「う、嘘だっ、勇者に対してこんなフレンドリーな魔王がいてたまるかァ――!」
「えー、じゃあどんなのが好みなの?」
「いや、好みっていうか、普通はこう『余の部下になれ』とか、
『二度と蘇らぬよう貴様らのハラワタを喰らい尽くしてくれるわ』とか……」
「じゃあ……わははは、勇者
ロゼアよ、よくぞここまで来た! きさまのパンツをよこせ!
あと二度とお姉ちゃんに逆らわぬよう、身体の隅までぺろぺろし尽くしてくれるわ!」
「ヒイィもうやだこの魔王! さっきとは別ベクトルで嫌だッッ!」
――――勇者と魔王の決戦直前にて
ジェイド・ハイドランジア("紫陽花"のヒスイ)
藍色の髪に赤いカチューシャが印象的な、陽気なおねーさん。
天空都市エル、ガーデン地区出身の強化培養体。(培養体は識別記号として花の名を持つ)
ロゼアの姉である。母親の異なる卵子から培養されたため、腹違いの姉と認識するのが近い。
地上では『魔王ジェイド』とも呼ばれていたが、実際の姿を知る者は地上には少ない。
元々『管理者』の一人とする目的で製造されているため、
筋繊維そのものの伸縮力や骨密度、
魔力容量や神経伝達速度などが常人のそれとは大幅に異なり、
培養槽の中で脳に書き込まれた様々な知識体系や、高度な思考・行動アルゴリズム等も相俟って、
彼女単独で、天空都市全軍のおよそ半数に匹敵する戦略的価値を持つように作られている。
ただし、万一叛逆が起こった時のため、エル市長には単独で勝てないようにデザインされている。
肉体が十五歳(成人)になるまでは培養槽の中で眠りながら育ち、
成人してから初めて外の世界に出た。と言っても、外の情報はすべて機械的にインプットされており、
普通に外の世界を生きる者よりも多くの知識量と、豊かな感情を持ち、
そして植え付けられた数百年分の擬似人生体験によって、精神年齢は実際以上のものとなっている。
十五歳で覚醒してから二年、地上管理用ツールである(とエルの民には思われていた)
“魔物”達の管理権限を持ち、人口の抑制や情報統制、文明レベルの制御などを行っていたが、
外部から
アゲート界に不正アクセスを試みた
現たちと接触し、世界の真相に触れる。
その後、最高権限『ガブリエル』襲名の日、
鐫界器『
神の陵』を継承した直後に、天空都市に反旗を翻した。
未だ培養槽の中にいた妹、ロゼアを解き放ったのち、
外部から観測していた現のサポートもあり、地上への逃亡に成功。
それからは、一緒に地上に落ちたロゼアを遠くから見守りつつも、現との協力関係を維持しており、
アゲート世界を内側から瓦解させ、外の世界へと脱出するための調査と準備を続けていた。
(この時から“ヒスイ”の名を名乗り始めている。
自身の名を日本語で言ったときの発音を現に聞いて気に入ったためである)
やがて、続く旅の中で、英雄視される人物の一人となったロゼアの前に、
魔物たちを操り人を襲わせる『魔王ジェイド』として、(真意に反して)立ちふさがってしまう時が来た瞬間、
自分達が姉妹である事を告げ、“最初”で“最後”で“最大”の姉妹喧嘩を開始する。
それは、かつて自分が行ったのと同じ、『神の陵』を継承するための儀式でもあった。
……この時のヒスイ自身は、儀礼ではなく全力で戦っていたが。
だが、その戦闘の直後、今まで半ば傍観していた天空軍によってロゼアが攫われたため、
彼女の仲間達を守りながら一時退却し、奪還のため天空都市エルに舞い戻ることとなる。
それ以降は、ロゼア達と共に行動している。
アゲート界の解放後は、その類稀なる
魔法の腕と、数百年分の擬似人生経験からなる知恵と人格を買われ、
都立ヴァルハラ高校の教員に就任している。
念のため言っておくと、この世界においても
何の資格もない亜人の少女がそんな簡単に高校教諭になれるわけではなく、
それが可能なように公的書類が細工されているだけである。
最終更新:2014年08月09日 17:00