概要:トラズマンションに入居している可能性のあるクラスメイトについての考察。
大学生および安沢探偵の監禁の舞台となるトラズマンションであるが、クラスメイトが入居していると思しき描写が散見できる。
4月29日に登場する大学生の日記は隣に住む女性への好意を募らせるもので、
6月5日の安沢探偵への依頼につながり、最終的には
7月9日の安沢探偵監禁、学生死亡という結果を招くわけだが、このとき監禁を行っているベルフェゴール・
アスタロトと互いを呼び交わす両者の居る部屋の中は植物で満ちているような背景が見て取れる。
また、
津倉が有している前回の記憶に基づく
原名護の死因は両手両足を切断され餓死というもので、学生や探偵の末路に非常に近しい。
語られてもいないのに
凌釧の死に様を知り、植物を愛し、原名護と近づきかねない位置にある
貴島がこの両悪魔(のいずれか)の正体と見て取れ、安沢探偵が恐らく学生の日記から監禁犯をつきとめただろう事も考え合わせると、従ってトラズマンションの学生居室の隣室に住まうのは
貴島であると考えられる。
7月27日、津倉と
砂村が
銀峠と出会い交わした言葉は、「貴島と兜橋の家に砂村と行く」である。これは「貴島と砂村とともに兜橋の家へ行く」とも取れ、また「貴島の家と兜橋の家に砂村とともに行く」とも解釈できるが、あるいは別の見方をすれば「貴島と兜橋の住んでいる同じマンションへ砂村とともに行く」という解釈もできる。
以下はその論拠である。
7月20日に初めて訪れる兜橋の家はアパート風の外観(ベランダ付近)が一コマ描かれるのみで、あとはありふれた賃貸物件の玄関が出てくるのみであるのだが、この時に貴島は「兜橋の家の中に入った事はない」と言い、兜橋もまた「貴島の家に行った事はない」と発言する。そのまま受け取れば、貴島は兜橋の家の前まで行った事はあっても入った事はなく、兜橋も貴島の家に行ったことはない、と解釈でき、元々親交のある両者の関係を描写したに過ぎないとも思えるのだが、「同じマンションに住んでいるけれどもお互いの家を行き来した事はない」という発言と受け取る事もできる。
以下はそれについてのさらなる論拠である。
8月3日に兜橋に呼び出された一行は兜橋の部屋の前に集まるが、この時マンションの裏側の外観が出てくる。屋上に立方体の構造物を備えるありふれたマンション構造で、玄関の描写は20日と変わらない。
だがこの時、一行から外れ、恐らくは安沢探偵失踪の件を調査している最中の銀峠が、トラズマンションの外観を前にデジカメを構えるコマが出てくる。
このトラズマンションの外観と、兜橋のマンションの裏側外観が、マンション屋上に看板を持つ点も含め、非常に酷似している。
兜橋の住まうマンションがトラズマンションであったとすれば、安沢探偵への依頼主(学生の親と思しきおばさん)と会って直接話をしている銀峠は、依頼された学生の住まいがトラズマンションである事も突き止めている以上、たびたび一同へ兜橋についての警戒をうながす疑いの深さにも納得がゆく。
また、もし兜橋がここに住んでいた場合、学生が岡惚れしたのは兜橋であるという可能性すら出てくる。
兜橋ストーカー学生始末依頼、貴島監禁実行説
上記の、兜橋と貴島がどちらもトラズマンションの住人であったという仮定に基づく考えではあるのだが、
4月29日の悪魔一連の描写に登場する大学生の日記は、その憧憬の対象を貴島ではなく兜橋とするものとさらに仮定して考えてみる。
8月3日、皆を呼び出した兜橋はチャイムを押しても応答がなく、ドアをノックされた後で電話をかけてきて、らしからぬ歯切れの悪い言葉で寝ていたので十分待ってくれと言う。台詞もそうだが寝過ごすという行動も普段はきはきとした兜橋らしくなく、これらの点から、兜橋を
V.M.N事件の生存者とし、ノックにトラウマを抱えているとする推理が既に存在している。
また、学生の日記は4月29日でその表記を終えているが、
5月28日にはドアをノックされ続ける何者かの描写があり、これを、行為者を学生、被行為者を兜橋と仮定する。
もしトラズマンションの学生居室の隣に引っ越してきたのが兜橋で、学生は想いを募らせ、日記に示された偏執性からも、やがて5月末に兜橋の部屋のドアをノックし続けるというストーカー行為にまで発展していた場合、兜橋がノックに強いトラウマを抱えていたとしたら、8月3日の応答のように兜橋らしい理知的な対応(警察に相談やマンション管理人に苦情)なども取れず、ただ怯え続けるのではないかと推測される。
また安沢探偵は学生の親から捜索を依頼されて(
6月5日)犯人の家に踏み込むまで1か月近くかけているが(
7月9日)、これは学生の部屋を調べ日記を読んだとするならば、隣室居住者の女性に行き着くまでにそう時間がかかるとも思えない。もちろん十分に証拠を集めてから踏み込んだとも考えられるが、隣室居住者には監禁の疑いがなかったと見た方が、捜査経過時間的にもより自然ではある。
7月9日に監禁された安沢探偵が目撃している通り、学生はこの時既に監禁者の手中にあり、こう仮定していった場合、何らかの形で兜橋から貴島へと排除依頼が発生する形となり、あるいは貴島側から兜橋の意を汲む形で、貴島が自室に学生を監禁したとも考えられる。
こうなるとおおまかに二つのケースが考えられる。
1、兜橋はたまたま見せたトラウマを利用され悪魔に使われている。
2、兜橋はもともと悪魔の仲間である。
1ももちろん考えられるのだが、2の方がより可能性があるのではないかと考える。
理由としては、学生監禁に移行するまでの手際の良さ、監禁という異常事態が起こっている事を感じさせない揺らぎのない態度、貴島と兜橋の間の態度の気おくれのなさ、兜橋の経歴の空白期間、などである。
兜橋は果照中学卒業となっているが銀峠が調べたところによると小5より不登校で、しかし高校には合格するどころか定期テストでは連続学年二位を取っている。この空白期間において、実際は貴島達との並々ならぬ接点があったとしてもおかしくはない。なお一位は神檻中出身の真柄である。
規模は違えど似たような惨劇の生き残りでトラウマを抱える
爬哭も、中学以降は謎の生活費を得て一人暮らしし、貴島と同じ神檻中出身となっている。
そもそも兜橋を一枚噛ませたのも、津倉と原名護の話をたまたま聞いたという貴島が事情を話して連れてきたからである。
(この仮説の場合、貴島はむしろトラズマンションに住んでいなくてもまったく問題はなくなるのだが、安沢探偵が捕えられるシーンの玄関描写が兜橋宅やトラズマンション玄関に酷似し、また監禁対象を運ぶのは難しいと考えられるため、やはり両者は同じトラズマンションに居を構えているのではないかと考える)
補足1:
8月3日に皆を自室へ招いて話をする兜橋は、話の途中で窓を開けて外を見ている。その後窓を開けたまま部屋の中へ身を戻すが、後のコマで銀峠がトラズマンションの外観を撮影しているのがわかる。
これは恐らく部屋の位置関係を把握するものであったのだろうと思われるが、数日後に銀峠が消されたのは、ここで兜橋に真相に迫られていると思われたから、かも知れない。
補足2:
また、学生と安沢の失踪に唯一気づいているくらすくメンバーである銀峠がまるで貴島を疑っていないのは、あくまでも学生の隣室居住者である兜橋を疑って、アホの子にしか見えない貴島を疑わず、両者の関係にも気づいていないからとも考えられる。
最終更新:2020年06月05日 18:08