生まれ変わり > 前世の行動・嗜好

前世の記憶を語る子どもが、前世に由来する変わった行動を見せるといったケースも報告されている。具体的には、前世の人格の職業を真似した遊びを好んだり、前世の人格が使用していた嗜好物質への関心を示したり、前世の人格の死因に関係のある恐怖症を示したりするといった事が挙げられる。

前世の人格の職業を真似した遊びを好んだ子どもの事例として、インドのパルモッド・シャルマという人物が挙げられる*1。パルモッドは、4歳から7歳までの間、ごっこ遊びの中で、ビスケットとソーダ水を売る商人を夢中になって演じていたと言われている。このように、一部の子どもの中では、前世の人格の職業を真似した遊びを繰り返す衝動が極めて強いという事が窺える。また、キリスト教圏であるアメリカで生まれ、「生まれ変わり」が全く信じられていない両親のもとで生じた事例として、ライアンという少年の事例がある*2。ライアンは、何度も映画を撮る真似をし、前世はハリウッドに大きな家があり、映画に出ていたといったことなどを語っている。そして、彼の証言は映画に出演していて大金持ちだったマーティ・マーティンという人物の生涯と一致していた事が分かっている。また、前世がゴルファーのボビー・ジョーンズだったと語ったハンターという子どもは、テレビで子ども向けの番組には何の興味も示さずゴルフ・チャンネル以外のものは見たがらなくなったといい、7歳まで合計すると50回のゴルフのジュニアトーナメントで41回優勝し、連続21回の優勝を含んでいたという*3。前世が有名人であったと語る人々に証言には、統計上の問題からも慎重に接するべきであると言えるが、ハンターの父親はゴルフに殆ど関心がなかったにも関わらず、ハンターが並外れた能力を示しているという点で前世に関する発言の信憑性は高いと考えられる。

前世の人格の嗜好物質への関心として、一部の子どもが前世の人格が好物にしていた食べ物やアルコール類、煙草などに関心を示すという事例もある。このような食べ物などの好みは現世での家族が属するカーストよりも高いカーストだった前世の記憶を持つ子どもの場合、問題となる事があるようである。また、イアン・スティーヴンソンとその同僚は、第二次世界大戦時にビルマで戦死した日本兵の記憶を持つビルマ人を少なくとも、24名発見しており、ビルマの生活に不満を述べたり、ビルマの香辛料の効いた食事を嫌い、魚などを好んで食べたりしていたという証言もある*4*5。ビルマ中央部のナ・ツール村で1953年に生まれたマ・ティン・アウン・ミヨは、ナ・ツール村に駐屯していた日本兵の時代に連合軍の飛行機の機銃掃射を受けて戦死した記憶を語り出したと言い、飛行機に強い恐怖症があったり、ビルマの暑さや辛い味付けを好まず甘い食べ物を好んで食べたりした*6。また、マ・ティン・アウン・ミヨは幼少期から男児の服を着たがり、女児の服は着たがらず、子どもの頃は男児とよく遊び兵隊ごっこを好んだという。

マ・ティン・アウン・ミヨのように、前世の人格に関係のある恐怖症が見られるという事例として、ジム・タッカーの研究によれば、前世の人格が変死を遂げている場合では、生まれ変わり事例の中心人物の35%以上が、前世に関係した恐怖症を示したようである*7。特に溺死の事例では、それが顕著に見られ、シャムリニー・プレマという女性は、バスが来るのを避け道路脇の田んぼに落ちて溺死した少女の記憶を持っていて、入浴に強い恐怖を示したり、生後6箇月目からはバスにも強い恐怖を示したりするようになったようである。

他にも、男児とよく遊び兵隊ごっこを好んだやマ・ティン・アウン・ミヨやクロイ・マトウィセットの事例のように、前世を語る子どもの中には、逆の性別だった前世を記憶し、逆の性別に相応しい行動を見せるといった事例もある。

  • 参考文献

最終更新:2023年04月24日 10:00

*1 タッカー 2005(邦訳 2006)p.18-19

*2 大門 2021 p.182-188

*3 タッカー 2017(邦訳 2018)p.187-192

*4 大門 2021 p.165-166

*5 タッカー 2005(邦訳 2006)p.142-143

*6 スティーヴンソン 1977(邦訳 1984)

*7 タッカー 2005(邦訳 2006)p.140