サトワント・パスリチャ

概説

サトワント・パスリチャ(Satwant Pasricha)は、インド・バンガロールの国立精神衛生神経科学研究所(NIMHANS)の臨床心理学科の学科長。特定の超常的または異常な行動に関する従来の説明に満足していなかった事もあり、超心理学の研究に興味をもち、1973年以来、ヴァージニア大学のイアン・スティーヴンソンから指導を受け、生まれ変わりの研究に着手、前世を覚えていると主張する子どもの調査に参加した。1979年に同研究で博士号を取得。

生まれ変わりの研究

サトワント・パスリチャは、生まれ変わり型事例の殆どは、生まれ変わりを固く信じている文化圏や家族から報告されている事に着目し、前世を偶発的に想起したとする人たちの主張と生まれ変わり信仰の強さとの関連を検討する事を目指した。そして、この方面で最も組織的に行われたイアン・スティーヴンソンの研究の弱点として挙げられる、情報を得てから調査を開始するまでの空白期間が長い場合が多いこと、通訳を使っていること、中心人物(調査対象)の母親との面接が比較的短い上に表面的であること、中心人物(調査対象)との面接が比較的短い上に表面的であることの克服が目指された。それ故にスティーヴンソンの調査を補強する役割を果たしていると言える。

パスリチャもまたイアン・スティーヴンソンジム・タッカーと同じく、生まれ変わり事例について、通常的解釈として空想、不正行為、遺伝的記憶、潜在記憶、記憶錯誤、そして超常的解釈としてESPを伴った偽装、憑依といった他の仮説を検討している。そして、そのような仮説を検討した上で、生まれ変わり以外の解釈は大半の事例で、問題なく排除できるとし、たとえ他の解釈が、疑う余地なく完全に排除することはできないとしても、大半の事例については生まれ変わりよりも成立する可能性の低い解釈と考えることができるとしている。*1

臨死体験の研究

生まれ変わり型事例の調査中に臨死体験をした人々の存在を知り1975年~1983年の間にイアン・スティーヴンソンらとインド各地から報告された18事例(そのうち満足できる程度の調査が可能だったのは16例のみ)を調査した。アメリカでの臨死体験の報告とは異なり、ヤマ(閻魔)の使いに連れ去られ、記録を調べられると、名前に間違いがあって、余命のある者を連れてきた使い達がヤマに咎められ、別の人間を連れてくるよう命じられるというものである。そして、このような差はそれぞれの文化に根差す信仰の違いに起因しているらしい事が分かるが、それ以外は死後の生命に関する体験者個人の信念に由来しているのかもしれないと述べている。*2

  • 参考文献
  • 参考サイト
最終更新:2024年02月26日 02:11

*1 パスリチャ 1990(邦訳 1994)p.244-245

*2 パスリチャ 1990(邦訳 1994)p.312-314