忍者龍剣伝III 黄泉の方船

【にんじゃりゅうけんでんすりー よみのはこぶね】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 テクモ
発売日 1991年6月21日
定価 6,200円(税別)
判定 良作
シリーズファンから不評
ポイント 縦スクロールの登場
掛け声を上げるハヤブサ
低難度に賛否の声
忍者龍剣伝/NINJA GAIDENシリーズ


概要

忍者龍剣伝シリーズFC三部作の最終作で、テクモシアター第5弾*1。IIIではあるが、ストーリーはIとIIの間に位置する。
本作では縦スクロール、強制スクロールが実装された。更には合成音声によるボイス演出も用意されている。
前作前々作と違って龍剣や邪神はさほど関わらない、SF寄りの内容になっている。その為、メカニカルなデザインの敵やステージが多い。

あらすじ

邪鬼王が倒されてから半年後、「リュウ・ハヤブサの手にかかりアイリーンが殺された」という情報が流れた。
指名手配犯となったリュウはアイリーンが生前に調査していた研究所に辿り着き嫌疑を払拭する為、アイリーンの復讐の為に研究所へ潜入する。

(Wikipedia参照)

登場人物

リュウ・ハヤブサ
  • シリーズ御馴染みの超忍。アイリーンを殺害した罪で指名手配されてしまう。
アイリーン・ルゥ
  • シリーズヒロインのCIAアナリスト。オープニングでリュウに殺害されたと公表されるが…?
  • 時系列で後にあたる『II』に既に登場している事から分かるように、後に生存が判明する。今回は珍しく活躍シーンもある。
クランシィ
  • リュウの前に現れる謎の男。かつてフォスターと『バイオ・ハザード』計画を共同で研究していた。
  • リュウにキャッスルロックの要塞へ向かい、フォスターの野望を阻止するように頼み込む。
フォスター
  • 『I』に登場したCIAの特別機関の人間。その時の戦いでリュウを利用した末にアイリーンに始末させようとしたが、逆にリュウに「命を貰う」と宣言されていた。
  • 独自にバイオノイドを作り出し、リュウたちに牙を剥く。

特徴

  • アイテム関連
    • 通常攻撃のリーチが上がり強化される「龍神剣」が追加。ただし次のステージには持ち越す事は出来ないので、ステージ毎に入手する事になる。
    • ボーナス(スコア)アイテムが消滅した。
    • 忍術Pアイテム取得時のスコアが1000点にアップ。
    • 忍術アイテムや入手後の忍術アイコンのデザインが変更。丸っこくなった。
  • 忍術関連
    • 普通の手裏剣が消滅。風車手裏剣が初期装備になった。また、上下2方向を同時に攻撃する「真空波」が追加された。消費忍術Pは10。
    • 火龍弾1回で放つ火球が1→3発に増加、使いやすくなった。
    • 炎波の術で 飛ばす炎の輪の数が、また3つに戻った。ただ、飛んでいく時の配置が1と微妙に違い、向こうでは縦並びだったが、今作ではななめに並んでいる。
    • 火炎の舞の消費忍術Pが20に増加。さらに燃費が悪くなった。その代わり、前作までは階段や入口などでエリアが切り替わると残り時間に関係無く効果が切れたが、今作では残りの秒数分持続するようになった。
  • 前作までは、ザコ敵を倒してもわずかなスクロールで復活する仕様だったが、今作では、1度倒したザコ敵は復活しなくなった。
  • パスワードが導入され、続きから再開することが可能になった。全部で4文字、忍術アイテムで入力する仕様と、凝っている。
  • 従来の横スクロールに加え縦スクロールのステージも登場。これにより構成に立体感が出る。

評価点

  • 洗練された演出
    • 本作の代名詞とも言えるデモシーンは更に進化。フォントは勿論漢字が用意され更には表示速度も緩急自在になった。
      • シリーズ御馴染みの「崖の上から敵本拠地を見据えるリュウ」の演出も大幅進化。いやが上にも戦意を高揚させてくれる。
      • 終盤、リュウが黒幕を追って亜空間に向かうシーンは熱いBGMと演出により、作中屈指の名シーンに仕上がっている。
      • キャラ絵は前2作に比べてアニメ調になっている。アイリーンは更に可愛くなっており、異形化した悪役も満点の迫力で迫ってくる。
      • ステージ2クリア時のイベントにて、モニターに映し出されるフォスターのアップもかなりリアル。これだけでも旧作からの進化を実感できるだろう。
      • 終盤の次元戦艦浮上のシーンはFCトップクラスの演出と言っても過言ではないクオリティである。
      • 「戦艦」のフォントが大きい為に、この文字が出る台詞は文字間にスペースを入れて誤魔化しているのだが、結果として「お の れ 邪 鬼 王 !」の時のように台詞に迫力を与えられている。
    • ステージも、多重スクロールに、色々なギミックが美しく描き込まれている。
    • 上述したように合成音声によるボイスも導入されている。攻撃すれば「はっ!」。ダメージを受ければ「う!」。忍術を使えば「トォ!」と、リュウが掛け声を上げる。後の『DOA』や『NINJA GAIDEN』に先駆けてリュウのボイスをFCで実現しているのだ*2
  • ゲーム性の向上
    • ステージ道中のアイテムが入っている龍神の珠の中が透けて見えるようになり、壊さなくても中身が分かるようになった。
      • これにより取得したくない忍術を容易に避けることができるようになった。
    • ぶら下がり動作も可能になり、アクション性は向上。特にリフトでは乗るかぶら下がるかの判断が大事になってくる。
    • ステージのギミックも流砂、ダメージ地形、リフト、水流、出没針、強風、不安定な足場、電流…。様々な仕掛けがリュウを襲う。
      • 1エリアのみだが強制スクロールも用意されている。これにより高低差の表現の幅が広がった。
    • 敵の配置も練られており、一斉に取り囲まれるように組み立てて来る。
    • 従来は下のエリアへうつる際はハシゴを下りなくてはならず落下死と隣り合わせだったが、本作ではエリア切り替え方法がハシゴの上り下りから入口に入ることに変更され、その心配が解消された。
    • 前述のようにザコ敵は一度倒せば再度出現しなくなったため、よりスムーズに進めるようになった。
  • 過去作に劣らず高品質のBGM群
    • 前作までに関わった新田竜一氏は参加しておらず、作曲家陣も一新されているが、シリーズ特有の疾走感溢れる曲調は健在。今回は特に激しい曲が多く、テンションを高めてくれる。尚、サウンドディレクターは前々作のBGMを手掛けた山岸継司氏が務めている。
      • 中には妖しさや和の哀愁を含んだ楽曲もあり、バリエーションに富む。
    • オープニングは緊迫と焦燥の前半、怒りの闘志を燃やす後半と、緊張感のある曲調で本編への期待感が煽られる。
    • クリアのカタルシス溢れ出すエンディングテーマも勿論健在。残念ながら本作のBGMは殆どに正式な曲名が無く、エンディングテーマは後年発売されたサントラでも「Credits」としか表記されていないが、曲の良さは過去二作に勝るとも劣らない。
    • 今回はボス曲は二曲だが、二曲目はラスボス第二、最終形態でのみ流れるラスボス専用曲になっている。
      • ボスBGMは前作同様、1作目から同じ曲(アレンジ)が採用。一方、前作と違ってミスの度にまたあのメロディが響く。

賛否両論点

  • 難易度は控えめ
    • 過去作の鬼のような難易度に対し、本作の難易度はかなり抑えられている。
      • 具体的には、過去作品と比べるとリュウの被弾時のノックバックがかなり抑えられている。狭い足場で被弾→そのまま落下でミスと言うある種のお決まりパターンは激減した。
    • 作中でわざわざ「キャッスルロック・ディフェンスライン」とまで呼ばれるが、特筆するような難所はない。ただし終盤では足場の不安定な所に飛行ロボが襲来するなど決してヌルゲーというわけではない。
    • 万人向けの調整になったとも言え、間口が広がったという意味では良点なのだが、旧作の理不尽なまでの高難易度に慣れてしまったプレイヤーからは「物足りない」「難易度選択が欲しかった」という意見も。
  • ステージ6で残機がいくらでも手に入る。
    • 1upを取得して前のエリアまで戻り再訪すると再出現する。1upの手前にはそれを手に入れるための忍術まで用意されている。直後のボスは楽なのでそこまでしなくてもクリアに支障はないだろう。

問題点

  • 龍神剣・忍術の確保
    • 状況に応じて使い分ける事は無く、現地調達であったらいいなレベル。忍術は持ち越せるが龍神剣は各ステージ毎に初期状態からになる。
    • 他のステージではともかく、ステージ7道中では炎が回転するアイテム1択。これで飛来するメカなどは勿論、更には電流やトゲ針地形すらも無力化出来るため難易度が楽になる。むしろ他の忍術アイテムが邪魔になってしまっている*3
  • 強敵のはずのクローン・リュウが弱い
    • デモシーンでは口ほどにもないとまで言われ、後のステージ5終盤のムービーでバイオノイドの本性を現しマシンガンすら平然と弾くのだが、ここまでが全盛期。後は急落して行く。
    • その直後の戦闘時には巨体からは想像もつかないような驚異的な跳躍力を見せるのだが、軌道は決まっており簡単に見切れる。そこに、リュウの忍術でもある手裏剣と爆炎の術を使い分けて来るのだが威力も速度も低い劣化版でこちらもパターンが決まっており、それらを複合されたところで脅威にはならないだろう。
      • しかも当たり判定が画面左と右に繋がっているバグがあるため、戦闘開始時に左へ斬ってこのバグを利用すると更に楽である。タイムアタックの際にも利用されている。
      • 第3章直後には「この戦いのデータは使わせて頂く」と言っていたが、果たして本当に使ったのか実戦では空を切っている。変身しない方が強かったのでは?
    • ステージ6でも再戦するが、エネルギーで異形化した割には火弾を撃ちながら突進と、天井からの落下物の繰り返しでこちらも苦戦する要素はない。しかも直前に爆炎の術が手に入るので更に楽に勝てる、前回で使った術を逆に使われる格好である。やっぱり変身しない方が(ry
      • 戦うフィールドは接地していると沈んでいき、適度にジャンプで抜け出す必要がある。更にこれは撃破演出中も機能しているので、勝ったと思って油断しているとミスになってしまう。情けない事に、戦って負けるよりもこれで死ぬ事の方が多い*4
      • また、ステージ6のデモシーンではボスの顔がよく見えず、BGMはフォスター登場時と同じ、そして「死んだはずでは」というリュウのセリフから、フォスターが異形化したものと勘違いされる事がある。しかし「オリジナル」という台詞から分かるように相手はクローン・リュウである。簡単に倒される上、人違いされやすいという哀れな最期になってしまった。
    • デモシーンではリュウを打ち負かし、マシンガンを弾き、異次元では死の間際からエネルギーを取り込んで先回りするなど三部作の中でもトップクラスの強さを見せつけて来たのに対し、ゲーム中では全く反映されず、この通り作中でも最弱クラスのボスになってしまっている。前作にも居ましたね。「口ほどにもない」と発言するくせに弱いボス。
      • ただデモシーン通りの強さだったらプレーヤーが詰んでしまうという問題もある。
  • 形態が進むにつれ弱くなるラスボス
    • 第一形態が明らかに強い。高所を動き回りつつ変則的な軌道の弾を投げてくる上、ボスが被弾する度にダメージ3の落雷3セットで反撃してくるので下手にごり押ししようとすると返り討ちに遭う。
      • 落雷は直前のリュウの縦位置に落ちるため横移動していないと当たってしまう。そのため、攻撃と回避の切り替えが重要。
    • 第二形態は位置固定でしかも攻撃し易い位置。相手の攻撃は近距離では避けにくいものの、1回あたりの攻撃に時間がかかるのでその間に忍術や刀剣の連発でごり押して倒せる。
    • 第三形態は画面いっぱいの大きさで動き回るため見た目の迫力はあるのだが特に強烈な攻撃パターンはなく、弱め。
      • 弱点露出後は一度懐に飛び込めばボスの移動に合わせて左右に移動するだけで攻撃を回避できる上に、回避しながらの攻撃も容易。第三形態自体、落ち着いて戦えば忍術不使用でのノーダメージ撃破もさほど難しくない。
      • 第三形態はリュウを狙った攻撃が一切なく、一定の方向に攻撃するだけである。ボスの移動と攻撃の周期がずれているため攻撃が避けにくいケースこそあるが、リュウがダメージを受けるのは基本的にボスへ接近もしくは攻撃しようとして流れ弾に当たってしまったときだけという有様。ラスボス最終形態がそれでいいのか…。
    • ただしステージが長いので急がないとタイムアウトで負ける事はありうる。
  • サウンドテストが未収録
    • 前作、前々作では隠しコマンドでサウンドテストが実行可能だったのだが、今作では削除されてしまった。良曲の宝庫だけに残念である。
  • パッケージにOVAのカットが流用されている
    • ゲームそのものの問題ではないのだが、本作の箱、カセットに描かれているのはOVA版のリュウである。OVAのリュウは頭巾を被らない上に、忍装束のデザインも違うので、OVAを知らない人からすれば「誰?」「これがリュウ?」としか思えない。ゲーム中頭巾を被っていないのは寧ろクローンの方である。
    • 忍者龍剣伝GB』もOVAのカットを流用しているため、同じ問題を抱えている。

総評

過去作の地獄を生き延びてきた猛者からは、難易度が相当抑えられている点についての不満の声も聞かれるが、デモシーンもゲーム性も非常に高いレベルで仕上がっている。
難易度の低下も遊び易くなったという事でもあり、シリーズ初心者やこれまでのシリーズで挫折した人にも勧められる。
ファミコンソフトの中でも高い完成度を誇る作品の一つと言えよう。

余談

  • 本作のシナリオを担当し、一作目から主にグラフィック関連で関わってきたRUNMALは『クロノ・トリガー』や『バテン・カイトス』で有名な加藤正人氏。本作はシナリオライターとしての氏の初期作品となる。
    • 氏は本作の約20年後に『NINJA GAIDEN 3』の原案を担当する形で再び本シリーズに携わっている。
  • 忍者なのに一作目からよく背後を取られると言われてきたリュウだが、今作ではデモシーンの度に悉く背後を取られている
    • 「余裕の表れ」「わざと取らせている」という(半ばネタの)フォローの意見もある。
    • また、毎回(しかもピンポイントで開く)落とし穴に落とされるのもよく「ボッシュート」とネタにされる。しかしどれだけ落とされても背後を取られても必ず勝利するのは、さすが超忍と言ったところか。
  • 本作の題名、方舟について
    • サブタイトルにある「黄泉の方船」は終盤において登場する「次元戦艦」の事である。黒幕の目的は「人間を滅ぼし、選ばれた者達で新しい時代を始めるというもの」で、「ノアの方舟」に擬えて本作のサブタイトルとなっている。
    • ノアの方舟を取り上げた作品は意外と珍しく、『リンダキューブ』『イデアの日』あたりが知られる。
      • 『イデアの日』ではこれと酷似した計画が実際に行われたが失敗に終わっており、プレーヤーに強烈なトラウマを植え付けるほど悲惨な結末となっている。
    • 黒幕は「選ばれた者」としてリュウに仲間になるように誘うが、考えるまでもなくリュウはそれを蹴って黒幕を倒し、次元戦艦を破壊する。上記の件を考えると、この上無く正しい判断である事が分かる。
  • 難易度が控えめの本作であるが、海外版では「敵から受けるダメージ増加」「リトライポイントの減少」「コンティニューが有限・パスワード無し」といった具合に難易度が大幅に引き上げられている。それらの仕様は「忍者龍剣伝 巴」でも採用されている。

最終更新:2024年01月20日 18:30

*1 第1弾と第4弾は『キャプテン翼』シリーズ。

*2 厳密には最初に声が付いたのはAC版だが、あちらは世界観的に独立している上、主人公がリュウである事はゲーム中では分からないので割愛。

*3 もっとも、術の燃費は悪いため、アイテムで忍術Pを補給できるとはいえ、それだけで進めるかどうかは、プレイヤーの腕次第でもある。

*4 倒した後はすかさず壁に張り付いていれば沈まないのでオススメである。