ブライアン・ワイスや
ジョエル・ホイットン、マイケル・ニュートンらが退行催眠によって明らかにした世界観には、共通性があると言える。具体的には、我々が生きる目的は魂を成長させる事であり、その為にこの世に何度も生まれ、様々な感情を学ぶというものである。肉体の死から生まれ変わるまでの間に、肉体をもたず意識が覚醒している中間生が存在し、そこに存在する指導役のマスター達に促され、学ぶべき課題を設定し、この世に生まれるという
生まれ変わりを繰り返し、魂は不断に成長していくという。そして、この世での学びを終えると次元の高い霊的世界へ入っていく。そもそも魂の成長と
生まれ変わりの関連については、19世紀中葉のフランスを席巻した心霊主義の渦中で生み出されたリインカネーション型と呼ばれる
生まれ変わりの類型の中でも強調されているとの指摘がある。
ワイスの患者であったベスという人物は退行催眠によって「なぜ、私はこんなに大変な人生を選んでしまったのか」という問いに対する答えを見出しており、それによれば障害や困難の克服が霊的成長を促進する事は本当であると言い、想い精神病や肉体的な欠陥などのように深刻な問題をもつことは進歩のしるしであり、このような重荷を背負う事を選んだ人生は強い魂の持ち主なのだという。
ジョエル・ホイットンが考える魂の発達段階
ホイットンは、人間の魂は高次の目的に向かって段階を経て進化する事を指摘しており、進化段階を生涯に渡っての「魂の探求」という形で以下の5つの段階に分けている。
唯物論の段階
物質的な幸福を追い求め、肉体的快楽の熱望に支配された状態。他人の感情にはほとんど関心がなく哲学的目標は皆無に等しい。死後の事や、いかなる種類の究極の力も認めない。
迷信の段階
自分自身より偉大な力や実在がある事に初めて気づく。この全能の力について実質的には何も知らない。御守りや儀式などでしか制御できないものがあるらしいと認めているが、相変わらず唯物論的な生き方が支配的である。
根本主義の段階
神や全能なるものについて、単純で迷信的で型にはまった考え方をし、それが生活の基盤となっている。儀式につきものの御祈りや、ある態度や行動を実践すれば、究極の報いが保証されると信じている。この段階では基本となる信念を活用し、解釈する人物が必要とされる。
哲学の段階
自己の責任に目覚めたばかりの段階。宗教的信念を持ち続けているが、教義に依存するだけでは不十分だという認識がある。生命を尊重し、他人の信念に対して寛容であり、既成宗教の教義を深く理解している。
迫害の段階
「マタイの福音書」五章十節に「義のために迫害される人は幸せなり」という一説があり、その段階。人生の隠された意味とは何かを理解したいという強い願いから生じる内なる緊張が頭を擡げる。答えを求め、広く本を読み、研鑽を深め、形而上学研究のグループに加わる事が多い。
ホイットンは、このような段階を卒業した人は確り進化の道を歩み出しているという。
マイケル・ニュートンによる魂の発達レベルの分類
マイケル・ニュートンは肉体が死んだ後の魂は、仲間が集う特定の空間についた時点で終わるといい、魂の発達レベルに応じて、どのグループに分けられるかが決まるという。そして、スピリットの世界で、学校のような学習神殿で学習するという報告もある。
基本的・二次的な魂のグループ間の社会的なかかわり(『死後の世界が教える「人生はなんのためにあるのか」』p.140より)
図表の9と10については2つのグループが重なり合っていて、一部の魂の間に相互接触があり、両方のグループと選択的な関係を持つが、あまり一般的ではない例であるという。
マイケル・ニュートンは催眠下の被験者は、魂の見掛けを説明するのに、色に関連した言葉を用いると言い、非常に進化した魂は青色、最も集中度が高まると紫色になるといい、これらの事に基づいてニュートンは以下のような魂の発達レベルの分類モデルを考えている。
学習ステージ |
色の範囲 |
ガイドの能力 |
〈レベルⅠ〉初等 |
白(明るく均質) |
なし |
〈レベルⅡ〉中等下 |
白っぽい(赤みがかかっているが、最後には黄色みを帯びる) |
なし |
〈レベルⅢ〉中等 |
黄(純色で、白っぽさはない) |
なし |
〈レベルⅣ〉中等上 |
暗い黄色(深い黄金色で、最後には青みがかる) |
初級 |
〈レベルⅤ〉高等 |
明るい青(黄色みはなく、最後には紫がかる) |
上級 |
〈レベルⅥ〉最高 |
暗い青紫色(輝く光に包まれる) |
マスター |
ニュートンによれば、魂の学習は誕生とともに始まり、生まれ変わる度に理解力は成長し、いくらか後退する生があっても前進していくのだという。なお、ニュートンが扱ったケースでの魂のレベルの比率はレベルⅠが42パーセント、レベルⅡが31パーセント、レベルⅢが17パーセント、レベルⅣが9パーセント、レベルⅤが1パーセントであったという。ところで、魂の等級という考えも古くからあり、プロティノスの新プラトン主義では魂の存在に階層的な等級があり、最高の存在は超越者、創造主であり、最終的には低い魂の自我も宇宙的な大霊との完全な合一に回帰するという。このように、魂の進歩は等級にたとえられるが、ピラミッド構造をなしているのではなく、巨大な織物の糸の一本にたとえる方が適切であるとされる。また、人間社会での影響力のある人間が必ずしも成熟した魂の至福を体現しているわけではないとも言われる。さらに、このようなレッテルを貼る事で、魂の発達を遂げる有り様は多様だという事がぼやけてしまうため、レベルなどという言葉を使って魂の等級を見極めるのも好きではないと述べている。ちなみに、ニュートンは、魂の発達具合の目安となる中核をなす色は、各レベル内でエネルギーの色が微妙に重なり合って混ざる事を指摘しており、
『死後の世界を知ると、人生は深く癒される』の中では以下のような図で紹介している。
精神オーラの色域(『死後の世界を知ると、人生は深く癒される』p.205より)
道を外れた魂
魂の主流から外れる魂がいる事も指摘されており、具体的には自分の肉体の死を受け入れられずスピリットの世界に帰っていく事に抵抗するものや肉体が持つ犯罪的な異常性によって堕落させられた魂である。この世における間違った行いについては、魂によって、異なった霊的な指導がなされるという事がニュートンの被験者により報告されている。
若い魂
若い魂には2つのタイプがあるといい、1つは、スピリットの世界から存在界に出て間もない(本当に若い)魂であり、もう1つは相対的に長い間、転生しているものの未熟な状態に留まっているものである。
成長する魂
魂がレベルⅡを超えて、中程度のレベルに達すると、自立した活動ができる成熟と経験を身に着けて、本来のグループとの関わり、グループとしての活動は減る。
進歩した魂
高度に進歩した魂は少なく、進歩した魂はある特定の課題に向けて小さな改善をすることに関心をもつ。
坂井祐円「死後の世界を前提とする死生観について」『南山宗教文化研究所 研究所報』第28号 南山宗教文化研究所 2018 年
最終更新:2023年04月24日 10:43