生まれ変わり > 病状軽減

過去生の記憶とされるものには大きく2つの種類があると言え、1つは退行催眠によって誕生より前に年齢を退行させた際に生じるものであり、もう1つは再生型事例、生まれ変わり型事例と呼ばれ、子どもが幼少時から過去生記憶を保持している場合である。両者には様々な違いがあるが、過去生記憶と関連する恐怖症や嫌悪感と言った否定的な感情の位置付けが重要な違いとなり、2つの記憶は性質が異なるものではないかという指摘もある。

イーハトーヴクリニック院長の萩原優は、前世療法を通じて、今世の悩みや病気は、前世の死と直接的に関係していることが多いと述べている*1。また、萩原は催眠状態の中で、一つの前世から別の前世に移る間に魂として存在している中間生で、マスターと呼ばれる高次元の存在と出会うことができ、病状が徐々に改善された事例もあるという。このように、退行催眠時に想起される記憶を語る事によって、それまで抱えていた恐怖症などの症状が軽減されることはある程度知られていると言えるが、大門正幸は、自然発生の再生型事例でありながら、退行催眠事例のように過去生記憶について語った事が契機となり恐怖症や不安症が軽減されたという特異なケースがあった事を報告している。*2

大門が報告したのは、愛知県在住の姉妹ココちゃん(2001年9月生まれ)とミミちゃん(2007年4月生まれ)(いずれも仮名)とその母親のユキさんの事例である。ココちゃんの中には、多くの人物に関する過去生記憶が保持されていたが、映画『かみさまとのやくそく』(荻久保則男監督)の予告編で過去生記憶を話す子どもの映像を見て、自分の中にある想いが過去生記憶として捉えられる事に気付き、自分の中にあった20を超える人物の記憶を一気に語ったという。そして、ココちゃんが過去生記憶を語った後に当時 6歳10箇月のミミちゃんも過去生記憶について語り出し、姉のココちゃんが王女で2人の召使いのうちの1人が妹のミミちゃんだったと過去生記憶が合致する部分もあり、身振りを交えて明確に語ったという。さらに、ココちゃんは、過去性記憶について一気に語ったことにより、不安感や恐怖感、罪悪感は劇的に軽減したといい、この時の心境の変化について本人は「全部喋ったことで、辛い事を全て吐き出してしまったような感じ」と表現している。

この事例は他の再生型事例と比較すると、特異であると言える。ココちゃんの記憶とミミちゃんの記憶に重複する部分がある事は、退行催眠時に見られるソウルメイトという概念を彷彿とさせ、過去生記憶について語る事で記憶と連動していた恐怖症や不安感が軽減されたという事からも退行催眠との共通性が窺える。このような事例の存在は、イアン・スティーヴンソンらの徹底した調査によって、記憶の歪み、証言者たちの相互の証言の食い違いがない事が確認された再生型事例と、退行催眠によって生じ、個を超えたより大きな視点、世界観を提供する事例との繋がりを見出す手掛かりとなると思える。

  • 参考文献
萩原優『前世療法の奇跡 外科医が垣間見た魂の存在』ダイヤモンド社 2014年
大門正幸「過去生退行催眠療法による症状軽減効果と類似した特徴を示す自然発生再生型事例」『中部大学全学共通教育部紀要』第2号 中部大学全学共通教育部 2016年
最終更新:2025年04月25日 11:29

*1 萩原 2014 p.76

*2 大門 2016