動物に関する都市伝説

登録日:2020/02/21 Fri 00:45:50
更新日:2025/05/28 Wed 22:30:32
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動物はその行動や生態について、イメージだけが先行して広まっておりそのイメージだけでキャラクターが形作られることもしばしばある。
しかし、その中には明らかに間違っているものも数多い。
ここでは、そんな動物にまつわる都市伝説を紹介する。


なお、「動物」はとても幅が広い。
例えば一口に「」と言ってもチワワからセントバーナードまで多種多彩である。
生物学者も、都市伝説の解明に血眼になったりはしないので、個別の種類ごとに当てはまるかどうか検証しているわけではないし、
まして個体差まで考えたらキリがなくなっていく。
特に野生動物の場合、知名度と裏腹に生態が謎な動物だって多いのだ*1
そのため、都市伝説の「〇〇と言う動物は〇〇だ」は大半が間違っていたとしても種類や個体によっては正しいこともある。
逆に、都市伝説を批判する現在の通説の方が今後の研究・解明によってただの都市伝説だったとなる可能性もある。

バシッとした研究がなされているものでない限り、あくまでも「この動物の仲間はそうであることが多いというのが現在の通説」程度にとらえておこう。

有名な動物に関する都市伝説

動物にまつわる都市伝説の中でも特に有名かつ知名度のあるもの。
というか、ネコのキャラクターは魚、ネズミのキャラクターはチーズというのは一種のテンプレと化している感すらある。

しかし、実際の所一般的に「ネコ」と呼ばれるイエネコは北アフリカの砂漠にルーツを持つ動物なので、 その発生からして魚類との接触は非常に限定的である
スナドリネコのような魚を狙って食べる種類も中にはいる(何しろ英名が「Fishing cat」である)が、
基本的に自発的に魚を取る能力に根本的に欠けている生物なので人間が人為的に与えない限り魚など食べられる機会は乏しい。
なので当然のことながら、イエネコがとくに魚が好物ということはない

しかしながら洋の東西を問わずあらゆる文化圏において「猫は魚が好き」というステレオタイプが存在するのは、事実として漁港や人里付近に住む猫が、人間から魚をもらったり盗み食いしたりしていたからだろう。
ネコは主に哺乳類や鳥類を主に捕食しているが、爬虫類や昆虫なども食べるし、魚も目の前にあれば喜んで食べる。

ただし本来の食性とは異なるので、魚の過食は長期的に見ると健康上好ましくない
特に青魚は不飽和脂肪酸が多すぎるので、体調を崩す恐れがある。

ちなみに2018年、NHKの雑学番組で「猫は魚が好きというステレオタイプがあるは日本だけ」という内容が放送され、その影響かこの項目の初版もそのような内容が書かれていた。
しかしインターネットで少し検索すれば「猫が魚を好きというステレオタイプ」を下敷きに書かれた外国語の記事がいくらでも閲覧可能。明らかにデマである。


「ネズミはチーズが好き」に関してはシェイクスピアの戯曲や2000年前の哲学者ルキウス・アンナエウス・セネカの書物でも言及されており、非常に古くから認知されていたようである。
こちらはヨーロッパ周辺において、保存食のチーズがネズミにかじられることが多かったため誕生したとされる。

ネズミは選択肢を与えれば糖分を含んだ穀物や果物を好むためチーズの優先度はかなり低いが、雑食性なのであれば食べる。
あるものは何でも食べる動物が、どこにでもあるものを食べていたという話であろう。

また「エメンタールチーズ」というチーズの一種が作成過程で気泡が生じるために全体に穴が開くのだが、
「ネズミがかじったみたいなチーズだな」→「 ネズミってチーズ好きなんじゃね?
というイメージでできたとされる説もあるようだ。

なお、同じく並べて語られる「犬は骨が好き」は大体の犬において事実である。
ただし、あんまり硬い骨を与えるとかえって歯に悪いので適度に柔らかいもののほうが良い。実際にペットショップでそれ用の骨を探すと「適度に柔らかいですよ」と明記されているものは結構ある。
ただ、フライドチキンの骨のような加熱された鳥の骨は柔らかすぎて縦に裂けて消化器官を傷つけるので禁忌。

また、「サルはバナナが好き」も多くのサル*2においては当てはまる。
ただ、元々サルが食べているのはタネだらけで甘くない野生のバナナであるため、人間用に品種改良された甘いバナナはサルにはあまり向いていない。あと皮も剥かない。
実際に動物園や研究施設では、「元々日本で育つような野菜や果物」をそのまま与えている場合も多いようだ。
国語の教科書にもなった芋を洗うニホンザルのケース*3だって、元々はスタッフさんが「そのままかじるだろう」としてサツマイモをあげていたのが発端である。

ウサギニンジンが好き」は微妙なところ。
ニンジンは普通に食べ好物になることもあるが、ウサギが好むのは葉っぱの方である。
そもそも我々がニンジンと認識して食べているのは基本的に根っこの部分なので、野生のウサギとはあまり縁がない。
根っこの方も乾燥させたものを与えればそこそこ食べるが、葉物以外の食事ではどちらかと言うと果物の方が好物になりやすい。

でははどうか?
馬と言えば人参を連想すると言っても言い過ぎではなく、多くの馬の育成ゲームで人参がアイテムとして実装されている。
確かに馬は甘いものが好きで、甘みのある人参を好むとされている。
しかしながら、馬は人参が大好物とされる一般的なイメージは実は大げさで、あまり多く人参を与えたら飽きてしまったという報告がある。
また、騎手のインタビューによると馬は個々で好みの差が激しいらしく、中には人参を全く食べようとしない馬もいるらしい。
ここまで極端ではなかったが「バナナを差し出されると『口の中にものが入っていると食べさせてもらえないから』としてニンジンをぺっぺっぺと吐き出すビワハヤヒデ号」などは動画が残っている(実際のビワハヤヒデウマ娘版同様にバナナが大好物)。
好物とする馬が特に多いとされる角砂糖でさえ、甘いものが苦手なのか吐き出してしまう馬もいる。
なぜ人参が大好物というイメージができたのかと言うと、人参は安く調達できるために馬の餌として多く利用されてきたためらしい。
ついでにいうと「馬の鼻先に人参をぶら下げる」という慣用句があるが、あれも大げさ。
警戒心の強い馬はいきなり目の前にぶら下がってきたものを食べようとはしないし、食べようとしたとしても数回チャレンジして食べられなければ諦めてしまう。
これに関しては、川田J「最後まで真面目にやれ(怒)」がほぼすべての馬に当てはまるわけだ。

  • ネコはどんな高さから落ちても無事着地できる
「どんな高さからでも~」は大げさだったとしても、「32階から落ちても無事だった!」「高い階層から落ちた方がネコの生存率は高かった!」的な話は結構聞かれる。
実際、『サイエンス・タイムズ』という雑誌にそういう話が載ったこともあるが、実はこれ 巧妙な数字のトリック である。
この統計はあくまで「落下して病院に搬送されたネコの生存率」の話である。そう、 落下してその場で即死したネコ が勘定に入っていないのだ。
ネコの運動能力が人間とは比べ物にならないほど高いのは事実であり、実際運が良ければ相当高い階層から落ちても助かることはあるようだが、
全部のネコが無事助かるわけではない
助かったネコは あくまで運が良かった だけである。 実験しようと高いところからネコを投げ落とすなどは虐待になるので絶対にやってはいけない *4

ただし、猫は他の動物に比べて高所から安全に飛び降りることができるという話は紛れもない事実。
そもそも猫は高所を好み、また高所に登るのが得意な生き物である。裏を返すと、高所から安全に降りる能力にも恵まれているのだ。

ここで思い出してみてほしい。猫は屋根やブロック塀、タンスの上などに難なく飛び上がったり降りたりすることが出来るが、猫ほど体重がある生き物であれば、自分の身長の10倍以上の高さから飛び降りるというのは実はなかなかに至難の業である。
(他の動物の例を挙げるなら、ヨークシャー・テリアなど猫と同じくらいのサイズの小型犬の場合、ソファの高さから飛び降りるだけで骨折の危険がある。猫と似た体型のタヌキの場合、2mの石垣から地面に直接飛び降りれば怪我の危険があるが、猫ならばもっと高い場所から飛び降りてもまず平気である)

これがなぜかというと、猫は三半規管・運動神経・反射神経に優れた生き物であるため、高所から飛び降りる際に、どうすれば安全に着地できるかを判断できるため、と言われている。
また、ネコが落下時に四肢を広げる行動をとることがあるが、これは空気抵抗によって落下速度を落とすため。また、地面に着地する際にも、柔らかく丈夫な足の筋肉と肉球によって、落下の衝撃に怪我無く耐えることができる。
着地のフォームも科学的に分析する限り衝撃を上手く分散していると結果が出ており、つまるところ、猫は本能的に高所から飛び降りる能力を身に着けているのである。

当然、高所に強いという生態に見合って落下事故への耐性もあり、不意な落下の場合でも、極力怪我をしにくい姿勢で着地することができるということが確認されている。猫は背中から落下しても着地までには足から着地できるよう姿勢を立て直すことが出来る、というのは有名な話である(難しい言葉で言うと 立ち直り反射 と言い、都市伝説ではなく脳神経外科学的に証明されている行動である。また、''Falling cat problem〈ネコひねり問題〉''も参照されたし)

ただし、落下地点があまりにも高すぎる場合や、事故で高所から転落しまった場合は決して安全ではない
それでも運良く能力を発動する条件が揃った場合に限り、とんでもない高さから落ちてしまった場合でも助かる可能性は出てくる。これが、この都市伝説が生み出された理由なのではないかとされている。
実際のところ猫も賢いので、落ちたら怪我をするほどの高さから無理に飛び降りたりはせず、安全に飛び降りられる高さを探すものである。

たまに「高い所に登って降りられなくなった猫」がニュースになったりしているのを見て「猫は高い所から落ちても平気だから」「それは都市伝説のデマだから」と喧嘩をしたりする人もいるかもしれない。ケースバイケースではあるが、実際には上述の通り、猫は高所に強い生き物なので「降りるぶんには問題なく、心配する必要はない」ということは十分にはあり得るだろう。
というか、こういった事件について、一部の専門家の意見では「降りられなくなったのではなく、高い所で寛いでいるだけ。むしろ周りで人間が騒いでいるから困惑して降りられなくなっている」のではないかと言われていたりする(とはいえ、特に安全な段差がない人工物や太い枝のない大木などによじ登ってしまった場合、本当に降りられなくなっていることもあるので、長時間様子を見ても一向に降りてこないなどの場合には、役所や消防などに連絡して助けを求めよう)。

  • ネコは死期を悟ると飼い主の前から姿を消す
昔から飼い猫は人目に付きにくい場所で死体が発見されることが多かったことから語られるようになった話。
この状況に猫は孤独を自ら選んでいるという気高さを感じて作家などの創作者のネタになることも多かった。
実際には猫は自分のと言う概念を理解しておらず、怪我や衰えによる身体の苦しみと敵に対する不快感の区別が出来ないと言われている。
そのため、猫の姿を消す行動は自分に危険を与えるものから逃れようとして人目の付かない場所に逃げ込み、そこから出ると敵と認識している苦しみが大きくなる可能性を恐れて出れなくなった末に死ぬのだと見られている。
昔は猫は屋外で放し飼いにされていることも多かったため、単純に遠出をして行方不明になって帰ってこないことや発見された場所で何らかの理由で死んでいたという末路が多かったことも都市伝説が強くなった原因だと思われる。
また、室内飼いの猫は精神的には仔猫と大差がないことから、死期が近づいた際には逆に飼い主から離れずに甘えるようになるというパターンも多い。

  • 屠殺された競走馬は馬刺しにされる。
競馬ファンの間では有名な話であり、競馬ファンの間で「屠殺」の隠語として「馬刺し」が使われるほど。
しかし、実際のところサラブレッドの肉質は人間が食べるのに向いていないので、サラブレッドのは基本的に動物の飼料に回される事が多く、人間向けの食品として出回る事はまずない。
食用の馬肉と競走馬の屠殺が結びついた例としてはハマノパレード事件が有名だが、これも現実的に考えてみるとつい最近まで現役だった体重430キロの競走馬の可食部が400キロもあるというのはどう考えてもありえないため、実際にはたまた出回ったタイミングと重量が被っただけの赤の他馬の肉だった可能性が高い。屠殺されたハマノパレードが飼料用の馬肉に回された事自体は事実であり、一部の競馬ライターが関連付けた内容を掲載するなどしたため広まってしまったものと思われる。
ただしハマノパレード疑惑を契機に、明確に「予後不良措置など何らかの事情で屠殺する場合、食用肉として流通させる前提のところに依頼するのは禁止」となったのは概ね事実とされる。

  • 赤い色で興奮する
闘牛士の赤マントに突っ込んでいく牛からの連想から結構多くの作品で見られる描写だが、
牛(というかほとんどの草食動物)は色を識別する能力が低く、青と緑は割合よく見えるが、赤は見えない というのが定説であり、別に赤い色に特別反応しているわけではないとされる(だから『ONE PIECE』でウシ型のミンク族が登場した際には、白い布にも突撃している描写がある)。
ではなぜ牛が闘牛士に突っ込んでいくかと言うと、 単純に布がヒラヒラしているのにイラついているから である。色ではなく動きに反応しているのである。猫じゃらし等と一緒。
赤いマントが選ばれているのは、「命がけの闘争に相応しい色だから」「観客を興奮させるため」などの理由である。
赤い色で興奮するのは牛ではなく人間のほうなのだ。


  • コブラは笛の音に反応して踊る
上記の闘牛同様に人間(観客)相手のミスリード。
そもそも 蛇は耳がないので聴力が鈍い
よくある曲芸は蛇使いの細かい指の動きを動体視力で感知したり、あるいは蛇使いが篭を足で揺すったり地面を振動させたりしているのを感じて興奮しているだけである。
有名な古典ミステリーでは蛇について同じような勘違いをそのままトリックに使用しており、この点は良く突っ込まれる。
嘘ばっか教えている漫画『暁!!男塾』でも珍しくこのことが言及されており、科学的に正しいツッコミになっている。

日本ではあまり知られていないが、海外製カートゥーンなどを見ると時々見られる演出*5
日本で有名な例を挙げると、ゲームスーパードンキーコング3』のアニマルフレンド、エリーだろうか。
「ネズミはゾウの鼻の穴に詰まって窒息死させてしまう」などの噂話もまことしやかに語られる。
ゾウが見た目よりも神経質な生き物であり、ネズミが時折自分よりも体格の大きな動物に挑むのは事実なのでこの両者が合わさって生まれた伝説とされる。
サーカスなどではゾウの飼育係はネズミの駆除に気を遣うらしいが、これは単純に伝染病予防である。

  • 象の墓場
野生の象は死期を悟ると「象の墓場」へと向かいそこで死ぬという都市伝説
象の様な巨大な動物の死骸が、その生息域であっても見つかることが少ないことに由来する。
主にアフリカの地で象牙を求めるハンターの間でまことしやかに語られていた噂で、どちらかと言えば黄金郷や埋蔵金伝説の類に近い。
銃が未発達な時代は、巨大で凶暴なアフリカゾウを1頭仕留めるだけでも大きな労力と危険が付きまとった*6
故に、もし象の墓場が存在すれば、楽して象牙が大量獲得できる正に宝の山である。

実は、『千一夜物語』の「シンドバッドの冒険」にも記述があるなど、割と歴史の古い都市伝説で、『ライオン・キング』などアフリカを舞台とした創作ではちょくちょく登場する。

サバンナなどのゾウの生息域でゾウの死体を見掛けることは確かに少ないが、
なんの事はない、単に野性動物や微生物にあらかた食い尽くされて死体が土に還っただけのことである。

  • レミングの大量自殺
レミング(タビネズミ)は数年単位で大量発生しては、へと飛び込む「死の行進」を行う…とされている。
ゲーム作品『レミングス』はこの伝説を元に作られたゲームだが、もちろんわざわざ自殺するために行進しているわけではない。
実際には単なる大量発生に伴う集団移住であり、その際溺れて死んでしまう個体も出るようだが、レミング自体は 泳ぎは得意 なので大半の個体は無事に水を渡り切る。
この伝説はウォルト・ディズニーのドキュメンタリー映画『白い荒野』で広まったともされており、この映画では レミングをわざと溺れさせていた ことが後の調査で明らかになっている。まさに外道。

ただし、「なぜ一定周期で大量発生し、何がきっかけで集団移住するのか?」という点には謎が残っている。

  • モグラは太陽の光に当たると目が潰れて死ぬ
実際に日光に強いか弱いか二択で答えろと言われれば答えは「弱い」で○である。あんな真っ黒い体なので熱がこもらないわけがない。
しかしモグラが日光にチラッと当たっただけで悶え苦しむというのはデタラメであり、実際は照明を照らした中で飼っても死ぬことは無い。実際に動物園などでは「暗いと飼育員や獣医などスタッフがいちいち困る」「建前でも一応は客に見せるものなんだから、あまりに暗いと意味がない*7」としてある程度明るいケージでモグラの仲間を飼育・展示していることは珍しくない。
なぜならモグラは地中生活に適応しすぎて目がほとんど見えないため、どんな光も眩しく感じないのである。
つまり、問題なのは光ではなく熱ということになる。よってマンガなどでよくモグラにサングラスが描いてあったりするが、あれは無用の長物ということになる。
モグラ獣人はそういう意味では正しい。あいつは普通に日光下でも視覚あるけど。

なんでこんな誤解が生まれたのかというと、モグラが地上で死んでいるのを見た人が「滅多に日光に当たらないから死んだんだ」と誤解したかららしい。
ちなみにそういうケースの場合、たいていの死因は単なる餓死や、鳥や野良猫などによる捕食である。
モグラの仲間は非常に燃費が悪く、一日あたり必要な食事の量が非常に多いので、餌を見つけられないとあっという間に餓死してしまうのだ。

また、長い間モグラは「土中の植物の根をかじってダメにしてしまう」と言われていたが、それはオケラやジネズミによる被害であり、
現在ではモグラは植物性の餌は食べない完全な肉食性だと判明している(もっとも、畑に生息するミミズやイモムシなどを狙って土を穴だらけにしてしまうので、それによる二次被害はあるが)。

  • タヌキは寝たふりをして相手を油断させる
いわゆる「狸寝入り」の語源である。
昔はタヌキを撃ちに行くと決まってこの「狸寝入り」で騙され、逃げられてしまう…という話から、タヌキは「ずるい」「あくどい」というイメージ(例:権現様)が定着していた。
しかしタヌキはズルいのではなく 単に滅茶苦茶臆病な生物 であり、銃声などを聞くと 驚きすぎて気絶してしまう のである。
そのため、近くに人が寄ったりするとその音や振動で目覚め、急いで逃げる。故にこのような誤解が生じているのである。
…まあ、ここまで臆病な生物が絶滅せず生き残っていたことを考えると、進化論的には「寝たふり(実際は気絶)をして相手を油断させる」というのは一種の生存戦略なのかもしれないが…。

「腐肉あさり」として蔑称とも化している「ハイエナ」だが、 実は狩りはとても上手い
そして、 ライオンの方に獲物を横取り されることも結構ある(弱肉強食なのでどっちが悪いということもないが)。
腐肉や骨でも食べられるぐらい顎や消化器官が強靭に進化しており、実際に腐肉を食べていることも多いようだが、
自分で獲物を捕ることも得意であることはハイエナの名誉のために覚えておいてもらいたい。
『新ジャングルの王者ターちゃん』でもこのことを題材とした短編がある。

ちなみにハイエナという言葉は「腐肉あさり」の他「横から得物をかっさらう」というイメージから「良いとこどりをする人間の蔑称」として使われることもあるが、
ハイエナ全種類がそうではない。
むしろ、そのライオンに取られた獲物を取り返すためにタイマンで勝負を挑んだり、怪我をした仲間を見捨てないといった誇り高い性格の持ち主もいる。
むしろ近年では『ダーウィンが来た』など現代の動物紹介媒体における紹介で「群れのチームワークに優れた生物」とするイメージも広まりつつあるようだ。

  • ライオンは子供を谷に突き落として這いあがってきた子だけを育てる。
このことわざは中国の「獅子の子落とし」から来ているが、この「獅子」とは伝説の獣・霊獣であり実際のライオンではない。
キリンビールのキリンがアフリカのキリンと全然違うように架空の霊獣の事を表すのだ。\リュウレンジャー シシレンジャー テンマ キリン ホウオウレンジャー/
だいたい、この伝承における「谷」とは約1700m以上であり、そんな谷がアフリカのサバンナにゴロゴロあるわけがない。
「白髪三千丈」などと同じく物事を大袈裟に言った比喩表現である。

実際の所、多くの野生動物は子孫を残すのに必死なので、一々子供を殺して選抜などしている余裕はない。
とはいえオスライオンは群れを乗っ取ると先代のリーダーの子を全て殺すという習性を持つので、自らの子以外には非常に厳しい動物なのである。
更にオスの子供はある程度大きくなると父ライオンによって群れを追い出されるので自分の子供に対してもある意味厳しい。
また、子供を一匹しか育てない動物に双子が生まれた場合、片方を育てられないという場合はある。

  • クマは死んだふりをすれば寄り付かない
絶対にやってはいけない。熊は雑食性の動物であり、 死体も平気で食べる
そもそもクマは興奮しやすい動物の為、出合頭にばったり倒れこんだりしたら警戒して余計に近寄ってくる。
その際に巨体でのしかかられたり、爪で引っかかれたりすれば命は無い 。もう何から何まで間違っているのがこの対応である。
逆に 戦おうとしたり、背中を向けて逃げたりしても結果は同じ (クマはウサイン・ボルトより足が速い)であり、余計に興奮して襲い掛かってくる。
諸君らが鷹村守並の強さだったらまだしも、普通の人間がこんな対応をすれば待っているのは死あるのみである。

正しい対応としてはまず声を上げないことが先決。ゆっ…くりと相対したまま後ろに下がっていけば、クマも安堵して逃げていくことがある。
ただまあ…人間だって気が立っている時とそうでない時があるように、何がきっかけでクマが興奮したり人を気にして襲ってくるかどこまで執拗に攻撃するかなんて分からない*8
単純に言えばお腹が空いているか(餌の横取り)でも変わるだろうし、人肉の味を占めた大きな人喰い熊ならむしろ積極的に襲い掛かってくることだろう。
興奮させてはいけない、遠くで見かけたら速やかに静かに撤退すべきということは確かだが、
前述の通り非推奨だし期待してはいけないが小熊なら抵抗した結果びっくりして逃げることもあるし、絶対にこれ!といった対処法は無い。
強いて言えば44マグナム弾のような大口径弾を使う拳銃を持っていれば大きな発砲音で威嚇・牽制しつつ逃げられる可能性が高いが、本体に当てて尚且つ決定打にならなかった場合には中途半端な攻撃で猛獣を逆上させるという最悪の事態に繋がる*9

ただし、この話を書いたイソップの後の時代のアリストテレス動物誌には「真っ当なライオンは人間を殺さない」と言う記述がある。
その記すところによると、ライオンは人間を襲う際には爪を収納してのパンチに留め、人間が倒れると揺さぶって縄張りから追い払うだけで済ますとしている。
本当に危険なライオンは「耄碌したおいぼれ」「中途半端な攻撃で逆上させた個体」であり、下手に抵抗しなければ殺されない確率が高いとアリストテレスは説いている。
ライオンは群れで生活するので、仲間が殺されると執拗に復讐を企む人間の集団と全面抗争に陥るのを避けていた・・・と現在では解釈されているが、開けた土地を好み集団生活をするライオンなら群れの子供を脅かすリスクを避ける戦略としてこのような習慣を生み出す可能性は有り得るが、森の中で単独生活をする熊はそんな心配は殆ど無い。

…冒頭にも記した通り、ここで書いてある事を鵜呑みにして、わざわざクマが出没するようなところに出向いて被害にあっても当方は一切責任を取れないので注意
クマが出没するような場所には近寄らないことが重要である。
住宅地に出向いてきた場合は運が悪かったとしか言いようがないが…。


ちなみに、この伝説の起源となったとされているイソップ童話の「旅人とクマ」は以下のような話である

「二人の旅人が山道を歩いていると、いきなりクマに出くわした。
旅人の一人は一目散に木の上に登って逃げた。
置き去りにされたもう一人は、仕方なく死んだフリをした。
クマは死んだフリをした旅人に近寄って、その耳元に口を寄せると、
『危ない時に仲間を見捨てて自分だけ先に逃げるような奴とはもう行動を共にするな』
と忠告した」

見ての通り、この話の中でも、「死んだフリ」は他に手段が無かったために取ったにすぎない行動として描かれている。
そして、話のテーマは死んだフリ作戦とは全く関係が無いものであり、「死んだフリをしたから助かった」という話ではない。

むしろ警戒心が強いため、周囲にあまりに多くの動物の気配があるとその方がストレスになる。
アマミノクロウサギのように授乳時以外は子供を単独で隠している種も存在している。
一説には、「体調が悪くても隠さないと生きていけない野生の習性が残っているため、帰って来るとポックリ死んでしまっていることが結構あった」こと
がこの伝説を後押ししているとか。
日本でこの伝説を広めたのは、ドラマ『ひとつ屋根の下』であるとされる。

  • ウサギは水を飲むと死ぬ
確かにウサギは非常に乾燥に強い。ウサギは草や野菜など水分の多い餌を好んで食べるため、犬などのように水をべろべろ飲むことがあまり無いからである。
しかし水を必要としない生物などいるわけもないので、 水を飲んだからと言って死ぬようなことは無い
ウサギの毛は保湿性が高いため、 水を浴びると毛が肌にへばりつき、低体温症を起こして死んでしまうことがある ので、このような誤解が生まれたらしい。
ウサギを買う場合には皿に水を入れたりせず、専用の給水ボトルで与えるのが良い*10。水分量の少ないペットフードなどを与える場合は猶更である。

  • 「百匹目の猿」理論
「宮崎県串間市の幸島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べる事を覚え、同行動を取る猿の数が閾値…仮説として「100匹」が唱えられており、名称の由来にもなっている…を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになった、という伝説。
複数おかしな点があるが、最大の矛盾として今のところ高崎(大分のほう)*11の個体群にイモ洗い行動が確認されたことはない。
また提唱したライアル・ワトソンの論文では明確に幸島個体群に関する論文から引用したことにされていたが、いざ第三者の真猿類の話がわかる動物学者がもういっかい査読してみると引用元として明示された論文に「急激なイモ洗い行動の伝播」の掲載が無い、念のためこのアマンドソン先生が元の論文著者・河合先生*12に事情を説明してインタビューを行うと当の河合が「見たこともないし、そういった報告も受けたことが無い」とぶっちゃけてしまう、別の先生の引用論文に至ってはワトソンが主張するような仮説の掲載すらなく、ガチの論文捏造を疑わざるを得ないとあまりにも信じるための材料が無さすぎるものであったことが判明した。
反核活動と結びついていたこともあって一応今でも信じている人もいるようだが、正直言ってあまり広まらなかった都市伝説と見なしていいだろう。
いやまあ大半の方はニホンザルの生態そのものにあまり興味を持たないだろうが。

ちなみに正しい幸島個体群の経緯は上の方の注で触れたように、
  • はっきりしていないが、とにかくある日「なんらかの偶然で」ある1頭の若い個体がエサでもらったサツマイモを海に入れた。あるいは意図せずに落っことした。
  • その個体は海水に浸かったイモを食べ、しょっぱくておいしいことを発見した。この個体は以降、貰ったイモを「わざと」海水に浸けてから食べるようになった。すなわち「一匹目の猿」
  • 他の若い個体は、この個体の行動に興味を示し始めた。そして次々と他の個体も、この一匹目の個体の真似をして「イモを海水に浸ける」ようになった。
  • こうして二匹、三匹と「イモを浸ける」若い個体は増えていき、幸島個体群を見ている研究者が気づいたときにはほとんどの若い個体がこのイモ洗い行動を行うようになった。つまり「自然に伝播した」のではなく、「他のやつがやってるのを真似する」「それが真似した個体の後天的習慣として定着する」行動が確認された。
  • 一方高齢個体には若い個体を真似る行動は確認されなかったが、代わりに「洗われた芋を奪い取る」行動が確認された。年齢による行動の差異のデータとなったのはもちろん、群れ内の序列の確認には役立った。
というものである。
もともとニホンザルの個体群は地域によって性格・行動の差異が激しく、他の特殊な例としては「ほとんど凶暴性や威嚇行為が見られず、何もしなくても「整列」「行列を作る」ができるほどおとなしい」兵庫・淡路島モンキーセンターの個体群の例がある。
なんせエサをそういう形に撒くだけで人文字ならぬサル文字を作ってしまうのだ*13
もちろんこれも、よその個体群に「勝手に伝播」した事例は確認されていない。

  • ラクダのコブには水が蓄えられている
正しくは 脂肪の塊 である。
ラクダは最も乾燥に強い哺乳類の一つであり、一度に50~100リットルに及ぶ水を飲むと、血管内に水分を溶かし、一週間は何も飲まなくても平気で過ごせる。
だが栄養分だけはさすがに補給できないので、食事の際に少しずつ背中の脂肪に蓄えておくのだ。
ちなみにラクダのコブは食べることもできる。

  • カンガルーの名前は現地語で「知らない」の意味
西洋人が初めてオーストラリア大陸に上陸した際、現地人にカンガルーを示し「あの動物は何と呼ぶのか」と尋ねたが
現地人は西洋人の言葉がわからず「何を言ってるのかがわからない」という意味で「カンガルー」と答えたのを名前と勘違いしたというこれまた有名な逸話。
アニメ『あたしンち』でもネタにされたことで有名になったが、現在では実際はグーグ・イミディルという部族の言葉である「ガングルー(=跳ねる者)」が変化していったという説が有力。

同じような由来が流布しているアイアイに関しては現地語で「知らない」を意味する「hehheh」を由来とする説と、現地語の感嘆詞が由来であるという説の2つがあり、どちらも決定的な証拠がないのが実情である。

なお、マダガスカルに生息する「インドリ」というキツネザルの仲間は、現地の住民の「indri(「そこにいる」の意)」という言葉を名前と勘違いして名付けられたといわれている。
また、動物ではないが「知らない」という返答が名前と誤認されてしまった存在としてはモルゲッソヨが知られている。

オオアリクイは見かけによらず獰猛であり、両手の爪で動物や人間の首を掻き切り生き血をすする。
オオアリクイに夜道で襲われたらまず助からず、世間を騒がせたUMA「チュパカブラ」の正体もオオアリクイである、とする噂。
当たり前だが、アリを食うからアリクイと言うのであって、飼われている個体でない限りアリやシロアリ以外を食べることはまずない。
また、アリ以外を食べるとしてもすり潰した果物などであり、動物の血を与えてもそれを飲むことはない。
つまりオオアリクイは吸血をするという前提がそもそも誤りなのだ。
また、大きな爪はアリ塚を壊すためのものであり、敵を攻撃することはほとんど無く、外敵に襲われても逃げるか、非常に可愛らしいポーズで威嚇するしかない*14
なお、「ゴルゴ13」にオオアリクイが寝ている人間を殺害し血を吸うシーンがあるが、この噂がこのシーンから生まれたものなのか、あるいはこの噂を参考にしてこのシーンが描かれたのかは不明である。

  • オシドリの夫婦は一生添い遂げる
実はワンシーズンだけのカップルであり、 翌年には別の相手を見つけている 方が普通。
まぁオシドリだけが特別なのではなく、カモの仲間は大抵こんなもんだが。
また子育ても雌だけが担当し、雄は基本放置。オシドリの世界でイクメンはモテないのだ。
一応タンチョウやコザクラインコ、ワシなど、本当に夫婦で一生添い遂げる鳥もいる。
とりわけタンチョウは片方が死ぬとその場から暫く離れないことが確認されており、
仲睦まじい夫婦はオシドリ夫婦ではなくタンチョウ夫婦とよぶべきじゃ…なんて声もあるのだとか…

  • フクロウやヨタカ以外の昼行性の鳥は「鳥目」なので夜は動けなくなる
ビタミンA欠乏による夜盲症を「鳥目」と呼ぶ語源であるが、 実は夜盲症の鳥はほとんどいない
創作の世界では『キン肉マン』のザ・ホークマンや『仮面ライダー』のゲバコンドルなんかがこの弱点を持っていたが、
実は「鳥目」の鳥はニワトリなど ごく一部だけ である。昼行性の鳥であっても、人間と同等程度には動くことが出来る。
特に渡り鳥は夜でも平気で飛び回る。これは、地球の地磁気を感知できるかららしい。
哺乳類は猫など夜に動き回る動物が多いため、「それと比べて」鳥に夜行性が少ないのでこうした言葉が出来た、というのが真相である。
ちなみに挙がっているフクロウこそが実は視覚に頼らずに狩りをしているとされており、現在主流な説は「聴覚で正確に獲物の位置を把握する能力がある」である。
ちなみにいわゆる羽角は器官としての耳じゃないぞ

逆に 「猫舌」は、猫どころかほぼすべての動物がそう である。熱いものを好んで食べるのは、食べ物を加熱して食う習性を持つ人間だけなのだ。

  • 道端に落ちている鳥のヒナを人間が拾うと親鳥は人の臭いを嫌って育児を放棄する
昔から雛鳥を拾ってはいけない理由として語られるが誤り。
基本的に鳥の嗅覚は鈍いので人間の臭いがついていても親鳥はわからない。安全な場所に移動させるくらいなら大丈夫。
とはいえ人間にビビって親鳥が近づけないでいるのは確かなので、基本的には見かけてもそっとしておくべきである。

  • ニワトリは3歩歩くと覚えたことを忘れる/鳥頭
昔からよく言われているが、そんなことは無い。
ほとんどの鳥はの大きさの割に知能が高くて記憶力がよく、餌を与えてくれる人や危害を加えた人のことはよく覚えている。
とくにカラスの仲間は、もしもの時のために餌を隠した場所を覚えているほどに記憶力がよい。

逆に最もバカなのはダチョウ*15。脳が片方の眼球より小さく、3歩…とまではいかなくとも、記憶は一晩ほどしか持たず、飼い主の顔を満足に記憶することすら出来ない。

  • ダチョウは危機が迫ると砂に首を突っ込んで現実逃避する
上記の通り脳の小ささで知られるダチョウだが、幸いなことに そこまでバカではない
ただし砂に頭を突っ込むという習性自体は存在し、「地中の振動から危機を察知する」「食物をすり潰すための砂石を腸内に取り入れる」「卵のための巣穴作り」「身を低くして外敵からカモフラージュする」等、生存・繁栄のための真っ当な目的がちゃんとあるのである。
だがそうした姿も無知な人間には「頭隠して尻隠さず」「愚かな事なかれ主義」としか見えず、英語圏には「Ostrich policy」(和訳:ダチョウの平和、ダチョウ政策。存在するのが明らかな危機から目を背け続けることを言う)という慣用句まで存在する。
ダチョウにしてみればとんだ風評被害である。

  • 白鳥は水面下で必死で足を掻き続けている
巨人の星』や、『けいおん!』のエンディングテーマ「Don't say lazy」でおなじみのフレーズであり、近年までは信じられていたが、
最近の研究で水中カメラを使用した所、水鳥は ほぼ何もせずに浮いており 、方向転換の際にちょっと足を動かすだけであった。ある程度透明な水が確保されていれば、都市部の水路などでもカモで簡単に観察できる*16
実は水鳥の羽毛は自らの皮脂腺から出る脂を塗る事で表面張力が働くため、羽根との間に空気を溜めることで非常に浮きやすくなっている。
従って、水質汚染などで皮脂よりも粘着力の強い石油などが羽根や体に纏わりつくと溺れてしまうのである。

矢追純一氏がその著書で紹介したこともあり、90年代に広まっていた俗説。
「街中にカラスはたくさんいるのに、その死体を見た人はいない」
という現象を説明するものだとされた。

しかし、実際にはカラスはねぐらである林の中で死ぬことが多く、そのため人目に付きにくい。
また、街中で死んだ場合は、ネコやネズミ、他のカラス、清掃員の人などにすぐに片づけられる。
そのような理由で見つかりにくいだけであるが、実際にはよく探してみれば、街中でカラスに限らず動物の死体を見つけるのはそう難しくない。

なお、矢追氏は前述の著書の中で、死体が消滅する理由として「反物質によって対消滅する」というような説明をしているが、と学会の著書で「それだと原爆爆発なみの惨事がそこらじゅうで起きていることになる」と突っ込まれた。

  • サメは人を食べるために襲う
イタチザメやヨゴレ、ニュージャージー州サメ襲撃事件のサメなど、本当に人を食うために襲うサメも中にはいるが、大半のサメは人を食べるために攻撃するわけではない。
多くのサメは非常に視力が弱いため、海面を泳ぐ人やサーフボードなどの影を、獲物としているウミガメやアシカと勘違いして噛みつき、殺してしまうことが多いのだ。
事実、サメによる死者数は年間約10人ほどである。
ゾウが約500人、ワニが約1000人であることを考えると、非常に少ない数字であることがわかるだろう。

しかし、その一方で、駆除や食用のためにサメは年間約77万トンも乱獲され、今やおよそ17種ものサメが絶滅のおそれがあるという。
また、乱獲数が増えたことには、『ジョーズ』を筆頭としたサメを題材にしたホラー映画が公開され、「サメ=怖い生き物」というイメージが定着してしまったことも原因としてあげられる。
このことは『ジョーズ』の監督を務めたスティーブン・スピルバーグ氏も自覚しているようで、2022年のBBCラジオのインタビューで「本当に悔やんでいる」と語っていた。

驚くほど些細な事で死ぬというマンボウの死因に関する伝説は枚挙に暇がないが、 ほとんどは大げさに語られているだけ である。
デリケートな動物なので、飼育環境では気を遣うのは事実だが、流石に野生ではそこまで死にやすくはない。
合わせて「一度に3億もの卵を産むが生き残るのは2~3匹」という説も唱えられるが これも正確ではない
マンボウは体が大きく当然卵巣も大きいため、体内には大量の卵を抱えている。
本来はイギリスの有名な科学雑誌『Nature』で「体内に3億近い未成熟卵を抱えている事が判明した」という内容が掲載されていたのだが、
日本で引用されるときに「一気に3億個産む」という形に誤訳されてしまったらしい。
生き残る個体数に関しても実際のところ追跡調査は困難であり何割が生き残っているのかに関しては不明。

ご存知大きな口と長いひげを持つ魚のナマズだが
日本においては古くからナマズが暴れると地震が起きる…とされている。
これは日本の妖怪である大鯰が地下にいてそれが暴れると地震が
起きるという伝承があったことに由来する。
しかしながら現実ではこの説は眉唾であり、研究者の間でも
実際にナマズは地震を感知するという声もあれば
それはあり得ないという声もあるのだとか。

  • セミの寿命
成虫になって1週間と、短命の虫(成虫限定)として有名なセミ。『八日目の蝉』なんて映画もあるくらいだ。
しかし実際には 寿命を迎える前に死んでしまう ケースが多いだけであり、野生の個体は一夏くらいは生き続ける。
飼育下でも 上手く育てれば1か月ぐらいは持つ (それでも短い方ではあるが)。

また、孵化してから成虫になるまで地面の中で7年過ごすというのも種類によって異なり、実際には数年で成虫になる種類もいるし、逆に10年以上地中に潜っている種類もある。

  • ハチに刺されたらおしっこをかけるとよい
効きません。この民間療法は
①ハチはアリの仲間なので、毒には蟻酸が 含まれているのでアンモニアで中和できる
②小便にはアンモニアが大量に入っているだろう
という論法によるもので導き出されたものであり、勿論大間違いである。

①の反証:ハチの毒はタンパク系の血液毒で、 酸性ではない し、そもそもアルカリ性というだけでは中和できない。それが可能なら血清など不要になる。
②の反証:尿のアンモニア成分は腎臓で分解されて尿素になっているので、 実はそんなに含まれていない

といった具合に間違っているので、効くか効かないかのレベルではなく ハナから問題外 ということになる。
もし刺された場合には、患部を冷やして毒を指で押し出しつつ( 口で吸うと口内の傷や虫歯から毒が侵入する )、抗ヒスタミン剤を塗るべきである。
無いならお茶(タンニンが含まれている)でも良い。

余談だが、尿を傷口にかけたら単純にやばくないのか?という疑問については、
健常者の排尿直後ならば菌は少なく*17
更にその菌が人の感染症に関係する類の菌であるかや、感染症になるほどの数が混ざっているか否かなどもあるため、
性病持ちだとか腎臓が悪いとかでなければ、水道水などの人体に対して綺麗な流水が用意出来ない前提ならば、下手な水*18よりはマシである。
緊急時には蒸留させて飲み水としても使うことも世界中で行われている。
イメージ云々もだがどんな老廃物があるかは人・状況によってそれぞれであるし、ましてやどう影響するかも不明なので、蒸留しないままなのは当然良くないが。
また、毒に関する民間療法の噂としては『フグ毒を摂取してしまった場合は砂に首まで埋めるとよい』というものがある。こちらは解毒作用的に効果があるわけではないが継続的に胸部圧迫をすることで横隔膜のみで細々と呼吸が継続できるようになり、フグ毒が抜けるまで呼吸を維持できるようになるので生還確率は上がるというメカニズムであり、人工呼吸器が発明されるまでは理に適った手段であることが判明している。

クマバチは物理的に飛べないのだが、根性で飛んでいるのだと言われている。
実際は「空気の粘性に関する係数類を考慮していないので計算が間違っていた」という文字通りの計算違いだった。
なおこれは別にクマバチだけに限った内容ではなくハチドリなどの小型鳥類や一部の小型昆虫の飛行能力
既存の理論ではクマバチの様な都市伝説的な立証不能説が有ったが同様に空気の粘性を考慮に入れた計算と分析を行って科学的に立証された。
そういうわけで今はクマバチが飛べる理由は科学的にも判っている

  • タランチュラは猛毒
毒グモの代表格にして最強のクモとして有名なタランチュラ(オオツチグモ科に属するクモの総称)だが、実際は毒の強さはミツバチ以下と非常に弱い。
主な症状としては皮膚の炎症などで、長くても数日で治る*19
だが、あくまで毒があまり効果がないというだけで、噛まれたときの痛みは激しく、傷も残る。
特に最大級の種であるルブロンオオツチグモ(別名「ゴライアスバードイーター」)に噛まれると、「小型犬に噛みつかれたような怪我をする」らしい。ちょっと盛ってるかもしれんが。
また、危険を感じると尻から針のような毛を発射する。これが皮膚や粘膜に刺さると炎症を起こすので、やはり危険なクモであることに変わりはないだろう。

ちなみに、最も強い毒を持つクモは南アメリカに生息するクロドクシボグモで、ギネス世界記録に認定されている。
噛まれると不整脈や肺水腫、痙攣などの症状が現れ、最悪の場合死に至る

  • ニューヨークの下水道にはワニが住み着いている
「かつて珍しい動物をペットにすることが流行ったが、その時にワニをペットにする家庭も多かった。だが成長すると数メートルになるワニを一般家庭で飼えるはずもなく、手に負えなくなったワニをトイレに流す飼い主もいた。そうして捨てられたワニが下水に流れてくる残飯を餌に成長して繁殖し、人間をも襲っている」という有名な噂。
実際にはニューヨークの冬を変温動物であるワニが乗り切ることは難しい。
また衛生面での問題もあり、ワニが定着・繁殖することはまず考えられない。
なおアメリカワニの生息地であるフロリダ州南部では下水道どころかマイアミなどの都市の街中でも普通にいる。*20

ちなみに、日本でも1993年に東京都練馬区の石神井公園にてワニらしき生物の目撃情報が相次ぎ、罠も仕掛けられ捕獲が行われたが、結局発見はされなかった。

ゆっくりと移動するはずのナメクジであるが、まるで瞬間移動でもしたかのように思いがけないところから姿を顕したり、逆に姿を消す…というもの。
荒唐無稽な話なので頭から鵜呑みにしている人はさすがに少ないが、「ナメポート(ナメクジ+テレポート)」の呼称で一部では有名。
ナメクジは見た目以上に身体の伸縮性に優れており、行動範囲も広いため、「まさかこんな所には入り込めないだろう」というところも問題なく移動してしまえることも珍しくない。
人間の予想の範疇を超えてくること、普段は身を守るために隙間に潜んでいて、気配が分かりにくいうえに個体差も分かりにくいことなど、複数の理由が重なって瞬間移動の伝説が生まれたと考えられる。

人によっては名前を口に出すのも憚られる黒いアイツの神出鬼没さに纏わる伝説。
時に気密性の高い現代家屋にまで、どこからともなく浸入してくるのは恐怖そのもの。
おまけに風呂場やトイレなど家の中でも特に密閉性の高い場所に出没する様は正にミステリー
さらに数ミリ程度の幼虫ならともかく、煎餅サイズの巨大な成虫が現れようものならそれはもう怪奇現象である。
故に、壁や窓などの障害物をすり抜けられる空間移動能力の伝説が生まれたものと思われる。
無論、こちらも荒唐無稽な話なので頭から鵜呑みにしている人は少ない。
しかし、実際に上記のような謎に直面する人間は多いため割と古くからある都市伝説であり、漫画『三丁目の夕日』にもゴキブリの空間移動能力を描いたSF短編が載っている*21

ゴキブリの神出鬼没さの秘密はヤツらの体の異常なまでの扁平さにある。
実際ゴキブリを見る時は、上から見下ろす形が多いので大きく見えるが、横から見るとかなり薄っぺらいことがわかる。
故に、針の太さ程度の隙間やひび割れがあれば、いとも容易く潜り込んでしまうことが可能である。
排水口の蓋の隙間や換気扇のフィルターの隙間、果てはサッシとサッシの間を潜り抜けて閉まっている窓を堂々と突破することすらある。
当然ながら、潰すと日常生活に支障をきたす侵入経路も多いのが悩みどころ。
そういう場合は、あえて素通りさせて毒餌トラップで歓迎してやるのが一番有効な対処法である。
何?薬剤耐性ゴキブリ?それも都市伝説だと言って…

  • ゴキブリを食べると卵が胃の中で孵化して内蔵を食い荒らされる
テレビのビックリ人間ショーに出演した男が、生きたゴキブリを炒めて食べるというパフォーマンスを行った。
男は見事優勝しお目当ての賞品のギターを手に入れた。
ところが数日後、男は原因不明の腹痛に襲われ、病院に運び込まれた。
緊急手術が行われたが、胃を切開した医者は息を呑んだ。
胃の中には生きたゴキブリの幼虫がワラワラと蠢いていたからだ。
実は先日食べたゴキブリの中に卵を抱えたメスが混じっており、メスが死んでも卵は生きており胃の中で孵化したのだ。
内蔵をゴキブリの幼虫に食い荒らされた男はやがて死亡してしまった、という都市伝説。
生き物関連の都市伝説では定番であり、都市伝説を扱った本では必ずと言って良いほど取り上げられている。
実際には人間の胃酸は鉄をも腐食させると言われているほど強力であり、生きたゴキブリが胃に入ったとしても消化されてしまう。

ところで、この都市伝説はじつは1990年代にも囁かれていたのだが、その時は単に「ゴキブリを食べるというパフォーマンスを行った男が後日具合が悪くなって死んでしまった」という噂話だった。
これはつまり「ゴキブリに付いていた病原菌によって死んでしまった」という噂話であり、ゴキブリの不潔さに注意を促す逸話として伝わっていたのだが、それに尾ひれがつきより過激になって伝わったのではないかと思われる。

なお、ゴキブリには主にペット用の生き餌とするために清潔な環境で飼育されているものもあり、これは人間も食用可能。
油が多く含まれナッツのような味わいがあり、嫌な雑味も少ないので食用昆虫としては結構美味しい部類である。
無論、家の中で捕まえたゴキブリを食べたりするのは不潔極まりないので辞めた方が良いが。

ちなみにこれの原型になったと思われる伝承に「スイカの種を飲み込むと胃の中で発芽する」というものがあるが、当然そのようなことはない。

  • 蚊は血液型がO型の人間を好む
蚊への刺されやすさが血液型によって異なるという俗説。
現在の研究では、蚊は二酸化炭素や温度(体温)、アルコールなどを元に血を吸う対象を探していることがわかっている。
そのため血液型は関係ない…かと思いきや、「O型が最も刺されやすい」という調査結果は複数出ている。
メカニズムなどは全く判明していないため仮説の域は出ないが、あながちデマでもないというところになる。

ただし、当たり前ながら蚊に吸う前に対象の人間の血液型が分かる訳はない
そのため、単純に「O型の血の味が好き」とかそういう話ではなく、あくまで「特定の血液型を持つ→二酸化炭素や汗など表出する特徴に影響を与える→蚊が寄り付きやすくなる」といった話になるだろう。

  • ゴリラの血液型は全てB型
間違いではないが不正確。
ゴリラ」という生物はそもそも1種類ではないからである。

現在生息するゴリラの90%を占める「ニシローランドゴリラ」(学名が「ゴリラ=ゴリラ=ゴリラ」のやつ)は、確かに全て血液型は人間でいうB型である。
ただし、「ヒガシローランドゴリラ」にはO型のものもいるし、「マウンテンゴリラ」はA型とO型がいるのみでB型のものはそもそもいない。
動物園など日常で見られるゴリラは全て「ニシローランドゴリラ」なので、概ね合っていると言えないことはないが、理解して使うに越したことはないだろう。

ヒヨケムシ自体は主に中東に生息するクモガタ類の節足動物であり、よほどのことがなければ積極的に人間に害を及ぼすことはない。
しかし、「世界三大奇虫」のひとつに数えられるほどに奇妙な姿をしているせいなのか、しばしば怪物のような扱いを受けてしまうこともある。
中でも有名なのが、2000年代初めごろにイラク戦争に赴いていたアメリカ人兵士たちの間で、
「時速50キロの俊足を持ち大ジャンプもする」「夜中に赤ん坊の泣き声のような奇声をあげ、ラクダを襲って胃袋をかじり取る*22」「寝ている人間に忍び寄り肉をかじり取る」などと流布されていたもの。
TCG『マジック・ザ・ギャザリング』ではこれをモチーフとしたカードも登場している。

  • 「お布団の匂い」はダニの死骸の匂い
太陽に当てて干した布団は独特の良い匂いがするが、これは実際は布団についたダニの死骸の匂いだというもの。
実際、ただの布団が太陽の光を浴びただけで匂いを発するというのが不自然だということから発生した説なのだろう。
「お日様の香り」という牧歌的な表現に突き付けられる残酷な事実…という構図が知識人気取りのひねくれ者にウケたというのも、この説が広まった理由の一因と思われる。
また、徐々に認知度の高まってきたシックハウス症候群の原因物質にダニの死骸がよく挙げられていたことも考慮に入れられるかもしれない。

だがこれは誤りであり、そもそもダニの死骸は布団を使っている間日常的に発生するため、干した時だけ匂いがするのはおかしい。
実際は布団に残っている皮脂や洗剤などの残留物に太陽光の紫外線が当たることで起こる化学反応により生成される、アルデヒドやアルコール、脂肪酸などの物質による匂いであることがカネボウ化粧品などの実験でわかっている。

  • タコは夜中に上陸して畑の大根を食べる
東北地方に語り継がれているという伝説。
昭和期の動物学者はよく言及しており、テレビ番組で検証実験も何度か行われている。
実際のところは、「タコは陸上でもわりと長く活動できるし、白いものを好む習性もあるので、あながちウソとも言い切れない」という声もあれば、
「タコが畑に入り込んでしまったら、細かい土が粘膜に貼り付いて呼吸ができなくなるのではないか」という否定意見もあり、はっきりしたところは今でも不明。
中には「大根を盗んだ者が、タコのせいという噂を流した」という説もある。

  • 秘密結社NNN
NNNとは「ねこねこネットワーク」の略で、猫による猫のための組織とされる。
その目的は猫の生活の生活向上の為の情報共有。
具体的に言うと、猫に友好的な人間の情報が共有され、この組織にマークされると捨て猫や子猫が次々に送り込まれてくる。
NNNにマークされるのは前述のように猫好きな人間ばかりなので追い返すことができず、どんどん猫を飼う羽目になるらしい。
さすがにこれほどの大規模なネットワークが猫の間でできているというのは眉唾だろう。
ただ、自らの去勢と引き換えに子供を人間に託しに来た母猫や、子猫を治療してもらうために病院を訪れた母猫が報告されており、人間を有用な存在と認識して頼ってくるというのはあり得る話である。

完全にウソだと断言するのは難しいが、一時期テレビなどで盛んに言われていて現在もネットで拡散している
「最新研究ではティラノサウルスは羽毛に覆われていたことが判明!!」という言説は全くの間違いである。

実際にはティラノサウルスそのものから羽毛の痕跡が見つかったことは、2024年現在ではまだない。
近縁種であるユウティラヌスなどからは羽毛の痕跡が見つかっており、ティラノサウルスにも羽毛があった可能性も否定はできないとされているが、
同時にユウティラヌスよりもティラノサウルスに近縁なアルバートサウルスでは、体表がウロコで覆われていた痕跡が化石から発見されており
ティラノサウルスも羽毛ではなくウロコに覆われていた可能性もかなり高い。

恐竜の羽毛については、かつては鳥に近縁な獣脚類恐竜にしかないと考えられていたが、その後鳥盤類恐竜からも羽毛化石が発見されたことから、
恐竜が竜盤類と鳥盤類の2大グループに分岐する以前の祖先の段階で羽毛を持っていた可能性が高いと考えられており、
全ての恐竜が羽毛を持っていた可能性がある。
しかし、現在の哺乳類にもゾウやカバ、サイのように体毛を持たないものがいることからもわかるように、上記のことは必ずしもすべての恐竜が羽毛を持っていたことを意味しない
むしろ大型の恐竜では、体温調整の関係上、羽毛を失っていた可能性のほうが高いだろう。

  • 恐竜ティラノサウルス・レックスは鈍足
近年ネットで広がったティラノへのネガキャンその2。
そもそもこの話は、「走れない」ということと「鈍足」ということをごっちゃにしている。
ティラノサウルスの最大速度は研究によってかなり幅があるが、遅いほうの説でも全力疾走した人間に匹敵する程度とされており、到底「鈍足」とはいえない。

一方、「ティラノサウルスは走れない」という説は支持する研究者が多い。
そもそも、動物学では「走る」とは「移動時に全ての足が地面から離れる瞬間がある」という意味である。
この意味でなら、巨大なティラノサウルスにはこのような移動は無理であることは、ちょっと考えれば納得できるだろう。
(仮に走ったら、着地した瞬間に足を骨折してしまうだろう)
ちなみに映画「ジュラシック・パーク」では、車で逃げる人間をティラノサウルスが追いかけるシーンがあるが、あのシーンも厳密に言えば走っているのではなく歩いているのである。

しかし、「走れない」=「鈍足」では断じてない
何しろティラノサウルスは巨体なので、走らなくても歩くだけで十分なスピードが出せるのである。
現生のゾウの場合を考えてもらえばわかるだろう。
ゾウも厳密な意味では「走る」ことはできないが、その移動速度は十分に早く、追いかけられたら人間が逃げ切るのも困難である。
面倒なら『獣電戦隊キョウリュウジャー』ほかのガブティラのアクションシーンを思い出してほしい。撮影に使うプロップの都合上両足が同時に地面から離れることはないが*23、あの歩き方でも自然に猛スピードでダッシュすることはできるのはすぐ推察できるだろう。
ただしモヒカンヘアーにセットできるほどの羽毛があるについては上述のように「なかったんじゃないかなぁ…」が定説。

これも「まあそういう説はあることはあるけど、『現在の研究ではこれが定説!!』というわけではない」というタイプの一種の都市伝説。
日本のネット上では、「一般にパキケファロサウルスは頭突きをしていたと思われているが、実際はしていなかったことが判明している!!」というような説明がパキケファロサウルスの解説をしているページには必ずと言っていいほど載っている
しかし、実はこれ、ほとんど日本だけで広まっている一種の俗説である
海外の恐竜系サイトではこのような記述はほとんどないし、古生物学の全てがこの説を支持しているわけではない。

では、なぜ日本のネット上にこんな記述が溢れているのか。
その理由は、1990年代から2000年代にかけて多くの恐竜本を執筆したサイエンスライターの故・金子隆一氏がその著書で紹介しまくったからである。
金子氏の著書の影響力はかなり大きく、ネット黎明期の恐竜サイトには金子氏の著書の内容をほとんど丸写ししたようなものも少なくなかった。
その記事がさらに孫引きされて現在に至るわけである。

しかし、金子氏の「頭突きをしていなかった」説も現在の動物との比較などで類推されたもので根拠はいま一つ乏しいし、現代からみれば20年以上前の知識に基づくものである。
何より上記の通り、この説は日本以外ではほとんど言及されていないのだ。

金子氏の恐竜・古生物学への貢献は非常に大きいが、同時に晩年にはトンデモ理論であるBCF仮説を子供向けの本で好意的に紹介するなどのやらかしも多々あり、その業績は慎重に評価する必要がある。


  • 人間以外の動物は、食べる目的以外で他の動物を殺すことは無い
昔から色々なところで言われている話。「それに比べて人間は……」といった文脈で語られることが多い。
しかし、これは全くの間違いである。
わかりやすい所では自衛や子を守るために殺すこともあるし、空腹でもないのに本能的に殺すこともある。
同種多種問わず、時には「遊び」としか思えない状況で他の動物を殺す行動は、多くの動物で観察されている。
例えば、ハヌマンラングールというインドに生息するサルの仲間は、若いオスが他の群れのオスを追い出した後、追い出したオスとメスとの間に産まれた子どもを殺すことが確認されているし、
シャチはエサの魚で水鳥をおびき寄せてから水中に引きずり込んで殺す様子が目撃されている。
実はこれ、サルの仲間や類人猿で発見されるまでは動物学者も「当然の事実」として信じていた、という少々笑いづらい歴史もある。

  • 豚はデブで不潔
豚は「デブ」の代名詞のように思われているが、実は筋肉質で力持ち。
野生の豚の体脂肪率は10%以下で、人間で言えばなんとトップアスリート並。家畜の豚でも体脂肪率は14~18%で女性モデル並の体脂肪である。*24
尚且つ豚は綺麗好きで、自分の寝床となる場所や、餌場の近くなどでは糞をしない動物だとされている。*25
さらに足も速く野生の豚はあのウサイン・ボルトよりも速い時速40kmで走り、家畜の豚も時速20kmとそこそこ速く走ることができる。


  • 魚には痛覚がない
主に魚釣りや踊り食いの文化を否定する動物愛護思想への反論として持ち出される定説であるが、実際には魚にも「ノシセプター」という痛みを感じる神経受容体があることが判明している。
ただ、痛みを感じることはできても、それを苦痛として認識できるほど大脳皮質が発達していない可能性があるらしく、*26この点が勘違いされたのかもしれない。
ただし、魚を対象にした実験の中にも、一度受けた苦痛を避けようとする学習行動と思われるものが確認できた事例もあるので、魚もストレスを感じること(苦痛の認識)ができる可能性は否定できない。



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最終更新:2025年05月28日 22:30

*1 学術上は「写真」「映像」がないと根拠と見なされない・「目撃した」だけではアウト、という事情もある。つまり都合よくカメラの前でそういった行動を取ってくれないと説にすらなれないのだ

*2 ここで述べているのは生物学上のサルではなく、類人猿なども含んだ一般的な意味でのもの

*3 後述する宮崎・幸島の個体群など。触れるように「一番槍となった最初の若い個体が始めた(偶然海に落としてしまったとする説もある)ら群れの若いサル全体に伝播した」「老サルには伝播しなかった」が正しい。ちなみに老いた個体はやらない代わりに若い個体から強奪することで洗われた芋を食べているとのことで、「ニホンザルの群れは猛烈な年功序列・順位制」がよくわかる行動でもある。

*4 実際、ロシアの暴君・イヴァン雷帝は子供の頃、猫を窓から投げ落して殺したことがあるらしい。

*5トムとジェリー』に、『ジェリーとジャンボ』という、ジェリーとゾウが共闘する回はあったが。

*6 例え急所を狙っても、並の銃では象の分厚い表皮や骨格を貫くのは難しく、一発で仕留めるのならば専用の大口径銃か特殊な弾丸が必要。

*7 本来は飼育による研究、人工~半人工繁殖による個体数維持なども目的。ただし動物を見てもらう施設としても「本物による市民学習」という大事な学術的価値が求められている。

*8 特にワンゲル部事件については「当時の登山者はこういったかなりのガチ勢でもクマへの対処法を全く知らなかった」という意味でも重要なケースと言える。実際に現代のクマに詳しい人が記録を読めばアマチュアマニアですら「これ禁忌の選択を片っ端から踏んでいる」と言えてしまう。

*9 対人用にはオーバースペックな大威力拳銃が生産されているのも、猛獣に対する威嚇・牽制手段兼接近戦用の最後の武器として実用的な需要が有るからである

*10 ペット向けのウサギを販売しているお店なら確実に置いている

*11 高崎…というか群馬にもニホンザルは定着・生息している。『頭文字D』の「日光のサルじゃねえんだぞバカ」はそういう意味でも正しいお叱りなのだ

*12 河合雅雄、一部のwiki民には児童文学作家・草山万兎の本名兼もう一つのペンネームとして知られるか

*13 普通の個体群だとエサを奪い合う行動がおっぱじまってしまい、とても「人間側が指示したフォーメーションでじっとする」など不可能である。

*14 ただしオオアリクイの爪による打撃によって猟師や飼育員が死亡する事故が起こっており攻撃力が全くのゼロというわけではない。もっともこれは大きな音に驚いて威嚇のポーズに入ったときに運悪く爪が当たったという話らしいが。

*15 絶滅したものも含めると、ジャイアントモアやエピオルニスも該当する。

*16 全くバタ足をしないわけではないが、ほとんどは方向転換するときだけ

*17 ただし、完全な無菌ではないとされ、尿道付近の雑菌が混ざることは十分あるし(特に最初の尿程)、カテーテルなどの異物を入れている場合なども事情が異なる。

*18 水たまりは当然として雨水・海・湖・川などを正式なろ過装置や煮沸消毒などもなしにそのまま利用など。これはどんな感染症にかかる恐れがあるか知れたものではないため。更に菌に関しては煮沸消毒で通常使用は大体OKになるが有害物質が混ざっている可能性や消毒後に菌が混ざる可能性など、完全無欠というわけではないことも心に留めておきたい。

*19 しかし、アレルギー体質の人はアナフィラキシーショックを発症し、死亡する可能性もあるので注意が必要。タランチュラの毒による死亡例は数件ほどしか報告されていないが、だからといってむやみに刺激しないように。

*20 これに限らず、年中温かい地域だと「ある程度大きな爬虫類」が街中に定着しているケースはまま見られる。

*21 夕焼けの詩第5集「星ガメの夢」。

*22 ヒヨケムシの英語名「Camel spider(ラクダのクモ)」はこれに由来している。

*23 そうしようとすると古生物学どうこうではなくワイヤーで吊り上げたり下ろしたりになるので撮影が煩雑になる

*24 家畜の豚は赤身(=筋肉)をたくさん取る為に品種改良されているため体脂肪が少ないのは当たり前なのだが

*25 『けものフレンズ2』でブタが綺麗好きなのを「意外だ」とよく言われがちなのはこの為。

*26 わかりにくいが、「外傷そのものを感知する能力」と「外傷に対し不快感を覚えストレスを感じる能力」が別であるということ