Nintendo World Championships ファミコン世界大会
【にんてんどう わーるど ちゃんぴおんしっぷす ふぁみこんせかいたいかい】
ジャンル
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パーティ
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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任天堂
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開発元
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インディーズゼロ
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発売日
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2024年7月18日
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定価
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【パッケージ】3,828円(税込) 【ダウンロード】3,800円(税込) 【スペシャルエディション】9,878円(税込)
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プレイ人数
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1~8人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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ポイント
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誰でも手軽にスピードランに挑戦できる ゲーム大会のムードを体験できる良演出 収録ゲームと競技内容の偏りが若干難
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概要
1990年よりニンテンドー・オブ・アメリカ主催で実際に行われていたゲーム大会「Nintendo World Championships」をモチーフに、ファミコン作品を用いた様々な競技でタイムアタックに挑戦するゲーム。
『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』といった13のゲームから計156種の競技が収録されており、プレイヤーは1人プレイでの純粋なタイムアタックや、7人のゴーストプレイヤーと競いあう「サバイバル大会」、週ごとに入れ替わる競技で世界中とタイムを競う「世界ランキング」に挑むことができる。
似たコンセプトとなる『ファミコンリミックス』同様、インディーズゼロが開発を担当した。また、ファミコンコントローラーに対応するソフトとなる。
収録ゲーム(50音順)
いずれも『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』にて配信されているタイトル。
また、『スーパーマリオブラザーズ2』を除き原則として海外のNES版を収録している。
収録競技の例として、『スーパーマリオブラザーズ』の1-1でスタートから最初のキノコを獲得するまでの「スーパーキノコ早取り競争」や、『アイスクライマー』の1面でボーナスエリアに到達するまでの「ボーナスステージ到達競争」、『ゼルダの伝説』の特定マップで画面上の敵を全て倒すまでの「オクタロック全倒し競争」といったものがある。
競技は難易度や所要時間によって「NORMAL」「HARD」「MASTER」「LEGEND」の4レベルに分けられている。多くの競技は1分以内、ものによっては1秒程度で終わるボリュームだが、各作品に1つだけ用意されている「LEGEND」競技は一転して「スーパーマリオブラザーズ最速クリア競争」などかなりの長丁場になっている。
収録モード
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タイムアタック
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全156種の競技でタイムアタックに挑戦する1人プレイ用モード。
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クリア時に最速タイムと、競技ごとの基準タイムに応じたC~Sまでのランクが記録される。
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初期状態でほとんどの競技はロックされており、特定ランクの達成や自己ベストの更新によって得られる「コイン」を使ってアンロックする。
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世界ランキング大会
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週ごとに決められた競技でタイムアタックに挑戦し、その記録を全世界のオンラインプレイヤーと競い合うモード。期間は日本時間で月曜18:00~翌月曜17:59。
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タイムアタックと共通の156競技から5種目が選抜される。
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選抜以前に好記録を出していたとしてもそれは参照されず、期間内に改めて挑戦する必要がある。
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結果は次週の入れ替え時に集計・発表され、そこで自身の記録が世界何位だったか、また、同じ年代のプレイヤーの中で何位だったかを確認できる。
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サバイバル大会
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世界ランキング大会から抜粋した3種の競技を用いて、他プレイヤーと競い合うモード。
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実際には世界中のプレイヤーの記録を元にしたゴーストと競う形となる。
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自身含む8名が参加し、1種目終了時に遅いタイムから4名が脱落、2種目終了時に更に2名が脱落、3種目めで一騎打ちとなり、勝ったプレイヤーが勝利となる。
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「一般部門」と「エリート部門」とに分かれており、後者の方が比較的早いタイム帯での競い合いとなる。
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パーティモード
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1台の本体に最大8個のコントローラーを接続し、その場でタイムを競い合うマルチプレイモード。
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1つの画面上で参加プレイヤーの数だけプレイ画面を分割して表示する。
その他の仕様
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全てのモード共通の仕様として、競技ごとに定められたミス条件(残機が減る、パワーアップ状態が失われクリア不能になるなど)を満たすと、ミスする少し前まで場面が巻き戻されての再開となる。
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時間経過は巻き戻しの間も継続するため、数秒ほどのロスが発生する。
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獲得したコインは既に説明した競技のアンロックの他、プロフィールに設定するバッジの開放に用いる。
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バッジのデザインは収録作品のキャラクターやアイコンから抜粋されており、サイズの大小やゲームでの登場タイミングによって必要コイン数が異なる。
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全般的に、小さめでゲーム序盤で見られるキャラクターほどコインは少なく、ボスキャラのように大きめでゲーム中~終盤で登場するものは必要なコインが多い。
評価点
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タイムアタックが気軽にできる
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通常、スピードランを行う際は計測可能な環境を個々人で用意しなくてはならず、また誰もが正確なタイムを共有できるわけではないが、本作ではゲーム内で計ってくれるので導入が容易。
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特に「1-1で移動可能になってからキノコを取るまで」といったものはツールを使わないと厳密に測れないが、そうした手間や精密性の担保を気にすることなく何度でも挑戦できる。
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ファンが定めた基準でなく「公式が計測してくれる(公式な記録である)」という安心感も大きい。
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ゲームの大会として盛り上げてくる各種演出
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あくまで「Nintendo World Championships」に参加している体裁であるため、競技中に観客の歓声が入るといった生の大会らしさが演出されている。
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歓声は競技スタートのほか、ミス条件を満たした際に「Oh...」と残念がる声が上がったり、また長丁場の競技では最終盤に手拍子が発生する。
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単純な仕組みではあるものの、自己ベストを狙えるかもしれない動きで最終局面に入った瞬間などに手拍子で盛り立てられるのは、ゲーム体験として気持ち良さがある。
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他にもメニュー画面で「世界ランキング」モードに遷移した際に、BGMがシリアスなアレンジ版へシームレスに変わるなど、プレイヤーの心境にリンクするような工夫が見られる。
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総合ランキングだけでなく年代別順位も計測される
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前述の通り、世界ランキングの集計発表時に同年代帯での自身のランキングが表示される。
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同年代=同じゲームで遊んだ世代の中で自身がどれだけの腕前なのかという情報の面白さもあるが、総合ランキングの上位層に勝てなくても同年代でなら上位だった、といった励ましにも繋がり得る。
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プロフィールの遊び心
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ゲームの初回起動時に自分自身のキャッチコピーと「当時好きだったゲーム」を選択できるが、前者に遊び心が見られる。
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例えば「セーブデータ消失経験あり」「任天堂は私が育てた」「ルイージ推しガチ勢」といったクスリとできるものが多い。
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「攻略本読んで遊んだ気になる」などあるあるネタも見られ、見て面白いとともに、自身のゲームの思い出を振り返るきっかけにもなり得る。
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後者についてはほぼ全ての公認ファミコンゲームが収録されており、メジャーどころは勿論、マイナーなゲームも選択可能。
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当時は周りに誰も知っている人がいなかったゲームでもオンライン上で別の誰かと被ることがあり、それだけでも味わい深さを感じられるかもしれない。
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リトライの動作が迅速
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競技に挑戦中はZL+ZRボタンの押下で開始直前の画面へ即時抜け出せるうえ、またそこからワンボタンですぐさまリスタートできる。
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ベストタイムを競う都合上プレイヤー側も見切りや諦めが早くなりがちだが、再挑戦までの動作がスムーズであるためここでのストレスはかなり少ない。
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値段分遊ぶには十分なボリューム
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ファミコンとはいえ実際に発売されヒットしたゲームが13本収録されているため、ボリューム面での充実感は十分にある。
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もちろんゲーム丸々1本を遊べるわけではないが、「スーパーマリオブラザーズの1-1~8-4」や「エキサイトバイクのTRACK#5」のクリアのように最早全クリを求められているものもあるので、全ての競技をプレイするだけでも結構な物量となる。
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加えて全てのSランクを目指すとなると相当にやり込みが必要。値段分を楽しむことは容易いといえる。
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元々ファミコン慣れしていた人にとっては「もっと他のゲームもやりたい」「DLCで追加してほしい」という気持ちも出てくるだろうが、それも上記までに触れた演出や手触りの良さがあるからこそ。
賛否両論点
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結局どれも操作の緻密さ勝負でしかない
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求められるものがタイムアタックのみである以上仕方がないが、最終的にはドット単位の精密操作の差で0.01秒を競うことになる。
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それを楽しむことこそがタイムアタックという層には、評価点で記した計測の安心感含め没頭できる要素だが、そうでないなら結局どの競技も「ボタンを決まった順番に押すだけのゲーム」に見えてしまうだろう。
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プレイ時間の短すぎる競技が複数ある
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上記に加え、異常にプレイ時間が短い競技が多い。
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例えば『バルーンファイト』の「風船1個早割り競争」は、一瞬ボタンを押下して慣性移動すれば理論値1.43秒で終わってしまう。
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誰でもできる手軽さも手伝って、この競技が世界ランキングに出た際は同率1位が大量発生した。誰もが「世界1位」を体験できる気持ち良さがある一方、「これは競技として成立しているのか」という印象も生じてしまっている。
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『リンクの冒険』の「妖精つかまえ競争」の世界記録はなんと0.5秒台。こちらは達成が難しいものの、普通にやっても1秒台であるため、手軽で挑戦しやすい一方、やはり一瞬の競技すぎる勿体なさはある。
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バグ技が禁止されている
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当時はできたバグ技の多くがブロックされている。例えば『スーパーマリオブラザーズ』のWrong Warpを行うと「使用を禁止されている操作」としてミス同様の巻き戻しペナルティが発生する。
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このほか、『スーパーマリオブラザーズ』の-1面バグに繋がる壁抜けなど、ゲームを極端に破壊する一部グリッチを使用すると「この競技では禁止プレイです」の表示と共に競技最初からの再スタートを課せられる場合もある。
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ファンの間でのスピードランとレギュレーションが異なってしまっているため、残念と感じるプレイヤーがいる反面、正規ルートのみでの競い合いとしたことでバグ技を知っていた者勝ちにならなくて良い、とする向きもある。
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一方で対策漏れしたバグ技もある
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『ドンキーコング』が世界ランキング大会の競技となった際、世界1位の記録が空中を登るバグ技を使用して達成されたものだったため、プレイヤー間で物議を醸すことになった。
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イカサマと見るか、ここまで対策されているのに抜け道を見つけ出したのはむしろあっぱれと見るかでこの件はプラスにもマイナスにもなり得る。
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なお、タイムアタックに関係しないイレギュラーな手順を含むため余談的な内容になるが、『星のカービィ 夢の泉の物語』では特定操作でゲーム内プレイがクラッシュし強制終了することがある。
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これはストーン能力を水中で用いると発生する不具合(要・壁抜け)を起こし、メモリ破壊を誘発するもの。対策不要として放置されたか、「水中に地上判定のままコピー能力を持ち込むと巻き戻し」といった措置を取るのが難しかったかは不明だが、いずれにせよ全てのバグがブロックされているわけではない。
問題点
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巻き戻しの発生条件が厳しすぎる
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チビマリオが敵に当たるような分かりやすいミスだけでなく、『エキサイトバイク』で転倒したり、『メトロイド』で酸の海に一瞬入ったりしただけでも巻き戻しが発生する。
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上記の例はいずれも本来ゲーム自体は継続可能だし、特に『メトロイド』についてはすぐに地上に復帰すればそれほどタイムも変わらず、むしろルート取りの一環と捉えることもできる。
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タイム以前にまずクリアできるか、というプレイヤーの最初の目標を阻害しがちであり、ステージ構成からしてもかなり頻繁に条件を満たしやすいため、ストレスの溜まりやすい仕様となっている。
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巻き戻し後に再ミスが誘発されやすい
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条件を満たした瞬間その場で巻き戻しが発生し、すぐに操作が再開されるため、状況によってはリカバリ不可能な状態に追いやられることが度々ある。
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例えば巻き戻し完了時点がちょうどマリオがジャンプしている最中だとスピードが継続されず落下してしまうし、ギリギリでジャンプで避けたクリボーが目の前にいる状態から再スタートを強制される場合もある。
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そのため巻き戻し後、即ミスして追加で巻き戻し、更にミスして巻き戻しと1つのミスが10秒以上のロスを生むことも珍しくなく、モチベーションを奪いやすい。
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競技内容に偏りがある
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収録ゲームによって似たような競技が多かったり、収録範囲が異常に狭かったりする。
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例えば『スーパーマリオブラザーズ3』はコクッパ7兄弟との対戦が全て収録されている。多少の個性はあるものの基本的にほとんど同じ競技である。
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その一方で『アイスクライマー』は収録競技数自体が少ないうえ、どれもステージ1を舞台にした競技となっている。同作のステージ2以降はギミックが増えており、難易度のバリエーションも広いため、それらが収録されていないのは惜しい所。
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また、元を言ってしまえば収録ゲーム自体にマリオ・ゼルダシリーズへの偏りがあると言える。
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もっとも、この2種はファンのスピードランにおいても花形ソフトであるため、「これらが多すぎる」というより「他のソフトがもっと充実していればより良かった」というところだろう。
総評
名作ゲームの一場面を抜き出し、純粋に操作の上手さ・素早さを競う面白さが演出によってうまく表現された一作。
計測の手軽さやリトライのしやすさなどによって、タイムアタックにさほど興味が無かった層でも、徐々にタイムを更新していく快感を体験しやすいようにできている。
やることは操作の精密さを磨くことのみだし、中にはすぐにクリアできてしまう競技もあるが、それも参加ハードルの低さに繋がる良い面があるといえるだろう。
余談
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実は「Nintendo World Championships」を題材としたゲームは本作が初めてではなく、1990年にアメリカでリリースされたNESソフト『Nintendo World Championships 1990』が存在している。
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本作の発売に合わせてか、それまでマイニンテンドーストア専売だったファミコンコントローラーが一般店舗でも販売されるようになった。
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さらに、ファミコンコントローラーに対応した充電スタンドも新たに発売している。
最終更新:2024年11月03日 20:22