生まれ変わり > 予言・予告夢

前世の記憶を語る子どもが、生まれる前から、周囲の人々に不思議な体験をもたらすという事例もあるといえ、その1つとして、前世の人格が死ぬ前に、自分の来世を予言したり、そのような子どもが生まれる事を予告した夢を近しい人が見たりするといった事が挙げられる。歴史的には、チベットのラマ僧は死ぬ前に自分の来世を予言する事で知られ、残されたラマ僧はそれを手がかりに生まれ変わりの幼児を探し当てるといった話もある。

このような予言に関する事例として、『前世を記憶する20人の子供』の中に収録されているアラスカのトリンギト族のヴィクター・ヴィンセントという人物の事例が挙げられる*1。1946年にアラスカ州のアンゴーンで死んだヴィクター・ヴィンセントは姪に死ぬ1年ほど前に、姪の息子として生まれ変わり、その息子はヴィンセントと同じあざを持っているだろうと伝えたようである。ヴィンセントの死後、約18箇月後にあたる1947年12月15日に姪はコルリスという男子を産み、「生まれ変わり予告」通り、全く同じあざを全く同じ場所にもっていた。息子は話ができるようになると「ぼくはカーコディだよ」と言ったといい、「カーコディ」とはヴィンセントが持っていた部族名のようである。そして、コルリスは生前のヴィンセントが漁に行った時の話やヴィンセントが存命中のエピソードを正確に話したようである。大門正幸もこの事例を紹介し、北米の先住民族には生まれ変わり信仰は広く見られ、アラスカ周辺のトリンギト族、ハイダ族、ツィムシャン族といった民族の間では生まれ変わりの証拠を伴う再生型事例が多く、前世に人物が亡くなる前に自分の生まれ変わりを予告するという事や近しい人がその人が生まれ変わってくるという夢を見るといった事を述べている*2。そして、血縁関係のある家族の元に生まれ変わってくる事が殆どのようである。

しかし、血縁関係のない人の元に生まれ変わったという事例として、ビルマ中央部のナ・ツール村に駐屯していた日本兵の時代に連合軍の飛行機の機銃掃射を受けて戦死した記憶を語り出したマ・ティン・アウン・ミヨの事例もある。マ・ティン・アウン・ミヨはナ・ツール村で1953年12月26日に生まれているが、母のドウ・アエ・ティンは、マ・ティン・アウン・ミヨを妊娠して数箇月後、上半身裸で半ズボン姿のずんぐりした日本兵が何度も夢に現れて追い回し、お前のところに生まれ出るぞと言ったという*3。ドウ・アエ・ティンは、この夢に登場した男を怖がり、男について来ないでと言ったが、5日から10日の感覚で同じ夢を3回見たという。

大門は、予告夢が関連した日本の事例として、2009年7月生まれで首都圏在住の男児、かのん君の事例を紹介している*4。かのん君の前世の人物であると考えられるのは、異父姉にあたる桃華ちゃんであり、桃華ちゃんは3歳の時に小児癌を発病、治療による副作用として二次性急性骨髄性白血病を発症、容態が悪くなり、母親に抱かれならが息を引き取った。桃華ちゃんが他界する直前、母親は、父親と別の道を歩む事を決意し、その後、現在の夫と出会い再婚しているが、2008年の11月、日本のバンドMr. Childrenが知らない曲を演奏し、非常に素晴らしかった点が強く印象に残る夢を見たという。夢を見た数日後、母親がテレビを点けたら、Mr. Childrenが10月にリリースしたばかりの「花の匂い」という曲を演奏するところで、歌詞には生まれ変わりを示唆する一節が含まれている。母親はこの歌が桃華ちゃんからのメッセージであるかのように感じ、その11日後に妊娠している事が判明している。そして、かのん君は、容姿や声、嗜好などの点で、桃華ちゃんと似ており、「家の壁の色が違うね」と発言したり(桃華ちゃんが住んでいた頃は新築したばかりで家の壁は濃い茶色をしていたが、現在は淡いベージュ色になっていた)、感慨深げに「かのん、焼かれたことあるんだよね」と発言したりしており、両親は火葬された時の事を語ったのではないかと解釈している。

また、実験母斑の事例として紹介した1990年にタイで生まれたクロイ・マトウィセットという少年の場合も、母親が妊娠3箇月の時に、祖母が「お前のところに生まれ変わりたい」と語りかける予告夢を見たと言う*5。そして、クロイは祖母が目印をつけられた場所に母斑があり、幼い頃に自分は祖母だったと言い、田んぼは自分のものだとも主張したり、女性的な行動もしたりしたそうである。

ジム・タッカーは、どの文化圏の生まれ変わり事例にも予告夢が関係した事例が存在している事を指摘しており、データベースによれば、最初に登録された1100例のうち、22%に予告夢が見られるとも述べている*6。これらの事から、予言や予告夢についても、子どもが前世の人格について発言している事やそれを象徴した母斑や先天性欠損などをもって生まれてくるという事との関係から生まれ変わりを考える上で、貴重な要素となると言える。

臨死体験者に先祖や親戚、将来の妻や生まれていない子どもについての情報がもたらされたという事例があるが、生まれ変わりの予告夢についてもそれらと同様に、脳や肉体を超えた意識が形成するグループ意識によって地上では、到底知り得ない情報がもたらされると考える事ができるかもしれない。

  • 参考文献
大門正幸「同一家族内における生まれ変わり型事例」『人体科学』25巻1号 人体科学会 2016年
大門正幸『「生まれ変わり」を科学する』桜の花出版 2021年

最終更新:2023年04月24日 09:57

*1 ヴァージニア大学 1973(邦訳 1980)p.457-479

*2 大門 2021 p.153

*3 スティーヴンソン 1977(邦訳 1984)

*4 大門 2016

*5 タッカー 2005(邦訳 2006)p.94

*6 タッカー 2005(邦訳 2006)p.13