も説明不足だったり、メニューから見られる情報と矛盾していることもある。
  • 以上のシナリオの問題点と、頻発する選択肢の入れ替わりや意味不明な翻訳が合わさり、女の子の気持ちを汲み取り、適切な選択肢を選択するというギャルゲーの基本的な遊び方すら満足にできない
    • 「何が起こっているのかわからない」「どの選択肢を選んでいいのかわからない(理解できない)」「なぜ好感度が上がった/下がったのか理解できない」場面が圧倒的に多く、恋愛SLGとしての楽しさは完全に破綻している
  • 著作権や商標権に対する認識がおおらかなのか、テキスト中に「斉木楠雄のψ難」「東京喰種」等の漫画やアニメのタイトルが伏せられずそのまま出てくる。
    ムービー中では歌手の名前が「椎名蜜柑」とぼかされているのに翌日のモーメンツでは「椎名林檎」と書いちゃってるなんて場面も。

その他の問題点

  • 実写ムービーを多数収録しているソフトなので致し方ない面もあるが、ソフトの容量が12.5GBとかなり多い。容量不足に悩まされるSwitchにとってはある意味致命的な問題。
  • ヒロインの衣装やムービーを追加するアンロック形式のDLCが2種類配信されているが、第二弾は100円とはいえ有料。
    • しかもどちらのDLCでも追加されるヒロインが同じであり、水増し枠のヒロインには衣装が追加されない。

変な点

  • 上記のカオスな世界観と掴みどころのない性格の女の子たち、そして滅茶苦茶な珍翻訳と誤字脱字のオンパレードが織りなすある種の強烈なテキストのノリ。そこに実写のセクシーな写真やムービーが組み合わさり、独特の雰囲気を放っている。
    • 唐突すぎる展開や意味のわからない展開も多く、側から見ればツッコミどころ満載のシュールギャグとしてかなり笑える
    • 街中で誤字脱字を見つけてほくそ笑んだり、いわゆる怪しい日本語やVOW系のネタが好きな方にとっては、それらのネタの宝庫として楽しめること間違いなし。
    • もっとも実際にプレイしてみると大半の時間がだるい行動消化に費やされるため、かなり苦痛なのだが…。

賛否両論点

  • カオス極まりないサブヒロインのイベントと比べ、メインヒロインが関わるメインストーリー、特に夏美編は比較的まともではあるが、キスシーンなどの刺激がなさすぎて単調という意見もある。
    • メインヒロインのストーリーは数ヶ月おきに同居するヒロインが怪我や病気をし、主人公が看病をしてヒロインが回復する…という流れを繰り返すなど全体的にワンパターン。シナリオを1年間に引き延ばすためか軽い風邪や捻挫の完治に2ヶ月かかったり、治ったと思ったら実際は治ってなかったりする
    • メインヒロインのムービーだけ追えば確かにまともなシナリオと後述の通りまともな翻訳ではあるものの、ツッコミどころに溢れたサブヒロインとの交流に比べて単調になりがち。

評価点

  • ほぼ全編の翻訳が壊滅的な本作だが、メインヒロインに関わるムービー部分のセリフのうち、ボイスがある部分の翻訳に関してはまとも。声優の演技の質も高い。
    • 吹き替えるにあたって、ネイティブ日本語話者の声優からセリフの修正が入った可能性が高い。事実、ムービーでもボイスがない主人公のセリフ部分の翻訳は壊滅的である。
    • それでも、翻訳はまともだろうとあまりにも説明不足すぎて意味がわからないムービーも多いのだが…。
  • こんな翻訳ではあるが、DLC配信に伴うアップデートにより文章として意味を生していなかった選択肢やモーメンツにおいて文字色変更のマークダウンがむき出しだった点、セリフの語尾に毎回「!ッ〜」がつく点など、一部の翻訳が改善されている。
    • 「多少マシになった」程度で全体としては文章が拙いままだし、意味が通るようになったことで原語版の支離滅裂な内容が浮き彫りになったということでもあるが…。改善する意思があるだけマシなのだろうか。
  • 実写ムービーに関しては 衣装の季節感のなさを除けば 質に問題は見られず、それなりにセクシー。
    • なお、CERO:D(17歳以上対象)なこともあり、ヌードなどのきわどい映像は出てこないものの、女優の谷間を強調したショットも多い。出演女優の中には日本でコスプレイヤーとして活躍されている方もいる。
  • 基本システムのうち、Likeの「モーメンツ」に関してはある程度の独自性と戦略性がある。
    • 闇雲にヒロインの投稿にいいねしていればいい訳ではなく、ネガティブな投稿にいいねをすると好感度が下がってしまうなど、考えて反応する必要がある。他のヒロインがコメントをつけていて、そこに主人公もコメントで参加できるのも面白い(ここも翻訳はアレだが)。
  • 日程表のシステムは完全に破綻しているわけではなく、資金や活力に気をつけながら次の事件に必要な値を目標にステータスを上げるのはやりがいや戦略性があり、ハマる人はサブヒロインとのデートそっち抜けで主人公の強化や金稼ぎに没頭するほどハマる
    • 上昇幅は少ないが好調で失敗しない行動を選んで地道に確実に能力を上げるのもよし、失敗のリスクを覚悟の上でレア行動出現時のために金を貯めて、一気に能力上昇を狙うのもよし。
    • もちろん、メインヒロインの好感度が低いとバッドエンドで打ち切りになってしまうため、ヒロインの好感度上げも両立しなくてはならない。
  • 主人公のちびキャラのアニメーションは、場面転換のたびにウィンクしたり、ゲームで遊ぶ際にはSwitch本体で遊んでいたりと、妙に芸が細かい。不可解な使い回しも一部に見られるが…。
    • 主人公の電話に表示される時間やバッテリー表示がSwitch本体の時間や電池残量と連動しているなど、細かいところの演出は妙に凝っている。

総評

女の子のセクシーさや一部のシステム面に光るところがないわけではないが、不便で不可解なシステムや常識では何が起こっているのか理解できないシナリオ、そして何よりそれらをさらに無茶苦茶にする低品質極まりない翻訳が全てを台無しにしており、恋愛SLGとして、ひいてはテキストベースのADVとして完全に破綻している
他のギャルゲーに見られるような恋の駆け引きも皆無で、「意中の女の子と交流する」という最低限の欲求すら満たすことができない。
一方そんなカオスなシナリオと低品質な翻訳や誤字脱字の数々はネットで大きな話題を呼び、唯一無二の笑いを提供しているのも事実である。
総じて側から見る分には笑える怪作だが、実際にプレイするとなると苦痛なタイプのクソゲーである。
1周プレイにかなりの時間を費やすこともあり、珍翻訳見たさに安易に手を出すのはお勧めできない。


余談

  • 2019年のクソゲーオブザイヤー据え置き機部門大賞を受賞した
    • 総評では滅茶苦茶な世界観とクソ翻訳や、苦行ゲーながら続きが気になってしまいつい進めてしまう点が評価された。
  • あまりもの出来の悪さに、出演女優の1人が「 こんなゲームを買うくらいなら、私の写真集を買え (意訳)」とコメントしたことでも有名になっているが、これはSwitchに移植される以前、原作の『女神驾到』が概要の通り不評を受けていた際に女優が発表した声明が起源。(該当コメントの画像を掲載している外部リンク(中国語))
    • 内容では撮影環境の劣悪さや『女神驾到』は課金要素を搭載して開発元は継続的に利益を上げているのにもかかわらず出演料が支払われたのは1度のみ、しかも満足のいく金額ではなかったことが打ち明けられており、上記の発言も「(ギャラが安かった)このゲームより自分の写真集を買ってくれた方が自分に入る収益が高い」という文脈である。
  • 日本では存在自体が地雷扱いされがちな実写ギャルゲーだが中国、韓国では本作のあとの2020年以降『しまった!美人に囲まれた!』などヒット作が続々生まれていてギャルゲーの一大ジャンルになっていたりする。先見の明はあった…のか?。
最終更新:2025年07月01日 14:50

*1 初期のバージョンでは「容姿」と訳されていた。

*2 「Sweetheart」はひとまとめで「恋人」を意味する英単語であり、「Sweet(甘い)」と「Heart(心)」に分けて翻訳するのはこの場合そもそも誤りである。

*3 作中に含まれる2020年はうるう年のため、ちゃんと2月29日が存在する。

*4 金稼ぎ行動は失敗しても獲得する金が減るだけで所持金を減らされることはないが、好感度上昇を伴う場合は失敗すると好感度が減ることもある

*5 比喩ではなく、作中で伏せられることなく「『千と千尋〜』で見たことがある」と言われる。

*6 デザインからして、上海ディズニーランドに存在する「エンチャンテッド・ストーリーブック・キャッスル」。東京ディズニーランド等のシンデレラ城やアナハイムのディズニーランド等の眠れる森の美女の城のように特定のモデルとなる作品を持たない城である。