ジム・B・タッカー

概説

ジム・B・タッカー(Jim B. Tucker、1960年-)は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身の児童精神科医であり、ヴァージニア大学知覚研究所所長で「生まれ変わり」や「転生現象」の研究者としても知られる。ノースカロライナ大学医学部で医学士の学位を取得後、ヴァージニア大学ヘルス・サイエンス・センターに移り、精神医学、児童精神医学のトレーニングを積んで臨床医・精神科医となった。

タッカーは、元々、過去生などのトピックに関心を払っていなかったというが、妻のクリスが超能力、霊、過去生のようなトピックにオープンであった。そして、クリスの勧めで、臨死体験をしたと報告する人々の医療記録を調べる研究に取り掛かったという。そして、イアン・スティーヴンソンにユルゲン・カイルと共にタイとビルマの過去生記憶の調査に同行している。
このような経緯で、イアン・スティーヴンソンの子どもの前世記憶に関する研究に関心を抱き、1996年よりヴァージニア大学医学部精神科の研究室にて、その研究に従事している。

生まれ変わり事例の研究

タッカーもイアン・スティーヴンソンと同じく、生まれ変わり事例について、作話説、偶然の一致説、子どもの記憶錯誤説、情報提供者の記憶錯誤説、遺伝的記憶説、ESP仮説 (超感覚的知覚説)、憑依説といった他の仮説を検討した結果、最終的に最も妥当な解釈として残るのが「生まれ変わり説」であるとしている。また、前世を記憶した人たちが少ない事や人口爆発の問題、(アルツハイマー病など)心と脳の相互関係の問題など生まれ変わり仮説に対する反論も検討している。

生まれ変わりの研究の結果から、唯物論的憶測の一端に異議を申し立ている事になるかもしれないと述べている。また、唯物論的世界観と矛盾する考え方はすべて間違っているという杓子定規的な見解は、かつての主流科学が隕石のような現象を否定したのと同じように近視眼的な態度だと考えられるようになる時が、いつの日か来るだろうとも主張している。なお、一部の人に前世があるとしても「すべての人間が『生まれ変わり』を経験しているとは言えない」としている。*1

さらに、タッカーは、意識は進化による偶発的な副産物、随伴現象であるとする立場には否定的であり、量子物理学を探求する事で、意識は物質的なものには限定されないという結論に繋がる事を指摘している。そして、物質的なものは心的なものから派生する、物質的な世界はマインドまたは意識、霊的なものと考えられるものから作り出されると考え、過去生を憶えている可能性のある子どもたちのケースはこのような理解と非常に良くマッチするとしている*2。このように、意識が根源的な存在の力であるという考えから、物理的な宇宙もまた共有されたイマジネーションまたは夢の産物であるという大胆なモデルも提示しているが、このようなモデルでは死後の生(新たな体験)もまた心の創造物であり続け、死の時点でもう1つの夢をスタートさせ、その夢の性質は人によって違うという事があり得るとしている。*3

  • 参考文献

  • 参考サイト
最終更新:2024年02月26日 02:12

*1 タッカー 2005(邦訳 2006)p.257

*2 タッカー 2017(邦訳 2018)p.235

*3 タッカー 2005(邦訳 2006)p.276