盈虧刃(えいきじん)モーントリヒト
アビスゲートと能力的に対を成す『空間』に干渉する
鐫界器。
名は単純に『月光』を意味する。盈虧とは月の満ち欠けのこと。
ラスティが使用した。
2mほどのロッドの先端に三日月型の刃がついた、刺突できないハルバードのような金色の武器で、
柄の部分には純白の宝玉があしらわれている。
アビスゲートよりも刃部分の切断力は多少高いが、鋼鉄の盾や鎧を切断できるほどではなく、
切れ味で言うならサバイバル用のナイフや大工道具の方が良いことには変わりはない。
鐫界能力は非常に強力ではあるが、あまり複雑な挙動はできず、融通が利かない。
最も多く使われるのが『空間の相互転移』であり、先端の刃部分で円を描くように指定した領域内の球状空間を、
任意の同じ大きさの空間と瞬時に入れ替えることができるというもの。
これを攻撃に利用すれば、相手を転移領域の境界線上に置くことで確実に切断することが可能である。
ただし、転移先の空間は領域指定開始時に決めていなければならない点と、
領域選択時に立ち止まらなければならない点から予備動作が長く、
技の性質を見切られていると回避されやすい。
また、これはその時点で転移したい方向と距離をかなり正確に思い描かなければならないため、
視認領域内なら比較的正確に行えるが、たとえば地平線よりも向こうだとか、
地球の反対側などに長距離転移しようとすると、距離のイメージ誤差の範囲で
地殻下のマグマか大気圏外にはみ出してしまう可能性が高い。
一応『予め転移先を指定しておく』ことは可能なのだが、それはただ『可能』というだけで、
そもそも地球の自転・公転どころか、太陽系自体が螺旋を描いて銀河系を猛スピードで移動しており、
銀河系も同様であるため、指定した空間座標は一秒後には茫漠な宇宙空間である。
相対的な猛スピードの移動などではなく、絶対的な空間そのものへの干渉であるため、
このポイント指定機能は可能ではあるが活かしようがない死にスキルとなっている。
ラスティは、どう頑張っても倒せない敵への最後の手段として、これを応用して
『敵に接近して同時に空間転移させ、自分もろとも宇宙に放逐する』という策を考えてはいたようだが、
結局その最終手段は使用せずに終わった。
念のため言っておくと、空間座標を直接設定する機能だけがこのような現象を発生させる。
他の転移技や空間接続技は、領域の指定・維持に物理的な挙動が多く、大抵は慣性の影響を受ける。
戦闘において多用するのが、大きく弧を描くように刃を振ってその空間領域を隔絶し、
非常に強固な刃として飛ばす技である。
この強力な漆黒の弧(光を隔絶するため純黒に見える)は、よく『刃』と形容されるが、
それは平たい円弧状の形状が斬撃を想起させることに起因しており、
接触部分に物体の分子結合を切断するような鋭さはないため、接触した物質に齎す現象は、
どちらかと言うと『切断』ではなく『圧壊』や『破砕』と表現した方が正しい。
隔絶された空間は物質的に振る舞い、移動に伴って空間同士が重合することはなく、
また、切り取られた空間に虚無が発生することもない。
挙動はウインドエッジなどの風刃系
魔法に似ているが、これを
輝光壁で防ぐことはできず、
飛距離に応じて刃の空間隔絶強度が減衰する以外に防御手段はほとんど存在しない。
空間の歪曲率を操作する重力魔法にだけは影響を受ける。
特殊な防御技術として、相対距離に依存するごく至近距離の空間同士を接続させ、
攻撃の軌道を逸らしたり、相手に返すことが可能。
この空間転移シールドの発動領域は物理的な慣性の影響を受けることを応用し、
高速で疾走しながらディスク状に真横に向けて発生させ、
発動と同時に武器を振り抜いて『投擲』することで二枚の円形切断武器として扱うことも可能だが、
魔力供給源である本体から離れると空間接続面を維持する力が急激に薄れるため、実用性は薄い。
ラスティは一度、転移先をやや上空に出現させ、『高速移動する落とし穴』として
地面スレスレを飛ばすなどの応用も行っている。
他に多少なりともこの鐫界器を起動できた者から見ると、
ラスティは信じられないほどの精度・確度で長距離転移を行っているが、
彼女曰く、鐫界器本体との高度な無意識の共振を行うことで、そういった使い勝手も若干緩和されるらしい。
その言葉を裏付ける検証はなされていない。
最終更新:2016年12月10日 10:12