坂本政道


概説

坂本政道(さかもと まさみち、1954年‐)は、モンロー研究所公認レジデンシャル・トレーナー、株式会社アクアヴィジョン・アカデミー代表取締役。東京大学理学部物理学科卒業、トロント大学電子工学科修士課程修了後、ソニーで半導体素子、SDL社で半導体レーザーの開発に従事するが、体外離脱体験をきっかけに世界観が一変し、2000年に変性意識状態の研究に専念するために退社した。

体外離脱体験

坂本はアメリカに移住して3年目の1990年に体外離脱体験が起こったという。ある土曜日の朝、いつもは7時から9時ころに起きるが、深くて長い寝息が規則的にきて、その日に限り7時に目が覚めたという。次に気が付いたことは、体がはっきりというと把握できず、どこからどこまでが体なのか、どこが境界なのか分からなかったという。そして、体は熟睡状態にあり、意識の方は明らかに冴えていて、体外離脱の前段階だと思った。その時は、体からは抜け出せなかった。このような経験が何度かあったが、ある夜、体から「私」が抜けさせたという。足の先の方からベッドの端を越えて、ズルズルと床に降り、その時の感じとしては、何かゼラチンか何かにでもなったようだったという。*1
また、ある時は体から上に抜け出て、ドアを通り抜け、フロント・ヤードにに出た際、地上1.5メートルぐらいのところに浮いていて、家の方を見た。すると、次男が自転車に乗って目の前を通り過ぎたという。次男は坂本に気付かなかったが、黒っぽい服を着て、特有の雰囲気(陽気で好奇心が強くとても愛らしくて、少しおっちょこちょい)を感じた。そして、坂本が体の中に戻って、肉体の目を開け、体を起こすと次男は紺のタートルシャツに黒のジーンズを着ていて、坂本が「今、何をしていたの」と次男にさりげなく聞くと「自転車に乗ってた」と言ったという*2。坂本はこの体験について、初めて実際に体外離脱している根拠を自分なりに得ることができたと述べている。
なお、坂本は体外離脱にも以下のように2つないし3つのタイプがあることも述べている*3。坂本自身、真性体脱すると肉体から離れた自己の存在を明らかに知らされると言い、自分のもつ世界観、価値観が大きく変わってしまうという。

タイプ1

真性の体脱といい、体脱中に夢でも幻覚でもないという明らかな自覚がある。意識の状態としては覚醒時とほぼ同じと感じられる。自分の寝息が聞こえ、全身に波のような振動を感じた後、体から抜け出る過程を経験する。現実の物質世界へ行き、そこで見たことが実際に起こったことと一致する。体に戻って来て体が目覚める時にも意識の連続性が維持される(夢から目覚めるような感覚がない)。見える映像は電波障害が起きたテレビ画像のようにノイズが大きく、解像度が良くない。

タイプ2

体験初期段階までは真性体脱と全く同じように進行するが、途中からタイプ1とは異なった状態に移行してしまうもの。体に戻って目覚める時に夢から覚めたのと似た感覚があり、真性対脱ではなかったことに気づく。体脱の初期段階では意識は覚醒状態にあるが、途中から異なった状態(眠っている状態とも違う)へドリフトしてしまうと考えられる。

タイプ3

疑似体脱といい、「非物質の自己」は体から抜け出て、意識が覚醒しているという点ではタイプ1と同じだが、夢と同質の映像を見て、夢を見ているという自覚を伴う。体が宙に浮いている感覚はリアルなので、体脱していることは確かだが、見る内容は荒唐無稽で現実世界とは異なる。

ヘミシンクと変性意識状態

ラジオ放送のプロデューサーとして活躍したロバート・モンローは、偶然、体外離脱体験をした後、モンロー研究所を設立し音響パターンが意識状態に与える影響について精力的に研究を始め、試行錯誤と長時間の実験の結果、ある音のパターンを耳に送り込むと体外離脱や変性意識状態を誘引できる事を発見し、開発された技術がヘミシンクプロセスと呼ばれる。坂本政道は2001年からモンロー研究所のヘミシンクプログラムを年3回のペースで受講し、変性意識状態を経験している。

ヘミシンクを用いて体験できる変性意識状態は便宜的に「フォーカス10」や「フォーカス12」などのフォーカス・レベルで呼ばれ、一般に番号が大きくなるほど通常の意識状態、物質の世界から離れていくと言える。坂本政道は、人間の意識状態は、通常、物質界に限定されているが、ヘミシンクによって意識のチューニングを行う事で音響パターンに応じ別の意識状態に移行させる事ができるとしている。

フォーカス10は、体外離脱体験が可能な状態であり、フォーカス12が、意識が拡大し五感による知覚を超えた状態、フォーカス15が無時間の状態、フォーカス21が物質界と非物質界、この世とあの世の境界となっている。さらに、フォーカス23が各自の想いが生み出した世界、フォーカス24〜26が共通の信念を持つ人々の想いが生み出した世界、フォーカス27は再生や生まれ変わりといったことと関わる状態のようである。このように、この世とあの世の境界を超えたフォーカス・レベルにおいて、各自の思いや共通の信念を持つ人々の想いが生み出した世界が存在している事は、全ての臨死体験者が同じ体験をするわけではなく、文化的な装飾などが加わっていると考えられている事や稀に闇を体験する人がいる事とも通じているのではないかと思われる。また、フォーカス27の状態で「次の生を受けるまで待つ」などといった表現は、胎内記憶を語る子どもの証言とも類似していると言える。

このような意識状態について、それらはモンロー研究所によって、誘引され作り出された世界であり、実際の死後の世界と同じとは限らないといった反論がありうるのではないかと思われる。確かに、実際に死んでいるわけではないので、ヘミシンクによって誘引される意識状態を臨死体験や実際、死後に経験する事と同一視することには慎重であるべきと言える。しかし、坂本政道は、それらの意識状態は夢や幻覚とは異なり体験すれば現実だと分かると述べている。その事は経験している人には現実そのものであり、スタニスラフ・グロフが自我を超え宇宙全体とつながるトランスパーソナルな領域と呼んでいる意識の深層の経験であると言えると思われる。これらのことから、モンロー研究所によって誘引された意識状態もまた人間意識や宇宙の真理への扉の1つであるとは言えるのではないかと思われる。また、坂本政道は元々、物理学科出身のエンジニアで、世界の全ては物理学で説明がつくと信じていて、ある意味霊能者の対局をなす人間であったと言えるが、ヘミシンクを用いれば、俗にいう超能力者や霊能者でなく誰でもこのような意識状態を経験できるといった事も強調している。そして、それらが幻覚か現実かについて議論をするより直接体験して宇宙の真理を解明する事の方が有益であるとも述べている。

さらに、ヘミシンクを用いて体験することのできるフォーカス27より高次の意識状態は、宇宙につながっていると言え、宇宙の向こうにはさらに無数の宇宙があるとも述べている。ここでいう宇宙は、無機的なものではなく生命エネルギーが満ち溢れ、銀河や星、惑星などもその生命エネルギーの現れであると述べられている。そして、そのような高次のフォーカスレベルの意味は、各個人が持っている現世と過去生の全てを含めた人格の自分である向こうの自分、I There と結びついている。2024年の著書では I There にはフォーカス34/35へ行くとアクセスできると述べており、その全容を視覚的に捉えることができるという。坂本の場合、それはスタジアムという形をとることが多く、観客席の部分に多数の生命体がいて、その数は数万を下らないように見えるというが、I Thereがどのように見えるかは人により様々で、ディスク、ドーム状の部屋、クラゲ(何本も足があり、それぞれの足がI Thereのメンバーになっている)、宇宙船、写真のフィルム(いくつも顔が映っている)、洋服ダンス(それぞれの引き出しが各過去生)などがあるという。*4
スタジアム状になっている、坂本政道のI There(『UFOと体外離脱 ヘミシンクによる宇宙人遭遇で人類覚醒へ』p.117より)

I ThereはI・Tと言われ、フォーカス42では自分のI・Tと結びついたI・Tの集合体であるI・Tクラスターの探究が挙げられている。坂本はI・Tクラスターが宇宙空間に浮かんでいるのも目撃したことがあるといい、I Thereと同様にスタジアムの形をしていたが、下面がロート状にに伸びていて、恐らくその部分がI・Tクラスターへ繋がているとおもわれると述べている。*5
宇宙空間に浮かぶ坂本政道のI Tクラスター(『UFOと体外離脱 ヘミシンクによる宇宙人遭遇で人類覚醒へ』p.180より)

このような意識状態は、私たちの意識の根源や生まれ変わりは地球という惑星にとどまらず、宇宙全体を舞台としているという可能性を示唆している。しかし、ITクラスターは、多数の生まれ変わり、転生経験の集合とも捉えられるため、そのどこまでを個人の転生と見なすかは困難であるとも言える。

  • 参考文献
最終更新:2024年09月01日 21:23

*1 坂本 2001 p.24

*2 坂本 2001 p.27-28

*3 坂本 2001 p.37-38, p.42-43

*4 坂本 2024 p.117

*5 坂本 2024 p.180