ボーカロイドはDTM(デスクトップミュージック、コンピュータを使った打ち込み音楽)の為に開発された音源で
これ迄にギターなど楽器の音源はあったものの「歌」の音源は存在していなかったことから製作された。
勘違いされやすいが、ボーカロイドエンジンの技術はYAMAHAの開発した物であり、
クリプトンはライセンス契約して製品化している会社の一つでしかない。
当初クリプトンからもMEIKO、KAITOなどのボーカロイドは発売されたが、あまり知名度が上がらないままに終わってしまう。
しかし、初音ミクはキャラの持つ秀逸なデザインと少しの萌え要素によって多くの人間に知られるようになり
そして何よりも音源ソフトとしての使い易さのため、発売直後から初音ミクに歌わせたカバー曲やオリジナル曲が
ニコニコ動画に投稿されるようになって、初音ミクの知名度と人気は急速に拡大していった。
知名度の高いキャラを備えた音源という利点のために
DTMにおいてボーカルを獲得することや制作した音楽を多くのユーザーの目に止まらせることの難しさといった
DTMの問題点が数多く解消され、衰退していたDTM界に革命を引き起こした。
通常、年間千本売れれば大ヒットとされるDTM業界において、初音ミクは発売後2週間で4千本
年間4万本を優に超え、発売5周年を迎えた現在は7万6千本という驚異の売り上げを記録した。
(因みにミク以前にMEIKOも三千本売れたヒット商品。但しDTMソフトの多くは数万~十万円弱するものが多い為
15000円のCVシリーズと単純比較してはいけない。それでも市場の歴史に残るほどの売り上げではあるのだが)
ミクの大ヒットは後続のボーカロイドである鏡音リン・レンや巡音ルカの売り上げに影響を与えたことは勿論
以前に発売されたMEIKO、KAITOが再評価される切っ掛けにもなった。
上述のようにライセンス製品なのでミク登場以前にもクリプトン社製以外のボーカロイドはあることはあったのだが
ミクのヒットにより注目を集め国内メーカーも次々とボーカロイド事業に参入、一気にその種類を増やした。
現在「VOCALOID2」エンジンを用いた国内製品にはクリプトン製のものの他
インターネット社製の神威がくぽ、GUMI、Lily、 ガチャッポイド
AH-Software製のSF-A2 開発コード miki 、氷山キヨテル、歌愛ユキ、猫村いろは
キューンレコード社製の歌手音ピコ、YAMAHA製のVY1、VY2など、多くの仲間がいる。
これらの多くにはミクに習うようにイメージキャラクターが設定されており
現在は最新型エンジン「VOCALOID3」が登場しており、これを用いた製品も続々登場中。
海外でも作られているが、仕様がやや異なっている。
現在ではニコニコ動画やクリプトンの運営するピアプロというサイトで大勢の人間がボーカロイドを用いて自作した歌を発表している。
更に初音ミクの存在によってDTMの世界が広く知られるようになり
それによって
ネットを通して誰でも自分の作った歌を公開し聴いて貰える基盤を確立した
ことは
音楽の創作においては大きな変化と言えるだろう。
後に公開した一部の曲は人気次第で「Project DIVA」「maimai」や「SOUND VOLTEX」などの音楽ゲームに収録され、
他にもボカロPと呼ばれるユーザーはネットだけに留まらず商業展開に進んでいくという一種の社会現象が起きている。
また、ミク用に開発されたフリーの3D動画製作ソフト『MikuMikuDance』(通称MMD)の登場によって
誰でも手軽に楽曲にあわせた3D振り付けダンスが製作できるようになり、
まさに本格的にボーカルからヴァーチャルアイドルへと進化することになった。
現在MMD用の3Dモデルはボーカロイドに留まらず、ニコニコで人気のありとあらゆるキャラのものが
凄まじい勢いで開発されており、ボーカロイドの枠を飛び越えた一つのジャンルとして成立して一大勢力を築いている。
バーチャルアイドルの現実化
という意味でも世界から注目されており
ミクの誕生日とされている3月9日に行われたミク感謝祭にて
実際にステージ上を歩いているように見えるスクリーン投影という形で行われたコンサートは満員御礼の大盛況。
その様子は全国ネットのニュース番組でも放映された。この様子がyoutubeなどで大々的に知られるようになり
ニューヨークでもコンサートが実現。超満員であった。
イギリスで最も有名なタブロイドフリーペーパー「METRO」は2010年10月21日
「ミク」に関し「彼女は、地球上で最大のポップスターの一人」と大々的に報じた他
エクアドルの「EL UNIVERSO」は10年9月8日付の電子版で「骨も肉もない有名な芸術家」との見出しを掲げ
何千人も収容するアリーナを満員にできる人物だと紹介した(J-castニュース 引用)。
また、ネギ繋がりでネギの世界一の原産国メキシコの雑誌の表紙にもデビュー。
2011年には
トヨタをスポンサーに全米にCMデビュー
までした。
多くの海外メディアによって尚も加速しつつある知名度の上昇は、
こういった分野で世界を牽引する日本への興味・期待が集まっていることの証である。
その勢いは止まらず、Google ChromeのCMにまで登場。
あのレディー・ガガやジャスティン・ビーバーと並んでyoutubeにおける「顔」として登用された。
また、このCMで使われた楽曲『Tell your world』はiTunes Storeの総合ランキングで1位を獲得。
更に海外ファンの強い要望もあり、WASABEATにて世界217カ国で追加配信という邦楽最多記録まで叩き出した。
後にこのCMはカンヌ国際広告祭にて銅賞を受賞し、また初音ミクは持ち歌の数でギネス記録認定されるにいたった。
初音ミクは登場から5年を経た現在、その動向に世界の目がついてくるほどのキャラクターに成長したのである。
日本のネットユーザーや非オタク層の中には「初音ミクは機械に過ぎない」と批判する者も多く、それは事実である。
繰り返しになるが、初音ミク=ヴォーカロイドはDTMソフトであり、つまるところ楽器の一種でしかないのだから。
だがここまでくると、下手な日本人歌手やアイドルを上回る結果を「彼女」が成し遂げた事に疑いの余地はないだろう。
最早ジョークなどではなく日本発の世界を代表するバーチャルアイドルとして認知されてきているのである。マジで。
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