概説
ブライアン・L・ワイス(Brian L. Weiss、1944年11月6日-)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身の精神科医。1966年にコロンビア大学を卒業後、1970年にイェール大学医学部で医学博士号を取得。過去生退行催眠療法の第一人者である。
ワイスは、元々、科学者として、また医者としての思考法をしっかりと身につけ、保守的な専門分野に押し込めていたと言い、伝統的な科学の手法で証明されないものは、何であれ決して信じなかったと言う。そして、心霊現象も自分とは全く関係がないと思っていたようであるが、キャサリンという女性と出会い、彼女の病状を改善させようと催眠療法を試していく中で、キャサリンが自分の過去生を想起したり、非常に進化した
マスター達(肉体に宿っていない非常に進化した精霊達)からの情報を伝えたりすることに驚くばかりであったと言う。そして、生まれる前や死んでから後の魂の体験に関する研究に、少しでも貢献するために1988年に『Many Lives, Many Masters』(邦題:
『前世療法』)を記した。その中では、以下のように述べている。
私は相変わらず科学論文を書き、専門家の集まりで講義し、病院の精神科の部長をしている。しかし今や、私は二つの世界に足を踏み入れている。五感で察知できる私達の肉体と物質的欲求によって代表される物質界と、私達の魂と霊によって代表される非物質的な世界である。この二つの世界はつながっており、そしてすべてはエネルギーだということを私は知っている。それなのに、この二つの世界はしばしばあまりにも遠く離れた存在であるように見られている。私の仕事は、注意深く科学的に、この二つの世界を結びつけ、その統合を記述することだと思う。
人生は目に見える以上のものだということを知ることが大切なのだ。人生は五感を超えた所にまで広がっている。新しい体験や知識を受け入れることが第一である。「我々の仕事は学ぶこと、知識を通して神のようになることである」
キャサリンのセッション
1980年にワイスはキャサリンという患者に出会ったが、キャサリンの不安感や恐怖感が改善されなかったため、催眠療法で治療しないと心身の健康を回復できないと判断し実施した。そして、催眠療法の実施により病状の原因となった時まで退行させていく中で、キャサリンは、エジプトやローマなどでの過去生を始めとする無数の過去生へ逆行していくという現象に直面する。そして、キャサリンは過去生での死の場面に直面すると
光の存在との出会いなど
臨死体験と類似した
中間生を体験している。ワイスは、キャサリンの死に対する考えが転生の度に全く違っているにも関わらず、彼女の死の体験は同じであり、死の瞬間前後に意識体が体から離れ、素晴らしいエネルギーに満ちた光の方へ引き寄せられていき誰かが助けに来てくれるのを待っているというプロセスを経ていることを述べている。なお、その時、キャサリンは、
エリザベス・キューブラー=ロスや
レイモンド・ムーディの臨死体験研究の本を一冊も読んだことがなかったようである。
そして、
中間生を体験している間に、キャサリンは、マスター達の教えをワイスに伝える事ができたという。キャサリンはワイスの私生活については殆ど知らなかったが、マスターたちは、キャサリンを導管としてはセッションの中で、ワイスの小さな息子が心臓の病気で亡くなった事や、彼の魂が非常に進化した魂であることを語ったという。そして、そのとき以降、ワイスの人生はすっかり変わったと述べている。ちなみに、キャサリンも病気から恢復し、昔の症状は見えなくなった。
また、ワイスは、キャサリンの過去生の記憶について遺伝的記憶について検討しているが地球上のあらゆる場所に住んでいる過去生がある事や、子どもの居ない過去生などもあったことから遺伝的系統は何度も途絶していると述べ、カール・グスタフ・ユングの言う
集合的無意識で説明するにもあまりに個別的であるといった事や
中間生体験との整合性からも、
生まれ変わり(輪廻転生)の考え方が最も理にかなっているとしている。
複数の退行催眠
ワイスは、患者に退行催眠を行うかどうかについては慎重であると言うが、複数の過去生へ戻る退行催眠を行ったという。しかし、
中間生からメッセージを伝えることのできた人は殆どいなかったという。
ワイスは、個別に何百人という患者に退行催眠を行った(その何倍もの人々にグループで退行催眠を行った)といい、患者は医者、弁護士、会社役員、セラピスト、家庭の主婦、工員、セールスマン等様々で、宗教的信条や社会的地位、教育レベル、信条等も様々であったが、多くの人々が自分の過去生を思い出し、肉体的な死が訪れた後も自分が生きていた事を思い出したという。また、退行催眠により過去生を思い出すだけでなく、素晴らしいスピリチュアルな体験や癒しが起こるといい、
ソウルメイトを見つけたり、亡くなった人からメッセージを受け取ったり、深遠な知識や知恵にアクセスしたりと様々な神秘的で驚きの出来事に出会うとも述べている。そして、退行催眠により過去に導くだけでなく、未来へ導いた事もあったという。
至高体験
ワイスは患者を診たあと、オフィスの安楽いすに腰かけて瞑想を始め深い瞑想状態に入っていた時、テレパシーによるトランペットのような「ただ愛せよ」という声はひびき渡り、すぐに目を覚ました。その声は典型的な10代の反抗期にいた息子のジョーダンのことを言っていると、知っていたという。それから1週間経ったある朝早く、まだ暗い内に私はジョーダンを車に乗せて、学校へ送って行った時、ジョーダンはすごく不機嫌であった。
その時、ワイスには怒るか、そのままにするか、2つの選択があったが、「ただ愛せよ」という言葉を思い出して、そのままにしておく方を選んだ。そして、学校の前で彼を降ろす時に「ジョーダン、お父さんはお前を愛しているからね」と言った。その後、驚いた事にジョーダンも「僕もお父さんを愛しているよ」と言ったという。ワイスはそれから病院へ向かったが、教会の前を通りすぎた時、太陽がちょうど、気の真上に昇ってくるところで、庭師がのんびりと芝を刈っていた。その時の
至高体験を以下のように記している。
突然、私はすばらしいやすらぎと喜びに満たされました。自分がとても安全で、守られていて、世界は完璧な秩序を保っていると感じました。庭師も木々も私の見るものすべてが、光り輝いていました。ほとんど向こう側がすけて見えるような感じでした。すべてのものが透明な金色を帯びていました。私はすべての人、すべてのものとつながっている自分を感じました。庭師、木々、芝生、空、木をかけ登るリス。恐怖心も心配も一切ありませんでした。未来は完全に見通せ、すべてが完璧でした。
そして、ワイスは病院へ着くまで、全ての物が透き通り輝いて見えたといい、超然とした思いやりとやすらぎも喜びも続いていた。忍耐強さと幸福感とすべてのものとつながっているという感覚も、そのままだった。
その日の仕事を始めても、この状態は続き、人々の中とまわりが光っているのも、感じ、輝いているように見えたという。そして、人生の全てが繋がっているという事を体験し、すべては一つであるというワンネスの体験をしている。
その後、運営委員会に出席し、医者の倫理と誠実さについて意見を述べるためには、左脳の論理的な思考を必要であったため、意見を述べようと左脳で考え始めた時、分析的で現実的な自分に戻ったという。
ワイスは、その時以来、このような体験を5回か6回しているという。そして、瞑想をしていても、こうした状態は作る事はできず、それらは殆ど神の贈り物なのだと述べている。
最終更新:2024年03月07日 01:16