概説
ESP(Extrasensory Perception、超感覚的知覚)は五感によっては得られない外部の出来事が分かったり、そうした事象に対して反応したりする事である。ESPは、テレパシー、透視、予知の三種類(場合によっては、過去を見る現象である後知を含めた四種類)に分類するのが一般的であるが、予知については、予知的テレパシーと予知的透視とに分けるなど他の分類も可能である。テレパシーは、五感を介する事なく行われる生物体間の直接交信であり受信者と発信者がいる一方、透視では受信者しか存在しない。ただ、実際にはテレパシーと透視の両方が働いた可能性が考えられるGESP(General ESP)と呼ばれる現象がある。また、予知とは、予測も推測もできない未来の事象を知るという現象である。また、ESPは時空を超越しており、距離の影響を受けないとされる。
ESPの起こりすい心理的条件としては、ESPに対する態度や送受信者の関係、意識の変容状態などについての研究、生理的条件としては脳波とESPについての研究があるが現段階でははっきりとした結果が伴っているものは少ないとされる。実験においては、伝統的なESPの実験ではトランプやESPカードが使われた。しかし、カードでは実験の質を維持するのが難しいとされ、1965年以降は、コンピュータを使った実験に次第に代わって行った。
因みに、
本山博は、超感覚的なものとは、感覚的認識を超えた存在あるいは能力と見ており、ESPや
PKなどは一つの事に夢中になり対象と自分が一つになれば普通に起こる事であるというが、このような現象は霊的な視点から見ると最も低いアストラル次元の事であるという。
テレパシー
テレパシーは、人間同士のものが一番多いが、人間と動物の間に起こったと考えられる事例も少なくない。
イアン・スティーヴンソンが調査を加えた
「印象型」と呼ぶ(L・E・ラインは
「直観型」と呼んでいる)曖昧な感じが伝達されるテレパシーとして、アイスクリーム工場の工場長をしている夫が冷凍室に閉じ込められていた際に、妻が胸騒ぎを感じ(腰をおろすことも何かに集中することも殆どできないような状態だったという)、電話をしても連絡が取れず倉庫まで行ってみると冷凍室の中に閉じ込められていたという事例がある。因みに、妻は夫の帰りが遅くなっても、それまでは一度も心配した様子を見せたことはなかったといい、夫もその証言に同意している。
予知
テキサス州在住のシュロタベック夫人は、1969年2月19日付の手紙で、
イアン・スティーヴンソンに飛行機事故の予知を報告している。1950年頃、夫が商用でフィラデルフィアからボストンに出かけ、その後、ボストンから飛行機でワシントンまで足をのばす予定であったという。夫が家を出る際に来ていた友人に、妻は、主人には二度と会えないのではないかと思う、ボストンからワシントンに向かう飛行機に乗ってはいけない気がすると話したといい、胸騒ぎがしていたという。翌日、夫に電話をすると、夫はワシントンに行く必要がなくなり、帰ったというが、その飛行機はポトマック川に墜落し、乗客全員が死亡したワシントン行きの飛行機であったという。実際、この種の現象に対する懐疑論者は世界には数億人の人がおり、そのうちの何人かの予知や胸騒ぎが偶然にも的中する可能性はあると考えるであろうし、事実そういった側面もあるであろうから、偶然の一致ではない事の証明は難しいが、細かい点まで正確に予知できている場合には、予知が働いた可能性が高いと言えるだろう。これは予知と言うより遠隔視にも関わる話であると言えるが、アンリ・ベルクソンは「ある女性が遠隔地の戦場にいた夫が戦死する様子をありありと描写した」という事例を踏まえてこのような確率論に基づく懐疑論に次のような反論をしている。
すなわち彼は、具体的でありありとした光景の叙述、特定の時に特定の場所で特定の兵士に囲まれてその士官が倒れたという光景の叙述を、「その夫人の幻は真実であって偽りではなかった」という干からびた抽象的な言い方によって置き換えたのです。…(中略)…そうした抽象化はそこに見出される本質的なもの、すなわちそのご婦人の知覚した光景を無視するところに成り立っています。その光景は、そのご夫人から遠く離れたとても複雑な場面を、ありのままに再生していたのです。
また、予知の実験も昔から行なわれており、デューク大学
超心理学研究室のジョゼフ・バンクス・ラインは、1933年に、32名の小学生を含む49名を対象にして、ESPカードを使い予知実験を行なった。被験者にその順番を予知させ、その後にESPカードを切り混ぜ(後に機械を使ってカードを切るようにした)、当たっている数を調べた。それを4523回行ったところ、偶然では考えられないほど高い得点が得られたという。
ESPの実験的研究
ESPの実験的研究として、古くはノーベル生理学・医学賞を受賞したフランスの生理学者シャルル・リシェが行った透視実験や、絵札を除いたトランプを用いた実験等が挙げられる。しかし、ジョゼフ・バンクス・ラインの登場以前は、透視とテレパシーが混同されるなど個々の現象の概念や定義が不明瞭であり、ラインの登場による統計的実験法の確立により大きな変革が起こった。
また、自由反応式のESP実験は、強制選択式実験とは異なり、絵や文字、物品、現実の場面などターゲットに予め決められた制約はなく、被験者のターゲットの描写を実際のターゲットと突き合わせる実験であると言える。自由反応式のESP実験としては、マルコム・ガスリー、福来友吉、ルネ・ワルコリエ、アプトン・シンクレアによるものなどがあり、実験の結果、ターゲットと反応の間にはかなりの一致が見られ、偶然の一致として片付けることが出来ないように思われる事例もある。例えば、1926年4月17日に別室にいるルドルフ・ワルコリエが受信者となって行われた描画GESP実験のターゲットと反応を見ても、送信者が描いた秤の絵が良く再現されていると言える。
ワルコリエの描画GESP実験のターゲット(a)と反応(b)(『超心理学ハンドブック』p.102より)
また、アプトン・シンクレアが妻と共に行った描画GESP実験のターゲットと反応を見ても、形は似ているが概念の異なる図形に変形した(ターゲットの火山がゴキブリのような昆虫になっている)事例や、左右の逆転が起こった(ターゲットの釣り針の向きが逆になり、花になっている)事例がある。
また、遠隔透視とは無作為に選ばれたターゲット地点に存在するターゲットを隔離された部屋からESPで感知するという超心理学実験であり、1970年代初頭にカリフォルニア州にあるスタンフォード研究所(SRI)の物理学者ラッセル・ターグとハロルド・パソフが開発した手法である。この実験でもターゲットをかなりの程度言い当てているケースがあると言える。
ガンツフェルト実験
夢テレパシー実験の展開に寄与したのはモンタギュー・ウルマンの実験スタッフに加わっていた超心理学者であり夢テレパシーの研究を行っていたチャールズ・ホノートンであり、夢見に相当する心理状態に参加者を誘導する事を考え、余計な刺激ノイズを減らす目的の為にガンツフェルトという手法が開発された。ガンツフェルトとはドイツ語で「全体野」という意味である。
実験参加者を安楽椅子に寝かせ、両眼にピンポン玉を半分に割った半球をそれぞれかぶせ、そこに弱い赤色のライトを当てると被験者の視野はぼんやりとした赤一色になり視覚が減退する。同時に耳にもヘッドホンを通じてシャーというノイズを聞かせると聴覚も減退する。このように、変化のない一定の刺激が続くことで、視覚や聴覚の機能が低下し、内的なイメージが生まれやすくなる。
ガンツフェルト実験では、このようにガンツフェルト状態に誘導された受け手の被験者は心の中に現れたイメージを、夢を見るように逐一語り、ESPの送り手が見ている画像と一致する事を願いながら行い、その後、被験者は提示された4つの絵から自分が抱いたイメージに最も近いものを選ぶ。
ガンツフェルト実験では、一部を除き感覚的手掛かりの排除などの予防措置がしっかりなされており、
超心理学の他の分野と比べても追試の成功率が高いという有望な成果が挙げられていると言い、このような結果は偶然によるものとは考え難い。
最終更新:2024年04月28日 23:38